表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第四章 カウース大陸編
110/188

第百八話 水獣

 部屋に荷物を置いて外に出かける。

 まだ辺りは明るく店などは少ないものの、ある程度は繁盛しているようだ。


「いやぁ、こんなに沢山来てもらえるなんて助かるよ!」

「いつもはそんなに居ないんですか?」

「流石に今日みたいにとは行かないね。団体さんが来ることは少ないから……魔物が寄ってくるからね」


 食事をしているとほくほく顔の店主が話しかけてきた。

 思いがけず沢山の人達が来てくれたおかげで、てんてこ舞いになりながらもかなり嬉しいようだ。

 普段は商人などが多くても十数人程度で来ることが多いそうだ。

 キャラバンを作っているところだと、こういう街で後続を待ちつつ、時間差で出発してあまり大人数にならないようにしているという。

 そういうこともあってか、宿の部屋数は多い。


 あまり通っている人が居ないと思っていた道も、間隔を開けてわざと少人数で通行することで魔物に補足される危険を減らし、それぞれの宿場町を往復しながら護衛をしてくれるクランなどと契約をしながら進む。

 なので人があまり居ないようでいて、意外と道は使われているのだとか。


「ちなみに盗賊みたいなのはいないの?」

「います。魔物よりもたちが悪いんですよ……少人数で行動しているのをいいことに、中規模程度の集団で行動しているのでなかなか対策も取れないようで。命だけはなんとかなるようですが、半分以上は持っていかれるようでたまに真っ青になった商人が来ることもありますよ」

「金目の物とかをごっそり持ってかれたら……そりゃぁ……」

「ええ。討伐隊を組めば先に魔物が寄ってくるしでなかなか対策が進まないのが現状のようです」


 討伐隊はどうしても戦力を持たなければならないので、人数もそれなりに多くなる。

 そうなると魔物がまた寄ってくるという面倒なことになるのだ。

 それを知り尽くしているからこそのギリギリのラインで活動する盗賊団は頭の痛い問題となっているようだ。


「とはいえ、一度襲われるとしばらくは姿を表さないのでまだいいのですけどね」

「え、なんで?」

「そこが彼らの頭のいいところで、被害が続くようなら街から兵士が派遣されますが、散発的なものなので脅威度が低くなっているんです」

「……考えてるなぁ……面倒な奴らだね」

「私達の前に出てくれば即解散させられるのですが」

「この規模を襲うとは思えないもんねぇ。いつ魔物を引き連れてくるか分からないんだし」


 大規模も大規模な移動なのだ、中規模程度の集団は勝ち目がない。

 見つけたとしてもきっと姿を隠して出てくることはないだろう。

 むしろそれよりもあのスワームと呼ばれる魔物が面倒だ。個々はそこまで強くないのは分かっているが集団で襲ってくるというのはやはり危険だ。


 店主の話だと、スワームと呼ばれているのは集団で襲ってくる魔物の総称らしく、他にも数種類居るようだ。どれもが昆虫と爬虫類を混ぜたような姿をしており、捕まれば寄ってたかってなぶり殺しになるだろうということだけは共通している。

 ただ、スワームの移動を感知して便乗しようとする大型の魔物も居る時があるらしく、そのときはもう逃げるしか無いのだとか。


「……まあ、大丈夫じゃない?」

「ええ、竜騎士様がいらっしゃってますから、きっと大丈夫でしょう」


 実際はあの程度なら自分たちだけでもなんとかなるよね?という意味だったのだが、店主はこちらの力を知らない。

 とりあえず腹が膨れたところで店から出るとコリーが居た。


「お、テンペストとニールか。飯食ってたのか?」

「ええ。コリーは?」

「ん……いや、ここ最近ずっと発散してなかったからな」

「……、ああ、娼館ですね?」

「お前本当にそういうところは変わんねぇな?」


 この辺の考え方はなかなか変わらないようだ。

 特に悪いことであるとは思っていないため、むしろ犯罪に走るよりは適度に発散するほうがいいとさえ考えている。


「あ、それでしたらニールのことも連れて行ってあげて下さい」

「うぇ!?い、いや僕は良いよ!」

「そんなことはないです。毎朝いつもぼっ……」

「うああああああああああああああああ!!やめて!!ちょっとまって!!待って!!なんで!?」


 顔を真赤にしてニールがテンペストの口をふさぐ。

 コリーに向かってこれは違うんだと必死で言い訳しているが、全てを察したコリーの顔は優しい。


「なんで……」

「帝国についてから暑いのでいつも薄着で寝ているではないですか。なのでたまにはみ出……」

「言わないで!!それ以上は……後生だから!!」

「まあ、なんだ。ニール溜め込み過ぎは良くねぇぞ?理解のある幼妻がこう言ってくれているんだから素直になれ」

「ううう……見られてた……うそ……」


 その後、大きかったのでそんなに恥ずかしがらなくても良いはずです、という言葉によって完全に撃沈したニールをコリーが半ば引きずるようにして連れて行ったのだった。


 実際、テンペストはニールのあの様子を何度も目撃するようになり、流石にこのままではニールの負担が大きすぎるのではないかと心配していたのだった。

 ポートキャスではそういった店は見当たらなかったため、行かせてやれなかったがここではコリーが既にその店を知っているようなのでそのまま任せたというわけだ。

 こういうことは男同士のほうが分かり合えるだろうという心遣いも忘れない。


 □□□□□□


「戻ってきたのですね、スッキリ出来ましたか?」

「……うん。まあ……なんか、ごめん」

「いえ、流石に辛そうだったので。どうにかしてあげられれば良いのですが」

「い、いや!それは駄目!気持ちは嬉しいんだけど、流石にそれはさせられないよ……」

「そうですか、残念です。でもたまにはこうして発散して下さい。まだ、私には早いのであれば尚更ですから」

「ん。ありがと」


 コリーに連れて行かれた先でたっぷりと足腰が立たなくなるまで気持ちよくなったニールは、フラフラになりながら部屋に戻ってきた。

 なんとなくテンペストに悪い気がしてドアを開けたが、出迎えるテンペストはいつもどおりだ。

 というかそもそも送り出したのがテンペストなのだから当然だ。


 むしろ少し安心したような表情をしていることに気がついて、かなり心配させていたことに気がついた。

 自分では今後テンペスト以外とは付き合ったり、関係を持ったりということはしたくない……と思っていたのだけども三大欲求と言うものは大きかった。

 毎朝のアレを見られていたと言うのはかなり気まずいのだけど。

 たまにはみ出しているのを起きた時に気がついたりして、見られてなかったかドキドキしていたのが実は全部把握済みとか大分泣けてくる。


 その辺をしゃべったら、いつもは見られてるのでおあいこですなどと言われて言い返せるわけもなく。


 ニールは結局大ダメージを心に負いながら眠るのだった。

 ちなみに翌朝は無事だった。


 □□□□□□


 翌日の移動も昨日とほぼ同じだ。

 特に変更はなく進んでいく。


 宿場町を出るとまた荒れた道とほとんど手付かずの自然だ。

 だが入れ替わるように商人の大きな馬車が町へ入るのが見えた。


「本当に単独で動くんだね。僕達のところとは大違いだ」

『集団でいると襲ってくる魔物など聞いたことがなかったな。普通は逆なのだが……』

「そうですね。サイモンの言う通り、通常は敵が多い場合は襲ってきません。しかし……あれをみるとスワームは群れで行動する為大量の餌が必要ということなのでしょう」

「だから集団だと余計に襲われやすいのか」

『ま、今度は私達が殿だ。遠慮せずに吹き飛ばしてやろうじゃないか』

「了解しました。……できれば魔晶石を回収したいところですが」


 流石にそんな暇はない。

 出来なくはないかもしれないが、置いて行かれてしまうだろう。

 まあ、移動速度からして特に問題なく追いつけるとは思うが、はぐれてまでやるものでもないだろう。


 そして、眼前には森が広がっていた。

 森の道は狭く、車列は長くなる。

 伸び切った列と言うのは側面からの攻撃に非常に弱くなってしまう。

 その前に敵の接近を感知できなければ危険だ。

 テンペストは広域索敵を開始する。


「元々森の中ということもあって魔物の反応は多いようです」

「しかも今日は野営なんでしょ?森を抜けてからだろうけど、厳しくない?」

「休まる暇はなさそうですね。……大型の魔物が接近中……いえ、帝国の火竜によって沈黙」


 流石に飛竜なだけあって戦闘能力は高い。

 今回はブレスを使わずにその強靭な爪と顎によって敵を粉砕したようだ。

 おかげで周りにあまり気づかれること無く済んでいる。

 ついでに飛竜が上を飛んでいると、弱い魔物は息を潜めるようにして動かなくなる。意外と役に立っていたようだ。


 しかし天候だけはなんとも出来ない。

 無事に森を抜けたところで土砂降りとなった。

 これによって火竜を飛ばすことが出来なくなり、足止めを余儀なくされることとなった。


 テントは張れないので各自馬車や魔導車の中で休むことになる。

 テンペスト達はといえば、サイラスとコリーのオルトロスを寄せて間にサイドオーニングを展開して雨よけにする。


「風が無いだけマシか」

「しかし激しい雨です」

「俺、こんな感じの土砂降り心あたりがあるんだが」

「……流石に……あれはもう無いと思うよ?」


 あの時は周り一面が海のようになってしまったのだった。

 流石に酷い降り方がずっと続くのならばあまり良くないだろうが、あの時の位のものはもう無いと信じたい。

 本来ならトレーラーを出してそちらで休みたいのだが、流石に自分たちだけあれと言うのはまずい。

 立場が上の人達も使っているのであればいいが、他国の上の人達が馬車に居る中で自分たちがオルトロスというのも若干どうだろうと思うところがあるのだから。


「どうせやることもないし、索敵はしておきながら休みますかね」

「賛成。雨の日は魔物もあまりうろつかないからな」

「ではトイレとシャワー、簡易キッチンを設置しておきます」


 手早く設置していく。

 ついでにトイレに入って出てくるとニーナがパンを焼いてくれていた。


「テンペスト様、冷たいジュースです」

「ありがとう」


 雨のせいで湿度が一気に上がり、蒸し暑さが増していく中でこの冷たい飲み物はとても美味しく感じられる。

 出来ればもっと晴れた日が良かったが仕方ない。

 そうこうしている間に雨は激しさを増し、近くに居るルーベルの馬車すらもおぼろげにしか見えないほどにまでなっている。

 地面はとっくに水たまりどころか薄っすらと水がたまった状態で、靴はもう殆ど役割を果たしていない。


「うええ……靴が……」

「これはちょっと予想以上です。オルトロス含め地面を平坦化して硬化させ、少し隆起させます」

「あ、僕も手伝うよ」


 周りから一段高くなり水がたまらなくなった為あるきやすくなった。

 ある程度広範囲を引き上げたので雨が降っていても地面が見える。

 さらにガッチリと固められたのでトイレとシャワーの安定性が増した。


「テンペスト様達の魔法は便利ですよねー」

「とてもカッコイイです」


 ニーナとメイはそれぞれ焼きたてのパンとジュースを配って歩いている。

 激しい轟音とともに雷まで鳴り始め、オルトロスの中へ避難することにした。


 テンペストはこの時間に書類をある程度片付けることにした。

 ニールもその隣で少し手伝う。


「……ニール、地震が起きたようです。かなり大きめだったものの被害は軽微だったようですね」

「まあ、ハイランドの建物って結構頑丈だからね。あの嵐竜が来たり地震があったりするから。地割れとかがけ崩れとかはない?」


 高山にあるハイランドで地震といったら地殻変動か火山性かでも大分異なるだろう。



「無いようです。学園の方も問題なし。滑走路も無事ですし、領内に関しては全く問題はないようです。……ただし、サイラスが言うには火山があるため噴火に注意した方がいいとは言っていましたが」

「あー……でもどうだろ、かなり前にあったみたいだけど最近は全然って言ってたし」


 温泉の出が変わっていないかなど、幾つかチェックするべき項目をサイラスから教えてもらいつつ、返信しておく。

 他にもまた忍び込もうとして捕まった者が数名。

 その他諸々。


 領地の運営に関しては問題ないようだ。

 目を引いたのはドワーフ達に預けたブリアレオスが大活躍してくれているおかげで、山の頂上から均していって平地を作り出している最中だという。

 最終的には浮遊桟橋などでそれぞれを繋げていく計画になっている。

 移動させるのではなく橋を浮かせるという考えにシフトしたようだ。金額的にも相当減っているのでそのまま承認する。


 更にコレットに借りた本を再編集したものを、ルーベルとコーブルク用に数冊分書き上げた。


「……流石に少し疲れました。索敵はそのままリンクしておきますが、少し眠ります」

「うん、お休み。メイ達が後は色々やってくれてるから安心していいよ。っていうか、器用だね……眠りながら魔法使うって」

「何事も慣れです。意外と出来る様になるものですよ」


 蒸し暑さは上がり、流石に不快だったのでオルトロスの空調を付けて、温度と湿度を適度に保っているので今は快適そのものだ。湿気の取れた毛布に包まり夕飯まで仮眠することにした。


 □□□□□□


「テンペスト!戦闘準備!」


 ニールの声で起こされる。

 起きると辺りが暗くなっているのに気がついた。疲れは大分取れているようだ。

 外に出ると独特の蒸し暑さで息苦しい。


「流石にこれだけ盛大に明かりが見えてりゃ見つかるわな」

『スワームとやらではなさそうだな。これはアンデッドも混じっているぞ』

「中型の魔物の気配もありますね。……帝国の兵士たちはまだ気づかないですか……役に立ちませんね」

「私が明かりを打ち上げます。流石にそれで気づくでしょう」


 空に向かってライトを打ち上げる。

 魔力によって光るそれが辺りを煌々と照らし出すと、ゆったりとした足取りでこちらへと迫りくるアンデッドの集団が見えてきた。


「て、敵襲!戦闘準備!!」


 慌てた声が広がりようやく帝国兵士たちが動き出す。

 何故ここまで近づかれるまで気づかなかった!とあの部隊長の声が聞こえる。

 魔法を軽視しているからだろう、とは思うがどうでもいい。


 現在魔物達は全方位から取り囲むようにしてこちらへと接近してきている。

 目視できる範囲では殆どが魔物のアンデッドだ。

 スワームらしきものも多く見られるが、あまり見覚えのない肉の剥がれ落ちた魔物の姿も多い。


「やっぱり見たこと無い魔物だね。火はこの雨じゃ使えないかな」

「雷系もやめたほうが良いでしょう。感電してしまいます」

「水とか氷とかは……危ない!」

「うおっ?!」


 対策を話し合っていたら強力な水流が飛んできた。大半はオルトロスの車体へとぶつかったため殆ど被害はないが、生身で当たったらかなり危険だ。

 その他にもこの蒸し暑い時に大きなつららのようなものが降り注ぎ始める。


 馬車の幌が破けて被害が出始めていた。

 これ以上は危険すぎるのでこちらも悠長なことをやっている前にさっさと終わらせることを選択する。


「サイラス、まずはこの氷をなんとかします。広範囲を同時に攻撃して下さい」

「了解。んー……ではそちらが氷の刃をというのなら、こちらは光の雨でも降らせましょうか」


 そう言って手をかざせば天高くから無数の光が降り注ぐ。

 辺りを一層明るく照らしながら一瞬で地面へと到達すると小規模な爆発が次々と広範囲で起きていった。

 テンペストは地味ながらもストーンバレットによって敵をなぎ倒していく。

 ニールも地面からスパイクを生やしていき、撃ち漏らした敵をサイモン、コリー、ウル、ギアズが切り裂いていく。

 帝国兵士の方も切り込んでいっては魔物を蹴散らしつつ、戦力がある方へと誘導していた。

 ……つまりこちらへ。


「水獣が居るぞ!」


 そう、声を張り上げて騎乗した兵士がこちらへやってくる。

 水獣が何のことは知らなかったが、こちらへ来た兵士はあの色々と教えてくれた人だった。


「水獣は水辺に居る魔物です。普通は沼地や川などからはまず動かないのですが、この雨によってなこちらへ来たようです。気をつけて下さい、水流と氷の矢は奴らの力です」

「なるほど、水獣か。ケルピーとかリザードマン的なやつかな?」

「……いや、あそこに居るでっかい鰐みたいなのじゃない?それにしても気持ち悪い!」


 アンデッドに混じって鰐が確かにそこにいる。

 しかし目は赤く光り輝き時折口を開けてあの水流を吹き出していた。

 100mは離れているはずだが、それでも威力はとんでもない状態のままで到達する水流は、まるでレーザーのようだ。


「テンペスト、彼が引き連れてきてくれたおかげで一気に殲滅できるぞ。奴らの足止めをするからブラストで一気に吹き飛ばしてやってくれ」

「了解しました、サイラス。いつでもどうぞ」

「では……『アイスエイジ』」


 氷河期を意味するその単語ですべてが分かる。ボフっと白い霧が発生したかと思えば、辺り一面が霧に包まれていき車列の周りだけが霧がない状態となった。


「さ、寒い!!」

「な、何があった!?急激に寒く……!」


 兵士たちは大混乱だ。ハイランドの兵達も混乱しているが、今回初めてのお披露目だから仕方ない。

 霧がゆっくりと晴れていくと、そこには真っ白に霜が降り、全てが凍りついた世界が広がっている。

 水獣がなんとか動こうともがくが、大地を埋め尽くしたこの水が凍りついてその足を離さない。


「衝撃に注意して下さい。ブラストを使います」

「ちょっ、全員口を開けて耳をふさげ!!」


 炎などは見えないが、降り続ける雨のおかげでその威力範囲が可視化された。

 爆心地を中心として半球状に広がる衝撃波だ。

 衝撃波によって雨粒は全て吹き飛ばされ、地表で磔になっていた魔物達も凍りついた足を残して綺麗に消えた。

 それが立て続けに4回。

 代償としてテンペストの魔力を殆ど奪っていっただけあり、威力と効果範囲はなかなかの物だ。


 時折、ピュンと音を立てて破片が吹き飛んでいる。

 オルトロスの影に隠れてはいるが、この破片に当たれば普通の人なら即死級だ。

 運悪く当たる人が居ませんようにとニールが祈る。


 大多数を減らされ残りは直接攻撃だけでもなんとかなる程度になった。

 ギアズは魔法を使わずに殴りつけ、コリーとウルは流れるような動作で次々と切り伏せていく。


 そしてサイモンが剣を振るうと不可視の刃が雨を切り裂き大量の魔物達を巻き込んで行く。


「ハーヴィン候が戦ってる所見たことなかったけど……強いね」

「あれは私も初めて見ます」


 コリーが前から本職には敵わねぇ、と漏らしていたことを思い出す。

 あれは謙遜の類だと思っていたが、コリーも魔法を併用しなければこういうことは出来ないだろう。

 剣技であれ程の事が出来ると言うのはどうやれば良いのか。

 よく見ればハイランドの兵士も接近戦になるとそれぞれの技を使用している。


 ギアズの様に殴りつけている者もいるが、彼が殴ると衝撃波が生まれる。

 近くに居るものはそれで体制を崩し、そのままナックルの餌食となっていく。


 棍棒等は人間台風とでも言っていいほどだ。

 振り回しながら敵の中へと突っ込んでいくと、次々と体重の軽い敵がばらばらになって空に打ち上げられていくのだ。


「……あれが本職の力というものですか。理解できかねます」

「正直、僕も初めて見た……え、何あれ。本当に人間なの?意味分かんないんだけど!」

「ですがそれが使えるものの数は多くないようですね。大半はコリーと同程度といったところです。それでもコリーは魔法を使いながらなのでより効率がいいですが」

「ウルも強いね……」


 しばらくして殲滅終了となり、帝国兵士達がまた良いところを見せられずに戦闘が終わってしまった。

 一応、頑張っていた人達はかなり居たのだが、コーブルクとハイランドの私兵達が目立ちまくっていて影が薄い。


 幾つか回収できる魔晶石などを拾い、今回の掃討を終えてシャワーに入るのだった。


どうやらこちらの魔物は爬虫類に何かを混ぜたような姿をしているものが多いようです。


それにしても気温が上がったままで雨が降るとすごく気持ち悪いですよね。

無駄に湿度だけが上がって息苦しくなります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ