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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第四章 カウース大陸編
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第百十八話 英雄として

「では、行ってきます」

「うん。頑張ってね、待ってるから……。コリーも」

「おいおい、ただの地形調査だぞ。ま、行ってくる」


 ある程度帝国から離れたところで、マギア・ワイバーンを飛ばして大陸の地形を記録する。

 ついでに、どういう状況になっているのかを見てくるつもりだ。

 大陸は広いため、詳細な記録はせずに高高度からの大まかな地形のみで対応する。

 それでも海岸線や大体のバイオームが分かればいい。


 姿を消して上空へと消えていったテンペスト達を見送り、ニール達はサイモンの部屋へと移動する。

 恐らくテンペスト達は半日以上は戻ってこれないだろう。


「さて、反省会でも始めるか」

「……と言ってもどっかの国が攻めてきた事で全部ダメになっちゃったし……」

「全くだ。あれだけ苦労したのが水の泡だ……。魔晶石を売りつけて相当儲けられそうだったのに、勿体無いことをしたものだ」


 宝石としての価値が出るくらいの純度のものは高く買い取りたいという事だった。

 ちょっと変わっている気がするが、そういうこともあるだろう。

 実際お店自体は見てきたからよく分かる。


 ともかく、テンペスト達の表向きの要件はそういうわけで失敗した。

 もう一つ……モンク司祭に関する情報だが、お告げを信じるならばディノスはモンク司祭と同一人物。

 姿形は異なっているが、それを可能にする魔法、もしくは魔道具が存在する可能性が有る。

 今回はそのどれもが未発見、未確認だ。

 だが同一人物であれば、ディノスという名になっている事と、英雄としてそれなりの地位を持っていることは分かっている。


 サイラスやラウリですら、別人としか思えないと言うほどの変貌ぶりなのだ。

 正直な所お告げとして聞かされていなければ、まず間違いなく別人であると断じていたはずだ。

 その確認が取れただけだ。


「結局、わかったことは少ないんだね……」

「まず、街の広さを考慮していなかった。流石に少人数でカバーできる面積ではない。隠密をあまり連れてきていなかったのが痛かったな。これは私のミスだ」

『儂も驚いたな。あんな辺鄙な場所だった所にあれ程までに大きな都市などが出来ていようとは。道中でテンペストが記録した地形を見たが、大分変わっている印象だ』

「どんな風に?」


 昔は一面緑に覆われていた。

 大森林、広い草原……そういった場所だった。

 今では森が削られ、大きな街が出来ている。川の流れも人工的に変えられ、その影響か若干土がむき出しになっている場所が増えていた。

 海岸線の形などは覚えていないが、砂浜等はあまり無かった記憶があるにも関わらず、今は広いビーチがあり観光資源となっている。


 人の手が入ったのが原因だろうが、あの魔物が跳梁跋扈する場所によくぞあれだけの都市を建造できたものだと思う。


「ある程度生態系なども変わっているでしょう。他に気づいたことは……」

「生活水準の高さ、技術の高さ、どれをとってもハイランド以上であることは間違いないね。カストラ領を除いて」

「まあ、それは仕方ないでしょう。私やテンペストだからこその街ですからね。惜しむらくは土地がないことですが……帰ったらびっくりしますよ?ハーヴィン候、ご招待しますよ」

「ほう、それほどなのか?戻ったら一旦王都で集まってから解散となるだろう。その時一晩泊まらせてもらおうか」

「是非。テンペストも喜ぶでしょう」


 毎日の報告書で進捗が報告されているわけだが、現在土木工事は順調に進んでおり、すぐ目の前にあった山の山頂は綺麗に均されてある程度広大な敷地が出来上がっている。

 ドワーフとブリアレオスの組み合わせが予想以上に良いらしく、毎日物凄い速度で山が切り崩されているそうだ。


 帰った時には面白い光景が見れるだろう。


 それにハーヴィン候の領地までは少し遠い。

 一度カストラで休んでからのほうが楽だろう。


「とりあえず、僕達がディノスに対して行動するのは……結局のところ破壊者となって暴れだしてから、ってこと?」

「一応、期間をおいてもう一度向こうに行ってみたいとは思っている。その時には個人的にという感じで、サイラスの船でな」

「建造は順調ですよ。完成まではしばらくかかりますが……」

「構わないさ、どうせしばらくは戦争と復興で何も出来ない。次のお告げ次第という所もあるだろうな」


 戦争がいつ終わるか、被害がどれくらいか等は分からない。

 ある程度の事はテンペスト達が帰ってきたら分かるだろう。

 今回はホーマ帝国の偵察も兼ねている。


 戦争中であればなにかがあったところで恐らく気が付かないだろう、という判断で実行に移しているのである意味で今しかできない事だ。

 後は大陸の大まかな形さえ分かれば自動航行システムの方に入力できる。

 サイラスの言う新しい船にそれを積んでおけば問題ないということだ。


『暗殺という手法は無理なのか?』

「無理ではないだろうが……難しいだろう」


 まず、行くためには入国しなければならないこと。

 そして相手の正確な位置を知っていることが条件だ。

 勝手に入るだけなら恐らく可能だろうが、ディノスの位置はテンペストが把握できていなかったため不明だ。

 あの時酔っておらず、素面であれば恐らくディノスを追跡できるように登録していただろう。


「私がきちんと分かるようにしておけば……しくじりました。あまりにも別人過ぎて完全に失念していましたから」

「失敗ではあるだろうが……責める気にはなれんな……。仕方ない、今は戻ったらホーマ帝国で奴がやりそうなことに対しての対抗策を練って、必要があれば何か作る、というところか」


 とりあえずの方針は決定した。

 後はテンペスト達の帰りを待つだけとなる。

 各自自分の部屋に戻り、待機ということにして自由時間とした。


 □□□□□□


「クラーテルが……壊滅したというのか……私の研究はどうなった!」

「不明です!ディノス様、なにか打開策は……!」

「ぐっ……じ、状況を聞かせろ、何が攻めてきて、どうなったか……詳しくだ」


 会談の場からでてディノスは自分の血の気が引いていくのが分かった。

 幸い従者の2人とキールは連れてきている。

 しかしあの場に残してきた自分の研究はどうなる?最前線で資金提供を受けて作っていたものは?

 襲ってきたのは魔物だという。となると、ほぼ運次第だ。


 それは自分の成すべきことを達成するための時間が増えたことを表す。


「は、はい!まず、火竜です……突然空が明るく光ったと思ったら火弾が降ってきてクラーテルの砦が壊されました……。上空を舞っている火竜の攻撃は激しく、すぐに大砲などを用意して攻撃を加えましたがそちらに気を取られている間に今度は……」


 次にタラスクが2匹勢い良く扉に向かって来た。

 夜だったため閉めては居たものの、タラスクの巨体はそうそう止められるものではなかった。

 そうでなくともタラスクは恐ろしいほどの怪力を誇る。

 如何に頑丈な扉であっても、2匹のタラスクによる攻撃は耐えられず……僅かな時間しか持たせることが出来なかった。

 その後は凄惨な状況となったという。


 タラスクの開けた穴により、次から次へと入ってくるスワームに対抗できず、指揮系統が完全に乱れた結果……為す術無く蹂躙されていく。

 伝令を努めた彼が居た場所は、破壊された門の反対側であり火竜による攻撃の後に向こう側の方で突然火の手が上がったことに気が付いた。

 何が起きたのかと思っていた所、門同士で通信するための魔道具から壊滅の一報が届く。

 その後、砦から脱出できた誰かが伝えた状況報告により、長距離通信の手段が失われたことが分かり……特にクレールの扱いに長けていた彼が帝都まで知らせることになったようだ。


 伝達手段がクラーテルと帝都プロヴィルの間の町には無かったことが痛かった。

 結局、夜通し走り続けてなんとか伝えることが出来たというわけだ。


「何故魔物が結託して襲ってくるのだ?」

「分かりません。あの場で申し上げた通り……何か人の意志を感じる動きです」

「やはりエフェオデルの連中か……。分かった、もう休むが良い」

「は、ありがとうございます!」


 やはり魔物が襲ってきた事は確かだ。

 タラスクの他にもグリムオーク等の凶悪な魔物が多数見られていたということだ、もう街は完全に壊滅していると考える方が自然だ。

 魔物の足でこの帝都までは……あまりかからないだろう。


 帝都の軍研究所へ行き、協力を求めた所、すでに皇帝からの命令が伝わっていたようでディノスの指示に従うように言われていたようだ。

 幸いなことに以前作った魔砲弾に関しては帝都へ報告済みであるため、作り方は分かるしすでにいくつかは作られていたようだ。


 この国にある兵力は魔導車、魔導三輪、大砲、魔導砲、ライフル、魔弓と魔法の矢。

 弓に関しては慣れた者が使うとライフルよりも遥かに強い。

 追尾性が付いたものや、一度に複数の敵を倒せるもの、着弾と同時に爆発するものなど実に様々な物がある。

 それでもタラスクを楽に倒せるようなものはない。

 犠牲を覚悟して行くしか無いのだ。


「くそ、新しく何かを作る暇はない、今あるものを組み合わせるしか……」


 魔導車に大砲や魔導砲を取り付ける。

 屋根を取っ払って運転するもの以外は弓かライフルを装備して一丸となって突き進む。

 魔導三輪は二人乗りにして魔導砲のみだ。


 大砲に関しては魔砲弾を更に作りなんとか間に合わせるしか無いが、簡単な戦闘車両を作った。

 本来ならばクラーテルに新規できちんとしたものを作らせていたのだが、完成する前に破壊されてしまっただろう。


「そうだ!漁船の網があっただろう!魔物にちぎられないようにと頑丈にしているものが……それの四方におもりを付けて大砲で打ち出せるようにしろ。タラスクなどに纏わりつかせれば少しは時間稼ぎになるかもしれん!」


 必死で対策案を考えるディノスの言葉を、これまた必死でメモを取っては指示を出していく研究室の職員たち。

 自分が生き残るためにも、ここは魔物の侵攻を止めねばならない。

 対策を考えようとすればするほど、サイラスに埋め込まれた見たことのない「何か」の記憶が溢れてくる。

 漁船の網を使った物を考えついたのも、暴徒鎮圧用の投網がちらついたからだ。

 少しずつ鮮明になってゆくその見知らぬ記憶によって、頭は冴え渡っていく。


「ディノス様、我々魔術師にも何か仕事はございませんか?」


 魔術師である者達にはまだ仕事が来ていない。

 今は皆が動かねばどうにもならない時だ。仲が良かろうが悪かろうが関係ない、使えるものは全て使う……当然、頭の中身も。


「魔法、魔法か……魔物……魔物だ!魔物を操る等の魔法はあるか?」

「奴隷契約などに使われる従属の魔法がございますが、大人数に一気に付けることは出来ません……何か別な手段で魔物を操っているのでは……」

「くっ……あれだけ大量の魔物が従っているのだ、恐らく何か魔法を使ったに違いない。私達を美味そうな餌に見せるとかな」

「……幻覚、……認識を少し変えるものであれば……大人数にかけるものがありますな」


 認識阻害などと呼ばれている。

 そこにいるのに誰もが気にしなくなる。

 りんごを石に見せかけると行ったことも可能だ。


「それを解除する手段はあるのか?」

「ございます」

「では人数を集めてそれを使えるようにしておけ!魔導砲で打ち出せたりはするのか?」

「やったことはございませんが、恐らくは……。」


 随分と適当ではあるが……認識がおかしくなっているというのであれば、正常に戻せばいい。

 そして正気に戻った魔物達は周りの状況に追いつけず……種族同士での争いが発生するはずだ。こうなると生き残ったやつだけを殺すだけで良くなる可能性がある。

 他種族を見れば即座に襲いかかる様な連中ばかりの名前が上がっていたのだ、強力なやつを一種解放しただけでも大分違うだろう。


 他にできることは何か無いか、大量の魔物を効率良く殺すための何か……。


 爆弾とやらは強化して魔砲弾として開発した。

 前に作ったことのある戦車は今急造ではあるが作らせている。

 他の何か……。例えば、空を飛ぶあの悪夢のような兵器があれば……。

 そして魔鎧兵があれば……。


 脳裏に浮かぶのはミレス壊滅の日の事。

 自分達の作り上げた魔鎧兵よりも遥かに高性能な大砲を持った魔鎧兵。

 一瞬で壁を全て破壊し、城を消し飛ばした空を飛ぶ何か。一瞬しか見えなかったが轟音とともに飛び去ったあれは……。


「そうか、正体はこの戦闘機とかいう物か……似ている。音を超える早さで飛ぶ?まったくふざけたものを作ったものだ……っ!」


 どのみち魔鎧兵も戦闘機もどちらも作っている暇など無い。

 幾つか案は出てきたが、どれもこれも今から作るとなると間に合わないものばかりだ。


 色々と話し合いながら指示を飛ばしていると、今度は使用人たちが慌ただしく動き始める。


「皆様!水を飲まないように気をつけて下さい!クラーテルからの水に毒が混じっているという報告が入りました!誰か、毒検出が出来る方は……」

「ああ、私が出来るぞ」

「私もだ」

「ではどちらから一人付いて来てもらえますか?もう一人はここに残って水瓶に入っている水の安全確認をお願いします!」


 最悪の事態だ。

 この国の水瓶とまで呼ばれているクラーテルの水に毒が混ぜられたという。

 即座に死ぬものではないというが、腹痛を引き起こし、吐き気や目眩等といった症状が多発しているようだ。

 これが濃くなれば死ぬ可能性もある。


 地下水から引き上げたものは安全であると言うことだったので、川からの取水を止め、下流の街などへも注意喚起している最中だという。


「毒だと……まずい、壁の外の住人たちは殆どがその水を飲んでいるはずだ」

「治療するにも人が足りない……」

「毒、毒か……」


 今は下々の人たちのことはどうでもいい。

 他の奴らに任せるだけだ。しかし、魔物の侵攻を食い止めねば壊滅する。こちらのほうが重要……。

 それに向こうが毒を使うのであれば、こちらもそうさせてもらう。


「毒だ。これしかない。風向きに合わせ毒を撒く」

「どのように撒くというのです?直接刺すか毒餌を設置するかしか無いのでは?」

「それも使う。……そうだな、魔物が死ぬ程度の毒はあるのか?」

「幾つかは発見されています。タラスクには効くかどうか……」

「構わん、とにかく数を減らすのだ。長い釘があっただろう、板に沢山打ち付けておいてその上に草でもかぶせて魔物が来そうな所に大量に設置しろ、たっぷりと毒を吸わせた物を置けば、踏みつけた奴らが少しは減るはずだ……」


 それに手間があまりかからないのもいい。

 板を切り出し、それに釘を打ち付けてひっくり返し、釘と草にたっぷりと毒薬を塗りつける。

 足が柔らかい魔物であれば、釘が刺されば毒が身体に回っていくはずだ。


 そしてもう一つ。

 毒の散布だが、これは毒性の強いミストや煙などを発生させたいところだ。

 そして出来れば時間経過か水で分解されるような物がいい。


「何か、そういう毒物はあるか?」

「あることはありますが……危険です」

「なんでもいい、言ってみろ」

「とある植物から採れるものですが、その植物全て何処をとってもその毒が含まれているものです。効果は……筋肉の硬直。吸い込んだ直後に呼吸困難に陥り、全身を強張らせて心臓が止まり死に至ります。リクエスト通り、加熱による蒸気や草を焼いた時の煙にも含まれるため危険が大きいのです。しかも一度放出されれば5日は効果が残ります。……風向きが変わった瞬間、私達も同じ運命をたどることになります」

「ふむ……」


 5日。かなり長い。その場に漂う物を吸い込んだだけで死ぬというその毒が5日もとどまる。

 風によって流されてきたそれによって大きな被害を受けた街の話も聞いた。

 それ以来、危険種として見かけたら必ず専用の対策チームが処理をすることになったほどだ。


 しかし……今考えられる打開策はこれが一番だろう。


「……いや、それしか無い。それで行くぞ。少量でもそこまで危険なものであれば大量の魔物を事前にある程度減らすことが可能だ。今何処まで魔物が来ているのかなどは分からんのか?」

「恐らく偵察隊が出ているはずです。彼らは通信機を持っているので見つけたら連絡が来るでしょう」

「分かった。風向きに関してはどのような状態だ?」

「この時期は丁度クラーテル方面に向けた風が吹く時期です……が、たまに風向きが変わることもあります」


 賭けだ。

 一応、近くで燃やしたりしてその煙をばらまくつもりはない。

 ここはまた砲弾に一働きしてもらうつもりだ。


「砲弾4発。それだけだ。それ以上は使わない。今からすぐにテストをするぞ!手伝え!」


 自分達に向かってくるその気体を吸うつもりはない。

 あまり多く焚いて濃度を上げるなど危険すぎる。

 あくまでも数を減らす事を第一に考え、遠距離から魔物達に向かって撃ち込む。

 散開されていると効果も微妙になるだろう、それを見越しての4発だ。

 魔物達が来るコースに向かって、それらを撃ち込んで風に乗せる。

 最大限に広がる所で魔物達が突っ込んでくれるように調節が必要だ。偵察隊とタイミングを合わせた打ち合わせが居るだろう。


「何としてでも生き残ってやる……目的を果たすまでは……」


 □□□□□□


「難攻不落と言われたクラーテルを落としたぞ!」

「これで帝国の力も弱らせることが出来るぜぇ……」

「住民どもはここから出すな!閉じ込めておけ!抵抗する男と年寄りは魔物の餌にでもしておけ!」


 エフェオデル王国軍は魔物をけしかけることにより被害を殆ど出さずにクラーテルを占領した。

 破壊の限りを尽くしていた魔物達も、命令すればすぐにぞろぞろと壁の外側の方へと歩き出す。

 帝国への門は開かれ、橋を渡って行くだけだ。


「勇敢なるエフェオデルの戦士よ!我らの神敵である帝国の都市は落ちた!今からここにあるものは全て我らエフェオデルの物だ!よくやった!今日はここで休み、英気を養え!食い物、酒、女は沢山いるぞ、よりどりみどりだ!」


 崩れたクラーテルの砦の壁に登った男が大声で宣言する。

 その壁の下には捉えられた帝国兵やハンター達が縛られている。

 元より人質を取るつもりはない。


 この城塞都市をある程度復興させるための人手として、住民たちを確保するつもりで居る。

 その為の見せしめだ。


 街中に残った魔物をうまく使いながら、生き残りの住民たちをそれぞれの区画の広場に集め、それぞれの場所で今同じことがなされている。

 如何に手練のハンターや兵士であったとしても、武器もなくタラスク等の魔物に睨まれた状態では何も出来ない。


 広場に集まった者たちの目の前で、自分達を守るために必死で戦った者達が無残に殺されていく。

 絶望に染まった彼らの目を見てニヤリと嗤い、エフェオデル兵達は剣で盾を叩いて喝采を送る。

 抵抗すれば容赦なく殺す。

 抵抗しなければ生かしてやる。

 ただし絶対服従。


「抵抗するなよ?魔物の餌にしてやるからな」


 重厚な鎧を着込んだ兵達により、砦のあった場所に住民たちは集められる。

 死亡者が多いためか意外と砦の中に全住民が収まったところで、魔法によって閉じ込められることとなった。

 中にも見張りが付き何も出来ない。


 一部が開き、鎧を脱いで軽装となった者が来て一人ひとりの顔を見ていくと、若い女性達を連れて行く。

 何をされるかなど分かりきっているため、当然どうかこの子だけはと懇願するものは居た。

 居たが……子供であれば共に連れて行かれ、大人であれば見せしめでその場で殺される。

 反対の声を上げるものが誰も居なくなるまでにはそう、時間はかからなかった。



エフェオデルは侵略を主な手段とした国家です。

自分達の崇める神以外を認めず、四方に喧嘩を売っていくスタイル。

無駄に強いので質が悪いという……。

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