第百四話 港街ポートキャス散策
帝都プロヴィル。
ホーマ帝国で最大の壁が立ちはだかり、その中心には更に頑丈な城壁に囲まれた広大な土地がある。
そこに何があるかと言えば、ホーマ帝国皇帝の居城だ。
白とアーレスの色である赤をアクセントに使った美しい城だ。
城の敷地だけで一つの大きな都市レベルの広さを誇り、庭となっている場所は広大な森をまるまる一つ抱え込んでいるほどだ。
過去何度か行方不明になりかけた者が居るほどだ。
良質の湧き水もあるので、何かがあった場合は籠城も出来るようになっていた。
城の他にも幾つか同じく豪華な建物があり、信徒達を侍らせた皇帝は城から少し離れたとある建物の中で寛いでいた。
そこに所書簡を持った信徒が入ってくる。
恭しく跪きながらそれを頭の上まで上げて皇帝に届ける。
「……ほう、あの男の言う通りになったということか」
書いてある内容は、国家間……大陸間の友好と交易を求めてルーベル、コーブルク、ハイランドの3カ国が面会を求めている事。そしてこちらにはない技術で動く大きな船を持ち、魔導車と呼ばれる英雄が提唱したものと似た技術も持ち込まれている事。しかしそれらの技術が更に上である可能性が高い事……。
船員は船から離れないので除外するとして、使節団としてやってきたのは500人と少々。
現在は港街ポートキャストで領主と代表者とで面会を進めているという事。
若い皇帝はそれを見て笑みを浮かべる。
使節団の中にはどうせディノスを追うものたちが居るのだろう。
ディノスは戦果を上げて謁見に来た時、顔と名前を変えたいと言っていた。
なぜかと聞けば、この技術を持ったことが原因で犯罪者として追われて、命からがら逃げ延びてきたからであるという。
絶海。カウース大陸でそう呼ばれる海域からの脱出者は居ないわけではない。その中心にはやはり大陸があり、一度だけ往復を成し遂げたものが居るとは聞いている。
しかしそれでも生存率は著しく低く、そういう意味でも追っ手は来ることはないだろうと言ったのだが……。
ディノスは自分の研究結果などを奪った者達は、空を飛ぶ兵器等も既に完成させていると言った。
遠からずあの魔の海流すらも克服するだけの船を作るか、空を飛んでここまで到達するだろうとも。
流石にこの時にはまだ信じきれていなかったが……実際に船を造ってここまで来た上に取引を持ちかけて来ているという。
つまりは往復する自身があるのだろう。それも安全に……。
絶海を安全に渡る技術はまだホーマ帝国にすら無い。
こちらにも利益があるのならば受けるしか無いだろう。
一からディノスに研究させるよりも、ある程度出来上がったものを買い上げてそれをこちらで解析してコピーするほうが簡単なのだ。
その上でディノスに改良させればいい。
あの時、顔だけでなく身体も全て別人にさせた判断は間違っていなかった。
こうして別人となった後はどんなに探しても見つかることはない。
こちらで英雄となっている事は知らないはずだ。名前も体つきも全てが英雄としてのそれとなり、昔を思わせるものは一つとしてない。
ディノスがボロを出さなければ問題ないのだ。
あの老人の腕は良い。魔道具がなくとも顔を変えることくらいならば造作もなくやれるだろう。
しかしあの魔道具は……人をすべて変え尽くしてしまう。
人としての種も、身長も体重も瞳の色も全て。
ここまでやったのだ。発見されることはない。要するに彼の持つ技術は今来ている者達以上の物といえるし、オリジナルを造ったのは彼であれば……帝国にもたらす富は大きい。
ちまちまと侵攻してくる隣国を滅ぼし、この大陸全てをホーマ帝国とすることも夢ではない。
守ることは必須だったのだ。
それにしても……どのような船なのだろうか。空を飛ぶ技術とはどんなものなのか。
興味は尽きない。掠め取ったとはいえ、それを発展させて自分のものにするというのであればそれなりに技術力のある国なのだろう。
条件次第では国交を結んで技術交換などが出来れば、周りの国からも有利に立てるはずだ。
「良いだろう。各国の代表者を呼べ、話をしてみたい。他の奴らも帝都まで呼ぶが良い、帝国としても益のあることであれば欲しいからな」
後は任せた、とばかりに服を着せてもらい城へ行く準備をし始めた。
言伝を受け取った信徒はまた何も言わずに一礼して外へ出る。
ディノスさえ隠しておけば問題ない。
後は他の国としていたように話をして、事を進めて国力を付けていくだけだ。
まずはぜひともその航海技術と造船技術がほしい。
聞けば全てが金属で覆われたものであるという。武器のたぐいは見当たらないと言っていたが、魔物がのさばる危険な海域を通らねばここまでは来れないのだ。
何処かにそれに対処するための武器があるだろう。それも欲しい。
そして何よりも、ディノスが話していた飛竜をも屠るという空を飛ぶ何かだ。
是非とも欲しい。
「何としてでも手に入れたいところだが……流石に最初から事を構える必要もあるまい」
ここは様子見といこう。
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テンペスト達は宿を出て近くを散策する。
男性は脛までのボトムに素肌にベストと言う格好をしている者が多い。
暖かい気候ならではというところだろう。
実際、テンペスト達の服装ではこの街の温度は暑かった。
「建物の中はそうでもないけど、やっぱりちょっと暑いよね?」
「そうですね。土産にもなりますし、ここの服を買っても良いかもしれません」
「金どうするよ?」
「換金すればいいだろう。ニールが魔物の素材なんかを持ってきているだろう?」
「あるよ。でも先に宝石類のほうが良くない?」
魔物の素材は沢山あるが、相場が全くわからない。
宝石類なら近くの店でも売っているので、ある程度予測がつく。
換金するなら嘘をつかれにくい方がいいだろう。
宝飾店へ入ると、流石に金持ち達が集まる場所のようだ。かなり質のいいものが揃っている。
見る限り相当細かい模様が彫られている物もあり、加工技術も高いようだ。
持ってきている物と同じ宝石を使った商品を見れば、大体の相場がわかる。
交渉にはサイモンが当たることになった。
「失礼、ここでは宝石の買い取りはしているかな?」
「その格好……あの船の?」
「ああ。良い所だなここは」
「そりゃぁそうさ。偉大な皇帝陛下が統治している国だ。ちゃんと兵士たちが働いてくれるから犯罪だって少ないんだ、特にこの辺はね。見たところ良い身なりをしているようだし、平民街でも治安が悪い所はある、そっちの方には近づかない方がいいだろうね。さて……買い取りだったか。見せてもらえるかな?」
「これだ。我々の国で産出するものだが純度が高く色合いもなかなかの物だ。こっちは今見た所加工しているものが見当たらなかったが……こういうのは無いのか?」
棚の中にあるアクセサリによく使われている物を取り出し、置かれたトレーの上に転がす。
既に加工済みのもので、職人によって綺麗にカットされたそれは光を受けて美しい模様を浮かび上がらせた。
もう一つはテンペストの土地でとれたものだ。魔晶石に似た性質を持つ為アクセサリに埋め込んで緊急用のお守りなどに使用される。
店主は40代程度だろうか恰幅のいいおじさんだ。
ニコニコと人の良さそうな顔をして、ルーペで出されたものを観察している。
見たところかなり目はいいようだ。
「こいつは偽物だな。これ以外は本物だが……確かに良いものだ。お客さん、試したね?まあ良いさ、これくらい見抜けなければこの商売はやっていられないからね。むしろ私の目を証明できたと思っていいかな?」
「ふむ……いや、済まない。こちらとしてもまともなところで取引をしたいからね。信用しよう。それで、幾らになる?」
しばらく考えていたが、店主は紙に見積もりを書いて見せてくれた。
500万リオ。同じ物がハイランドでは250万ラピスなので換算するにも計算しやすそうだ。
「で、こっちの方ですがね……大体これくらいでどうでしょうか?」
「……高いな」
「実は、こちらでは見られない物のようでして。何処からこのようなものがとれるのか……普通の宝石よりも魔力を多く含み、それでいてこの輝き、澄んだ青空のような透き通った青。ぼんやりと光り輝くこの特性は見たことがありません」
「なるほどな。ここでは貴重品となるのか」
「ええ、もしよければいくつかお分けしていただければ、更に色を付けますが」
「分かった。だが手持ちも少ないので後2つだけだ、すまないな」
「ありがとうございます!では、お金を用意してきますので」
そう言って店の奥へと引っ込んでいく。
少しして持ってきたのは……。
紙幣だった。
「えー、ひと束100万リオ。こちらが10個で500万にこの宝石は3個で1200万リオとなります。お確かめ下さい」
「ちょっと待て、これが……金だというのか?」
「ええ、これ1枚で同等の金と交換できるというものです。要するに、これは1枚1万リオですが、同時に1万リオ分の金と同等の価値を持っています」
「しかしそれでは……」
紙と金では価値が合わなすぎる。
しかし貴金属を通貨とした場合、人から人へと渡る内に摩耗していく事もあるし、何よりも持ち運び自体が不便だ。
これを解消したものが紙幣となる。
金という物を基準としているので、ここでは基本的にカロス大陸と変わりない。
つまり、同価値の金と金貨を交換することは可能だ。
ホーマ帝国ではそこからさらに鋳潰して金塊として保管し、それと同等の紙幣を発行する。
「ハーヴィン候、少なくともこの国では通用する物です。帰ったら役に立ちませんがその時に同等のものと交換していけばいいでしょう」
「ええ。それを専門に行っている換金所もあります、そこへ行って交換すればあまり損はしないでしょう」
「……そうか、分かった……だが……不安だな」
何と言っても紙だ。
燃えそうで怖かった。
そんなサイモンの様子を見て、店主が補足する。
「紙幣ですが、燃えませんしそう簡単には破れませんよ。少々特殊な魔物のような木がありまして、それで作られた紙ですから」
「そうなのか。ふむ……分かった、色々とすまないな」
「いえいえ。こちらこそとても良いものをお分けいただけましたので」
店を後にして軽く店先の品物を見てみると、大して高いわけでもない。正直な所ここまで大金に変えてしまってよかったのかと思うくらいだった。
「それにしても紙幣とは。金本位制が上手く行っているのであれば、相当国に信用があるんでしょうね」
「どういう事?」
「ハイランドを始めとする国だとそのままなのでわかりやすいですが……金というものは基本的に貴金属そのものであってそれ自体に価値があります。それを鋳造して貨幣に変えたのが金貨本位制ですね。金そのものが流通して行くわけです」
「まあ、うん。そのままだよね?」
「ええ。逆にここでは金貨を使っていたんでしょうけど、様々な理由から取りやめになったようです。彼も言ってましたが使っている内にすり減っていくという問題もありますから。実際、ハイランドでも金貨をそのまま使うことは少ないですしね」
見た感じ国自体が大きく、また人数もかなり多いように思える。
こちらの一国がここの街数個分と言った感じかもしれない。伊達に一番大きな大陸なだけはあるのだ。
ここまでくると持ち運び自体がめんどくさくなるし、金を運ぶだけで無駄に重量を消費するため他の商品の流通の妨げにもなるだろう。
そこで国で管理している建物に金を保管し、いつでも交換できますよ、としているのがホーマ帝国のやり方だ。
こうなると1枚1枚が重い金貨よりも遥かに軽く、記載されている数字で価値が決まる紙幣はとても便利なのだ。軽く、場所を取らず、ある程度の金額をとても小さなスペースで管理できるのだ。
ただしこれをするには国の信用は大事だ。
信用がなければすぐに換金され、結局保有する金が減る。
ハイランドで言えば金貨がどんどん外に流れていくようなものだ。
地球ではこういったことがあり通貨自体を国が管理できる、管理通貨制度へと変わっていった。
ハイランド等もホーマ帝国と同じ働きをするものを実は持っているのだが。
身分証がそれだ。いつでも額面通りの金額をそのまま引き出せるというのだから、どちらかと言うとホーマ帝国よりは手軽に扱える。
プリペイドカードのような存在だ。
もちろん、同様のシステムがないホーマ帝国では使えない。
「あー……確かに。僕達は身分証がそれなのか……」
「ミレスは信用がありませんでしたから、まともに金貨を使わせてもらえず、必ず確認されてましたよね。実体がないものや、価値が劣るもので同等の物と交換できるというのは、それだけ国が信用されてることの表れでも有りますね」
まあ、ダンジョンケイブなどで金が見つかればほぼ無尽蔵となるので、管理しなければ価値が暴落するわけだが。
この街を見ているだけでも、相当治安もよく潤っているようにみえる。
何より誰もが武器を持たずに歩けるというのはすごいことだろう。
壁の中がどうなっているかは分からないものの、かなり徹底した統治がなされているのは確かだ。
「まあ、少々換金しすぎてしまった感じがあるが、無いよりは良いだろう。まずは服か……」
帰り際に店主に聞いた所、近くに礼服なども売っている高級店があるらしいのでそこへ行ってみることにした。
「……これ、礼服?貴族用……とか?」
「俺達は良いが……テンペストのはこれは……」
「透けますねぇ……」
色々と、世界が違っていた。
長袖ではなく半袖になっているのは良いとして、蒸れない様にだろう、所々にメッシュが入っている。
もちろんただついているのではなく、切れ込みがあってその奥にとかではあるが……。
女性物は露骨だった。
確かに、外を歩く女性たちも大分際どい格好をしている人達が多く居たのは分かるが、これでは殆ど水着と同じようにみえる。
店主が言うには女性は社交の場で見初められる事が多いため、誘うような物が人気になっているとか。
女は色気で誘えと言うことらしい。しかもかなり直接的な。
もちろん、大事なところが透けて見えているわけではなく、単純に布の面積が少なめなだけだ。
テンペストが着ていた水着を更にもう少し削って、それにスケスケの上着が付属するという形となる。
背が高くスタイルの良い人が着るとかなり映えそうではあるが……リヴェリいろいろな意味で危険だ。
「あの、壁の中の方ではどういったものを着ているんです?」
「どういった生活をしているかは存じ上げませんが、あの壁の向こうにいる方々は我々のような物は着ずに神官服を着ておりますよ。純白の服で見た目は少々あつそうなのですが、着てみると実は魔法によって快適に過ごせるようになっているとか……」
「中には入れないの?」
「あそこは神域となっております。神の領域、神に仕える者達しか入れません。仕入れなども壁で止められてそこから先は別な方が中で引き継いでおりますよ。それにしても皆様とても言葉が流暢でございますね。向こうの方々はこちらの言葉は話せないと伺っておりましたが」
「……まあ、勉強したからな……。あまり思い出させてくれるな」
「それはそれは……さぞかし大変だったでしょう」
「まあな……。礼服は……今回は見送ろう。普段着の方を見せてくれないか?流石にこの格好は暑い」
ハイランドは一番熱くても肌寒いよりは少し暖かい程度まで。
体感で23度程度だろう。
寒くなれば当然のようにマイナスの世界だ。
ルーベルやコーブルクでも暑かったが、ここはさらに湿度が高いせいで相当蒸し暑いのだ。
そこに丈の長い上下で来ているのだから、流石に辛い。
「それではこちらです。リヴェリ用はこちらですよ」
やはり袖丈の短い物が多いが、幾つか長いボトムも置いてある。
ただ、時折桁が一つ違うものも混じっていたので聞いてみると、それらは更に気温に合わせて身体を冷やしてくれるようになっているそうだ。
一々魔法でやらなくてすむということもあり、ギアズと従者達を除いて全員がその機能がついてるものにした。
ギアズは鎧は着ていないものの、顔を隠す仮面を付けたままだ。
体を覆うマントに手には頑丈な手袋、足はブーツと露出が一切ない。
仮面を付けているのでやはり不審に思われるのだが、そういう者には嘘の経緯を喋った後それでも見る覚悟を問うた後に見せてやる。
大抵のものがうめき声を上げ、覚悟もなく見たものは悲鳴を上げて腰を抜かす様な……つまりは固めはえぐり出され、顔の半分の皮膚を剥がされ拷問された痕のあるまるでゾンビのようなその顔を。
後は青い顔をしたその人達に、だから見せたくなかったのだと悲しげにいえば終了だ。
大体は思いっきり謝られる。
……丁度、今のように。
店に入らず外で待っていただけなのだが、怪しすぎて巡回中の兵士が来てしまったのだった。
気がついたのは丁度買い物が終わり、服を着替えて出てきたところだったのだが……。
「こちらの方々は?」
『儂の恩人達だ。彼らに助けられなければ、もう二度とこの大地を踏みしめること無くあの場で果てていたであろうな。故に、儂はその恩に報いるべく共に歩ませてもらっておるのだ』
「……どうしたのですか?ギアズ」
「私から言わせていただきます。巡回中に、その……怪しい格好をしていた者が居たので、話を聞かせてもらったのですが……。大変、申し訳ないことをしてしまいました!皆様がはるばるこの国へと来てくださっているというのにこの様な……!」
『良い。慣れておる。儂もこのような顔にならねば同じことをするだろうよ』
「なるほど、そういう事ですか。私はテンペスト・ドレイク。カロス大陸ハイランド王国のカストラ男爵領領主です。彼の名はギアズ、説明は受けているかと思いますが紆余曲折を経て私の護衛を務めてもらっています。出来ればこのようなことが今後無いよう、周知に努めてもらえると嬉しいのですが?」
「は、はっ!そのように……!」
2人いるうちの、恐らく上官の方だろうが……かなり恐縮していた。
こちらがハイランドから来ている使節団である事は知っていたようだが、ギアズのような者が居るとは思っていなかったのだろう。
一応、こういう者が居るということを兵士たちの間で情報共有してくれるそうなので、徹底されていけば大分色々言われることが少なくなるはずだ。
「それにしてもよく適当なことをあれだけすらすらと……」
『内容は嘘っぱちだが、助けられたという所は本当のことだろう?事実、あそこから儂が出のは諦めていたのだからな……。それにしても……この辺りは相当変わったのだな』
ずっと昔のことを知っているギアズの事だ。
この辺はあの浮遊都市で見ていたらしい。
当時、このあたりには特に何もなく、村落のようなものすらも無かったという。
魔物達が跋扈し、自然が辺りを覆い尽くしていた場所だったそうだ。
『それがこの様な都市がいくつも出来ていると聞けば、やはり人の力というものは侮れんものだな』
「ああ、それに関しては同意ですね。私達の世界では自然を切り崩して、多くの人々が住めるようにと開拓されていきましたから。それこそ空高く聳える塔のようなビルでね。ハイランドの王都……大体あれくらいの面積が、ずっと上の方まで続いている……そんなものが沢山あったんですよ」
「どうやって作ったのかも理解できそうにねぇな……」
「それこそ宇宙にも少ないながらも人は住んでいたんですよ?」
巨大な宇宙ステーション……というよりも、本当に人がそこに住むというテストケースとして作られた船だ。
基本的に地球の周りを周回して居るだけで、何処か遠くへと行くわけでない。
そこにサイラスやテンペスト達が飛ばされるその時までは、確実に一般人が多数暮らしていた。
その後は分からないのだが。
「それ、ここでも実現できるの?」
「むしろ、こっちのほうがやりやすいと思いますよ。正直な所何でもありですからねここは。浮遊都市と似たような感じで大きな船を建造する予定ですから。お金が相当必要になると思うのでこれからもどんどん売っていかないとなりませんねぇ」
魔法のせいでやりたい放題だった。
実現できなかった技術が、こちらのほうではあっさりと実現できる。電気ではないから抵抗を考えたりしなくてもいいし、ショートの危険もない。
大出力が必要なはずのものをらくらくと作り出せる。
サイラスは楽しくて仕方ないのだ。
着替えて暑さが大分楽になった一行は、次の店へと向かった。
ギアズによって聞くも涙語るも涙なものを聞かされた兵士たちはかなり罪悪感でいっぱいになってしまいました。
何を言ったのか知りませんが大分盛ったようです。
合っているのはテンペストに助けられたことだけ!
そして今年最後の更新となります。
それでは皆様良いお年を!
すぐに明けるけどな!




