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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第四章 カウース大陸編
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第百十話 帝都プロヴィル

 夕方になる前に宿場町に戻ってきたテンペスト達だったが、町の門で帝国兵士に止められた。

 何をしに出ていったのか、何をしてきたのか、しつこく聞いてくる。


「だーかーらー!暇だからこの辺の魔物はどんなのが出るのかと思ってちょっと狩ってきただけだろうが!」


 そう言って逆ギレしているのはコリーだ。

 この問答も何回目だろうか。

 そしてグランドラパルーを出しても納得してくれない。

 理由は傷がなさすぎるから、だそうだがこちらの力を見てもまだそれを言われるのかと呆れてくる。


「これを狩るのは罠を仕掛けて眠らせてから一斉に攻撃するのが普通だ!それを魔法で仕留めただの殴りつけただの!ふざけてるのか!」

『事実なんだから仕方あるまい。さほど強い魔物ではないだろうに何をそこまで……』

「グランドラパルーは6人編成のパーティー、もしくはそれ以上で討伐するのが基本だ。子供二人連れて実質4人でどうやって討伐するというのだ?これだって死んでいたものを回収したのだろう?」

「ねえ……僕もういい加減疲れてきたんだけど」


 あのグランドラパルーという魔物。実際4頭狩ったのだがそれを伝えたら余計に火に油を注ぐ結果になりそうだ。

 意外と強い魔物なのだろうかと思ったが、6人で罠にかけてからと言うのは単純に安全策を取っているだけだろう。別に正面から喧嘩売ったところで勝てるならそれで良いのだ。

 倒すだけなら。

 安全策を取って討伐するのは商品価値を下げないためなのだろうが、恐らくこの部隊長はそういうハンターの基礎知識を知らないのだろう。


「……もう結構です。面倒くさいので実際に目の前で狩って差し上げましょう」

「何を言っている!まだ質問が……」

「質問が残っていると言いながら同じ事の繰り返しで既に2時間経過しています。時間の無駄ですので私達のやり方を見せてあげるのが早いでしょう。ギアズ、彼を拘束して下さい。連れて行きます。共に行きたいという者は来ればいいでしょう」


 テンペストのその一言ですべてが決定した。

 ギアズが部隊長を羽交い締めにして動きを封じ、オルトロスへと突っ込む。

 傍から見ると軽く押さえられているようにしか見えないのに、部隊長が激しく暴れても全くその拘束は外れない。

 危害を加えるつもりかと勘違いした兵士たちに囲まれたものの、先程の事を説明して今から狩りに行くから本当かどうか知りたい人は付いてこいという少女の鋭い視線に反撃の機会を失い、鳥に乗ってついてくる結果となった。


 現場に到着すると、丁度1匹居たので標的とする。


「そこで見ているといいでしょう」

「ギアズ、とりあえずそいつは兵士の方に返してやってくれ。……ただし、我々を攻撃しようとするのならまずは見てからにするんだ。勝てると思うなら来ればいい」

「何を……!!」

「テンペスト、やっちゃって」

「了解しました」


 一撃で分かりやすく……ということでテンペストが選んだのは……レーザーだった。

 可視光線も使って光の帯を描き出したそれは、テンペストの手の動きに合わせてあたかも長大な剣のように振る舞う。

 光が届く範囲全てを切り裂き、グランドラパルーは何が起きたかもわからない内に首を落とされるのだった。

 地面には一筋の深い溝が出来ており中は少し赤く、そしてまだ熱い。


 あっという間の出来事に兵士たちも声が出ない。


「これ以外にも色々と方法はありますが、一番わかりやすであろう物を選びました。反論は?」


 静かな怒りを込めたテンペストの金色の瞳は部隊長を射抜く。

 ビクっと体を震わせて睨み返していたが、完全に負けていた。


「そのグランドラパルーは差し上げましょう。気が済むまで検分するといいです。これで証明はできました、食肉として扱われているという事だったので、これからのことも考えて確保しただけでうるさく言われるのは心外です。……子供に負ける気分はいかがですか?部隊長。私の地位は実力で取ったと聞いていたはずです。これ以降、私のことを子供のくせになどという偏見で見るのであれば、皆の前で決闘をお受けしましょう。誰がどう見ても正々堂々と、あなたが地面に沈む所をみせてあげます」


 今回の取り調べと、あまりにも自分を軽んじた扱いにテンペストは怒っていた。

 見た目には分かりにくかったのでニールでさえも今この時点まで気付いていなかった。

 テンペストがここまで直接的に相手をこき下ろしたりすることは無い。

 あまりにも子供のくせに口を出すな、だとか、ガキが、とかと暴言を吐かれついに我慢の限界が来ていたようだ。

 サイモンもテンペストのことだから、上手く聞き流しているのだろうと思っていた位に、その感情を押し込めながら。


「貴様あぁぁ!」


 その売り言葉に沸点が低い部隊長が食いつき、ヘルムを地面に投げつけて怒りを露わにし……。

 慌てて兵士たちがその身体を止めようと手を伸ばしたところで、破裂音と付近の地面が突然弾け土煙が舞った。


「……私はテンペスト・ドレイク。ハイランド王国カストラ男爵の地位にあります。これ以上の無礼は許しません。今のは警告です、次はないと思いなさい」


 ガイン……と音を立てて落ちてきたのは先程部隊長が投げたヘルムだ。

 頭頂部から後頭部を守る部分に大きな穴が空き、破裂した空き缶のような無残な形になっている。

 誰もが何も認識しなかった一瞬で行われた正確無比な攻撃。

 その攻撃は今自分たちが着ている鎧が全く役に立たないことを証明していた。


「帰りましょう」

「あ、ああ……」

「……こんな怒ってるテンペスト、初めて見た……」

「ニール、お前絶対怒らせるなよ。死ぬぞマジで」


 皆がオルトロスへと入っていく中、ギアズがひしゃげたヘルムを持って部隊長のところへと向かった。

 何をするつもりだろうと見ていれば……。突然そのヘルムを両手で潰し、折りたたんで圧縮してみせたのだった。


『子供と戦うのが嫌なら儂が相手をしてやってもいいぞ?』


 手のひらサイズに小さく紙を丸めたかのように圧縮されたヘルムを手渡しながら部隊長に囁く。

 それに対して唖然としている部隊長以外の全員が一斉に首を横に振るのだった。


 □□□□□□


「……少々、大人気なかったです」

「いやぁ……あれは怒って当然だよ。むしろ全然気にしてない風だったから大丈夫かと思ってた。ごめんねテンペスト」

「これが交渉の悪い方に足を引っ張らなければ良いのですが」

「いや、向こうがこちらの地位を明確にしているのに失礼すぎる。流石にあそこまで酷いとその場で切り捨てられても文句を言えない位だ。それを寸止めだけで終わらせたテンペストはむしろ優しい方だろう。気にすることはない。一応大臣達の方にも私から話をしておくから安心すると良い」


 見たこともない魔物の魔晶石とその素材は、自分たちの益にもなる物だ。

 その行為が「必要な事」であると主張しても特に問題はない。事実この国を調べるという点では必要な行動だったと見なしてもらえるだろう。


『ま、向こうも儂らにはもうちょっかいをかけようとは思わなくなっただろう。あんな安物のヘルムも丸めてやれて面白かったわ』

「いや……あれはあれで結構良いもの使っていたはずだがね」

「ええ。あれは魔法金属ではないものの、下っ端の兵士が使うものとしては上等品の物ですよ。普通ならあんな風に曲がるような代物ではありません……多分、私も出来ますが……」


 ただしサイラスは全身強化されているわけではない。

 義肢と生身の継ぎ手の部分はどうしても弱いのだ。

 やるとしたら片手でやるくらいだろうが、両手を使うと恐らく肩にかなりの負荷がかかる。


「でも、流石にあれは面白かったよギアズ」

「ええ、少し私もスッキリしました。感謝しますよ、ギアズ」

『決闘を申し込むバカが居たら儂が相手をしてやろう。この身体を傷つけられるとも思えんが』


 どっと疲れが出てきた一行だったが、メイ達従者チームが早速グランドラパルーを調理してくれている。その香ばしく食欲をそそる匂いが漂ってくると、誰ともなく腹がなるのだった。


「まずは試食ということで、塩胡椒のみで軽く味付けしたものです」

「見た目は……牛とか羊とかに似てるか」

「ん、意外と歯ごたえがあるな」

「獣臭さは……あまり気になりませんね。味は意外とあっさりしていますが、しっかりとした後味があります。悪くない」

「赤身の部分だしね。煮込んだのも食べてみたいなぁ」


 筋肉質な部分を選んで食べてみると、癖は少し有るものの変な後味が有るわけではなく、それでいてあっさりと食べられるのでフルーツ系のソースと合わせたり、シチューに入れたりするとよさそうだった。


「ではこちらがサシのたっぷりはいった高級部位です」

「うわ、柔らかい!肉汁すんごい!」

「高級肉には劣るものの、調理次第ではなかなか化けそうだ。少々脂がくどいか……」

「一般庶民が食べれるレベルの肉としては上等だろう。もう少し脂を落として食ったら丁度いいかもな」

「1頭があの大きさですから、ある程度安く買えてこの味であれば文句はないでしょう。サイモンの言うように本当の高級肉からすれば大分劣りますが、十分美味しいといえます」


 少々クドかった。飛竜肉とくらべているのが悪いのかもしれないが、風味と脂の味が大分落ちる。

 恐らく煌のマスターならばこの肉でもかなりの料理に仕上げてくるだろうが。

 とは言え、これも脂身を落として、焼く時にもなるべく脂を出してやればそれなりのものになりそうだった。


 町の精肉店に売った時にはそれなりの値段で売れたし、意外といい獲物なのだろう。

 ちなみに、その時に聞いてみたらハンター達はあれを持ち運ぶ方に苦労していると言っていたので、やはりそこまで強いわけではないようだ。

 兵士たちは魔物との戦いよりも、どちらかと言うと対人の方が多いのかもしれない。

 ハンターとしての知識が全くと言ってなさすぎる。


 その後、適切な調理で振る舞ってもらったグランドラパルーのステーキやシチューはとても美味しかった。

 脂が多いのを利用して、軽く揚がるように仕上げると面白い食感となるのも良い。


 □□□□□□


 翌日。流石に昨日のことがあったからだろうが、兵士たちがピリピリしている。

 だがテンペスト達を見かけると突然狼狽え始めるのが滑稽だ。


 兵士中にあの時の話が広まったのだろう。

 あからさまにテンペスト達が通ると人が割れていく。

 昨日の騒ぎを知らないものはなんだなんだと騒いでいるが、知っているものはあいつらに関わるななどと色々言っているようだ。


 また、大臣達から小言を受けたのだろう。部隊長も微妙にやつれて見える。

 ちなみに代わりのヘルムは無かったようで装備していない。

 視界が広くなって周りがよく見えることだろう。


 いつも通りに最後尾で殿を務めることにして、出発した。


「流石に絡んでこなかったね」

「怒り……ええ、強い怒りを感じました。間違いなく怒りという感情だったはずです。子供の身体であることは事実ですが、だからと言ってあそこまで言われる筋合いはありません」

「見たこと無いくらい怒ってたもんね。あの部隊長、別に何か爵位とか有るわけでもないんだってさ。よくそれでテンペストをあそこまで貶められたものだと思うよ……」

「もう、次はありません。顔を見なくて済むならそれで良いですが」


 その後はしばらく何事もなく大きな街の近くまで来た。

 少々殺風景な感じだが、一応古い壁が立っているのでそれなりの頑丈さは有るのだろう。


「うわ……何あの木……」

「首吊り死体……ですね。罪人でしょうか」


 メイとニーナは目をつぶっている。

 大きな枯れ木に首を吊られた死体がぶら下がっているのだ。

 明らかに自殺ではない。


「手首が切り落とされたり、足首が無かったりと欠損が見られます」

「手首……は昔ハイランドでも窃盗をやらかした人がやられてた。足首の方は逃げられないようにとかそういうのだと思うけど」

「死体の状態からみても、古いものから新しいものまで有るようです。晒し用の木なのでしょう」

「怖い……」


 下に看板らしきものはあったが距離があったため見れなかった。

 門をくぐると活気のある町並みが……と思ったのだが、人が居ない。

 建物は寂れ、崩れた建物も多い。

 ここだけ何かがあったかのようだ。


 帝国兵士たちもこの自体は予想していなかったようで、街の人達に何があったか聞き込みをしている。

 今日はここで一泊する予定だったため、予定が狂ってしまったらしい。

 安全でない状態の所に他国の要人たちを泊めるわけにもいかないし、別な場所へと言っても何が起きたのかわからないことには安全を確保できない。


 兵士たちも聞き込みをしているが、こちらもある程度情報を集めることにした。

 他の人達も積極的に動いているようだ。


「そこのあんた。ここで何があったんだ?」

「一昨日の夜だ、魔物の襲撃があったんだ……。グリムオークの奴らが集団で襲ってきた」

『グリムオーク……あの豚面の黒い魔物か?』


 タラスクに襲われていたオークっぽい魔物のことだろう。

 グリムオークと言うらしい。


「ああ、そうだ。奴らは残忍で……特に子供を襲っては食っている。どうにか追っ払うことは出来たが、ここが見つかった上に餌場だと思われてしまってはもう……」

「想像以上にまずいな。領主と兵士はどうした?」

「領主様は分からない。だが兵士たちはなんとか食い止めようと頑張ってくれたんだ。でも魔法使いが居なかった。クランの連中も丁度別な任務で殆ど出かけちまってて……。結局大半が死ぬか怪我をして動けない」


 味をしめたとなればまた襲ってくる可能性が高い。

 だが……。サイモン達はタラスクに襲われていたグリムオークを見ている。


「昨日の昼頃に、この先に有る宿場町の近くでそいつらを見かけた。タラスク……で通じるか?でかいトカゲのような甲羅を持った奴に襲われていたぞ」

「タラスク!?そんなのまで近くに居るのか!隣の宿場町なんてあまり離れていないじゃないか!」

「安心するといい、グリムオークは何匹か逃したがタラスクは私達が倒している。多分そのグリムオークがここを襲ったやつだったのではないか?」

「グリムオークは群れで行動する。多分、そうなんだろう……タラスクは……まあこの人数だったらなんとかなる……のか?そうか、ならしばらくは近くには戻ってこないかもしれない。この街を捨てなくても済むかもしれないな」


 グリムオークは一つの家族のようなもので、大体20~多いときで100近い集団で行動する事が多い。狩りに出るときも集団を分けたりせずにそのまま突っ込んでいく。

 だから集団で動いているグリムオークを見かけたら、大体それが同じ集団である事が多いようだ。

 縄張りがとても広いためかち合えばどちらかが全滅するまで戦うという。


 タラスクに関してはギアズが言っていた以上のことはわからないと思ってよかった。

 ひたすら硬くて知能もあって強い。

 倒すには魔法使いは必須で、それも全員が高いレベルの魔法を行使できなければ足止めにもならないと。

 数に任せてというやり方も有るには有るが、被害者ばかり出てやるだけ無駄だろうと言うことだった。


 やはり基本は罠にかけてその隙に一斉攻撃、というやり方みたいだ。

 軍隊であれば魔法と大砲によってなんとか出来るそうだが、大砲という強力な武器がない状態では基本的には刺激しないようにして逃げるのが一番、というのは共通らしい。


 今話を聞いている人はこちらが大人数だったこともあり、全員で数で押したのだろうと思ったようだが。話をした後は今の話を伝えなければ!とどこかへ消えてしまった。


「人を襲った後でタラスクに襲われたか。グリムオークとやらも運がなかったな」

「ついでに僕達に会っちゃったからね。そういうことだったらあいつらもやっとくべきだったかぁ」

「周辺に魔物の気配は少ないです。一応、安全といえば安全だとは思いますが……この状態では私達を受け入れるだけの余力はないでしょう」


 しばらく中央部で待たされたが、結局街を離れて野宿となった。

 文句がある者も居たようだが、食料事情などで喧嘩になる可能性を考えればこれでよかったと思える。


 この後は寄れる宿場町も何もなく、無人の宿泊所が有るくらいでそこの設備を使って帝都まで来ることが出来たのだった。


 □□□□□□


 遠くから見ても分かる、白亜の壁。

 高さは20m程も有るだろうか、とてつもなく頑丈な作りの壁が地平線に見えている。

 その中央付近には大きく聳える城が見えており、その周りもまた、高い壁で囲われていた。


 帝都プロヴィル。

 少々長旅だったが、ついに到着したのだ。

 前日に片方の火竜が帝都へと向かっていったが、恐らく先触れとしてだろう。

 見えてはいるもののまだまだ数時間はかかる。

 見通しは良いので恐らくはこちらの姿を向こうの監視は既に捉えていることだろう。


 すると、帝都の方からキラキラと何かが光っている。


「発光信号?」

「解読は出来ませんが、この時点で既に何処の者かというのを伝えたのでしょう。恐らくあれに気づかずに侵入すれば向こうでは戦闘準備が整った状態で迎え入れられるということになる可能性があります」


 テンペストの乗っているオルトロスのオクロで高倍率ズームを行う。

 蜃気楼が邪魔で鮮明ではないが、壁の上には兵士たちが何人もいるのが見えている。

 壁の向こう側、小高い丘になって見えている部分に関しては家が連なっているのも。

 全てがポートキャスの何倍という規模で、帝都の周りは綺麗に整理されて治水工事なども行われたあとがあった。


「これほどの範囲を囲うのにどれだけの年月がかかったのやら……」

「ウチの王都は完全に負けたなこりゃぁ」

「面積が段違いですからね。仕方ないでしょう。……それよりも、ここにはあいつがいるはずです」

「英雄様……か」


 サイモン達の方もきちんと正装に着替えて集まっている。

 ギアズは他の私兵達と一緒に別なオルトロスへと移った。

 あくまでも彼は従者として付いて来ている。


 大分時間が経ってようやく近くまで来ると、飛竜が5匹飛んできてその内1匹が行く手を塞ぐようにおりてきた。

 ずっと護衛を務めてきたポートキャスの兵士たちは左右に別れ、敬礼する。

 門が開いて兵士と……魔導車が出てきた。出迎えらしい。

 なんとなく見た記憶のある魔導車のデザインだ、やはりモンク司祭が関わっているのだろう。

 ただし、あの時に見たものに比べると洗練されたデザインに変わっている。

 この国の技術者がふさわしいものにしたに違いない。


 武装は付いていないようだが、こちらへ走ってくる動きを見ると以前のものよりも明らかに馬力が上がっている。

 鳥に乗っている者達が背に担いでいるのは……ライフルだ。

 やはりここで出さなくて正解だったようだ。


 更にその後ろからトライクまで出てきた。

 デザインなどからしてミレスの痕跡はまったくないので、元々こちらで研究されていた乗り物がこれなのだろう。

 3輪自動車に近いかたちの物がポートキャスで動いていたはずだが、向こうのものとはやはり動きが違う。動力を弄ったか。


 部隊長と飛竜から降りてきた兵士が引き継ぎをしているようだ。

 やはり飛竜の兵士は階級が高いらしく、びしっと敬礼を崩さない。

 しかし……ヘルムのことを突っ込まれているようだ。何やら言い訳をしているが……。


「なんかこっちをチラチラ見てるような」

「変なことを吹き込んでいなければ良いのですが」

「……有り得る……。……あっ。中に入るみたいだね」


 先頭がゆっくりと中へと入っていく。

 扉は大きく跳ね上げ式だ。周りは堀になっていてかなり深い。

 案内されるがままに付いていけば、第二の壁……つまり選ばれたものしか入ることが出来ないという壁の内側へと入っていく。


 案内をしてくれた通訳たちや、ポートキャスの護衛達は壁の外へと残された。


「……全然別世界だよ、これ……」


 壁の内側はニールの言う通り、外側の町並みとは何もかもが異なっている。

 全ての家が目が痛くなるほどの白で作られ、道も全てが白を基調とした清潔感あふれる場所だ。

 木等の自然の素材のものには色を塗ったりしていないので、建物などは白と茶のコントラストが上手く組み合わされて一層その美しさに拍車をかけているようにみえる。

 また、話に聞いていたとおりに道を歩く人達も全員が白い服を着ている。


 ある程度自由度は有るようだが、基本は白だ。

 商売をしている人達はそういうわけではないのか、少し模様の入ったものを着ていたりもするが。

 恐らく模様や色でどういう立場の者かをひと目で分かるようにしているのだろう。


 白い水路を流れるのは青く澄んだ水だ。

 下水などではないのは中に入って遊ぶ子どもたちがいる事でも分かる。


 チラホラと白い服を着ている人達の中に、白と灰色を使った服を着た者が居た。

 恐らくあれが信徒と呼ばれる者達なのだろう。

 説明ではこの壁の内側に来て修行をしながら暮らす者達ということだったし、見かける信徒らしき者達は皆子供であることからそう判断した。


 不思議そうな、そして何処か悲しげな表情をしたその目が車列を見送っていた。


テンペストの怒りゲージはまだ4割程度です。

まだまだ理性を保っていられるレベルw


そしてついにプロヴィルへ。

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