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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第四章 カウース大陸編
112/188

幕間 コンラッド

 全く記憶に無いが、あの日青白い光とともにワイバーンごとその光に飲み込まれて……随分と暗いところを漂っていたような気がする。

 気がするというだけでその間の記憶はまったくない。


 次に気がついた時には、突然倉庫のような所に居た。

 それも随分と高い位置で。


 当然、びっくりして体を動かしたら今度は色々とおかしい事に気がついた。

 慌てて手を振り回した時に、その手が何か別なものに見えたのだった。

 気を落ち着けて見てみると、どう見てもロボットの手だった。

 その手の大きさは床にある物と比べてみると大きく、それがまた混乱を引き起こす。


 そこに自分を呼ぶ声が聞こえて、その声の主を見て、驚いた。

 自分が思い描いていたパートナー。人工知能である戦闘支援プログラムと対話する時、人間だったらどういう姿だろうな?と考えてそれをテンペストに伝えたあの見た目を若返らせて子供にしたらこういう感じだろう、という姿。


 更に自分のことをテンペストと名乗り、識別番号と俺の名前を言う。


 あいつが人間になって、俺はロボットになった。

 その事実を突きつけられてまた少々混乱した。


 ……なんやかんやあって、今俺はどう見てもガキにしか見えないリヴェリのロジャーというやつのもとで働かせられている。


「コンラッド。休まないで働いてくれよ、その身体は疲れを知らないはずだよ」

『ああ……。本当にお前俺より歳上なんだよな?』

「前にも言っただろうに……。ボクは300を超えてるよ。人族からすれば長寿どころではないみたいだけどボク達リヴェリやエルフ、ドワーフなんかはそれが普通なんだ。まだ夢を見ていると思っているのかい?現実だよ、そろそろ受け入れなよ。そう言う意味ではテンペストは吸収が早くて助かったよ?」

『分かった、分かったよ……。だがな、起きてみたら突然ロボットになってて、今はアンドロイドだぞ?!その衝撃の大きさがお前に分かるのか!?』


 そう、今の俺はアンドロイド……と言って良いのかわからないが、妙に発達した科学によって作られた人型の物だ。

 皮膚なども擬似的にではあるが張り付けられていて、正直本物の皮膚にしか見えない。

 顔も生前の顔を復元してもらった。一番馴染みがあるからな。


 生前。……どうやらあの爆発で俺は一度死んでいる。

 だがなぜか分からないがこちらの世界でも1年という長い期間を経て、突然復活したという。

 原因なんて分かるわけもなく、まあ助かったんなら良いんじゃないのか?ということでテンペストが開いたという研究室に連れてこられたというわけだ。


「全く、なんか動いていないと頭の中がごちゃごちゃする!とか言って無理やり仕事させろって言ってきたと思ったらサボるとは……。ロボットだかアンドロイドだか知らないけど、その身体だってテンペストが基礎を作ったんだ。元の生身の肉体に比べたら段違いの性能なんだからむしろありがたいと思ってよ」

『あ、いや、スマン……。はぁぁ……。うん、俺は異世界に転移……転生?してきた。で、そこで元AIのはずのテンペストが人の身体を手に入れいていて、なんかどっか行った!俺はこっちに飛ばされて研究室の手伝い!納得した!』

「まあ、良いけどね。納得ついでに君にはやってもらわなければならない事が有るんだけど。聞くだけ聞く?」


 この期に及んで俺が解剖されるということはないはずだ。

 だってここで作ったやつだしな。

 聞かなきゃわからないわけだからとりあえず聞いてみる。


「まあ、テンペストが……ああ、コンラッドも乗ってたんだっけか。ワイバーンっていう戦闘機。アレをもう一機作りたいんだ。その為のパイロットがほしい。君なら適任だろ?」

『えーっと、なんかあの黒くてやたらカッコイイやつのことか?』

「いや、試作機の方だね。以前、作ったは良いけど制御できずに落ちかけてテンペストに怒られたやつだよ。まあ、外観はほぼ同じだけどね」


 マギア・ワイバーンをもう1機造ってこっそり飛ばしてみようとして失敗したものだ。

 戒めとしてそのまま飾ってあったのだが、ここに来てレビテーションという便利な力を手に入れたため制御をミスっても墜落までは行かないとして、もう一度復活させてみたらどうかという案がでていた。


 制御を担当する頭脳となるコンピューターは今だ実験段階ではあるものの、ワイバーンの機体は大きく、余剰スペースはたっぷりとあるのだ。更に、上昇とサブを兼ねた第3のエンジンを取り払えばそこもスペースとなる。


 コンラッドを連れて作業場へと行くと、そこには装飾などが施されていない金属の色むき出しのワイバーン2号機が鎮座している。

 第3魔導エンジンを取り払い、そこの可動機構などを削って埋めている作業中だ。


『……近くで見ると、凄いなこれは……元のワイバーンでは考えられない形状をしている』

「あぁ……まあそれはこっちの職人たちが暴走した結果だね……。ああ見えてものすごく頑丈だから壊れたりしないよ」

『で、俺がこれを飛ばせってことか?悪いが俺だって補助なしじゃ戦闘機なんて操縦出来ないぞ?テンペストのニューロコンピュータはどうしたんだ?』

「あれはマギア・ワイバーンに入ってるよ。魔力を電源に接続して供給しているんだ。その、コンピュータとやらを再現しようと頑張っているんだけどなかなか難しくてね。簡単な姿勢制御とかの仕組みをサイラス博士が頑張ってくれたからそれを動かせるだけの大きさがあれば……後は学習させていくだけだよ」

『……学習、だと?』


 コンピュータと言っても、要するに中身はゴーレムのそれだ。反応速度と実行速度を上げまくり計算に特化させたそれは一塊の中に何千万というゴーレムがひしめいているに等しい。

 それが全て一つで管理されている。分散処理によって大量のデータを並行処理することが出来て尚且つ魔力があればあるだけ実行速度が上がる。


 その一塊を複数使って無理やり動かしてみるのがこの実験だ。


 何度も何度も最適化を繰り返し、適切な解を求められるようにしていく。

 学習させてある程度のパターンを認識させるということだ。完璧ではないが、それなりに有効になるだろうというのがサイラスの狙いだ。なにせ魔法によってある程度のことはどうにでもなってしまう世界なのだから、完璧でなくても良い。

 残りは風の魔晶石の力によって無理やり整流すると言うことだった。


『その、学習をさせるのが俺か。なるほどな……。計器類とかはどうなってるんだ?』

「テンペストの意見とサイラス博士の意見を取り入れて居るけど、元のものとは全く違うのは確かだよ。覚えてもらわないとどうしようもないかな。……はい、操作説明書」

『……意外とページ少ないな』

「そうなの?ああでも確かにテンペストもチェック項目が殆ど消えて楽になったと言っていたなぁ」


 大半の細かいチェックが必要な項目はほぼ消えている。

 燃料系統、電気系統に関しては全て無くなっているのだから当然として、動作に関わる部分などに関しては機体の方で勝手に自己診断が可能なのだ。

 傷などもまず付くことはなく、今なら最悪翼がもげようとも浮いていることなら出来る。


 なので操作説明書も大体がコクピット内部での操作だ。


「……実際に乗り込んでみる?」

『良いのか?その方が確かに助かるが』

「じゃないと分かりにくいでしょ?ゴーレム達が乗ってないから見たままのものしか映し出されないし、操作も出来ないけどね。発光はするし外も見えるようにはなってるから雰囲気掴むと良いよ」


 言われてコクピットへと入ることにする。


 ……まさかコクピットがそのままおりてくるとは思わなかった。

 しかも入ったら完全に外界とは断絶される。


『……暗いんだが』


 カバーが閉じると完全に暗闇となる。

 状態を示すLEDの様な光すら無く完全な闇だ。


「それは電気じゃなくて魔力を使って始動する様になっているんだ。座席横にあるカバーを開いてそこに有る丸い印に指を置いてみてよ。今は誰でも動かせるようになってるから」

『あー……これか?』


 邪魔にならない所にあったカバーを開き、そこに彫り込まれた印を触る。

 すると先程まで何の光も灯っていなかったコクピットが一変する。


『なっ……何だ、これは……』


 次々と外の様子が映し出されていき、それらが違和感なく補正されていく。

 自分を取り囲むように表示されたそれは、地球では再現できなかった全方位ディスプレイだ。

 操縦のための装置は透過していないものの、ほぼ死角がなくなっている。


「どう?結構自信あるんだよそれ。もちろんマギア・ワイバーンにも同じものが搭載されてるよ。詳しい仕組みとかはまあ後にすることにして……コンラッド、君がこれを操縦するのに最適な理由が一つ有るんだ」

『この身体か?』

「そう!正直、このワイバーンを飛ばすには人族には対応できない程の負荷がかかるんだよ。克服できるのは身体強化を使わずとも最初から強靭な肉体を持っている獣人位のものでね」

『待て、この機体どんな性能しているんだ!』

「テンペストが言うにはテストした時に時速4000Km超えたってさ。まだ余力は有るって言う話だったけども十分すぎるってことでそこで止めてるみたいだよ。機体は高温に耐えられる魔法金属製。魔力が通っている限りはどんな無茶をしても機体が崩壊することはないよ」


 ロジャーの返答を聞いて頭が痛くなる。

 そもそも戦闘機の速度が抑えられている理由の一つに、断熱圧縮による高温で機体が溶けるという問題が有るが、それを魔法金属とやらで克服しているようだ。多分ミスリルとかそういうやつだろう。

 もう一つはパイロットの限界だ。加速すればGがかかる。旋回時なんて自分の意識を保つだけでいっぱいいっぱいだと言うのに、その限界をあっさり超えるような速度を出せるという。


 テンペストは……あいつは子供の姿だったはずだ。

 そんなもんに乗ったら首の骨折れて死ぬに決まってる。


『そんなまともに動かせねぇもん造ってんじゃねぇよ……パイロット死ぬぞ……テンペストはどうやってそんな環境で耐えてるんだ?』

「テンペストは人の肉体を置いて、マギア・ワイバーンと一体化出来るからね。テンペストだけで操作させると狂ってるとしか思えない挙動するよ?」


 特にレビテーションを手に入れてからは酷い。

 垂直離陸直後に、レビテーションによる水平移動と魔導エンジンによる加速を使って一瞬で音速を超え、そのままほぼ90度上に向かって垂直上昇からの小半径旋回。空中ドリフトと言ってもいいほどの機体の滑り具合だ。速度は保ったままという鬼のような機動を見せた。

 一応、機体の強度テストでも有ったが、大体何しても壊れないだろうという結論に達したのだった。


 当然アレの中にコリーが居たら即死だ。

 地上でその様子を見ていたコリーがげんなりした表情を見せていたのが面白かったとロジャーは言う。


『面白かったで済むことかよ!そんな危ないもんよく制御出来るなテンペストは……』

「流石にこの機体の方では、生身のパイロットを乗せても問題ないようにするためのテストを兼ねてるから、あれはもう特別扱いだよ。まあ、そういうわけだから人族でも耐えられる程度の負荷とかはよく知ってるでしょ?その辺の判断をお願いしたいんだよ。それを踏まえて調節していくからさ」

『ああ、なるほどな。そういう事なら。ちょっと不安だが……』


 試験機の上にまともに飛べるようになるまで操縦しろ、というのだからかなり厳しいものでは有るが、今の身体と、これに使われている魔法の技術とやらで色々と安全は担保されているということだろう。


 コクピットから出てきた後、素朴な疑問が浮かぶ。


『ところでさっきから魔力がとか魔法がとか言ってるわけだが……俺はそんなもの使えないぞ?……使えるようになるのか?というかあんたは使えるのか?』

「使えるはずだけどね。魔力を持ってなければそもそもあれは起動しないし。もちろんボクも使えるよ。それにサイラスも、テンペストもね。付いてくると良いよ」


 あいつらも使えるだと……。

 ということはゲームとかであったあんなこととかも出来る様になる……とか?

 いやいやもしかしたらものすごく詠唱とかダサいかもしれない。


 などと考えていたら広い場所へとたどり着いた。

 魔導騎兵や魔法を試す時に使う試験場という事だが……。魔導騎兵と言うのは俺が最初に突っ込まれていたヤツのことだろう。

 後で見せてもらったがあれはテンペスト専用の機体で、他のものよりもゴツかった。

 普通のものを見せてもらったが……なんというかこう、ロマンあふれるスタイルだ。サイラスが絡んでいるということなのであいつは分かっていると思う。

 仲良くなれそうだ。


「さて……魔法だけど……。まあ分かりやすい方が良いよね」


 そういうとロジャーは何処から取り出したのか杖を掲げ、何やらブツブツと言ったかと思うとその杖の先端から光の矢が飛び出した。

 それらが標的へと向かっていき狙い違わず全てに着弾する。


『うおお……魔法だ……本物かよ……!』

「本物だよ。で、もっと派手なのもあるけど……此処から先は自分で習得するといいよ。サイラス博士が言うには君達の世界にあるゲームの魔法を再現できるって言ってたから。実際見せてもらったけど……ボク達の常識じゃ考えられないものだったね」

『マジか!どうやって覚えればいい!?』


 ロジャーの肩を掴んで迫るコンラッドにドン引きするロジャー。

 なにせ顔が怖い。

 コンラッドの顔は、確かに精巧に作られておりぱっと見では普通の人間と変わらないのだが……表情筋が無いといえば分かるだろう。口は動いているし瞬きもしているが、それ以外の表情が全くない。

 笑えば無表情で笑い声だけが聞こえるような状態だ。


 今も早く教えてくれ!と揺さぶってくるコンラッドの表情は無く、ただ言葉だけが焦っている。

 怖い。

 早急に表情を何とかしなければ、という思いがロジャーの中にこみ上げてきたのだった。


「真顔で迫られるとめっちゃくちゃ怖いんだけど!離れてくれない!?」

『わ、分かった……』


 割りと本気で怒られた。

 ともかく、知りたいなら教えるしそれ以前にこの世界のことなどを色々知っておく必要も有るだろう、ということで学校に入ったらどうかと提案された。


『学校……って……俺そんな年でもないぞ』

「年は関係ないよ。むしろ子供のほうが少ないから安心して。それに魔法だけでなく戦い方とかも色々と教えているんだ。テンペストが作った地下学園だよ」

『はっ?あいつが学校を作った……?』

「魔法の効率のいい使い方とかを教えるためにね。その辺も色々と教えてもらえばいい。……まずは顔を何とかしないとね……」


 学園に行っても流石にここまで不自然な表情ではすぐにバレる。

 というか怪しまれる。まず間違いなくコンラッドの周りには人が居なくなるだろう、とロジャーは思っている。

 いっそギアズの様に仮面にしたいところだが、学園という場所でそれは顔を隠す行為ということで本人確認できないということもあって却下された。


 となると結局は学園に行かせる前にコンラッドの顔のアップグレードをしなければならないのだが……なかなか難しい。


『なら食えるようにしてくれ』

「あ、それは無理」


 コンラッドの切実な欲求は即答で切り捨てる。

 そもそも食事をせずとも魔力によって動いているのだから意味がない。

 それに食事をするとなると、味覚を用意しなければならないだろう。視覚、聴覚、触覚に関してはまだいいが……嗅覚と味覚に関しては難しいのだ。

 食って排泄するというところまでになると、それだったら最初から生身の肉体を作ろう、ということになる。


 が、それもテンペストのように元々人格がすでにある人間を用意しなければならないため不可だ。

 人工的に生命体を生み出すという試みは未だ成功例がない。


 我慢してもらうしか無いのだ。


『欲を言えば未だに俺には性欲ってもんが有るんだが?』

「作れなくはないと思うけど……子供は作れないし射精は無理だし、そもそも気持ちいいかどうかもわからないけどね」

『くそ……3大欲求の2つを封じるとかお前ら鬼かよ!』

「まあ、集団生活する中で見た目だけでも無いと不自然極まりないからくっつけとくよ……」

『……おう……。なんというか……悲しくなってきたぞ』


 □□□□□□


 とりあえず住む場所を、ということで学園寮が割り当てられた。

 正直な所以前の俺の家よりもグレードが高い。

 ベッドは心地よい反発を持ってるし、寝心地が良い。

 照明なんて部屋全体が光ってるんじゃないかと思うほどだ。影もあまり出来ないようで使いやすい。

 これで電気を使っているわけじゃないというのが信じられない。


 キッチンはガス式……と思いきやこれも魔石を利用した魔道具というものだそうだ。

 点火は一瞬。タッチパネル操作と同じように使えるので、表面に凹凸が少なくフラットなものになっている。


 シャワー、風呂、トイレ完備。

 ソファに机、椅子もついてる。

 クローゼットは広いし収納もバッチリだ。とおもったらこの収納、見た目以上に物が入るらしい。

 もうなにがなんだかわからない。

 魔法が一般化した世界とはこれほどまでに便利なのか……。


『魔法か……。今の俺は魂だけの存在と言っていたっけか。死んでるんだな、俺』


 それがどうやってかは分からないが、このサイボーグというかアンドロイドというか……そういう物に憑依している感じだ。

 しかしこの身体はさっき言っていたもの以外には不足はない。むしろ元の体よりも高性能だ。


 あの後少しだけこの身体のレクチャーを受けたが、まず何故か暗視が出来る。ズームもある程度出来る。耳は集音可能。多分壁向こうの言葉も聞こえると思う。

 そしてヤバイのが力だ。普通にしている分にはリミッターがかかっていて、通常の人……人族程度の力に抑えられているが、思考が戦闘や何か力がいる行動などになると解除されるらしい。

 つまり物凄い力持ちだ。


 これが意外と馬鹿にならないレベルで、腰をやらかしそうな100kgの重りは片手で持てる。

 頭がおかしい。


 その後兵器開発の場所を見せてもらったわけだが、研究されているのが揃いも揃って地球では大規模な施設が必要だったものばかりだ。

 レールガンやら光学兵器やら……バルカン砲なんてケースレス弾薬だ。水につけたところで湿気ら無いとか軍の開発部聞いたら泣きそうだ。

 薬莢というのは思いの外邪魔な存在だ。火薬を湿気や火気から守る役割と爆発の威力を閉じ込める役割があり、それによって弾丸が勢い良く飛び出していく。

 だが結局のところ薬莢は排出されて残る物だ。


 火薬は燃焼によって消え、弾丸は敵へと向かう。

 薬莢はその場に残り、回収してみれば分かるが意外と重い。

 つまり最初からこの薬莢をなくせばその分軽くなるし、薬莢落ちないから便利!ってことで大昔に開発してみたもののほっとくと湿気って使い物にならなくなるなどの問題が発覚してしまったのだった。


 それの完成形がここにある。

 弾も数種類あって、まさか徹甲焼夷榴弾まであるとは思わなかった。

 何に使うんだと思ったら飛竜と来た。

 やはりモンスターも居るようだ。と言うかドラゴンなんぞが彷徨いている世界とか怖すぎる。

 しかもこの国、ハイランドは高山ということもあってそいつらが結構居るようだ。

 洒落にならない。


 そういう意味でもこの身体は良いものだ。

 後はとにかく武器を使った戦い方を教えてもらいながら、魔法の訓練を始める。

 まあそれも顔を何とかしてからだ。


 色々と面白そうなことになってきているのは確かだ。

 物を食えない身としては厳しいものが有るが……。目の前で何のか知らないがものすごく美味そうなステーキとか食っているのを見て「美味そう」と思わないわけがないだろう。

 それを味わえないんだぞこの口は。

 舌を触っても別に何を感じるわけでもない、ただの飾りだ。

 飲み物すら喉を通らない。


 早めになんとかして欲しい所だ。


 それにしても……少ししか話しをしていないが、AIだったはずのテンペストがあそこまで人間として生活できているのが驚きだった。

 確かに学習能力は高かったが、任務以外のことを言えばすぐに警告するか話を戻すかするようなあいつが……普通に会話をしていた。


 学園も、というよりもこのカストラ領と呼ばれている領地を治めている、というのもAIによって支配されたディストピアっぽいと思ったが、ものすごくまともな統治をしているらしい。

 むしろ黒字経営を続けている時点で異常とまで言われている。


『……そういや、俺金も何も持ってねぇな……テンペスト貸してくれねぇかな?』


 今頃になって無一文であることに気がつくコンラッドだった。

成仏直前にテンペストに引き戻されてしまったコンラッドのお話ですw

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