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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第四章 カウース大陸編
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第百六話 帝都へ

1日から風邪ひいて寝込んでおりました。

今年は健康でいられるようにと願ったのですが数時間と持ちませんでした。

もうやだ……。

 軍神アーレスの神殿。

 テンペスト達が案内されたそこは、壁の中の本物ではなく幾分か縮小されたというか簡略化されているという市民用のものだ。

 しかしその大きさは想像以上で、巨大な大理石の柱で支えられているそれが3階層。

 上に行くに連れて面積が小さくなっていくように重なっている。


 周りには馬に乗った勇壮な騎士たちの像が置かれ、列をなしていた。

 それはこの神殿の中まで続いており、この列の最奥……そこに巨大な戦車に乗った軍神アーレスの像が堂々と鎮座している。

 今から戦争にでも赴くかのように。


 ハイランドにはここまでの物はないため流石に驚きが隠せない。

 信者たちが列をなして礼拝をし、その列も決して乱れること無く粛々と進められている。


「……正直、ここまでとは思ってなかったよ僕」

「私もだよ。エイダ様の居る神殿の4倍近くはあるぞ……」

「こうして祀られるようになる位、アーレスという神様は人々に浸透しているわけですね。こうやって宗教を大事にしているところは戦争となると……強いですよ」


 自分たちの教義が侵される時、その団結力が段違いなのだ。

 何か一つのものを守ろうとする力はそのまま全員の結束力となり、最終的には殉教者となることも厭わない厄介な相手となる。


 丁度礼拝の時間となったのか、鐘の音が鳴り響き信者たちが一斉にその場に跪く。


「あ、ごめんなさい少し待っていてね。私も今お祈りを済ませるから……」


 コレットも皆と同じようにその場で跪いてアーレス像に向かって祈りを捧げる。


 すると、ざわざわとした感覚と共に床や柱がうっすらと光り輝き始めてアーレス像へと光が移動していく。

 何事かと思ったが像に光が集まっていくとその剣の切っ先へと収束していき、段々にその輝きが強くなり……辺りを真っ白に染め上げるくらいに光り輝いたと思ったら、また普通の状態に戻った。


「な、何だったの今の……目が見えない……」

「テンペスト、今の見ましたか?」

「ええ。魔力の塊ですね、演出の様に見せかけていますがあれは……魔力を一箇所に集めているような感じでした。光が消えた後はそれがどこに消えたかは知りませんが」


 サイラスとテンペストが小声で話をしていると、コレットも祈りを捧げ終えたのかこちらへ向き直り解説を始めた。

 さっきの光は皆の祈りをアーレスに届けるためのもので、剣先からアーレスの元へと祈りが届き叶えてくれるのだとか。

 市民たちにはそれで通っているようだが……魔力の流れが見える人からすれば、それは違うと言うだろう。


「店も魔法関連の品は無かった。そもそも魔力を使った装置は有っても、誰も魔法そのものを使っているものが居ない?」


 そこに魔法という単語を聞きつけたのか、コレットがそばに来ていた。


「魔法?魔法は徳を積んだ人でなければ使ってはいけないと言われてるよ。一般人が手を出した場合、アーレス様の怒りを買うことになるだろうって。でもその代わりに神の番人達は魔道具を作ってくれて、それを使ってとても便利になったんだ」

「私達のところでは魔法は一般的に使われているのですが、ここはそうではないということですか」

「ええ!凄いですね!皆つかえるんですか?……本当に?」

「皆、ではないですが。適性があるので。そう言う意味では確かに下手に手を出した場合には魔力を暴走させて自滅することもあるので間違っては居ないかもしれませんね。……ちなみに魔法を使った場合どうなりますか?」


 サイラスの質問にコレットは少し困った顔をする。

 魔法を扱える人が居ないからわからないけれどと前置きをして……使った場合にはそれが見つかったらまず間違いなく裁判に掛けられるという。

 危険極まりない行為を街なかで行ったという罪と、禁止されていることを破った罪ということでかなり重い量刑となるだろうということだった。


「ただし、帝国民ではないあなた達にはどういう風になるか分からないですね」

「なるほど。その辺は早めに警告してもらえれば助かりますが。注意事項があるなら先にお願いしますよ」

「うーん……じゃぁ、少し待っててくれますか?」


 そう言ってコレットは神殿職員の元へ走っていき、事情を説明し始める。

 相談を受けた人物も走って奥の方へと入っていったので恐らく上の人に確認を取るのだろう。

 しばらくやり取りをしてコレットが戻ってくると、全員に対して注意事項を話し始める。


 今までまともに説明していなかったので今までのことに関しては不問とするとなったのは嬉しい。

 そもそも何かをしていたかと言われればしていなかったわけだが。

 とりあえず武器の使用は禁止。魔法に関しても本来ならば全面禁止だけども、生活に密接に関係しているものもあったりするので攻撃用のものに関しては全面禁止。

 その他規制されたのは気配を消したり姿を消すようなもの、攻撃用ではなくともそれを攻撃に転用すること等など。


 攻撃された場合に関しては速やかに近くに居る兵士を呼び解決することが望ましい……ということだったがある程度は自衛が許された。


 帝国民に比べたら相当優遇された条件となっているが、今後こうして大人数がこちらの国へと来る事が増えることを見越して法改正などが行われる可能性が高いという。

 今までは少数だった上に、帰れなくなった者しか居ないために国民として扱っていたため前例がないようだ。


 やったら駄目なことが分かったところで次の観光地へと向かう。


 次に向かったのは船が停泊したところから少し離れたところにある湾で、湾の中心から陸地に向かって広く建物が並んでいる。


「ここはポートキャスの中でも特にお金持ちの人達の別荘地になっているところで、超が着くほどの高級リゾート地になってるよ。水深が浅くてとっても綺麗な澄んだ海水で満たされたところで、移動はすべて小舟で行けるようになってるよ」

「……まるで昔のベネツィアのようだ……これは美しい」


 サイラスも本でしか見たことがないが、在りし日の水の都であるベネツィアを彷彿とさせる風景だった。残念ながら既に水没しており今は水中都市として観光名所となっているが。

 サンゴ礁の周りの海のように真っ白な砂にエメラルドグリーンがうっすらと見える程度の透き通った海水。そのおかげで船は浮いているようにみえるほど。

 砂州によってほぼ閉じられた湾は波もなく穏やかだ。

 海の中を歩いている人を見ると腰よりも少し上程度の水深のようだ。


 この光景には流石に全員息を呑む。

 こういうところに住んでみたい、という者も多かった。


「このヴェルエール区では唯一水着で外を出歩いてても怒られない場所だよ。周りが水だから普通の服を着ているとすぐに駄目になってしまうからね」


 確かに見る限りでは、出歩いている人達は大体水着を着ている。

 子どもたちに至っては裸で歩いている子も多い。


「許可は得ているのでヴェルエールへ入ろうか。船で移動する分には服のままでも大丈夫だから」


 鳥車が一箇所しか無い道を進むと、大きな門が見える。

 兵士たちがそこに詰めていて監視しているようだ。

 許可がないとこの先には進めず、警備は厳重であるという。その為治安は他の場所に比べてトップクラスに良いという。


 門を抜けるとそこはすぐに桟橋となっていた。沢山の小舟が係留してあり、大きめのものは10人程度が乗れるようだ。

 これも分乗して向かう。


「見て、テンペスト!海の底がこんな綺麗に見える」

「かなり透明度が高いようですね。これは確かに美しいです」

「おや、皆さん言葉が通じるのですね?」


 船を漕いでいる船頭が振り返って言った。

 言葉が通じないと思っていたら普通にこっちの言葉で話し始めたからびっくりしたようだ。

 観光案内をしているだけあって、色々と解説するのが仕事なのに出来ないからどうしようかと思っていたようだが、話が通じるならと解説をしてくれる。


「水路は広いんだね」

「馬車等の代わりに船を使いますからね。ここに住んでいる人達は必ず1人1隻は持っているのですよ。混雑が起きないように広くなっています。朝早くには朝市と言ってこの水路脇にずらりと商売船が並んでいろいろなものを安く売っていたりもしますよ」


 街道もあるにはあるが、向かい側に行く方法は橋をわたるか、海に入るか、船で渡るかの3択だ。

 プールサイドのような状態になっている街道はそこに座って足を海につけている人が居たり、飛び込んでいる子どもたちが居たりと賑やかだ。

 流石に水の街に住んでいるだけあって皆泳ぎは上手い。


 そして周りにある家々はやはり大きい。

 広い庭を持つ所も多く、はっきりと商業区と住宅区は分かれているようだ。

 集合住宅も見えるのでそれなりに人口も多い。


「夜になるともっと綺麗ですよ。街道下には明かりを発するものが仕込まれているので、夜になると海が両脇から照らされて水が光っているようにみえるのです」

「それは……是非とも見てみたいものだが……」


 残念ながらここでは昼食と買い物だけの予定だった。

 代わりに昼間の美しい風景を見ておくに留めることにする。

 やがて大きく開けた場所へと出ると、ラウンドアバウトのように円形の広場になっており、中心には大きな円形の人工的な島が作られている。

 その島には大きなレストランが店を構えており、今回はこの高級レストランでの食事となるようだ。

 もちろん料金は自腹だが払えないくらいの者はここには居ない。


 頼んだのは海鮮パスタ。貝とエビが具になっており、見た目にも鮮やかなものだった。

 なにせ貝の色が目に痛い蛍光色だったりするのだ。蛍光オレンジの貝殻がアクセントどころじゃなく主張している。

 食べてみれば普通に美味いのだが。

 茹でる前は白っぽい色をしていて、砂の中に潜っているとわからないくらいなのだが、何故か茹でるとこんな色になるらしい。謎だ。


 後ピザがあったのでそれも頼む。

 サイラスがやたら喜んでいたので多分好きだったのだろう。

 もっとジャンクなピザがあったら最高とか言ってるが……。どれだけファストフードに毒されていたのだろうか。

 これもふんだんに海の幸が乗っかっている。

 チーズとエビの組み合わせがやたらと美味しくて、皆ばくばく食べていた。


 途中出されたお酒を、ジュースだと思ってテンペストが飲んでしまったアクシデントがあったが、基本的にとても満足出来る食事となった。


「美味しかったぁ……宿のも良かったけど、ここのは本当に採れたてっていうのもあるのかな、味付けて無くても塩味だしそれがまた良いね」

「あまりくどい味付けではなくて、上品に仕上がっていたな。流石に高級な場所だけあって洗練されているようだ」

『……むう……しかしあの貝は何なのだ……美味いのか?本当に?』

「ギアズは食えねぇからな……。ああ見えて意外と美味かったぞ。噛むと歯ごたえがちょっとだけあってすぐにとろっとしたソースに変わる感じだ」


 あの場に居てただ1人食べることが出来ないギアズは、他の人達が美味そうに食っているのを見るしか無かった。

 流石にいきなりニールを乗っ取ることはなかったものの、少々かわいそうではある。

 そのうちなんとかしてやろうとは思うものの、具体的にどうすれば良いのかは検討もつかないのが現状だ。


「それより……テンペストは本当に大丈夫なの?」

「問題ありません。平衡感覚は正常ですので歩行には問題ありません。ただし、反応速度と視覚、聴覚の能力が大幅に低下しています。また、思考能力も4割ほど落ちています。他には血流の増大、心拍上昇などが……」

「駄目だな。目の焦点合ってねぇぞ……。大丈夫とか言いながらふらっふらじゃねぇか」


 どうにも喋っている以上にアルコールにやられているようにしか見えないのだが、本人は正常であるという。完全に酔っ払いの理論となっているのを見て、コリーがおんぶしてやる事にした。

 最初は抵抗していたようだが、結局そのまま眠り始めたのだった。


「……最初の頃に比べるとやっぱりちょっと重くなってるな」

「コリー、それは女の子に言っちゃだめなやつだからね?」

「子供だぞ!?成長してるってことだろうが!」

「たまに忘れそうになりますが、テンペストはまだ子供の身体なんですよねぇ……。私達とも対等に話ができるのでリヴェリと錯覚してしまいますが」


 ここでリヴェリという単語が出る辺り、大分こっちの世界に馴染んでいると思う。

 どう見ても子供だが、自分たちよりも歳上な存在が居ると言うのはなかなかにインパクトがあるのだ。


 くーくーと寝息を立てて眠っているテンペストは年相応の子供にしか見えない。

 そんなテンペストに癒やされつつ、次の場所へと向かう。


 □□□□□□


「……ここは……」

「あ、テンペスト起きた?はい、お水」

「ありがとう……」


 結局あの後全く目を覚まさず、そのまま宿まで戻ってきても眠り続けていた。

 はっきりしない頭で現在の状況を理解しようとするが、まだアルコールが残っているのか頭が回らない。

 ニールにもらった冷たい水を一口飲むと、途端に喉の渇きを覚えて一気に飲み干した。


「……もう一杯欲しい?」

「お願いします」


 すーっと頭がスッキリしていくのを感じる。

 こもったような音が正常に戻り、ピンぼけしていた視界が元に戻る。


「食事を取った後の記憶が曖昧なのですが、私はどうなったのですか?」

「食べた後に出てきたお酒をジュースと間違って一気に飲んじゃったんだよ。その後まともに歩けなかったからコリーがおぶって……そのまま今までずっと寝てたね」

「……そうでしたか。ご迷惑をおかけしました。お酒と言うのは恐ろしいですね」

「いや……ちゃんと変に酔わないように飲めば美味しいけどさ……」

「飲み込んだ時に喉に刺激を感じ、その後正常な思考が妨げられ、感覚もおかしくなりました。あの状態ではまともに戦うことすら出来ません。しかしあの浮遊感や多幸感と言うものでしょうか、あれは何やら面白く感じられました」


 眠りにつくまでの僅かな時間ではあるが、回らない頭のなかでふわふわとした変な感覚があり、それが妙に面白かったのだ。

 アルコールを摂取するとそういう感じになるとは聞いていたものの、実際に体験してみると色々と危うい感じであるのは確かだったが、それでももう一度体験したいと思う程度には楽しかった気がする。


「まぁ……寝る前とか、外を歩かない時なら大丈夫だとは思うけど。でも無理は良くないよ?」

「非常に興味深い体験ではありましたが、意識を失う危険がある以上あまりやりたいとは思いません。まだ私の身体が対応できていないということもあるかと思いますし」

「そだね。甘くて美味しいお酒とかもあるから、ゆっくり慣れるといいと思う」

「そうします。……それにしてもただの冷水なのにとても美味しく感じられます……何故でしょう」

「分かんない。でも気持ちはすっごく分かるよ。お酒飲んで起きた次の日の朝とかに飲むとめっちゃくちゃ美味しいんだよね」


 理屈は分からないものの美味しいものは美味しい。

 これによって頭もスッキリとしたテンペストはベランダへと出る。

 丁度夕焼けの空が見えてとても幻想的な風景だ。

 潮風が当たって火照った身体が冷やされていく。


「そういえば、私が眠っていたあいだの名所はどんな感じでしたか?」

「え?うーん……そうだね、あの後は船に乗って近くの島に行って洞窟の中に入ったよ。海の水がすごくきれいだから太陽の光が入ると水が光って見えてとっても綺麗だった。あの水の街もそんな感じになるんだろうなぁ。後はこのポートキャスで一番高い場所に行っておしまい。明日は帝都に移動するってさ」

「むう……私も見ておきたかったですね。それにしても帝都にですか。案外早かったですね?」

「これは宿に帰ってから伝えられたんで、ホント僕達もさっき知ったんだけどね。歓迎したいということで全員が帝都まで招待されたよ。僕達含めて壁の内側に入って謁見とちょっとしたパーティーだってさ」


 宿に帰ってきた時に、帝都からの連絡が宿に届いていた。

 それをコレットが受け取ってすぐに全員に通達したというわけだ。

 帝都ではやはり基本的に大臣達だけが皇帝と謁見し、別室で色々と話をしながら国交について詰めていくのだろう。

 その他大勢であるテンペスト達に関しては完全に客としてもてなしてくれるという。


 終わった後は壁の外の宿へと移動することになるそうだが、大臣達は終わるまではしばらく城で過ごす。

 胃に穴が空きそうなスケジュールのようだが、頑張って欲しい。


「で、僕達の移動方法だけど、魔導車で行くってさ。馬車と魔導車を使って行かないとちょっと遠いみたい。迎えを寄越すにしても人数が多いってことで、移動手段があるならそれで来て欲しいってさ」

「ここの魔導車もどきはあまり性能がいいとは言えません、恐らくあのモンク司祭も作ってみせたでしょうから純粋に技術が気になるのでしょう。宣伝も兼ねるのであればいいのではないでしょうか」

「そだね。あっちのほうが安全だし 」


 聞いた話では街を出ると魔物の土地であるという。

 街を出てしばらくは大農地が広がっており、更に外の柵を超えるとそこはもう殆ど人の手が入っていない自然となる。

 街道として道は存在するが舗装されているのは一部で、途中からはなかなか整備が進んでいないようだ。


 帝都までは少々時間がかかるそうで鳥車で大体10日程度。途中大きな街とちょっとした宿場町などがいくつかあるという程度だ。

 道中は危険ということで、兵士たちも付いていくそうだ。

 ちなみに町の外では武装が推奨されているので武器の携帯は許可されている。


 ただ一応、オルトロスの武装は使わずに普通に魔法と剣での交戦に留めておこうという方向性は決めておいた。

 こちらの手の内を晒しまくるのもどうかというのが理由だ。

 格納されている間は砲身などは天井にある凹凸にしか見えないため問題ない。


 □□□□□□


 翌朝、一度船へと戻りそれぞれの武器、防具や魔導車、馬車などを用意していく。

 基本的に一番足の遅いものに合わせての進行なので、魔導車のスペックを生かすことは出来ないもののその安全性や快適性という部分ではやはり上だ。


 テンペストも格納庫内で自分たちのオルトロスを準備し、出発する。


 意外と鳥車のペースが早く、馬のほうが遅いという結果が出たのは地味に驚きだった。

 ポートキャスの港を離れ、どんどん内陸の方へと進む。

 やがて家等の建物が少なくなっていきこの街を囲む壁へと到達した。


「……これだけでかい壁作るのに、どれだけ時間かかったんだろね」

「この街を全て囲っているという話ですから……とてつもないところですねホーマ帝国と言うのは。俺達が居たミレスなんてこの街一つよりも小さいんですからね」


 ラウリの言うとおりだが、実際ハイランドもこの街一つより少し大きいくらいじゃないかと思う。

 国としての面積は山を含めれば多いものの、住める場所として使っている面積自体はそこまで大きくはないのだ。


 壁を通り抜けると、兵士たちが待機していた。

 彼らが護衛として付いてくるのだろう。

 そして2組だけだが、とても目立つ存在が居た。


「あれがホーマ帝国の竜騎士……ですか」


 情報収集させる中で何度か名前は聞いていた。

 それがどんなものであるかも含めて。

 本家本元の竜騎士、飛竜を乗りこなした戦士。


 ハイランドを始めとする3カ国では早々に不可能として諦めた技術。

 飛竜を飼いならして騎獣とする……それの完成形があった。


「報告では聞いてたけど……本当に居るんだね」

「あの、テンペスト様、飛竜は決して人に懐かないのでは……」

「少なくともハイランドではそう聞いています。卵からなんとか孵化させたとしても、大きくなるに連れて凶暴性が増していき、最終的には餌として人を認識してしまうと。その為テイマーが何人も死亡する事になり計画自体破棄されたと」

「でも、あれは明らかに飛竜……ですよね。どうやって手なづけたんだ……」


 兵士たちの背後に守り神のように2頭の火竜が居る。

 運転しているラウリはその堂々とした姿に少し恐怖を感じているらしい。

 実際の所このオルトロスの方が戦力的には上だ。


「手なづけ方は不明ですが、共存の道もある、ということは証明できたようですね。もしもまともな方法で出来るのであれば飛竜と共存できればハイランドはこの上なく強化されると思いますが」

「それは確かに……だけどテンペスト散々落としまくったからなぁ」

「あちらが攻撃してくるのが悪いのです」


 兵士たちに両脇を固められ、車列は進み出す。

 ここからしばらくは農村地帯が広がっており、兵士たちも巡回しているがその先はほぼ自然となる。

 そこからは気の抜けない旅となりそうだ。

テンペストを酔わせると寝てる間は好き放題に出来ることが判明した

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