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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第五章 英雄ディノス編
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第百三十二話 脱落者達

遅くなりました。

ちょいちょい忙しくてなかなか進みません……。

 カランカランと音が響いたことで意識を覚醒させていく。

 周囲に張り巡らせた鳴子がなったということは……。


「侵入者か、魔物か……どっちだ?」


 周りの音を聞いていると微かに人の声らしきものが聞こえてくる。

 何かブツブツと文句を言っているようだ。

 ……ということは人間つまり、侵入者だ。


 拠点の裏からゆっくりと抜け出し、音の聞こえた方向とは逆側へと向かう。

 丁度風下だから都合がいい。

 外は薄暗い。そろそろ夜明けと言ったところだろう。

 昨日偵察に来たやつだろうか?


 音がなったことで警戒しているのか、なかなか姿を表さなかったが、動きがないことに安心したのか動き出した。

 いつでも攻撃できるように弓を手に取り観察することにした。


「くそ、あんなものを用意していたとは……。でも気づかなければ意味はない、この近くに誰か居るはずだ……卑怯ではあるが退場してもらおう」


 モーリスでは無かった。

 だが明らかに周りを気にしながらそんなことを言っている時点で敵だ。

 恐らくライバルの寝込みを襲って安全にクリアしようという魂胆だろう。


 しかし巧妙に隠された拠点に気づくこと無く通り過ぎていく。

 まさかの素通りに少し頭が痛くなるコンラッドだったが、どうせなのでこのまま背後から近づいてリタイアさせることに決めた。


 弓をしまい、足音を立てないようにしてゆっくりと近づいていく。

 真後ろに居るというのに全く気づいていないのもどうかと思うが……。口を抑えて引きずり倒し、そのまま動脈を締めて落とす。

 なにがなんだかわからないうちに意識が無くなった彼には悪いが、このままアドレーに引き渡してやることにした。


 さてどうやって呼んだものかと思ったが向こうから来た。

 当然のように監視されているらしい。良くやるものだと思う。もしかしたら前に感じていた視線はアドレーのものだったのかもしれない。


「手際が良いな。まさか魔法を使わないとは」

「アルフリックが言ってたんだ。魔法を使うとマナの流れで気づかれる時があるから、近くで不意打ちをしたい時には魔道具など別な方法が良いってな」

「その通りだ。加えて詠唱をしなければならないのならば声で気づかれるときもある。……お前は問題ないだろうが」


 無詠唱はそういう所で大分アドバンテージがある。

 それだけでなくタイムロスもない。

 アルフリックはコンラッドの能力を含めて最適な魔法の使い方を教えていた。

 生徒の能力を考え的確な指示を与える彼は優秀な教師であることに間違いはないようだ。


「まあコイツは預かる。気絶させられた以上死んだと見做す。生殺与奪を握られたのだから当然だな。だが敵対すれば向こうは容赦なく魔法を撃ち込んでくるぞ?」

「その時はその時だな。ただでさえ俺はそんなに手段がないからなぁ……基本しか習ってないんだ、最初からある程度魔法が扱える奴とは下手にやり合いたくねぇなぁ」

「ま、今回は生き延びればいい。その調子なら問題無さそうだ、……その寝床の隠し方なんて知っていなければ俺も気づけるか怪しいぞ」

「ちょっとしたコツが有るんだ。ある程度大きなものであってもこうして自然物に偽装することで分かりにくくなる」

「なるほどな。参考にさせてもらおう。この調子で頑張れ」


 そう言うとアドレーはあっという間にその場を離れていく。

 恐らく身体強化を使っているのだろう、あり得ない動きをしていた。

 とりあえず罠の状態を調べ、問題ないことを確認した後は獲物がかかっていないかを調べる。


「警戒心無さすぎだろ。ありがたいが……。しかしコイツは食えそうにねぇな……」


 うさぎ、ネズミはまだいい。最後の1匹が問題だった。

 哀れにも首に縄が引っかかりそのまま窒息死したとみられる緑色の肌をした小人の様な何か。

 ただし醜悪な顔で手足が細い割に腹は出ている。

 まるで栄養失調になった子供のような姿をしたそれはゴブリンだ。

 定番中の定番といえる彼らだが、繁殖力が旺盛であることと群れで行動し、意外と力があるという点で戦う術の無い人にとっては脅威だ。


「1匹見かけたら100匹居ると思えとか言われてたしな。ここは放棄するか……」


 死んだ理由が罠だと気づくかどうかは知らないが、もし本隊にこれがバレたら面倒くさいことになるのは分かりきっている。

 この仕掛けを置いておいた場所を放棄して別な所へと設置することにした。


 戻って捌いているとガラガラガラ!という激しい音と何か重いものが落ちる音が響く。


「切られたか!」


 鳴子の縄が切られ、それによって重しとして置いていた石が落ちた音だ。

 切られる前に音がしなかったことから考えても人の仕業だろう。

 動物が切ったならば音がしてからこうなるはずだ。


 同じように拠点からこっそりと出て周りを見渡せる場所へと移動する。

 後ろは壁になっているので背後からの不意打ちは無く、こちらは全体を見渡せながらも下からは見づらい位置だ。

 即席のギリースーツを着込んで様子を探る。


「いたか?」

「いや、そっちは?」

「見ていないぞ」

「おかしい……あれだけ音が響いたんだ、どっかに隠れてるに違いない。炙り出すぞ」

「お、おいモーリス……それは死んでしまうぞ……」

「本当に危なけりゃ止めに来るだろ。おーい、聞こえてるんだろう?お前は囲まれてる、出てこないなら……燃やしてやるよインチキ野郎!」


 4人。モーリスがリーダーとなって組んでいるようだ。

 なるほどなるほど、しびれを切らして出向いてきたということか。鳴子の音は遠くまで響くしこんなものを使うのは俺くらいしか居ないと踏んで集まったか。


 何かを言って手をかざせば、4人の中心……俺のことを追い詰めたと思っている場所へ盛大に火の手が上がる。

 やべぇこいつら殺す気で来てんぞ……あれ食らったら洒落にならんだろうが!


「し、死んだんじゃないか?」

「知るかよ、その時は事故だよ事故。魔法使えるなら何か防ぐ方法くらい知ってるだろ」

「でも叫び声も聞こえなかったぞ?」

「チッ、外れかよ……」

「待った、なんかあそこおかしくないか?」


 お、拠点に気づいたらしい。周りを見れるやつも居るようだ。

 一応あの辺にも靴の跡残らないように石の上とか歩いていたんだが、そういうので見つけたわけじゃ無さそうだな。

 敵にしては偽装を見破るとはいい目をしている。

 そして普通に近づいていく。


 前言撤回、罠とか全く警戒していない。

 その証拠にほら。


「ぎゃぁぁぁ!!ああっ!!あし、足が!!」

「どうした!?」

「畜生罠か!」


 簡単な落とし穴に引っかかった。片足しか入らないレベルだが足を突っ込むと両側からスパイクに挟まれる仕組みのものだ。

 今回は優しいから毒とか汚物を擦り付けたりとかはしていないだけ有り難いと思えばいい。

 引き抜こうと思っても返しがついてるし、周りを掘り返して罠ごと取り除いてゆっくりと外すしか無い。死ぬほど痛いだろうけどな。

 左の足の裏からふくらはぎに掛けて大量のスパイクが深々と突き刺さっているのだ、尋常じゃない痛みが襲っているところだろう。


「野郎ぶっ殺してやる!」

「ピクシーワードは誰も使えない……くそ、しばらく我慢していてくれ!」

「頼む!あいつまじで殺してくれ!いてぇよぉ!!」

「少し避けてろ『全てを焼き尽くせ地獄の業火よ。塵も残さず灰と成せ!』」

「うおぉっ!?」


 作った拠点を吹き飛ばしやがった。魔法の威力だけなら相当なもんだな。

 あれは真面目に当たらないほうが良さそうだ。

 落とし穴で1人減って3人。

 少し離れながらあちこちに全員で魔法を放ち始めた。


 おお、あと少しでもう1人……。

 はーい1名様ごあんなーい。


「うおっ、な、なんだ!?がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「今度はなんだ!?」

「くそ!大丈夫か!?」


 泥沼だ。物凄く草が密集していて分かりにくい所にかなり深い泥沼を作っておいた。

 意外と簡単にできて足止めが出来るからおすすめだ。

 それに一工夫加えてこうして電撃を撃ち込んでやると足止めと同時にそのまま息の根を止めることも出来る。

 死体は沼の底へと沈んでいくのでバレにくい。

 今回は浅いし、普通に死なない程度に工夫しておいたのでしばらくしたら目をさますことだろう。


 お仲間が来てなんとか引き上げてくれたしもう大丈夫だ。

 しばらくまともに動けないだろうが。


「くそ!くそ!!何処だよ!!」

「おい!やめろ!やたら撃っても消費するだけだ!落ち着け!」


 モーリスがなんか正論を言っていた。ちょっと見直したけど許さない。

 さっきまでの余裕顔が一転して恐怖感にかられた情けない顔をしている。

 一人づつ仕留められていくのは怖かろう。


 パニックになった一人はそのまま作った道なりに進んで、顔面をしなった枝で強打され気絶したままで10m程の高さまで足をロープでくくられて逆さ吊りとなった。

 逃げる時に道があったらそこを進みたくなるもんね、仕方ないね。


 ついに一人となったモーリス君には直々にやってあげよう。


「ぐぅっ……!!な、矢……!?」


 胴体はまずいので足を狙った。

 太ももを貫かれて苦痛に顔が歪んでいる。

 矢が飛んできた方向へと炎の弾を飛ばしまくっているが、もうそこには俺は居ない。

 狙撃したらすぐに位置を変えるのは鉄則だ。


「チェックメイトだ」

「なっ!?あ、がっ……」


 直接電撃を叩き込む。大分扱いが難しい雷だが、こうしてスタンガンのように使う分にはかなり使い勝手のいい魔法だ。接近しなくとも導電性の物があれば遠くからでも効果が期待できる。

 4人を片付けるとアドレーが出てきた。


「見事だ。ここまでできれば上出来だな」

「どうも。一応魔法も使ってるから良いだろう?」

「もちろんだ。……大口叩いていた割に不測の事態には全く対処できていない、魔法が上手いだけで生き残れないと言うのはこういうことなんだが、これで学んでくれればいいがな」

「ちょっかい出されなきゃいいよ……」


 いちいち相手するのも面倒だ。おとなしくしていてくれればそれでいい。

 残りの3日間を場所を変えて過ごそうとしたら、アドレーから待ったがかかった。


「その必要はもうない。残ったのはお前だけだコンラッド」

「は!?まだ2日目だろ!」

「1日目の脱落者が3名。今日の午前中で2名がリタイア、1名がお前にやられた。午後はついにこの4人が全滅だ。最後まで生き延びたのはお前だけだよコンラッド」

「マジかよ……早すぎるだろ……」


 まだまだこれから!と思っていた所であっさりと終了されてしまった。

 アドレーの拠点に行くと全員が揃って寝込んでいた。

 コンラッドの罠にやられた以上にひどい怪我をしているやつもいたが、そんな彼らを治して回っているのが居た。


「あ、コンラッド来たね。随分早かったね」

「あ、ああ。えーっと」

「僕はニール。テンペストの婚約者って言ったら分かる?」

「あいつの……なんか色々と信じられんが、まあ分かる。えーっとリヴェリって種族で良いのか?」

「あってるよ。流石に落ち着いたみたいだね」


 突然この世界に来て肉体を失っていたのだから仕方ないだろう。

 そりゃ混乱もする。ただ流石に時間も立っているしある程度やることがはっきりしてきたせいもあって大分落ち着いてきたのは確かだ。

 最初のうちはやっぱり何もかもが異なる生活に慣れるのに苦労した。


「ゆっくり考える時間はあったからな。今はまあ……こうしてやっていける程度にはなったと思う。サイラス博士やテンペストもそうだったのか?」

「2人はもっと大変だったと思うよ?」


 テンペストは突然肉体を与えられ、元の持ち主の記憶の片隅にある行動データから引っ張り出してきたものでなんとか呼吸をしたり食べたりと言った超基本のところから始めていた。

 歩くまでにも時間はかかったし常識を教えるのはニールも相当苦労しているのだ。


 博士に関しては五体満足でここに来たものの、ミレスに捕まりその後は長期間の拷問生活の果てに四肢を切り落とされた。そのせいか若干多重人格となっているところもあるが、メンタルは相当強かったのか今はこの生活を満喫している。


 そういう意味では身体は無くなっているものの、最初から大して苦労せずに生活できるコンラッドは恵まれていると言っていい。


「マジかよ……あの2人そんな経験を?」

「そうだよ。ま、今回のテストは合格だろうから、これからについてちょっと話がしたいんだ」


 学園に戻って個室へと案内されると、そこにロジャーも来ていた。

 とりあえず席へと着くと早速話が始まる。


「試験お疲れ、コンラッド。大して魔法も使わずに返り討ちにしたんだって?」

「罠を仕掛けるのが上手いんだよ……ピンポイントでその罠に向かって相手が行くから面白かったよ」

「行くように誘導しているんだ。いかにもな所があったとして、まずその近くに行ってから罠を確認しようとするだろ?だからその手前に仕掛けとく。面白いように引っかかるぞ。後は回り道しそうな所にとか、逃げ道として使いそうな所にだな。全部油断しそうなタイミングの所に仕掛けるのがコツだ」

「鬼だこの人!」


 罠と言うものはそういうものなんだろうけども、計算され尽くした設置は流石にニールも敵がかわいそうになるほどだった。

 それにコンラッドの戦闘方法は暗殺者に近い。

 気づかれずに近寄り、確実に仕留める。


「とりあえず本題に入ろうか。悪いんだけど授業が終わったらすぐに研究所の方に来て新しい機体の訓練をやってほしいんだ」

「別に構わんが。久しぶりに乗れるのか!」

「君にも関係のあることになるからもう教えて置くけど……。ボクを含めてテンペスト達はとある人を追っている。サイラス博士の知識を手に入れた危険人物なんだ。精霊からのお告げによって彼が最終的にこの世界を破壊しかねないということが言われていて……今それが危険な段階に入ってる」

「は……?」


 楽しめそうと思っていたら突然の戦争行き決定となったのだから困惑するのも無理はないだろう。

 一応、コンラッドも元軍人だ。こういうことは以前はしょっちゅうだった。

 初めからきちんと詳しい話を聞いていく。

 精霊のことからミレスという国のこと、そして現在の状況。


「そのお告げってのがどれだけ信用度が高いかは俺は分からんが……聞いている限りじゃかなりの確率なんだな?……今からあいつらを教育して間に合うのか?」

「分からない。けどこっちもまだ準備が整ってないんだ。もうあまり時間がないのは確かだけどギリギリまで準備をして行かなければ無駄死にするかもってことは分かるでしょ?」

「危険だって言ったって……一人だろう?そこまでの脅威になりえるのか?」

「コンラッド、忘れてるかもしれないけど……サイラス博士は君の世界で何を作った?そしてこの魔法がある世界でそれが再現できないって言い切れる?破壊者となって現れるってことは大規模な破壊行為があるってことだよ。大陸の外の話だからと安心していられるようなことじゃないんだ。それが可能なのは何もディノスだけじゃない。テンペストとマギア・ワイバーンでも似たようなことはできてしまうんだよ」


 航続距離は無限に等しい。

 魔力が続く限りどこまでも飛べる。弾を撃ち尽くしてもテンペストには魔法もある。

 たまたまテンペストが味方として現れたから大丈夫だっただけだ。

 作り上げたのも少人数だったことからも、条件さえ揃えばなんとかなってしまうという事も証明できている。

 サイラスが考えつくものは向こうも考えつく可能性が高いのだ。

 何よりも向こうでは大規模な研究施設と人数が必要であるはずのことも、ここでは少人数で何もない状態から作り上げることも可能だ。


「君なら……テンペストと博士と君がここに来るきっかけとなったかもしれないその兵器が、どれだけ危険なものか……ボク達よりも知っているはずだ」

「……分かった。つまりはそれを阻止すれば良いんだな?」

「そう。何としてでもその兵器を使わせちゃ駄目だ。お告げの事が有る限り、彼は必ずやる。そして君たちと起きる脅威を考えるとその兵器を使うことが予想できるんだ。だから……食い止めて欲しい」


 脅威に対応した者が呼び出されてくるなら、3人がここにいるのは偶然じゃないのだろう。

 共通している脅威はその大量破壊兵器だ。

 そして……3人はそれに対応するための力を持っている。


「出来る限りやってやる。あの爆発はもう二度と見たくねぇからな。向こうで出来なかったから、ここでは必ず成し遂げる」

「ボク達も出来る限り協力するよ。既にサイラスが大陸へ行くための船を建造してる。もう少しで完成するみたいだけど、その他にもまだ準備が整っていない。出来ればそれが終わるまでに教育を終えて実戦へ投入したいんだ」

「普通、何年も掛けて育成するんだぞ……大金を掛けてな。そいつらの飲み込みの速さと機体の性能に賭けるしかねぇか」


 様々な訓練を経て飛べるようになっても、ずっと訓練は続く。

 それが普通なのに1月か数週間程度でものになるようにしてくれと言われているのだ。

 普通なら頭がオカシイんじゃないのかといいたくなるところだが、魔法のおかげでサポートが可能であるのはわかっている。

 身体能力を上げてGに対する耐性を挙げられるし、種族という点でもそれが可能だ。


 簡単に墜落しないようにレビテーションの機能を設定しておけば、より安全な自動操縦の代わりになる。


 そもそも戦闘機そのものがある程度の意思を持っている。

 ゴーレムの思考回路を使ったコンピュータであると説明を受けているし、障害物を自分で発見して避けると言った人間臭い動きをすることが出来る。

 ゴーレムが単純な命令を自分の意志で行うのを利用した結果だが、複雑なプログラムを組まなくとも命令という大雑把なものでそれが実現できるのだからとても便利なものだ。


 ともかく、あれを乗りこなすには驚くことに機体との信頼関係が必要だったりするのだ。

 なるほど竜騎士とはよく言ったものだ。竜という生命体と、それに乗る騎士との信頼関係が必要な関係性。

 一体となって共に空を駆け、敵を討つ。

 それはこの新しい機体にも当てはまる。


 それが出来るようになれば……短期間であってもきっと乗りこなすことは可能になるだろう。


「じゃあ、頼んだよ。コンラッドも魔法の練習はしておいて欲しい。ああ、それと……。君たちの乗る機体の名前を決めてやって欲しいんだ」

「俺がか?」

「そうだよ。テンペストからのリクエストでね、君に決めてほしいみたいだよ。初めての量産機として、ワイバーンを原型に作り上げたこの機体は君の指示で色々と変更しているから、実質君が作ったようなものだってことらしいけど」

「まあ、そうかもしれないけどな……名前か」

「考えておいてよ。後何か武装とか考えついたら教えて欲しい。必死で作るから」

「分かった。俺達の責任重大だな……」


 叩き上げの熟練ではなく、教習を終えたばかりのひよっこを抱え、危険な任務へと連れて行く。

 出来れば全員を生かして返したいが最悪の場合は全員が犠牲になるだろう。

 2回も死ぬつもりは無いし、あれの爆発を見たいとも思わない。


 今でも頭の片隅に残っている独特な爆発の光。

 それが自分達を飲み込まんと背後から迫ってくる恐怖。


 2度と無いはずだった引き止めるチャンスを逃す手はない。今回はあのテンペストも独立して作戦に参加できるし、開発者であったサイラスも居る。

 今度こそいけるはずだ。


 少しばかり気を引き締めて、改めてこの世界のことを学ぶ決意をするのだった。



前回から引き続きコンラッドの出番です。

これでついにコンラッドもテンペスト達のチームへと正式に加入決定しました。

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