第百話 水着格差
サイモンがテントを張ったのは皆が集まっているところから少し離れた場所だ。
岩陰になっていて他の人達も見えない。
ほぼプライベートビーチと化したその場所はゆっくりするにはとてもいい場所だった。
「付近に魔物の気配や危険な生物は居ないようです」
『儂も確認した。アンデッドも居らんぞ。ここには本当に魔物達が来たこともないらしい』
「ならしばらくは安全にゆっくりできるということだ。眠れなかったからな、私は少し眠る」
『儂は周りを警戒しておこう』
それぞれの使用人たちは忙しく動き回っている。
お陰でテンペスト達はかなり楽ができているわけだが、使用人たちの方もテンペストの出したもので随分と助かっている。
簡易キッチンのお陰で食器なども全て揃っており、交代で食事を取ればきちんと全員に回るのだ。
今は私兵達以外に冷たいものを準備している所だ。
「テンペスト様、冷たいお飲み物をどうぞ」
「ありがとうメイ。保管庫の在庫は大丈夫ですか?」
椅子に座っているとメイがジュースを持ってきてくれた。
キンキンに冷えていてとても美味しい。程よい酸味がスッキリする。
サイモン達には酒が配られているはずだ。
今のところ2回ほどしか出番はなかった簡易キッチンだが、最初の段階で私兵達にも振る舞った結果予想以上に消費していたようだ。
また酔っ払った兵が幾つか食器を割っている。
「私兵にも配っているので大分減っています。飲み物も半分を切りました」
「では補給しておきましょう。足りないものはありますか?」
「食器が幾つか破損しました。専用のカトラリーに関しては問題ありませんが、一般用の物が……」
テンペスト達の分を含めたものは、全て別に管理されている。
専用の食器セットが有るため皆と同じものは使わないのだ。ニールやサイラスもそれぞれお気に入りのものを持っている。
「何枚ですか?作りますので」
「21枚……えっ?作る……のですか?」
「ええ。あれは全て私が作っていますので。コップやカップ等は全て綺麗にスタックできるように、皿などは収納を考えて円形ではなく矩形を基準にして作り、ナイフやフォークもそれぞれ重ねてもかさばらないように工夫してあります。探しても無かったので自分で技術の習得も含めて作ったものです」
「えっ……確かに変わったものだとは思っていましたが、テンペスト様が……!?売っているものと比べても遜色ないものです!」
簡易キッチンに保管する際に、200名分の食器を自作していた。
最初の頃に作ったような素焼きのようなものではなく、きちんとした食器としてまともに使えるものだ。
表面をガラスコーティングしており、真っ白な食器をよく見てみれば透明な層が見える。
フォークやナイフなどに関しては全てが重ねて纏められるようになっており、飾りのように見える凹凸は全て裏にピッタリと重なる凹みがつけられている。
これによって厚みをまして持ちやすくしながらも、収納時にはコンパクトに纏めることが可能となっていた。
コップは当然としても、ここまで綺麗に形が揃ったものはなかなかなく、ティーカップ等はハンドルが上の方のみくっついているタイプとなり、それを少しずつずらしながら重ねてやることが出来る。
これによって大人数の食器セットがものすごくコンパクトに纏められていたのだった。
足の下には砂があり、ガラスを作るには持って来いの状況。
見る間に見たことの有る皿が1枚出来上がり、それが全ての枚数出てくるまでにそう時間はかからなかった。
「これで全部ですか?」
「は、はい……。私、テンペスト様が創造魔法を扱うところを初めてみました……」
「練習で作ったものでしたからね。見せるものでもなかったので」
「いえ!あれは売れます!店に並んでいても全く違和感のないものですよ!素晴らしい出来でした」
「そうですか?ならばあなた方にも特別なものを1つ作りましょう」
メイとニーナにもそれぞれ1セットずつ作ってやる。
先程の量産品とは違い、きちんとした装飾の施された一品だった。
当然、普通は使用人が手にすることはないレベルの物となる。
「あ、あの……本当にこれ……」
「こちらがあなたの。こちらがニーナの物です。今回の旅で頑張ってくれているのでご褒美だと思って下さい」
「あ、ありがとうございます!大切にします!」
とても喜んでくれたようだ。
入れ物は作れなかったので、少々持ちにくそうだったがトレーに載せてニーナにも渡しに行ったようだ。
しばらくするとニールが水着に着替えて戻ってきた。
下着のものと似ているが、少し水に強い素材を使っており、色も単色のみだ。
布地にプリントするという技術がないからそこまで派手なものは無い。
濡れるもののためあまり透けないようにと色は濃い目、そして厚手のもので作られている。
膝上までのハーフパンツ型の水着を着たニールは、プールなどに居る少年そのままだった。
「テンペスト、向こうで着替えを用意しているって言ってたよ」
「私のですか?持ってきた記憶はないのですが……」
「メイが一応と思って持ってきてるんだってさ。一緒に入ろうよ」
テントへ戻るとニーナがお礼を言ってきた。
かなり嬉しかったようでちょっと泣いている。
「もう本当に一生大切にします!」
「壊れたらまた作り直してあげるので。普通に使うと良いです。それよりも水着が有ると聞いたのですが」
「あ、はい。こちらです。以前海に行ったのに入らなかったということでしたので、専用のものを用意させていただきました」
「……これが、水着なのですか?」
可愛らしいワンピースにドロワーズ……と言った感じだ。
上は肩から先を露出する形で、下の方はニールと丈は似ている。
ただしとても……ピンク色で可愛らしいものとなっていた。袖口などにリボンをあしらったもので素材はやはり水に強いものだという。
「寝る時に着るものみたいに見えますが」
「確かに似てますが、ちゃんと水着として売ってるものですよ。ハイランドでは海がないですから湖などで普通は使いますね」
さぁさぁさぁ、と背中を押されてカーテンの中へと押し込まれる。
待っていたメイと二人がかりで服を脱がされて着替えられていった。
「あ……テンペスト様、また少し成長されましたね」
「本当ですね。ぴったりだと思ったのですが、少し丈が短く感じます」
「少しずつ、私も成長できていますか。良かったです」
それでも大した誤差ではないので問題なかった。
髪の毛を纏めてもらって完成だ。
「可愛らしいです!テンペスト様!」
「これでニール様もいちころですね!」
「いちころ、とは?」
「テンペスト様の魅力でニール様が惚れるということです!」
「なるほど、頑張ります」
声援を背に受けてテンペストはテントを出て海へと向かう。
そんなテンペストをみてメイとニーナは顔を見合わせた。
「あの水着は正解でしたねメイ」
「ええ、似合いすぎていて本当に可愛らしかったです。こういうこともあろうかと買ってきておいてよかったです」
「ニール様もお似合いですよね!可愛らしいお二人が純愛を育んでいるのをこんなに間近で見られるなんて……!」
放っておけば鼻血でも出してしまいそうな2人が居た。
ニールとテンペストの2人が目の前でいちゃいちゃしているのをみて、表面上は無関心を装っているが内心ではもっとやれ、もっと攻めろと応援しているのだ。
特に最初の頃など性に無関心なテンペストがニールを翻弄しているときなどは、もうぶっ倒れるのではないかと思うほどに悶ていた。
ニールはテンペストに告白して成功してからと言うもの、娼館へと足を運ぶことがなくなりその代わりに禁欲的な生活を行っていることも知っている。
ちなみに掃除をするときなどに、便器についた白い粘液や臭いなどで既に我慢できていないこともバレていたりするのだが……ニールは流石にそこまでは知らない。
「ニール様なら仕えても良いですよねぇ。可愛いし」
「むさ苦しいおっさんとかよりは全然いいですね。年をとっても変わらない容姿……羨ましいです……!」
「2人共何をしているんですか?」
「おやおやこれはウル君ではないですか!」
「テンペスト様とニール様の恋の行方をこうして見守っているんです!」
なんて迷惑な、と若干引き気味のウルだが……メイの目がずっとウルを捉えて離さない。
「そう言えばウル君も結構可愛いですよね」
「なっ!?」
「彼女とか居ないんですか?」
「ボ……私は!コリー様にお仕えする使用人です!そんな暇などありません!それよりもこちらの方も手伝ってもらえませんかね?先程から私兵の方々がお待ちですよ」
「あっ……い、今行きます……」
周りを見てみれば私兵の人達が訓練を終えて戻ってきていた。
それぞれコップに冷たい飲み物を入れては渡していくということを繰り返している時に、2人は思いっきりサボっていた形となる。
怒られることはしないだろうが、周りの評価は下がるわけで……。
すっかりしょげる2人だった。
□□□□□□
「ニール」
「あ、テンペ……す…………」
「?……どうかしましたか?」
「うぇ!?いあ、いや、違うんだ、その……なんかすごく可愛かったからびっくりして……」
白い肌にピンクの生地と黒のリボンが映える。
テンペストが海に入ってきて、ゆっくりと浸かるとワンピース部分がめくれ上がって可愛いお腹がちらちらと見えてしまう。
見ないように見ないようにと気をつければ、逆にそこへどんどん目が吸い込まれていってしまう。
開き直って横で水と戯れるテンペストを見ながら、本当にテンペストが告白を受けてくれたんだよな?という事を考えて少し不安になる。
「ニール、あのように浮くにはどうすれば良いのでしょう……?」
視線の先にはハイランドではない国の誰かが仰向けになって海に浮かんでいた。
どうやらあれを見て同じようにしようと奮闘していたようだ。
お腹を突き出すようにしながら両手両足をパタパタと動かしている。
「あ、えっと……僕も泳げないからよく分かんないんだ。ごめん」
「なるほど、そうでしたかっ!?ゲホッ」
「うあぁぁテンペスト!落ち着いて!息止めて!!」
答えながら頑張っていたのが不味かったのだろう。
ついにバランスを崩して顔の半分が海に浸かる。
びっくりして目を開けてしまい、海水が目を直撃した結果異物が目に触れたその刺激でまた驚き、吐き出した空気を吸おうと水の中で吸い込みかけ……。
つまるところ溺れかけた。
すぐにニールが抱きかかえて自分の足の上に座らせて落ち着かせてやることで、何とかパニックから脱したテンペストだったが……。流石に少し苦手意識が出てしまったようだ。
太ももの上にテンペストの柔らかいお尻が乗っている。
意識しないようにしながら背中を擦ってやると、咳き込みながらも何とか落ち着いた。
「あ、ありがとうございます、ニール……」
「目大丈夫?ほら、真水で洗ったほうが良いよ。うがいも……」
水を魔法で生み出してテンペストに目を洗わせてやり、口の中の海水をゆすがせる。
ようやく完全に元通りになったものの、目の赤さはまだ取れない。
「びっくりしました……溺れる人間がどういう気持なのかよくわかります」
「いや、分からなくていいから……。でもどうしよ。まともに泳げるのって……」
「確かサイラスが泳げますね」
サイラスはプールで泳いで鍛えていた話をしていた。
研究に行き詰まった時には何も考えずにプールに行って、思いっきり何も考えられなくなるくらいの全力で泳いで疲れてから寝て起きると解決したりするなどと言っていたはずだ。
それならばと砂浜で日向ぼっこをしていたサイラスの所へ2人で向かう。
「泳ぎを教えろと……。別に構いませんが、2人はどこまで出来るんです?というかテンペストは前に教えたと思いますが」
「……さっき浮くことすら出来ずに溺れました」
「僕も正直似たようなものです……」
「まあ、あのときは手を引いてやってたし、顔を水につけることもしなかったからなぁ。初心者も良い所だね。顔を水につけて息を止める練習から始めないと駄目かね」
サイラスの指導の元、テンペストとニールは顔を水につけることから始めた。
簡単だと思ったものの、意外とこれが難しかった。
顔を水につけるというだけだから、水を使って顔を洗ったりしているのと大して変わらないだろうとたかをくくっていたものの……。
一部が僅かに触れているのと、全てが包み込まれているのとでは全く違うのだ。
まず、口で呼吸が出来ない。
しっかりと口を閉じていなければ、とてつもなく塩辛い海水が口に入ってくるだろう。
そして鼻。鼻は目や口と違って自分では塞ぐことの出来ない穴だ。
水中に没した場合には当然ながら水が入ってくる。
それを防ぐために僅かに鼻から空気を出すか、摘むかして侵入を防がなければならない。
更に顔全体に掛かる水の圧力。
顔が覆われているという感覚は物凄い不安を感じる。目を開けられない状況であれば尚更だ。
それが終わると今度は少し深いところでしゃがんで完全に頭の上まで潜水する。
10秒位で立ち上がるというのをやっていくのだ。
この時ニールが目を開けられていたなら素敵な世界が横で広がっていただろう。
「はい、2人共よく出来ました。とりあえず息を止めて水中に潜る、と言うのは出来るようになったね。では次です、また立った状態で顔だけを海面に付けて……目を開けて下さい」
「えっ」
「目を開くんですよ、水中で」
「水でも痛いのに!」
「海水のほうがマシですよ、個人的には。でも上がったら必ず目を洗わないと駄目だね」
恐る恐る2人は顔をつけて……。
目を開けた。
ゴバッと白い泡を立てて顔の周囲が弾ける。
すぐに顔を上げて鼻を押さえ、目をぎゅっとつぶりながらギャーギャーと喚いている2人をみて、ああ初めて水泳習ったときとかこういう感じだったなぁ、と思い出していた。
目を開けた途端に視界がぼやけたものになり、水の刺激で息が続かなくなるのだ。
「鼻の奥が……痛いです……」
「目がっ!結構痛いじゃないかぁ!!」
「慣れないと後で何かの時にパニックになってそのまま溺れますよ。何度かやっている内に大分慣れてくるはずです。はいもう一回」
暫くの間、2人のもがき苦しむ声が聞こえた。
文句を言いつつもきちんと練習して顔をつけられるようになり、身体を浮かすことまでは出来るようになった2人はようやく海を楽しめるようになった。
サイラスに言われたのはこれ以上深いところに行かないこと、このあたりまでなら二人の身長でも余裕で足がつくので、とにかくパニックにならずに冷静になって地面に足をつくことだ。
眼は真っ赤になってたりするが、先程までとは比べ物にならないくらいに水に慣れた。
2人で歩いたりしているだけだが何故かとても楽しい。
テンペストの水着がふわりふわりと水中で揺れ動き、その度に背中やお腹が見え隠れしている。
時折邪魔そうにしているがその動作も可愛かった。
「ニール、あれは……」
「あの奥の方に居る人……?な、なんかすごい格好してるね」
「あれも水着なのでしょうか」
ルーベルの人達だ。
暖かく、海岸が広いルーベルの土地柄基本的に皆薄着で肌を露出する服が多い。
コーブルクもハイランドに比べればそうなので、海に入っている人達を見ていると結構肌が露出した物が多い。
男性は大体似たり寄ったりなのだが、女性のものはかなり差がある。
露出度から言えばルーベル>コーブルク>ハイランドだ。
そんなルーベルの水着は……要するにブラとパンツだけのようなものだった。
サイラスからすればパンツビキニとでも言うべきものだろうか。男性物のトランクス辺りと同じような丈のパンツを履き、胸をブラにひらひらとした装飾が付けられたような物を付けただけだ。
ハイランドとしてはテンペストが着ているものが普通なので、かなり刺激が強いものだった。
とはいえ3つの国は特に女性の肌を見せることに関しての規制はないため、隠すべきところが隠れていれば特に問題ないのだ。
ハイランドはどちらかと言えば私服の延長線にあり、お洒落に着飾りながらも水に入れるものという位置づけだが、ルーベルでは女性としての魅力を引き出すものとして進化したようだ。
「やはり男性としてはあのような露出の多いもののほうが嬉しいのでしょうか」
「え、ま、まあ……大体皆そうだね……」
「ニールは私のこの水着は残念でしたか?」
「いや全然。すっごく似合ってて僕は大好きだよ」
「そうでしたか。それは良かったです。……しかし、少し動きにくいですね。丈が長いせいで水中で動いてまとわりついてきます。それに、ふわふわと浮かぶので正直邪魔です」
「まぁ……動きやすさで言えばハイランドの奴はそうだよねぇ」
全体的に短く身体に密着した作りのコーブルクやルーベルの水着は、当然ながら動きやすい。
水の中での作業を阻害しないようにと考えられていった上で、それをファッションとして取り入れていき、競争が起きた結果がこのスタイルだ。
流石にマイクロビキニだのと言うものは咎められはしないが、恐らく娼婦でもなければ着ないだろう。出来ても居ないが。
「楽しめてるようだね」
「あ、博士。博士も泳ぐんですか?」
「いや君達を呼びに来ただけだよ。そろそろ昼飯だ。今日は朝早くからずっと起きているから妙に明るい時間が長く感じるね」
「確かに……。でもこうして波に揺られて浮かんでいるのって意外と気持ちいいんだね」
突然の嵐に遭遇したのが真夜中。
それからしばらくその嵐に揺られて危険を脱したのが5時位だ。島を発見して上陸したのが8時過ぎ。
なんだかとても長い一日に感じていたのはそれが原因だった。
「サイラス、地球での水着はどのようなものでしたか?」
「ああ、そうかテンペストはAIだったからな……知らないのもムリはないか。色々有るよ。こういう普通の布とかでなく伸縮性の富んで水を弾いたり透過しやすかったり。基本的には身体にピッタリと合うものが主流だね。向こうにいる人達のは一番近いけど、あれよりも露出が多い」
「あれより!?」
地球の水着は多岐にわたり、競技用のものから遊び用のものまで幅が広く、素材もここではまだ完全に再現できそうにないものばかりだ。
染色やプリント技術が発達しているためカラフルで様々なイラストが印刷されたものもあるし、縫い目がまったくないものが多い。
圧着して居るためほぼほつれるという心配が無いものが一般的だった。
「ああ、一部では水着も着ないで裸で無いと入れないビーチなんかもあったよ」
「全員、裸……。なにそれすごい」
「一応エロ目的で入ってこようとする人達は排除されてたけどね。ちゃんと宗教的な感じで意味はあったような気がするけど詳しくないね。逆にエロ目的での水着なんてのもあったりしたけど」
「どんな世界なんですかそれ……すごい……」
「ニールは裸のほうがお好みですか?」
「テンペスト、ここでは絶対駄目。嬉しいけど」
「分かっています。大分動じなくなってしまいましたね」
「ま、とりあえず腹が減ってしまっては遊べないだろう。行こう」
地球の水着に関しては受け入れられないだろう、と思っていたがルーベルのあれを見る限りでは行けそうな感じだった。
大人しめなものから始めて、段々に過激にしていけば問題ないだろう。
サイラスはとりあえず水着の生地から色々と作っていければと考えるのだった。
……が、素材に関してはニールの担当となる。
身体に密着させても問題ないもので、水はけがよく伸縮性に富み透けにくい素材を作れという難題が後にニールを襲うことになるのだ。
テンペストとしても動きにくい水着よりも、動きやすい向こうの物がいいと思ったらしく、新しい水着を開発できないかとサイラスに頼んでいる。
とりあえずは今着ているものを手直しして全体的に短めにすることで対処することとなった。
ちなみに……テンペストの水着は本来腰のあたりを帯で止めるものである。
それをしなかったのはメイの仕業だった。
当然のようにニールの視線はそちらに釘付けとなり、テンペストにどんどん惚れていくという目論見は成功したわけだった。
しかしメイがサイラスから受けた急ぎの仕事はその上を行く物だ。
まさかみぞおち付近までバッサリと切り落とすとは思っていなかったのだ。
ずり上がらないようにしっかりと固定する必要もある。
加えて足も太ももがほとんど出るくらいまでという注文だ。
なるほどこれならばさらにテンペストの魅力が上がる!と喜々として仕事を進めていくメイであった。
ついにテンペストの水着姿が……!
しかしハイランドの水着は露出が少ないものだった。
ルーベルのハイランドから見ると際どいものを見て、ハイランドの男たちは盛り上がっていたりいなかったり。
男に対して女の割合が極端に低いこの旅では、女性兵士が大人気となっているのだった。