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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第四章 カウース大陸編
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第百二十三話 コンラッド、初登校

 オルトロスを進ませていくと確かに木製の壁が見えてきた。

 意外としっかりとした柵の様で外側に向かってスパイクが突き出た物だ。

 当然ながら門番に引き止められるが……何を言っているのかさっぱり分からない。


「ーーーー。ーーーーー」


 少年が門番に何やら話をしていた。

 何を言っているのか理解できないため、自分達の命運は彼にかかっている。

 ドキドキしながら待っていると、普通に通してもらえたようだ。

 何かカードのようなものを見せていたので、恐らく身分証などだろう。


 こちらは何も持っていないのだが、何と説明してくれたんだろうか。

 木材を組み合わせてできた家々が立ち並び、辺鄙な場所にあるにも関わらずかなり賑わっているようだ。

 来る途中、端っこの方に領主の館っぽいものが見えていたが、それも木で出来ている様に見えた。見た目はもう豪華な木造校舎レベルだったが。


「木が豊富だからなんでしょうけど、面白い発展していますね。……火事起きたらどうするんだか」

「密集しているとこもあるし……多分、延焼するよね下手したら」

「ーーーー。ーー!」

「えーっと」

「向こうに行って欲しいってことかな?」


 座席の後ろから指を指して何かを言っている少年の意図を汲み取りながら、指差す方向へと進めていく。

 すると中心部のとある建物の前でストップを掛けられた。

 恐らくここが目的地だったのだろう。そして何となくどこであるかは察することが出来た。


「……ギルドだねこれ。多分だけど」

「でしょうね。それにしても先程からここの人達の反応が気になりますね、オルトロスを見て誰も驚いていない」

「そういやそうだね」

「ま、とりあえずここに下ろせば良いんだろ?そこの娘さんは俺が持ってってやるから」


 軽々と未だに目を覚まさない女性のことを抱き上げて、少年と一緒に建物へと入っていく。

 ニール達もそれに続いて入っていったが、やっぱり何を言っているのかがいまいち分からない。

 ホーマ帝国のようにこちらの言葉がわかる人達は居ないらしく、ほとんど言語に関しては詰んでいる感じだ。

 少年は受付に行って何やら説明をしている。

 すでに女性の方は職員が奥へと運んでいったので、恐らく救護室か何かがあるのだろう。


 それを入口付近で見ていると、いつの間にかテンペストが居なくなっていた。

 と、思ったらテンペストが紙を貼り出しているところへ行って何やら色々と聞いているようだ。


 代読してくれる人を頼んで読ませているらしい。

 たまに何かを指差して答えさせたりしている。


 しばらくそうして待っていると、何やら先程の少年が戻ってきて袋を渡してきた。お金だ。


「いや……偶然だったし、これから色々入用になるだろうし、これは君が持っていればいい」

「通じてねーぞ。おもったより厄介だな、これ」


 どうしようもないので、袋をそのまま彼の手に戻して首を振る。

 ジェスチャーだけでの対話はかなり難しい。

 一応通じているようだけども。

 こちらとしても特に何か目的があったわけではないのだが、なんとかこの場所だけは聞き出したいところだ。


 ペコペコと何度もお辞儀を繰り返している彼も、先程運ばれていった彼女の方へと走っていった。


「テンペスト、そろそろ行こう。言葉が通じないんじゃちょっと厳しい」

「少々待ってもらえますか?限定されたものではありますが、ある程度の意思疎通は出来るようになってきましたので」

「何!?」


 そう言うと、先程まで色々と聞いていた代読人とたどたどしいながらも何かを伝え、会話していた。


「マジかよ。テンペスト凄すぎんだろ」

「僕もびっくりしてる……」


 まさかこの短時間で……というコリーと、本がなければ出来ないと思っていたニール。

 流石に今の状況には驚かざるを得なかった。

 大分時間は掛かったようだが、とりあえず聞きたい情報は手に入ったらしい。

 テンペストが戻ってきた。


「お待たせしました。分かったことは……ここは私達が居た大陸のどの場所にも当てはまらないようです。帝国の名前などを言っても全く知らないと言われました。またこの場所はファベルシルワという街で、ここは私達で言うハンターギルドに当たるようです」

「大収穫だね。ということは僕達の世界とは違う所ってことになるのかな?」

「恐らくは。先程の少年はイグニス。私と話をしていた彼女はイエラだそうですが……この辺はあまり意味はありませんね」


 ジェスチャーと語彙の低い言葉だけでなんとか引き出したのはこれくらいだったらしい。

 が、この世界がテンペスト達のところとは別な場所であるということが分かったのは大きい。

 見た感じでは文化や文明的にも似ているような気がするし、ある程度は話がわかるだろうというところも大きい。

 もちろんここだけでは判断はつかないが。


 簡単に挨拶を済ませて街を出る。


「どうするの?ここ」

「今のところは私達とサイモンだけの秘密ということにしましょう。穴は偽装しておきます」

「まあ、それがいいだろうね。今のところまともに言葉も通じないし、よそ者が干渉していいものかどうか……。疫病関連の問題もあるからね」

「はい。それに正規の軍等と出会った場合どのような扱いになるか分かりません。落ち着いたときにでもまた訪れて翻訳を試してみたいと思います」


 途中でワイバーンに乗り換えて行く。

 かなりの距離を移動しているがワイバーンで飛べばあっという間だ。

 穴を簡単に塞ぎつつその上に偽装をかけておく。

 色々と気になるところはあるが、まともに調査できるようになるまでには時間がかかるだろう。


 □□□□□□


「本当に別な世界の可能性があるのか」

「ハイランド等はあの海流に阻まれて居たので知らない方が多いのではと思いますが、ホーマ帝国は大きな大陸でも大国のはずです。船舶技術からしても遠征は可能なはずですから名前くらいは知っていてもおかしくないはずなのですが」

「ふむ……まあそれだけで判断するのも早計だろう。言葉が通じないというのはホーマ帝国だって同じだったわけだからな」


 確かにまだ完全に違う世界であると決まったわけではない。

 その疑いが高いということだけだ。

 今回干渉してしまったことに関してはどうしようもないので、少なくともしばらくは行かないほうが良いだろうという結論に達した。

 言葉が通じない者達がオルトロスに乗って来たのを見られているのだから、正体を探ろうとするものが居ないとも限らない。


「では次は私の船が完成してからですかね。それまでには向こうに行ったらどうするかを決めておいたほうが良いでしょう」

「そうですね。では、どうしましょうか」

「……とりあえず、休もっか」


 何かしらすることもない。情報を幾つか整理した後はいつもの書類仕事を片付けていく。

 結局この島を離れるまで特に何事もなかったので、思いっきり惰眠を貪ることにした一行だった。


 □□□□□□


 その頃カストラ領、地下滑走路では……。

 コンラッドによる修正を加えた新しい機体がお披露目となっていた。

 テンペストのマギア・ワイバーンに比べて若干小型化し、形状はあまり変わっていないが様々なオプションを取り付けられるポッド装備は健在だ。


『生身の人族がやるならこれで丁度いいくらいだろ。それでも相当大変なのには変わらないだろうけどな』

「おつかれさん、コンラッド。……やっとでこれを量産できる所まで来たのかぁ」

『その前になんとか竜騎士を育てなきゃならんけどな』

「育てると言えば……学園の方もなぁ……。早くサイラス博士とテンペスト帰ってきてくれないかな……。ニールのところの研究も進みが鈍いし」

『ちょっと頼り過ぎじゃないのか?あまりこき使うと潰れるぞ……』

「それはそうなんだけども」


 学園の方からそろそろ魔法に関しての授業を始めたいとか言われてたりする。

 今までは新しい理論に基づく座学だとか、簡単な物理と化学、数学を進めていたのだ。

 基礎は大事なので手を抜くことは出来ないが、それでも実習を始めたいとなればサイラスかもしくはテンペストによってその実演が欲しい。


『他のやつじゃ駄目なのか?例えばロジャーとか』

「ボクもそうしようと思ったんだけどさ。色々と有名人だから。彼ら」

『……宣伝も兼ねてるとか?』

「そんなとこ」


 初めての竜騎士、そして鉄の竜騎士の称号をもらったテンペスト。そして新しい魔法に関する考察で、今までの常識を完全にひっくり返したサイラス。

 広告塔としては十分過ぎる功績がある。……もちろん、サイラスの方にはアンチも当然ながら居る。

 魔術師養成を主としている者達のグループがそれだが、今までそれが真実だと思っていたものを根底から覆されてしまった挙句に人が流れていっているのだから当然とも言える。


 ロジャーとしても研究の方を纏めなければならなかったり、開発に関しての指示を出したりと忙しい。

 3人も抜けた穴は想像以上に大きいのだ。

 そもそも人手が不足しているのが痛い。学園の方ではこちらの研究に関わる学問を教えているので、修了した後にいくらかでも流れてきてくれればありがたい。


「ところで新しい顔の方はどう?」

『んー……まだ笑うとなんか不気味だが……悪くないと思うぞ。そろそろ良いんじゃないのか?』

「なら、もうコンラッドはこっちでやることは大分少なくなってるし……学園行く?」

『行く行く。こっちはこっちで面白いんだが……暇なんだよ』


 外に行くことも出来ず、テレビも本もゲームもパソコンもない。

 娯楽自体が少ないここで部屋でただじっとしている時間というのは、気楽ではあるものの暇な時間でしかなかった。

 昔からやってる筋トレはしているものの、そもそも今の身体は筋トレ自体が要らないし、ほぼ意味がない。

 意味を考えると虚しくなるのでとりあえず習慣としてやることにしているだけだ。


 そこで学園に通うと言うのは魅力的な提案だ。

 勉強もあるが何よりも実習が多い。その中でも戦闘訓練と魔法訓練という項目を見つけたときには小躍りしたくなるところだったのだ。


 コンラッドたっての希望で翌日から通うことに決定し、翌日午前中に手続きをしに行ってそのまま授業に入っていくことになる。



 ーー翌日。

 顔と声の調節を終えたコンラッドは学園の制服に身を包み、新しい生活への期待を胸に……までは行かなくともこれまでの生活を変えるため、そして魔法を扱えるようにするために生徒として登校した。


「おお……いい感じだ」

「うん、声の方も少し篭った感じが消えて自然に聞こえるようになったよ」

「良いねぇ……。これでこっちも使えれば最高なんだけどな……はぁ……」

「無茶言わないでよ……形だけ作っただけでも良しとして欲しいなぁ」

「いや分かってる」


 コンラッドが言っているのは生殖器のことだ。

 人として近づけるため極力形だけは見られてもバレないレベルにしている。

 もちろん形だけなので何の機能もない。

 当然排尿や排便などは無いため肛門も形だけだし、舌もそれっぽく動くけども実際の所それを使って発音はしないため口を開けっ放しでも言葉を喋れたりする。当然味覚はないし、そもそも食事はできない。


 性欲や食欲などがあるものの、どちらも機能的には対応できていないため最初のうちはかなり苦しんでいたのだが、今は大分落ち着いてきている。

 ……食欲だけはどうしても見てしまうので内心ものすごく羨ましいと思っているわけだが。


「じゃ、行ってくるわ。なんかあったら連絡してくれればいい」

「ま、しばらくはないと思うよ。一応テンペスト達が近くまで来てるって言ってたし大体数日後にはこっちに到着するはず。それまでは何も予定はないからね」


 思い返してみればこっちに来てから大体一月になろうかという辺りだろう。

 時計を持っていれば時間も何日経過したかもわかったのだが、困ったことに持ち合わせは自分の魂のみというわけのわからない状態だ。

 それでも不自由なく暮らせているのは、子供にしか見えないこのリヴェリと呼ばれる種族のロジャーのおかげだ。その他にも獣人、エルフ、ドワーフなど定番とも言える種族も居るなど夢の中に居るんじゃないかとも思ったくらいだ。


 でかい熊にしか見えない獣人とかは流石に怖かった。

 二足歩行する動物にしか見えないタイプは正直未だに慣れないのだ。


 そんな不思議な世界の力、魔法を学ぶために今から学園に行くのだ。テンションは上がる。

 しばらくは予定もないというのだから思いっきり満喫しようと決心して歩き出す。

 学園の場所はすでに知ってはいる。

 大きなロビーを通り過ぎて行けばそこがもうすでに学園だ。


「学生証の提示を」

「あー……これか?」

「コンラッド・ジェーン……。今日が初なのか、頑張れよ」

「おう、よろしくな」


 すでに周りは学生だらけだ。

 自分と同じ黒の制服に校章を付けたマントを羽織っている。

 学園長室へと向かいドアを開けると……。


「ああ、来たね」

「お前かよ!!!!」


 ロジャーだった。

 しかもまだ研究所の服を着たままだ。

 さっき送り出しておいて、ここでまた会うくらいなら最初の時点で色々手続きすればよかったんじゃないのかと言いたい。


「仕方ないでしょ、ボクが今代理やってるんだから。本来ならサイラス博士がしばらくやって人を育成してからだったんだけど旅に出ちゃったからね。帰ってくるまではボクだよ」

「じゃーさっさとやろうや……」

「さて、それじゃこれに必要事項を書き込んで。あ、親の欄は空白でいいよ?出自はわかってるし君の親は別の世界の住人だからね」


 名前、年齢、寮の番号、性別等など。

 それら書ける所を全て埋めて提出すれば、そのデータはカードに纏められる。

 身分証と共にそのカードを持ち歩くことでここの学生であることの証明となり、学園内へのパスとなるのだ。


 学園内へはこの学生証、もしくは特別許可証がないと入れない。

 教師陣やテンペスト達は特別許可証だ。その他にゲスト用の仮許可証もある。

 これらを提示することで学食は無料となり、苦学生であっても生活していくことが出来るようになっているのだ。

 コンラッドには意味がないものだが。


「出来ないはずの食費と水代を支払わされるのが納得いかねぇ……」

「君は研究所の試験竜騎士として登録されてるから給料も出るけど、お金持ってない人はそれでもかなり厳しいんだよ。そういう人達のための寄付だと思ってよ」

「まあ、そうだな。そうする」


 貧乏学生でも学生を続けられるように、ある程度援助が出る。

 これはお金を持っている人達からの寄付などで成り立っている。

 休みの日などに外に出て学費を稼いでいる人も。


 コンラッドの余剰分でほんの僅かながらそういった人達が助かるのだ。


「ではこれがちゃんとした学生証だよ。その仮の学生証は返してね」

「中に入るためだけのやつだったのかこれ」

「そうだよ。ま、まっさらにして何回でも使えるから」


 その割には結構本物に近いものだったのだが。


 ただ、ちゃんとした学生証にはその人の顔も登録してあった。まだ世に出ていないが研究所で完成させたものでプロジェクターのようにその人の顔写真が壁に投影される。

 机などにかざして使っても十分判別できるものなので本人特定にも一役買っているのだ。

 その内身分証に改良したものを組み込ませるために、そちらの方面に働きかけている最中となっている。


 これで必要なものは大体揃った。

 後は筆記用具などを一通りなのだが、すでにこれらは持っているので問題ない。


「いよっし!これで晴れて学園生ってことか。教室とかはどこなんだ?」

「案内するよ。あ、ちなみにコンラッドには戦闘訓練と魔法訓練の方も入れてあるから。学力に関しては申し分ないし、……丁度今日は対人戦闘訓練が始まるんだよね」

「最高じゃねぇか……これでも一応職業軍人なんだぜ?」

「期待してるよ?」


 案内されたその場所は訓練所。

 すでに生徒たちはそれぞれの武器を手にウォーミングアップを始めていた。

 当然ながらここにいる人たちの大半は剣術をすでに学んでいるし、そうでなくともハンターとしてやってきたものたちなどは我流で経験済みだ。

 初めてと言うものたちは少なくそういう人達は大体最初は初心者同士で経験を積む。


 力量に応じて組み合わせを変えてあるので、一方的にはならないようにはなっている。

 今回のコンラッドのように、途中から参加するものも結構いるので生徒の混乱は無い。

 転校生イベント的なものも無い。


「ようこそコンラッド、今回が初めてってことだから俺が先に相手をするぞ。教官役のロイだ。よろしく頼む」

「教官役?」

「一定の力量を持ったハンターとかに声がかかるんだよ。色々と試験とかも受けたんだぞ?そっちのほうが大変だったね……。ま、そんなことはどうでもいい、あんたの武器を取るといい」


 ずらりと並んでいる武器……木剣などばかりだが、隣に刃引きした物も置いてある。

 今回は安全を考慮して木剣を使うようだが、コンラッドはその中からナイフを選ぶ。


 銃器とナイフなら扱ったことがあるが、銃器がないのでナイフ一択だ。

 今更剣やら槍を使ったってろくな結果にならないのは目に見えている。

 軍に居たときにさんざんやらされた軍隊格闘術、それがコンラッドの戦闘スタイルだ。


「ナイフか……いいのか?リーチではこちらが上になるぞ」

「あいにく使い慣れてるのがこれしかないんだよ……」


 みんなが見ている中、中央へと進んで床に引かれたラインの中へと入る。

 道場なんかと同じようにこのラインから出ないようにして戦うようにしてあるようだ。

 ナイフを構えてロイを見据える。


 ロイの方も正面に剣を構えて腰を落とした。


 合図とともにロイが飛び出す。

 あっという間に間合いを詰めて来たロイの速度に、コンラッドの目は対応できていた。

 生身の人間ではなく、強化されているのだから当然のことだ。

 振り下ろされる剣をナイフの背で受けて横に受け流す。

 必要最小限の動きでそれをこなし、伸び切った腕にナイフの刃を滑らせる。


「おっとぉ!」

「くっそやたら反応いいな!」

「そりゃこっちのセリフだ!躊躇いもなく剣をナイフで受けやがって全く……」


 簡単だった、というわけではない。それなりに難しい事だ。

 しかし動きについていける動体視力と自分の身体に感謝するコンラッドだった。この身体でなければ反応が遅れていただろうから。


 今度は横薙ぎにしてきた。

 身を捻って避けると、振り抜いたはずの剣がすぐそこに迫っている。勢いはそのままに袈裟斬りにしようと剣が迫る。

 これに対してコンラッドが取ったのは、剣を受けずにロイに体当たりをかますことだった。

 リーチの差があるならば、懐に飛び込めれば有利。

 剣は切っ先に一番力がかかる。しかしそれが手元になると……ほとんど意味がなくなる。


 肘に衝撃を受けて剣を取り落としてしまったロイだったがまだ試合は終わっていない。

 素手での戦闘に移ろうとした瞬間、ロイの顎が揺れた。

 コンラッドの拳が顎の先を捉え、頭を震わせる。一瞬前後不覚になりバランスを崩した所で左手でロイの襟を掴んで足を払い投げ飛ばした後、首にナイフを突きつけて……横に引く。


「ぐっ!?」

「これであんたは死亡判定だな」

「まさか体術を使ってくるとは……ナイフに惑わされたようだ……。もっと勉強しなけりゃならんな」

「俺は対人しか出来ないが、そっちなら少しは慣れてるのさ。むしろ、剣を教えてもらいたいかね。この通りナイフじゃ心細いんだよ」


 魔物が居る世界で、そいつらを狩る時にナイフではかなり接近しなければならない。

 やたらと危険な奴らだと聞かされているのに、そんな近くまでは行きたくないのだ。


「っと、組み合わせだが……初心者はないな。丁度人数も一人足りてなかったし、そこのグループに行ってくれ」

「分かった」


 配置されたのは上位とまでは行かなくともそれなりの実力者が揃っているところだ。

 同じ格好をしているので身分の違いはわからないのだが、なんとなくある程度いいところの息子とか、いかにもハンターやってますなんて感じの雰囲気を持っている。


 色々と面白くなりそうだなぁなどと考えながら、コンラッドは練習に参加していった。


見知らぬ世界。でも一部の人には見知った世界。

交差させるのやめようかとかも思ったんだけど、交差させました。

あの世界には……多分テンペストたちですら敵わないヤバイのが居るw

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