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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第四章 カウース大陸編
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第百三話 英雄ディノス・ハーヴェイ

「ディノス様、お客様がお見えになっております」

「誰だ?」

「テーオ老師と名乗る方と……信徒の方です」

「通せ。私の客だ。ヨックとリーベはすぐにキールを連れて地下室へ行って用意してくれ」

「かしこまりました」


 クラーテルの壁の内側、元ミレスの残党であるディノスの屋敷に夜遅く訪問客があった。

 彼はテーオ老師。裏稼業の人間で信徒の確保をするものたちとも取引がある者だが……彼には一つの特技があった。

 それは魔法による整形術。


 皇帝によって地位を賜り、新しい名をもらったわけだが、当然ながら姿形は変わらない。

 そして英雄として活躍した事によってその名は一気に広まっていったのだ。


 しかしそこで問題がある。

 ディノスという見たこともない英雄の話は瞬く間に広まったが、ディノスの姿を知っているものは殆ど居ない。当然美化されてあちこちで絵が売られたりしているわけだが、似ても似つかないのだ。

 多少、絞られているとはいえ、筋肉がついているわけでもなく顔も平均以下。これは皇帝側としても都合が悪かった。


 そしてディノスはディノスでモンク司祭としての姿は、追われている身としては捨てたい。


 両者の思惑は一致し、ならばと帝国一の整形術師を使わせることになったのだ。


「さて……始める前に、何か望みはありますかな?」

「老師は姿形を全て……顔だけでなく体型や性までも変えてしまえると聞いたのだが、本当か?」

「左様。如何様な姿でも……ただし、皇帝陛下や中央部の者達の顔貌は禁止されております故ご容赦を」


 そうしようとした場合双方が殺されてしまうというのだからリスクが高すぎる。

 どのみち最初からそのつもりは毛頭なく、今巷で広がっているその姿に近いものへと変えてもらうことにした。


「髪は栗色で短め、筋肉質で背も高い。……ふむ。これならば大体5日といったところですかな」

「そんなに掛かるのか?」

「ご存知ありませんでしたかな?身体を作り変えるという事は時間がかかるのですぞ。変化の間は専用の魔道具の中で眠りについて貰わねばなりませぬ」

「……仕方あるまい……それならばヨックとリーベは私の後に頼む」

「貴方様が眠りについている間に要望を聞いておきましょう。また、変化後の顔は皇帝陛下はもちろんのこと、王都中に巡ることになりましょう。そして変えられるのはこの一度のみ……もう一度となると身体が耐えきれずに間違いなく死ぬことになります。ゆめゆめお忘れなきよう」


 整形術は人生でたった一度のみ。

 どのような姿にでもなれるがその代わりに多大な負荷を掛けてしまうため、術をかけられるものはその負荷を極力減らすためにゆっくりと変化させていく。その時に仮死状態にしておくための魔道具が必要となるのだ。


 つまり、後で気に入らないとなっても次はない。失敗しないように今この時点でしっかりと決めておかねばならないのだ。


「英雄であれば魔法適性も必要でありましょう、何か使える……もしくは得意なものはありますかな?」

「あれを成した時に必要だったのは……創造することだった。自分の思い描いた通りに実現させる力……」

「ではそこを伸ばしておきますかな?しかし適正をあげると申しましても全ては自分の力で高みを目指す努力が必要でございます。筋力も上げておけばまさに英雄としての格も出ることでしょう」

「筋肉がある身体になれば、力も増すのではないのか?」


 あくまでも見せかけであって、実際に使われる筋肉と言うよりは見せる筋肉である。

 鍛えればきちんとそれも意味を成すようにはなるが、筋力は後付なのだ。

 最初から使える筋肉としたいならばここで決めておかなくてはならない。


「おお、忘れるところでしたな。一物もそれなりのものに出来ますぞ」

「ほう?」

「いや、性別を男とした場合に一番頼まれる場所でしてな。やはり皆様女を喜ばせたい、自信をつけたいなどと言われますので。また英雄ならば何処へ行ってもその子種を欲しがる女はおりましょう?」

「くくっ……なるほどな。それも任せるとしようか。そうだな英雄らしく雄々しく猛々しく……幾人の女を犯しても足りぬほどのものを」

「それでこそ英雄、色を好まぬ者などおりません。では早速……外からは見えない秘密の場所などはありますかな?」


 身体を作り変えているのがバレれば大問題だ。

 しかし、元々の自分を知っているものたちには帝国側で情報操作を行い、強制的にその記憶を書き換えることが出来る。

 それが何処の誰とも知れないものに見つかると特定できないため難しい。


 また、変化中は自分の意志で動くことは出来ず、終わる前に魔道具を開けば激痛の中で死んでしまうだろう。

 それは避けねばならないのだ。

 だからこそ人から見えない場所で行う。


 地下室へと向かうと、すっかりと掃除が終わりきれいになった部屋が現れる。

 信徒のキールは掃除用具を片付けて部屋の隅で立って待っていた。


「……ふむ、よくやったキール。後でたっぷりと可愛がってやるからな」


 にやりと笑って褒めてやれば、ビクリと肩を震わせながら楽しみにしていると返す。

 生まれ変わったら真っ先にキールで試してやろうと思えば、自然と持ち上がってくるものがあった。

 それを見て更に怯えるキールだが、それはディノスを喜ばせるだけの結果となった。


「これが……そうなのか?」

「はい。一度この中に入れば先に説明したとおり、身体が作り変えられるまでは出てこられませぬ。私もその間ずっとつきっきりで見ております故」


 言われたとおりに全ての服を脱ぎ、完全に身一つで大きな箱型のものへと入る。

 蓋を閉められるがガラス張りとなっており向こう側が見えるようになっていた。

 痩せてきたとはいえ自分が入れるほどのものなので相当大きなものだ。


 テーオがそのガラス部分に手を触れて何かを呟くと箱の中の空気が変わり、ゆっくりとまるで海に漂っているかのような心地よさの中ディノスは意識を失った。


 それを外から見ていたヨックとリーベは、これから作り変えられていく己の主人の姿を見つめていた。

 決して容姿が良いとはいえないが、その身体と顔はずっと自分たちを導いてきた人のものだ。

 それが今日で見納めとなる。


「……お二人とも、そろそろ……」

「もう少し、こうして居させてほしいのですが」

「気持ちは分かるのですが……これ以上は見ないほうが宜しいかと」

「なぜ、ですか?」

「身体を作り変えると言うのは……今の身体を無かった事にして、一から作り直すというもの。見た目だけではなく身体全てを。肉も、骨も、臓物も全て。今から魔晶石を溶かした液体でこの箱の中は満たされていき、それに肉体は溶けて彼が彼であるための脳以外は全て消えます」

「なっ……それは、それでは死んでしまうではないですか!」

「何を考えているのですか!?」


 一度死ぬ。この言葉を聞いた時一番動揺したのは恐らくキールだっただろう。

 今、キールにはディノスが死んだ時、自分も道連れになる呪いがかかっているのだ。

 その時自分はどうなるのか……。

 部屋の端っこでガタガタと震えているキールを見つけてテーオは言葉を続ける。


「ええ、確かに死にますな。しかし皆の思っている様な死ではなく、今までの自分の死。それまであった人生の死。生命の死ではないから安心するが良い。この箱は全てを溶かした状態で人を生かす。代々伝わる非常に貴重な道具でしてな、死ぬ一歩手前で生かし続けておるのです。故に意識があればその苦痛に耐えきれずに本当に死んでしまうと言われているわけで……それを防止するために意識を奪っておるのです」


 そう言っている間に眼下では少しずつ皮膚に赤みがさしていき、薄皮が剥がれゆらゆらと液体に揺れていくのが見えた。

 既に溶けた魔晶石というものは注入されており、身体を作り変える準備が整っていたらしい。

 その様子を見て絶句した2人を、別の部屋へと連れていき落ち着かせる。


 これ以上見てしまうとトラウマになってしまうだろう。

 既に表皮が全て溶け筋肉組織と脂肪が見え始めているのだ。

 身体が溶けていっているというのに、全く濁る気配もない液体。魔晶石を特殊な方法で溶かし込み、肉体をマナへと変換していく物だ。

 マナへと変換された元の肉体を使って、脳や神経を包み込んでいき再構成していく。


 元の肉体よりも少なくなる場合には、マナとなった肉体はそのまま保持されて液体の中で次の時を待つ。

 逆に多くなる時には溶け込んだ他の人の分のマナを取り込みつつ再構成となる。

 この箱は既に多数の人間のマナが取り込まれており、数十人分はゼロからでも肉体を作れるほどだ。


 既に筋肉組織もほぼ消え去り、骨と内臓がむき出しになったディノスの身体を見てテーオは更に何かを呟きながら箱に触れる。

 魔力を受けて更に活性化した箱は骨をも溶かし尽くし、脳と脊髄の神経のみとなったのを見て大きく頷く。

 これで下準備は整ったのだ。

 後はゆっくりと好みの姿へと再生されていくのを待つだけだ。


 □□□□□□


 ヨック、リーベが顔を青くしながら退出し、さらにテーオが居なくなってから、部屋の隅でじっとしていたキールは自分がまだ死んでいないことに気がつく。

 恐らく自分に向けても言っていたのだろう、テーオの言葉。

 生物としての死ではなく生きている……。それの意味がわからない。


 そして主人の許しがないためこの地下室からは外に出ることができなくなっているキールは、得体の知れない箱に入ったディノスと2人きりとなっているのだ。

 あれほど死を願った人物が、いざ死ぬのではないかとなったときに、死にたくないと思った。

 何よりも家族が死ぬのが怖かった。

 今はディノスが生きている事に安堵している。


「……こんな、はずじゃなかったのにっ!」


 信徒として壁の内側に入る事は、平民にとってはとても名誉なことであるとずっと教えられてきたし、自分もそう思っていた。

 だからこそ、選ばれたと聞いた時には不安よりも嬉しさのあまり意識が遠くなりそうだったのに。

 お父さんやお母さん、そして妹と弟……皆がとても喜んでくれて、妹たちは自分たちもお姉ちゃんみたいに信徒になれるように頑張らなきゃと言っていた。


 でもそれは幻想だった。

 現実は連れて行かれた後、身体を清めると言われて温かいお風呂へと連れて行かれ、身体の隅々……恥ずかしいところまで全てを綺麗に洗われた。

 その後アーレスの寵愛を受けるためにと言われて……神官と名乗る男に調教を受けたのだ。


 英雄の元へと行くことが決定した時、期待はしていた。でもそれも打ち砕かれその日の内にすべてを失った。


「大嫌いなのに……!死んでほしいのに……!」


 でも自分や家族は……。

 そのせいで嫌々ながらもあれを受け入れなければならない現実がのしかかる。

 自分が我慢すればなどという考えも今はもうどうでも良くなった。

 我慢しようがしまいがどのみち犯されるのだから。


「誰か……助けて……」


 少女の助けを願う声は冷たい石の壁に消えていく。


 □□□□□□


 5日後。

 地下室でテーオについてきた信徒によって、キールは身を清められていた。

 携帯式の便器へ腹の中身を全て出しきり、ずっと拭くことさえできなかった肌を石鹸で綺麗にされていく。

 なぜかは言うまでもない。今日、真っ先に抱くと言われて居るのに用意しないで居れば、死ぬ寸前まで殴られるに決まっているからだ。


「ねえ」

「なに?」

「あなたは、あの人を殺したいと思っているの?」

「ぼくだって……思っていないわけ、無いじゃないか……」

「私も」


 テーオの信徒は同じ年くらいの少年だった。

 髪の毛も伸びていてる上に、信徒は皆同じ格好をしているため見ただけでは分からなかったが……。


「ぼくは……男なのに……!毎日毎日……!」

「私も。そして今日、これから……。もう、嫌なのに……」


 自然と涙が出てきた。

 男も女も関係ないということが分かって、どこかで男だったらこんなことにならずに済んだのかな?という淡い期待と、彼に対する妬み等も全て消え、残ったのは虚しさだった。


 2人でひとしきり泣いた後、身体が綺麗になったところで別れた。


 ディノスの身体が出来上がる今まで、箱の中は怖くて覗けなかった。

 じっと箱を見ているとテーオとヨック、リーベが入ってくる。


「……うむ。成功だ。では開けるぞ」


 ガコン、と音が響きゆっくりと蓋が開いていく。

 その中から見たこともない人物がゆっくりと上半身を起こし、自分の手足を眺めていた。


「聞こえますかな?」

「ん?あ、ああ……聞こえる……成功したのだな?」

「完全に仕上がっておる。まだ身体に慣れきっていないであろう?」


 ヨックとリーベがすぐにそばに言って肩に手を回す。

 その状態でゆっくりと立ち上がり、箱の外に立ち上がると足を使って感触を確かめていく。


「……鏡を」


 すっと出された全身が映る大きさの鏡をみると……はたしてそこにはあの絵に描かれている人物そのものが裸で立っていた。

 今までの脂肪の付いた身体ではなく、筋肉の隆起がはっきりと分かる30半ばの男性。

 栗色の髪を撫で付ければ完璧である。


「これが……新しい身体……。素晴らしい、素晴らしいぞ老師!」

「お気に召されましたかな?」

「もちろんだ!全てが注文通り……理想通りだ。何よりもこの肉体、身体が軽い。内側から力が湧き出てくるようだ!頭もはっきりしているぞ……こんなに清々しいのは初めてだ……」

「それは何より。こちらに服を用意しておる、前の服はもう使えんので処分しておいた。今日からはこの新しい服で出歩くが良い。既に根回しは終わっておるでな、面識のあるもの達は全員顔を見てディノスであると認識できるだろう」

「ふむ……何から何まですまない。服は貰うがまだ着なくても良い、……これの具合を確かめねばな」


 指差した先には初めて見る大きさの物がぶら下がっている。

 今までと比べて少々重い気がしないでもないが、頼もしく、何よりも自信が湧いてくる。

 目を前に向ければキールが裸のまま、じっと下を向いて立っているのが見えた。


 むくむくと持ち上がるのも重さを感じる。

 そして近づいてくるディノスに気付いたキールが顔を上げて、それを認識して悲鳴を上げた。


「い、いやぁぁぁぁ!!」

「何を怖がる?散々お前を貫いてきただろうが」

「だ、って、そんな、そんなの……!」

「どこまで入るか楽しみだな?たっぷりと可愛がってやると言っただろう」


 腰に手を回され、小脇に抱えられて1階へと上がっていく。

 その日は叫び声が止むことはなかった。


 □□□□□□


「……大丈夫ですか?」

「いや……まだちょっと話しかけないでくれ、テンペスト……」

「頭が……痛い……!!」


 宿の一室、サイモンの部屋にいつものメンバーが集まり、テンペストによる強制学習が始まった。

 既にサイラスでやり方は覚えているが、無理やり知識を埋め込む行為は相当な負荷がかかるということは知っていた。


 ……それで、ギアズ以外全員が床でのたうち回るという結果となっている。


「記憶の書き換えによる強制学習の副作用は……目眩、吐き気、強度の頭痛、鼻からの出血……ですか。なかなかうまく行かないものですね」

『……この状況で冷静に判断するとはオーガでもやるまい』

「これからギアズにも他のみんなに対してやってもらうことになるので、覚えておいて下さい」

『しかし……それ自体は構わんが、良いのか?こやつらかなり苦しんでおるぞ?大臣にも味わわせるつもりか?』

「時間が経てば時期に消えます。問題ありません」


 きっぱりと言い切った。

 実際死なないならなんとかなるレベルではあるが、本人たちは現在進行形で苦しんでいる。

 いち早く立ち直ったのはサイラスだ。

 流石に経験者なだけあって少しは耐性があったようだ。


「はあ……二度とゴメンだと思っていましたが、まさか二度もすることになるなんてね。知識が定着するまではここから少し時間がかかりますが……まあ今日からでも外に出て会話くらいなら出来るでしょう」

「吐き気などはまだありますか?」

「いや、目眩かな。まだ少し視界がおかしい位だね、頭痛は大分ましになったけど……これを上の人達にやるとなると事前にしっかり説明しないと攻撃と受け止められそうですねぇ」


 予備知識もなしにいきなり昏倒しそうなほどの苦しみを味わったら、当然攻撃とみなされてもおかしくはない。

 まして国の重要人物達なのだから。

 そのためにも従者や護衛の一人を試しに目の前でやらせないと危険ということになった。


 しばらくして何とか全員が克服して、ぐったりとソファに腰掛ける。

 メイ達にも勧めたのだが、断固として拒否された。

 流石に強制する気はないので良いし、どのみち全員で出歩くことになるので問題はない。


「……想像以上だった」

「おう……」

「楽して言葉覚えられるって、分かっていてもこれはちょっと……」


 サイモンもコリーもニールもまだ青い顔をしている。

 サイラスはその状況を見てニヤニヤしていたが、仲間ができて嬉しいのだろう。

 そもそもこの方法を思いついたのは、サイラスがモンク司祭に知識の奔流を叩きつけてやったということからだったのだが。


 まずは外に出る準備が出来た。


 受付に外出を伝えて外へ出た。

 カラッと晴れた温かい日差しが心地よい。

 海が近いため潮の香りがよく分かる。

 きれいに整えられた道を少し歩いていくと、あちらこちらで話し声が聞こえてくる。


「……あれ?何言ってるか分かる……」

「ん?おお……本当だな。これは凄い。言っている意味がわかるだけではないぞ、看板を見て見るといい、読めるぞ」

「すげぇなこれ。これ……俺達の言葉はどうなってるんだ?」

「今は元の言語で話をしています。『ではコリー、私が今何を言っているのか分かりますか?』」

『そりゃ、何を言ってるのか分かりますか……って……ん?違和感があるぞ?』

「ここの言葉になっていますね。テンペストが話す言葉につられてそのまま喋っている感じでした」

「マジか……」


 今までの喋り方とは少し異なっているため、何か違和感は感じていたようだが普通に喋れるようになっているのに気づく。意識して言葉を切り替える事が出来るようになれば完璧だろう。

「元から知っていた」というレベルで頭に刷り込まれているので、そのちょっとした使い分けと言うものがしにくいのだ。


 しかしこれも数日経てば完全に定着して使いこなせるようになるだろう。


「いや、これマジですげぇ。あの苦しみを乗り越えるだけの価値はあるぞ」

「全くだ、普通何ヶ月もかかって習得するようなものだろうに数時間で自然に喋れるのだからなあ。ただもう一度やりたいかと言われたら躊躇する」

「僕も流石に次は嫌だけど……でもなぁこんな簡単に喋れるようになるのか。うう、迷いそう」

『とりあえず、言語の壁も超えたことだ。この街の特産などを調べに行こうではないか』


 この街には海産物の他にも色々と大陸ならではのものが並んでいる。

 特に多いのはアーレス関連のグッズのようだ。

 偶像崇拝を禁止しているわけではなく、神殿にあるアーレス像のレプリカが売られている。


 その他にも服も少し独特なものだ。

 周りを見てみると温かい気候のためだろう薄着をしている人達が目立つ。

 あまりハイランドの方では見ないタイプのもので、色を殆ど使わないのが特徴のようだ。

 とてもシンプルで洗練されているように見える。


「……武器屋などが見当たりませんね」

「持ち込みが禁止されたのはその辺の事情もあるのかもしれませんね」


 武器、防具、魔法に関連する用品店等、武力に繋がるものが見る限りでは一切ない。

 サイモンの隠密からもそのような情報が入っている、ということなので、おそらくはこの街全体どこを探してもそういったものはないのだろう。

 鍛冶屋はあるがやはり武器はなく、農機具や包丁類、魚とり用の道具や工具類と、やはり武器として使うものは一切置いていなかった。


「やはり直接見てみないと分からないものですね」

「そうだな。では行こうか、ここらあたりは非常に治安がいいと言われているらしいから、あまり心配しなくてもいいだろう」


 ずらりと立ち並ぶ様々な店を見て、この中で今日まわれるのはどれだけあるだろうかと考える。

 数件程度だろうが、色々と他の文化に触れるというのはいい刺激になるのだ。

 ここには文化を学ぶという意味でも来ているのだから、きちんとその責任は果たさなければならないだろう。



もしこの魔道具が現実にあったら、迷わず飛び込みます。

一生子供の姿のリヴェリになるんだ……

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