第百三十一話 サバイバル1日目
目隠しをされてコンラッドが連れてこられたのは……森のど真ん中と言えそうな場所だった。
近くにあるのは鬱蒼と茂った木々と苔むした岩。
生き物の気配は今のところ無いが、マナも少ない感じがする。
「お前はここからスタートだ。今から5日間、生き抜け。ただそれだけだ」
「まさか魔法の授業に出てサバイバル訓練やらされるとか全く予想外なんだが」
「俺が教師として選ばれた理由そのものだ。最近は魔術師として世に出ていく奴らは体を鍛えていない奴らが多い。おかげで貴重な魔術師がハンターになってすぐに死ぬ。少しは危機感を持ってもらわんと困るんだよ」
「つったって……ハンターじゃなくて研究とかならいいんじゃないのか?」
「そういう所に行くにはそれなりのコネやら実力が必要なんだよ。要するに狭き門ってやつだ……多くはそこを通り抜けられん」
「あー……」
まあ、分かる。
実際あの研究所に居た奴らは皆頭がいい。それなりに理解力がないとついていけないのは確かだろう。
他にも宮廷魔術師なんかは更に訓練期間があってそこで振り落とされていく。
もちろん優秀なものたちはそれなりの所へと再就職していくが、そうでないものは落ちこぼれていくだけだ。
だからこそ体鍛えておけっていうのは分かるんだが、これは流石に行き過ぎじゃないのか?
「俺のやり方だ。……それに、あいつらは恐らくお前のことをなかなか認めようとはしないだろう。こういうところなら寧ろお前の独壇場になりそうだからな。存分に利用するといい。俺が見ているからな、安心してぶちのめしていいぞ」
「流石にそれは買いかぶりすぎだろ……。まあ良いけど、やれるだけやってみるよ」
何もできなかったやつが突然自分達のところまで来たっていうのだから……そりゃ気に入らんやつもいるかと思い直す。
後は実力でそれを証明しろということだろう。
生き延びることの大切さと、俺のことを認めさせる事を同時に教えるためのものということか。
さて、一人ぼっちになってしまった。
今のところは飲み物には困らない。一応魔法によって水を生み出すことは可能だ。
それはあのモーリスの言っていた通りだが、魔力が切れた場合にはそれが出来なくなる。
今のうちに備蓄を作っておく。
キンキンに冷やした水が美味い。
「って飲めねぇよ!糞が!」
よく考えなくてもこの身体はそもそも飲まず食わずで良いのだから食料自体要らない。
心配しなくとも敵から身を守るだけでクリアしているようなものだった。
ただ、食料を取らずとも問題ないのは確かだが……生きている人間であることをアピールするためにも食糧確保をして調理して食っておかないと怪しまれるか。
捌き方やらは一応知っているから、肉を切り分けて腹の中にある収納に凍らせた状態で入れておけばいいだろう。
空いているからってことで入れておいた物だったが意外な所で役に立ってくれそうだ。
中には色々と便利なものも入ってるが、持たされたナイフだけで何とかすることにした。
「……5日か。軽く拠点作っとくか」
意識を集中して土魔法を使う。
凸凹の激しい地面を均して土台を作り、そこに土の壁を作っていく。
屋根は幅の広い葉っぱなどを拾ってきてそれをくっつけたりして作った。簡単ではあるが一人が寝て、調理をする事が出来る程度の設備のあるものが出来上がる。
「やべ、思ったよりこれ魔力消費激しいな。仕方ない、こっからは体力勝負としようか……。水はさっきのがあるから良いとして……食料か。食えないのに作るってのもなんか変な感じがするな」
適当に罠を作ってその辺に仕掛けておく。
後で見回れば引っかかっているやつが居るかもしれない。
次は……ちょっとした武器を作ろう。
「やべえ、魔法マジ便利。涙出そ」
弓を作っているが、加工があっという間に終わる。
形もそれなりにいい感じで持ちやすい弓があっという間に出来た。
矢も真っ直ぐな物が作れた。とりあえず20本作ったのでまあ何とかなるだろう。
威力も申し分ない。
まさかここまでのものが出来るとは思っていなかったのでありがたい。真っ直ぐな木の枝とかを探すめんどくささも無いのはありがたい。
軽く周りを見つつ、作った拠点を隠すために色々と葉っぱやらを集めていたら、人生初魔物を発見した。
「……初めて会った魔物があれってひどくないか……」
目線の先に居たのは鹿だ。
鹿だが……筋肉隆々、角はヘラジカなどとは違って水牛のように太いものが枝分かれしていて先端がとても鋭い。
そもそもその大きさが異常だ。ヘラジカも肩高で240cmなどという化け物がいるが、それを上回る。
恐らく3m以上あるだろう。
角の幅も同じくらいはある。
ドッドッと重いものが歩く音が響き、コンラッドはそれを前にして固まっていた。
動いたら殺されそうだと本能が警告を発している。
赤く怪しく光る目が周囲を見回し、ゆっくりと消えていった。
「し、死ぬかと思った……。ハンターとかあんなの相手にしてんのかよ」
思わず限界まで引っ張っていた弓を元に戻す。
そもそも即席で作ったこんな弓が通用する相手だっただろうか?
どう考えても矢の方が負けそうなくらいだ。
とか考えていたら同じやつが更に二桁に届くくらい来た。
慌てて木の陰に隠れてやり過ごす。
もし最初のやつを倒そうとしていたら……あの後から来た奴らにやられていたに違いない。
向こうはそういうつもりではなくても、仲間が殺されかけていれば助けようとするかもしれない。
確実に敵認定は間違いない。
調子に乗って攻撃しなくてよかった。
この世界が予想以上に危険なところだってことはよくわかった。
その上でテンペスト達が次々とこういう魔物を倒しては無双していると聞いては……自分はまだまだだなと思うしか無い。
「あいつら何でこんなのとやりあって平気なんだよ……怖すぎんだろ」
流石にあんなのを相手にできないので、地道に普通の動物を捕まえて捌くことにした。
幸いうさぎが居たので射止めたのだが、何気にあれも魔物だったようだ。
うさぎのくせに牙があった。
話に聞いていたとおりに心臓付近に小さな結晶があり、これが人生初の魔晶石となる。
「小さいな……まあ身体も小さいから当たり前か。魔物って言っても体の構造はそう違いないっぽいし……食えるよな?実は毒持ちだからとか無いよな?」
なんで毒を食って死なないんだとか言われて、食わなくても生きれるのがバレるとかはつまらなすぎる。どうやったら見分けられるのか。
肉を切り分けて皮と内臓、骨を捨てて穴に埋める。
残った肉の方は収納に入れて仕舞っておくことにした。
5日程度なら定期的に凍らせておけばなんとかなる。
そんなコンラッドを遠くから観察している人影があった。
ニールとアドレーだ。
「意外と適応してるね」
「彼はこういったことを以前やったことが有ると聞いています。……ニール様が直接見に来られるとは、彼はどんな人物なんですか?」
「んー……ちょっと特殊な事情があるんだ。まあ普通に対応しててくれればいいよ。でも……魔法はまだ未熟だよね」
「ええ、今のところ基本的なことしか出来ていないようです。ただ試験で見せた礫弾は威力、射程、正確さそれぞれが素晴らしいものだったとは聞いていますが」
「やっぱりそれは得意なんだね。分かる気がするけど」
銃器を扱っていて、そういった物の知識がある分何かを飛ばして命中させるというスキルは高い。
実際ニールもライフルを使ってみてその便利さがよくわかっている。
更に上の威力を誇るバルカン砲はもっと凄かったのだ。
あんなのが普通にある世界の方がニールは怖いと思っている。
サイラスやテンペストがそうだったように、コンラッドも最初から強いのかと思っていたが今のところそういう感じはないようだ。
「ただ魔法は無詠唱で既に使えているし……やれることを考えつけば恐らく強くなれるだろうと思いますが」
「さっき他の人達のも見たけど、まあハンターとしては無理だよね。あれみたら彼の行動は手慣れてるみたいだ」
今コンラッドは拠点として作った小屋を岩や木の枝などを使ってカモフラージュしている。
少しするともうぱっと見では何処に何があるのかわからないレベルに偽装されていた。
辺りが薄暗くなる前にある程度のことを済ませて既に休む準備まで終えている。
コンラッド以外はまず拠点を作るのはやっていたが、最低限ではなく自分の居心地の良い物を優先していたようだった。
おかげで悪目立ちしている。
ちなみに1人既に脱落者が出ていた。先程コンラッドが見逃した鹿の魔物はそのまま進んでいき……参加者の1人の目の前へと出た。
当然魔法に自信のある上級者だ、すぐさま詠唱を開始してその鹿の魔物へと放った。
しかし……その鹿の魔物は見た目の通りに凶暴だった。
草食獣と同じように考えて居た彼はその鋭い角による体当たりを食らって吹き飛び、一撃でリタイアする羽目になったのだ。
当然、アドレーによって救い出されたものの怪我の具合は重く、治療を受けてなんとかなっている状態だ。
あの鋭い角と巨体によって吹き飛ばされたのだから仕方ないだろうが……迂闊であったというほかないだろう。
魔法が直撃しても威力不足でダメージを与えられず、逆に巨体を活かした突進と、鋭い角による裂傷。
敵の見極めができなかったが為に起きた悲劇だった。
この後ぞろぞろと同じ魔物が出てきたことで、アドレーに助けられた後その光景を目にして自分の愚かさを知ったようだ。
他の参加者も、初日に食料や水を確保できずに1日目を苦しんで過ごすものが数名。
既に心が折れかける者も出てきている。
まだまだこれからだというのにまともなスタートを切ったのがコンラッド一人という結果となった。
そもそも、実戦経験がないから習いに来ているわけで……そういう意味では環境が異なるとはいえ実際に戦闘に参加したりしているコンラッドは経験がある分上に来れるのだ。
ただしそれは魔法というものがない場所の場合だ。ここでは魔法によってその経験の差をあっという間に埋められる事もある。
油断はできない。
「うーん……もう出てくる気はないっぽいね」
「今回は5日生き残れというのが主題です。こうして動かずにじっとしながら最低限の食料確保などをするのも手ですから間違っては居ません」
「なるほどね。ならまぁ今日はここまでってところかな。また明日も来るよ」
「分かりました。私の拠点の場所は分かりましたか?」
「最初に案内してもらった所で良いんでしょ?なら大丈夫」
他の参加者を見て回りますので、とアドレーがその場を離れていく。
ニールも少しの間その場に留まって居たものの、やはり動きはなかったのでそのまま帰ることにした。
「……行ったか?誰なのか分からんが……ここを特定されちまったかね?」
コンラッド自身も何でそうなるのかは分からないが、拠点の中に入って色々と作業していると何とも言えない視線を感じていた。
なんとなく誰かに見られているという感覚だが、ずっと観察されていると言うのは少々気味が悪い。
「まさかあいつじゃないよな?勘弁してくれよ……。まだ1日目なのにこっちは魔法初心者だぞ」
もし偵察なんかだとすれば、明日あたり突然襲撃されてもおかしくない。
居なくなったのを確認して今作っている簡単な警報装置を張り巡らせることにした。
原始的なもので引っかかれば音がなる……鳴子だ。
カラカラと音がなるのを確認してそれを周囲に張り巡らせる。
こういうのを簡単に作れるのも魔法によるものだ。恐らくこういうのを作らなくとも魔法でどうにかなるんだろうがまだ良くわかっていないから仕方ない。
ただ、魔法によって切れ味が上がったりするのはとても便利だ。アルフリックがやれると言っていたのでやってみたら案外簡単にできた物だ。
これはよくゲームでもあるのでなんとなく分かった。
「切れ味が上がったり、光ったり炎が灯ったりは定番だよな。雷ってのもいいが……」
バチバチとスパークを飛ばしながら青白く輝く剣……ロマンだろう?
後は見えない剣とか……伸びる剣とかビームソードとか。
「……ビームソード、できそうだな。練習してみるか……?」
光を凝縮して剣の形を成す架空の兵器。超高熱で全てを焼き切ることの出来るそれは、作品によっては原子レベルで崩壊させるほどの威力を持つものもある。
当然ながら光を固定することは出来ず、剣を交えることなども不可能だが……ここは不可能が可能になる世界。
もしかしたら再現できるかもしれない。
「勇者とかは光の剣を持ってたりするのが定番だろ!」
昔見たSF映画でもそういうものはよく出ていたし、イメージするなら分かりやすくていい。
ただ、今は大分魔力が減っている。
明日になれば周囲のマナからこの身体が魔力へと変換してくれるから特に気にする必要はないらしい。
本来ならばもっと時間がかかるという話だが、この身体はもっと早く回復することも可能だという。
まだその辺の使い方は教えてもらっていないが。
正直、今こそ必要なんじゃないかと思うわけだが仕方ない。
とりあえず、外も暗くなってきたしやることもないのでしっかりと扉を閉めて休むことにした。
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「おかえりなさい、ニール」
「ただいまテンペスト。なんか変わったことはあった?」
「サイラスから経過報告が有りました。例の船がほぼ完成したそうです。更に街の方も本格的に稼働を開始して、漁師の人達が海に出て漁をしてどのような魚などが取れるかを調査する所ということでした」
既に内装を残すのみとなっており、完成したも同然だ。
武装も今のところ最高レベルのものを取り付けてあるし、リヴァイアサンとは比べ物にならない戦闘能力と航行能力を持っている。
「へぇ、そろそろ完成かぁ!博士が作ったやつだからきっと凄いものになってるだろうなぁ」
「ええ、きっと。私も楽しみです、武装などもかなりの物になっているそうで……ホーマ帝国を相手にしても問題ないくらいにはしておきたいと言っておりましたから」
「いや……1隻で1国を相手にって……無茶でしょ」
が、もしかしたらと思わなくもないニールだった。
なにせあのサイラスのやることだ。本気で趣味に走った場合何をしでかすか想像がつかなかった。
「……とりあえず、凄いものにはなるよね」
「恐らく。まあ期待はしても良いと思います。少人数で行動する以上、最高戦力で移動することに越したことはないでしょう。ああ、それと海の塩のサンプルが届いています」
加熱することで濃縮し、塩を取り出す。
この時濾過が必要になるが、大して難しいわけではない。
壺の中に入れられた塩は白く輝いていた。
「とりあえず早く作って見るために強制的に加熱して塩を取り出しました、と言っていました」
「おお……しょっぱい。やっぱり岩塩と違って白いね」
「不純物さえ取り除けばどれも白くなるはずですが。ともかく、ハイランドもこれで自力で塩が取れますので値段が大分抑えられる見込みです」
「いいね。殆どの料理で使うものだから有って損はないね」
塩の産出が低いハイランドでは少々高い調味料だ。
海水の汲み上げなども簡単に出来るので塩田を作ることは可能だろう。
ぴりっとした塩辛さがあり、なんとなく後味に複雑な味が絡んでくる海の塩。
塩辛さだけの岩塩とは違った物だ。
肉よりも魚などにやはり合う味だろう。
「そして、アディから気になる報告が来ました」
「エイダ様から?もう始まったとか!?」
「いえ。精霊の怯えが酷いそうです。ここ最近はもうずっと『怖い』『助けて』といった声が多く他の声が聞こえない程ということでした。戦争が有ってもこういうことはまず無いということでしたので、恐らく何か動きがあったはずです」
「なにそれ……。凄く怖いんだけど」
これ以外にも消え行く精霊の悲鳴などもあり、それを聞き続けているエイダへの負担が物凄いことになっているようだ。
ここ数日で急激に悪化した状況で、エイダも相当参っている。
大精霊からの声を待っている暇は無いのかもしれない。
「こちらとしてもまだ準備は整っていません。まだ猶予が残っていれば良いのですが」
「ワイバーンの後継機ってやつはどうなってるの?」
「既に完成して竜騎士待ちです。テストは既に済ませてあるのでいつでも出ることができます」
基本性能こそマギア・ワイバーンに劣るが、それでも元々の戦闘機の能力を上回っている。
コンラッドが戻ればある程度の訓練期間を設けてからハイランド空軍発足となるだろう。
彼らには突然の実戦を経験してもらうことになってしまうが、生き残ってもらわなければならない。
それを可能にするためにも、万全な状態で望みたいところだ。
破壊者となったディノスが何をするかは分からない。突然全てを消そうとするのか、その前段階で侵略を開始するのか。
恐らく物資や資金的な意味でも後者だろうとは思われる。
その場合……ホーマ帝国が危険に晒されることとなるだろう。
その後は……言うまでもなくそれを阻止するために動く自分達だ。
「今はとりあえず作れるものを作って行くしか無いかぁ……。とりあえず弾は作っとこう。思った以上にあれは消費が激しいよ」
「ええ。既に発注済みです。ある程度工場が自動化されてきているので問題はほぼ無いでしょう」
恐らく空の戦闘はある。
向こうに本当の意味での竜騎士が居たのだ、それを使ってこないわけがない。
そして考えられるのはこちらと同じように向こうの知識による兵器の使用。
今のところ劣化コピーであったそれも、記憶との融合が進むに連れてホーマ帝国ではある程度の物になっていたのは確認済みだ。
ここでもしかしたらテンペストのジャミングが活躍する可能性もある。
「ともかく、いつでも出発できるようにしておいたほうがいいです」
「分かった。研究所の方も色々と進めながら代理を立てれるようにしておくよ。エイダ様には会わなくていいの?」
「いえ、明日にでも会いに行きたいと思います。今は寝込んでいるそうですから、何か美味しいものでも持っていってあげようかと」
「果物がいいかもね。甘いやつ」
「そうですね、甘いものは落ち着きます。アディには無理をさせてしまっていますから……ニール?」
「え?あ……こ、これは……」
戦いの時が近づいて来ている。
それなのに全く見通しが立たない不安。
ミレスの残党を追うことから、破壊者となった者を討つという事へ変わったことでもしかしたらここで命を落とすかもしれないという考えが浮かんだ瞬間、どうしようもなく怖くなってきた。
手がブルブルと震えている。
気づいてみれば足も力が入らない。
「ごめ、テンペスト……僕……」
「大丈夫です、ニール。あなたには私が付いています」
さっきまで押し隠していた恐怖が表面に出てきてしまう。
それを包み込むように抱きしめて優しい言葉をかけていくテンペスト。
「ニールは絶対に守り抜きます」
「……それだと、テンペストの安全が入ってない。僕はテンペストと一緒にじゃないと生きる意味が無いよ」
「分かりました。あなたを守り、必ず生還しましょう」
「うん、それならいい。もう、大丈夫落ち着いたから……。なんか本当に死ぬかもしれないって思ったらやっぱり怖くなっちゃった」
テンペストと出会う前まではニールは臆病だった。
血を見るだけで気絶したりする程度には。
出会ってから色々あって、少しずつ自分で考えて自分で行動をするようになり、戦闘中でもパニックに陥ったりすることはなくなっていったのだが……それはテンペストやコリーと言った強者に守られていたことが大きい。
一度飛竜に殺されるかと思ったときも、やっぱり終わった後には震えが止まらなかった。
あの頃から大分強くなったと思ったけども、まだそういうところが残っていたと思うと少し恥ずかしい。
「それが普通です。私は戦うために生まれてきた存在、効率よくどのように敵を倒すか……それを計算して適切なアプローチを提示し、サポートを行うための存在ですから恐怖を感じることはありませんが、ニールを失うことは嫌ですから」
「それは前のテンペストでしょ?今のテンペストはもうそんな存在じゃない。ちゃんと人のことを理解できるし心もある。……人間なんだ。僕もテンペストが居なくなるのは嫌だ。だから皆で絶対戻らなきゃ」
「分かりました。必ず阻止しましょう」
その後風呂でのぼせるまでくっついていた2人であった。
次回は月曜日からの予定がちょっとわからないのでもしかしたら投稿が遅れるかもしれません。




