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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第四章 カウース大陸編
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第百十二話 酔っぱらい

「ニールぅ……あつい……」


 さっき着替えさせてもらったばかりだと言うのに、もう薄っすらと汗をかいて服を体に貼り付けているテンペスト。

 あの後水を飲ませてやって扇いでやっているのだが、今回は少し量を多く飲んでいるようだ。


 何処かふらふらと定まらない視線が、突然ニールを捉えてじっと見つめ始める。


「ど、どうしたの?」

「んふっ、あははははっ!どうしたのだって!」

「笑いのツボがわかんないよ!っていうか、こういう笑い方出来るじゃないか、テンペスト」

「あはははは……はーっ……はーっ……。暑い……」


 身体が火照って仕方ないのだろう。顔を真赤にしているだけでなく、肌自体も薄っすらと紅がさしているのだ。

 これでは少し辛いだろう、ということでメイを呼んで水浴びをさせてやることにした。


 テンペストが用意した簡易の風呂へと入っていくが、すぐにメイが出てきてニールを呼ぶ。


「ニール様、申し訳ございません。テンペスト様がどうしてもニール様がいいと言って聞かないので……お願いできますか?」

「え……ええ?なんで?」

「分かりません」

「はあ……分かったよ……。今行く」


 酔のせいなのか妙にわがままだ。

 というかいつものキャラからは全く想像がつかないが、酔うと本来の子供の部分が表面化するのだろうか。


 濡れても良いように下着になり、テンペストの元へと行くと……温めの水を張った小さな浴槽に浸かっていた。


「あ、来た……。うふふー……一緒に入ろ?」

「は?いや、狭いよ?!」

「だいじょうぶだいじょうぶ。ニールならだいじょうぶ。ねえ、早く……一緒じゃ嫌?」


 何が大丈夫なのか……この狭い浴槽の中で一緒に入れと?

 これまで以上にニールの紳士度が試されることは無かったんじゃないだろうか。

 じゃぁ……と入ろうとすると、浴槽に入る時には服は付けちゃ駄目!と言って剥ぎ取られた。

 結構容赦なくやられてころんだニールをみてケタケタと笑いまくっている。


 大丈夫、今は酔っているからテンションが上がっているだけ……と自分を納得させながら一旦テンペストを立たせて改めて浴槽へと入る。

 言われていたように確かに子供の身体の2人だったら意外と余裕があった。

 とは言え、ほぼ密着しなければならないほどではあったが。


「抱っこ」

「え?」

「抱っこ。早く」

「いや、それは……!んがっ!?」


 強制的に身体の位置を直されて、ニールの上にテンペストが身体を寄せる形で抱きかかえる格好となった。

 ニールの首にテンペストの細い腕が回され、胸に頭をあずけている。

 じんわりとほてった柔らかいテンペストの体が、ニールのお腹に密着していた。


「あ、こ、これ……」

「ずっとこうしていたかったの。ぎゅっと抱きついて……ニール、押さえてくれないと落ちちゃう」

「ご、ごめん。これでいい?」


 流石におしりの方に手を回す勇気はなかった。

 腰のあたりを抱きかかえてやると、肩に回されていた腕がふっと力を無くしていく。

 眠ってしまったわけではなく、単純にしがみつく必要がなくなっただけだろう。


 水の冷たさと、お互いの肌が密着したところの暖かさの差を感じる。

 しかし体勢的にも色々と問題がある状態だ。

 ニールは必死に自分と戦っていてそれどころではない。


「どきどきしてる?」

「そりゃぁ……」

「こうしてると落ち着くの。あったかくて、力強くて…………」


 鎖骨のあたりに頭をあずけて、全身を弛緩させている。

 ……つまり、眠った。密室空間で裸で密着して……。


「ちょ、テンペスト?……どうすれば良いんだよ……」


 身動きが取れなくなってしまい、ぐるぐると頭のなかではいろいろな葛藤が駆け巡る。


 紳士。僕は紳士だ。

 今のテンペストは子供、甘えたい盛りの…………テンペストが甘えてる?僕に?

 しかもものすごい信頼感!

 ……正直すごく嬉しいし、このままテンペストのことを抱いていたい。

 ああ、そうだ僕が押さえてなきゃテンペストが溺れちゃうし?

 ならやっぱりこのまま抱いてあげたほうがいいよね?

 でもこのままじゃ風邪引いちゃう?まずいかな……。

 っていうかさっきからテンペストのが微妙に僕のに触ってて色んな意味でヤバイ!


「……でも、ホントこうしてるとテンペスト可愛いよなぁ」


 あどけない寝顔。

 いつもは見せたことがない甘えた行動。

 酔いのせいだとは分かっているけども、自分だけにさらけ出した本当のテンペスト何じゃないかと思ってしまう。

 それが見れたことに感謝しておこう。

 ……いつか、普通にこんな感じで甘えてきてくれないかな?


 □□□□□□


「ん……っ!頭が……」


 心地よい眠りから覚めて感じたのは強烈な頭痛だった。

 必死で今の状況になるまでの記憶を遡っていくが、どうにも会場で誤って酒を飲んだ後、また段々と周りの音が遠のいていくのを感じた辺りからの記憶が曖昧だった。


 確か、冷たい水が効果的だった……と思い起き上がると、想像通りテンペストとニールが割り当てられた部屋だった。

 服は着替えさせられており、何やら身体自体はスッキリしている。


 物音に気づいたメイがやってきて、冷たい水を持ってきてくれた。


「ありがとうございます、メイ」

「いえ。ここにテンペスト様が運び込まれてから約3時間といった所です。具合はいかがですか?」

「頭が痛いです。……ニールは何処へ?」


 そう言えば前回は近くに居てくれたニールが居ない。

 何処に行っているのかと思ったら、ディノス……つまりミレスの生き残りであり、破壊者となる男へ対しての対策などを話し合うためにサイモンのところへと行っているらしい。


「テンペスト様は覚えてらっしゃいませんか?この部屋へ戻ってくる際に彼にぶつかったそうですが」

「……ごめんなさい、覚えていないようです。確かにニールに肩を貸してもらって歩いた記憶は少し、朧気にあるのですが……。やはり思い出せません。私達がディノスに会ったのですか?」

「ええ。そう聞いています。少し言葉をかわしたそうですが、顔も姿も雰囲気すらも聞いていたものとは全く違うと仰っておりました。こちらの国名も自分たちの名前も出さずに、介抱のためということですぐに別れたということなので向こうがこちらの事を特定はまだ出来ないはず、と言っておりました」

「そう、ですか」


 出会い頭だったから相当びっくりしただろうに、ニールは平静を装って対応したらしい。

 怖がりなニールのイメージが強いが、やる時はやるという芯の強さを持っている。

 そんな時に酔っ払って記憶を失っていたなどと、そんな失態を演じていた自分に腹が立った。


「戻ったよ。あ、テンペスト起きたんだ?具合はどう?」

「少し頭が痛い位ですが、大分良くなりました。大事な話し合いに出れなくてすみません」

「ああ、メイから聞いたんだね」


 話し合いのことを聞く。


 英雄がモンク司祭であるかどうかに関しては、完全に別人としか思えず断定できなかったということ。

 人の姿を変える物が何かあるというのであれば、その装置その物もしくは扱うことの出来る人物を探し出す事が必須であること。

 英雄の成し遂げた詳しい内容を知ること。

 行動を起こすにしても、帝都にいる間しか時間がないこと。

 そしてその時間自体は恐らく5日程度しか無いであろうこと。


「5日ですか?」

「ハーヴィン候が僕達の代表で大臣と一緒に国交を結ぶための場に出席することになったんだって。それで大体の日程が決まってたらしいんだよ。明日から5日程度で大まかなことを決めるんだけど、そこにディノスも出席するんだ」

「英雄とは言え……国の方針を決める会議に出る?おかしいのでは?」

「ここがハーヴィン候が出席することになった理由だね」


 魔導車を始めとする様々な技術に関しては、基本的にテンペストやサイラスの研究所で行っているが、それを取りまとめているという体でサイモンが代表者として選ばれた。

 これは技術交換でどの技術とどの技術を交換するかというところで、重要性や発展性などを一番良く知っている人物ということで最初はサイラスが選ばれたのだが……。


 もし、ディノスがモンク司祭本人であれば、サイラスとは面識があることになる。それも一方的に。

 そのため危険と判断された。

 ニール、テンペストは外見から侮られる可能性があった。

 コリーに関しては研究自体にはタッチしていないため、ある程度内容を知っているサイモンが選ばれたということだった。


 サイモンは大体の説明をすればすぐにその内容を理解してくれるので、そういう意味でもうってつけだ。

 先程の会議の中でその辺の知識のすり合わせなども行ったようだ。

 それに唯一侯爵という高い地位にあり、様々な会議や重要な話し合い等の場に出席してきた経緯がある。つまり……言質を取られるようなヘマをすること無く、重要な決定事項を任せられる人員なのだ。


 そして……ホーマ帝国の技術革新を推し進めてきたということで先進技術の代表としてディノスが来るというわけだ。


「……サイラスの知識を利用しているようですね」

「まあ、そうでもしなきゃ司祭だし元々技術者とかじゃなかったんだから、まともなものは作れないよね」

「ホーマ帝国の技術レベルなどはわかりましたか?」

「それはハーヴィン候の隠密が色々仕入れてきてくれてるよ」


 ホーマ帝国には魔導車の原型のようなものは既に存在しており、レベルとしてはミレスが以前使っていたいたものとほぼ同等。

 火薬式のライフルは存在しており、短く切り詰めて取り回しを良くしたものも出回っている。

 サンプルとして一式持ってきてくれたものをニールが保管したため見せてみる。


「なるほど、カートリッジは存在するのですね。私が知っているものに大分近いですが発火機構は魔道具での着火となっているようです。元々の科学技術もある程度あるのでしょう」

「そうみたい。僕達が見て回ったところではあまり見かけなかったから分からなかったけどね。このライフル自体も裏の店を探して買ってきたみたいだし」


 そして鉄道が考えられており、実際に帝都の一部では交通機関として簡単な鉄道が整備されている。

 大人数を運ぶことが出来るため、荷物のやり取りなども楽になったようだ。

 帝都を取り囲むこの壁の中には兵員輸送用の鉄道があり、何かが起きれば速やかに大人数をその場所へと送り込むことが可能になっているらしい。


 大砲は性能がよく、命中率もかなり高い。榴弾を使用しており周辺国はこの脅威によってなかなか進撃できずにいる。

 更に英雄ディノスの手によって新しい弾が開発され、より強力なものへと進化したようだ。


「このディノスが作った弾っていうのが魔砲弾っていう名前らしくて。そのまま過ぎてよくわからないんだよね、威力と射程なんかをある程度調べたいと言うのがさっきの話し合いでもあった」


 数発で数万の兵を打ち破り退けた、というのだからかなり大規模な破壊をもたらすものではないかと思われる。


 魔法に関しては特定の者以外は基本的に攻撃として魔法を使うことを禁じられており、許可を得ているものでも街中や人が多く集まるような場所……つまり野営地などで戦争や魔物の侵入等の正当な理由無く使用することを禁じられている。


「まあこの辺は普通だけど、いつの間にか隠密の1人がハンターのとあるクランが出かけるのに乗じてこっそり後を付けてたみたい。で戦い方とかを色々と調べてきてくれたよ」


 そのクランは街でも上位に位置する大きなクランで、抱えているパーティーは数多い。

 農場付近に出没するようになった魔物の討伐依頼で出撃した彼らは、基本的にはハイランドとあまり変わらない方法で戦っているようだ。


「でも、エンチャントを使ってるみたいだね。それに魔法自体も結構洗練されてて発動も早いそうだよ。サイラスみたいな派手さは無いけど、堅実な使い方をしてその能力を最大限に活かすのが得意みたいだね。ただ……障壁を扱えるみたいなんだ。魔法に精通している人が居るんだろうけど、個人に対して結界を適用しているらしいって」


 明らかに魔物の魔法を食らったにも関わらず、それを無視して突っ込んでいくなど無謀とも呼べるスタイルで戦うものが居たらしい。しかし無傷でそれを切り抜けていると言うことだった。

 それだけでなく、ある程度のダメージを無効化している可能性が高いと。


「魔法を扱える人がかなり重宝されてるんじゃないかな。持ち物とかも結構いいものを持っていたようだって言ってたし」

「なるほど。街中に魔法を扱える人間が少なく、厳しく取り締まられている理由が何となくわかりました。恐らく魔法使いは特権階級とまでは行かなくとも、かなり上位にいるのでしょう。他の人達には出来ないことをやってのけるために重宝され、それが続いた結果高額の傭兵の様になった可能性がありますね」

「あー。そうかもしれない。だからあの部隊長嫌ってたのかな?」


 自分の実力でのし上がってきた彼は、その何倍もの効率で自分だけさっさと無傷で居なくなってしまう魔法使いが嫌いだったのだろう。

 あの場に居た魔法使いのレベルが低かったのは、恐らくまともに教育を受けさせる気がなかったということだ。


 ……罰を受けて居なくなったとすれば、むしろいいことだったのだろう。


「そうなれば、国の重要なポストへと就くことも可能になってくるでしょう。となれば……兵力に対して魔法使いの絶対数自体は多くないと思っていいかもしれません」

「なんで?」

「特別な地位として魔法使いがあるのならば、あまり増やしすぎれば自分たちよりも実力のあるものが出てきた場合、あっさりと切られる可能性があるからです。きちんとした魔法使いとして活躍できるのは一握りと思ったほうがいいのではないかと」

「なんか妙に厳しく管理されてるしね……あり得るかも」


 兵力に関しては、もう呆れる他無かった。

 ひどすぎるという意味ではなく、規模が大きいということで。

 ハイランドを総動員しても数で負ける、と聞かされれば分かるだろう。


 隣国と紛争中となっているが、本気を出せばあっという間に帝国が勝てるのではないかとも思える。

 しかし兵力が一塊になっているわけではなく、広い国土に散らばる主要な街などに分散されているため、一度に使える兵力としては一般的なものだ。


「広い国土を持て余しているようにも聞こえますね」

「実際そうみたいだけどね。国土の2割程度しか無いみたいだよ、人が住んでる所。後は自然と魔物の住処だって」

「なるほど……だからこそ街の一つ一つが大きかったのですね」

「うん、そしてだからこそ魔導車の技術は必須だったんだよ。ディノスがきてから性能が上がったらしいんだけど、僕達のは更にその上を行ってるわけじゃない?ここまで来る間に色々観察されてたみたいで有名になってるよ」


 オルトロスはポートキャスの兵士の前でその性能の一部を見せている。

 それは走破性能だ。坂道や悪路を物ともせず、高速で移動する。その速度はあの鳥……クレールよりも早く安定しているということは既にバレているのだ。

 また、最後尾だからと色々とやっていたが、あのキッチンなども装備に含まれていると思っているらしい。


「……私のせいですね」

「いやまあ、いちばん重要なやつはバレてないからいいと思うよ。いや、バレてるのかなぁ。一応あの英雄がモンク司祭だとすれば、ミレスに攻め込んだ時の試作品の性能見てるし……」

「屋根にはシールドしか出ていないので見た目には武器を積んでいるとは思われないと思いますが……注意が必要ですね」


 幾つかのこちらの手の内を知っているのだ。モンク司祭は。

 魔鎧兵を改造したサーヴァント、魔導車を元にしたオルトロス、そしてこれまで見たことのない兵器、マギア・ワイバーン。正確無比な射撃を行えるレールライフル。レールガン。バルカン砲の連射力と投下型の無誘導爆弾。


「……魔砲弾の元は無誘導爆弾かもしれません」

「あれからヒントを得ちゃったか……ありそうだね。ディノスがモンクだったとして、ディノスが作りそうなもの……自分の技術として欲しがるものは何だと思う?」

「間違いなく新型の動力の設計図、魔鎧兵……今は魔導騎兵ですがこれの技術。遠距離攻撃の手段……これらの技術の恐ろしさは自分が身にしみて分かっているはずです。しかし、サイラスの知識がある程度定着していればその内自分で作り出す可能性は高いですね。一人で物を作ったわけではなく、必ず彼を助けている技術者の集団がいるはずです。彼らの知識と、今のディノスの知識をあわせて新しいものは作れるはずですから」


 事実、ロジャーとテンペストはそうしてきた。2つの技術を合わせて新しい力を生み出したのだから、向こうが出来ないと断じるのは早すぎる。


「だよねぇ。でも、多分そのへんの技術は欲しがるだろうけど、あまり要求はされないんじゃないかってハーヴィン候は言ってるよ。戦争に使える技術と言うのは基本的に国の機密事項であって簡単にやり取りできるようなものではなくて……こっちから提供すると言った場合、自分たちの手の内を一つ開かなければならないからだってさ。だから博士が作ってる汚水処理と汚物処理の魔道具に関する情報でも渡そうかって言ってた」

「なるほど、たしかにそうですね。当たり障りのない技術であればいいでしょう」

「ただ、それだけじゃ納得しないかもしれないからってことで、ちょっと性能落とした魔導モーターは出すみたいだね」

「軍事転用可能で今あるものの性能を上げられて、こちらの被害を最小限に留めるという意味ではギリギリのラインでしょう」

「うん。攻撃手段自体を出すわけにもいかないからね」


 かと言ってオルトロスそのままを出すつもりもない。

 ちなみにこちらには見ただけで大体の構造を理解して作ってしまうのが2人ほどいるので、滞在期間が長くなれば長くなるほどこちらが色々と美味しくなるだけだったりする。

 わざと作っていないものもかなり多いのだが、帝国から持ち帰った技術として公開してやることによって関係各所の反発をある程度抑えられる利点があるので帰った時には色々作るつもりで居た。


「とりあえず私達はどう行動すればいいのでしょう?」

「あまり制限は無いみたいだよ。会議中は僕達関係ないしね。食事は出してくれるみたいだから明日の朝食べに行こう」

「ええ。オルトロスは使えるのですか?」

「大丈夫だと思うよ。元々魔導車は少し走ってるし、そのせいか停める場所もある程度あるみたいだよ。魔晶石とか売ってるところもあるみたいだし、行ってみる?」

「ええ。運転は……誰か借りなければなりませんね」

「まあ、そうだね。明日皆を誘ってみようか」


 既に夜が更けてきている。そろそろ眠ったほうが良いだろう。

 一度思いっきり寝ているせいで、あまり眠気はないのだが……ここ最近は移動が続いていたため疲れは溜まっているようだった。


 ベッドに入ったが、今回は2つに分かれている。


「……ニール、一緒に寝ませんか?」

「良いけど……狭くない?」

「問題ありません。ただ、私がニールの近くに居たいだけです。駄目ですか?」

「そんな、駄目じゃないよむしろ嬉しいくらい」


 テンペストがニールのベッドへと入っていく。

 いつもよりも狭い場所に2人はピッタリと密着する。


「……やっぱり、安心します」

「そうなの?」

「ニールになら、心も身体も預けても心配ない、受け止めてもらえる……という感じでしょうか。近くに居るととても安らぎを感じます」

「それは……男としてとっても嬉しい言葉だよ。好きな人にそう言ってもらえるだなんて」


 実際嬉しい。

 風呂でも言ってもらえたけど素面の時に言われるとやっぱり頼られてる感じがしていいのだ。

 あの風呂場での出来事以降、テンペストに関してのああいうイベントに対してある程度の耐性がついたというのも地味に嬉しい誤算だろう。

 ついに、煩悩を意識的に捨て去ることが出来るようになったのだ。

裸の付き合いを通してやっとで免疫ができたもよう


テンペストは酔うと元々の身体の持ち主の子供っぽいところが強く出ます。

子供が親などに甘えるのは普通のことですね。

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