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鉄の竜騎士 -元AI少女の冒険譚-  作者: 御堂廉
第四章 カウース大陸編
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第九十八話 嵐

『もう既に試験用のものが一体出来て居ったぞ。そのまま持ってきたが…………何をしておるのだあれは』

『自身が巨大ロボットになったことで喜んでいるそうです。姿を見れないでしょうからそちらに移してやって下さい』

『そうだな。コンラッド、聞け。我はギアズ。今からお前をこちらの器に移す。少しじっとしておれ』

『お?おう。わかっ……ぬぁっ!?なんだ、吸い込ま……』


 ぐいっと引っ張るような動作をすると、コンラッドが抜けてホワイトフェザーが機能停止した。

 一応、テンペストがコンラッドが抜けたホワイトフェザーに移ってきちんと固定する。

 ギアズはといえば、少々投げやりな感じで新しい器へと魂を移す。

 こういうことを軽々出来るのだから、やはりギアズはかなりの使い手なのだろう。これでテンペスト達と合流するまで使ったことがなかったなどと誰が思うだろうか。


『煩いやつだ……。ほれ』

『おおう、あれ?』

『……。では、戻りましょう』


 □□□□□□


 目を開けるとニール達が心配そうな顔をしてこちらを覗いていた。


「……大丈夫です、ニール。倒れたわけではありませんから」

「まあ……大丈夫そうだとは思ったけど。起きたらメイとニーナが慌ててたからびっくりしたよ」

「すみませんでした。少々急ぎだったもので。……全員をサイモンの部屋へ集めて下さい」

「とりあえず、それ、抜いてからね?もう行かないでしょ?」


 そう言われて視線を下げれば導尿バックが脚に固定されている。

 確かにこちらにいる以上は必要のないものだろう。

 おとなしくニールに従って抜いてもらい、改めてサイモンの部屋へと向かう。


「……で、全員集まったぞ。どうしたんだ?」

「夢を見たのです。ただ、何かおかしいようなものだったので……」

「精霊の夢……夢と言って一笑に付すには少々真実味がありそうだな」


 普通なら夢を見た、というだけならただの夢だろうと言われるのがオチなのだが、テンペストの場合は精霊として認識されている。

 精霊が夢を見るのか?と言うのは分からないが、身体に引っ張られている為に見ているのだろうと納得できる。


 そしてコンラッドが現れたことから始まり全てを話した。

 今、倉庫内にギアズとともに待機しているという事も。


「ってことは……」

「はい。現在彼はギアズと似た状態に置いてあります。ある意味ではアンデッドでしょうが、元々は魂のみの存在でアンデッドとして復活しているわけではありません。どちらかと言うと私と同じ状態という認識のほうが近いです」

「彼の死体は私も見た。あれから1年以上も経っているのだぞ……まだ存在できていただなど……信じられん」


 普通ならばそのまますぐに消え去ってしまう儚い存在だ。

 あの場でエイダも間違いなく既にここには居ないと言っていたのだ。

 まだ居たというのは異常とも言える。


「パイロットってことは俺と同じような感じなんだろ?」

「はい。ただし技術的には彼が上でしょう。色々と教えてもらうことも出来ると思いますよ」

「そりゃいい。話を聞いてみたいもんだ」

「では、呼び寄せます」


 ギアズとコンラッドがその場に現れる。

 コンラッドの姿はまだ魔力筋が見えている状態だ。

 テンペスト達から見れば人工筋肉を使ったパワードスーツのようにも見える。

 実際、出力自体は人間の比ではないので同じような扱いができる。


 ただコンラッドは魂を無理やり定着させているので自分では移動できないため、テンペストと同じような移動はできない。


『うぉっ!?今度は何だよ!』

『ええい、一々煩い奴め……。儂ら……テンペストの仲間たちだ。挨拶くらいせんか!』

『展開早すぎてついていけてねぇんだよ!あー。いや、すまない。俺はコンラッド・ジェーンだ。階級は大尉、いや死んでるなら二階級特進で中佐か?』

「大尉で良いでしょう。呼びやすいですので。彼が以前の……ワイバーンと言う1つの機体だったときの私を操縦していたパイロットです。サイモンとエイダは彼を見たことがありますが」

「ああ、死んでいるのをな。……ま、助かった様で何よりだな。私はサイモン・ドレイク・ハーヴィン侯爵。この肉体を得たテンペストの義理の親というやつだ。自慢の娘だよ」


 この状況が助かったといえるのかどうかは分からないが。


『侯爵……娘……おお……お前、本当にテンペストか!』


 そしてこの中で空気を読めない者が1人。

 話題の中心人物であるコンラッドだった。サイモンを無視してテンペストへと駆け寄っていた。

 流石に、かなり不敬な態度だったため警告する。


「ええ。それよりもサイモンはここで一番上の立場です。敬意を」

『し、失礼しました!!侯爵殿……侯爵?』

「ちなみに私はテンペスト・ドレイク・カストラ男爵となっています」

『爵位、だと……。ああそうか世界が違うんだったか。ああ、だよなそうでなければ犬が二足歩行とかしてねぇ……』

「獣人は居ないんだったな。コリーだ。俺も一応男爵なんだ、覚えておいてくれよ」


 これ本当に夢じゃないのか?などと言っているコンラッド。

 とりあえず座らせてやって落ち着かせると、サイラス博士を見つけてまた立ち上がる。


『うっそだろ!?あんた、なんでここにいる!?』

「テンペストと同じですよ。私もここに飛ばされたんです。彼女に救われ、今私はここに居ます」

「彼は現在私達の味方です。あなたのこの身体を作ったのも彼のお陰なのです」

『マジかよ。……なあ、ここってどれだけ科学が発展してるんだ?』


 自分の体を見ながら言っている。まあ、あれだけ見れば科学の産物と言っても信じるだろう。

 しかしここには元々こういった技術自体はまだ発展していなかった。


「科学ではなく、魔法という別の物が発展した世界ですよ。そこに科学も持ち込んで色々と融合させた結果、地球では作ることができなかった物を再現することが可能となりました。大尉もその内魔法を学べばいいと思いますよ」

『魔法……。あの、ゲームとか映画とかでよくある……』

「ええ、そんな感じです。今大尉を繋ぎ止めているのも魔力です。それが失われれば大尉は今度こそ消えます。気をつけて下さい」

『……え、俺どうすりゃいいんだ?魔力とか全く分からん……』


 こちらに居たとはいえ何の訓練もなしに魔力の使い方はわからないだろう。

 出来るのは博士くらいのものだ。

 まずは顔合わせ……本物の顔ではないが、一応の紹介は済んだ。

 一度戻って研究所の方で色々と話を聞いたほうが良いだろう。出来れば、エイダとも会ってきちんと自分の状況を把握することが好ましい。


「ギアズ、もう一度カストラへ送ります。彼を研究室のロジャーに紹介して下さい。私達が戻るまで向こうで色々と勉強してもらったほうがいいでしょう」

『それが良かろう。では送ってくれ。こやつが落ち着くまでは向こうにいてもらったほうが良い』


 心底邪魔だといいたげな感じだ。

 実際混乱している状態でここに居られても邪魔なのは確かだ。

 その前にきっちりと整理をつけてからにしたい。


 そもそも使節団として行動しているのに名簿に載っていないものが居るとなると色々問題がある。

 ロジャーにはギアズがしっかりと伝えてくれるだろう。

 その間、向こうではテストパイロットとして色々と頑張ってもらいたい。

 ロジャー達にとっても暇つぶしくらいにはなるだろう。


 □□□□□□


 帰りも色々と喋っていたが、とりあえずこれ以上不敬は晒しておけないので強制的にギアズごと収納した。


「……失礼しました、サイモン」

「いや……騒々しかったが、まああれが普通だろう。いきなり知らないところに出てきて自分の体すら変わっていたら私も混乱しそうだ」


 テンペストなんてそもそも水を飲むことすらできなかったのだから、その混乱っぷりは理解できるだろう。

 ただ一度理解するとそこからつながる事をやれるようになっていくのもテンペストだ。


「テンペストと博士がおかしいんだよ、順応が早すぎる……と言うよりなんだろ、基礎を飛ばして応用をやっちゃうみたいな」

「あー。分かるぞニール。良く分かる。ある程度ものにすると突然それを改変してぶっ放すんだこいつら」

「酷い言われようですねぇ。基礎を飛ばしているわけでもないですよ?私もテンペストも基本的には私達の国での基礎は知っているわけですから」

「……私はこの体になった時には、相当サイモン達に迷惑をかけていましたので」


 ともかく。

 新しく仲間が増えた事は確かだ。それも地球側の。

 テンペストに色々吹き込んだ張本人でもあるため、何かしら新しい物が入ってくる可能性が高い。

 さらに言えば軍人だ。その装備品などについては2人よりも詳しい。


「それにしてもこの期に及んでまだ男が増えていくのか」

「ボクはテンペストが居るからいいもんね」

「いや、そうじゃなく……こう、いやなんでもない」


 華がない、とでも言いたかったのだろうがテンペストに遠慮したのだろうか。

 コリーは無かったことにした。

 今のところこのメンバーの紅一点で、しかも美人なのは間違いないのだがいかんせん年齢が年齢なだけに目の保養まではいかないのだ。

 これがエイダであれば話は変わったのだろうが、今度は気軽に話しかけられる相手ではなくなる。


「戦いという意味では女性よりは男性の方が向いていると思いますが。筋力、体力共に私には無いので」

「そりゃまぁ、そうだろうけどな。予想外だったが1人仲間が増えたってことで、これはこれで嬉しい事だ。倉庫を通じてどうせこっちにも来れるんだからあまり気にしなくてもいいだろ」

「確かにな。ああ、そうそう。テンペスト、報告書をもらったが……国に戻ったら陞爵決定だ。おめでとう」

「ありがとうございます」

「ギアズは……アンデッドということもあって流石にそのまま爵位を、というわけにもいかないそうだ。勲章と名誉だけで我慢してくれ」

『構わぬ。爵位欲しさにやったことではない。ほんの気まぐれ……興味、そんなところだと思ってくれ』


 実際アンデッドなので王都に入れない。

 もしかしたら実力でそのまま押し通れる可能性もあるのだが、流石に結界を抜けたら死んでましたは後味が悪すぎる。

 王都に入ってからギアズを出すと言う手もあるが、何処でアンデッド避けがあるか分からないのであまり危険なことはしたくない。


 そもそもギアズ自体がそれを望んでいるわけではない。

 勲章を貰うことも、爵位を手に入れることもギアズにとってはかなりどうでもいいことのようだ。

 どちらかと言うと研究所の方で色々と見聞を広げたいと言っていた。


「サイラス、ニールも授爵するぞ。良かったな。今回の魔道騎兵開発等の功績を認めるということだ。加えてこの航海を乗り切って戻ってこれれば更に上に上がる……かもしれないそうだぞ?」

「そんなにぽんぽん上がって良いのか?」

「この使節団に関してはそれだけの偉業となる。ハイランドの技術を注ぎ込んでいてその技術者がこの船に乗っているんだ、当然だろう?今までは船を作っても乗っていくような職人はいなかったらしいからね」


 当然行ったら戻ってこれない可能性が高い航海なんて誰も行きたくないだろう。

 この船を見るまでは、選ばれた人達は決死隊のような覚悟で来ていたらしい位だ。

 なんとも思わずに来ているのはハイランドの皆くらいだという。


「分かるか?宵闇の森の暗闇を払い、この航海を成功させられるだろう船を作り、自らがそれに乗り込んで先陣を切る。それをやれるやつが何処に居る?誰が文句を言っても覆らないほどの偉業を成し遂げた者に対しての褒美だ。それ以外の実績も残しているし文句の付け所がないんだ。大臣達やその下の者達含めて反対は殆ど無かったそうだぞ」

「……それ、ボク達帰ってこれないって思ってるからっていう可能性は?」

「ま、居るだろうな。そのつもりで賛成したものも……しかし私は確信しているよ。見知らぬ国へと行って無事に私達が戻ってこれるということを。何、この面子なら問題ないさ」


 物凄い自信だが、テンペストもそう思っている。

 何があっても帰ってこれるという自信がある。

 最悪この面子だけで帰ることは確実に出来るのだ。


「ハーヴィン候にそこまで言われるとはね。流石テンペスト達だ」

「何を言っている、コリー君もだぞ?子爵以上は確定なんだ」

「俺もか?なんもしてねぇぞ、この航海に関しては」

「私以外のメンバー全員に対しての話なのだよ、私は上がれるところまでは上がっているからね。流石に公爵までは高望みしすぎだし、そこまで行くと国を持っているのと同じようなものだ、動きにくい。全員に対して、というのも恐らくは全員を貴族待遇で呼び出したいからだろう」


 平民としてではなく、貴族としてならパーティーなどにも呼びやすくなるのだ。

 呼んでも品位を落とさずに済む。

 何よりも面倒な貴族たちを黙らせておける。


 それぞれが嬉しい情報が入ったことでテンションが上がった所で、それぞれの部屋へと戻る。


「……ボク、ついに……」

「おめでとうございます、ニール」

「なんか、皆のおまけって感じが否めないけどさ」

「いえ、あの装甲に関してはニールの技術も入っていると聞いています。それに魔力筋やタイヤなどの細かいところにも」


 魔力筋の強度が上がったのは実はニールの研究結果だ。

 通常クレイゴーレムの素材をそのまま使っていたが、それに頑丈で伸縮するメッシュのようなカバーを着けたのはサイラスだが、素材そのものに色々混ぜて強度を上げたのはニールだ。

 結果として出力を上げても破断しない強力なものが出来た。

 でなければあのホワイトフェザーの重装甲を保てないだろう。

 遠距離戦特化ではあるものの、近接でも普通に殴るだけでコットス程度になら勝てる。


 近いうちにサイラスのサーヴァントも換装すると言っていたのでもう終わっているのかもしれない。


「でも、これでボクの条件が揃ったよ!」

「はい。ニールのことを紹介することが出来ますね。正直なところ求婚の手紙や面接が多くてうんざりしていたので」

「……ボクは彼らの敵に回ってしまったんじゃ……」

「守りますよ、必ず」


 とは言われたものの、ニールが守るといった手前受け入れられない。

 自分で自分くらいは守りたい。その上でテンペストを守る。

 地力では勝てないのかもしれないが、いざとなれば全てを焼き尽くしてでも。


「ボクだって。……とりあえず、テンペストはそろそろ休んだほうが良いよ。身体、すごく熱いよ?」

「わかりました。少しふらついてきていたところです。身体を冷やしてもらえますか?」


 抱きしめたテンペストの身体が熱い。

 いつもよりも大分熱があるようなので、まだ無理はさせられない。

 また熱を下げるために革袋に水を入れて凍らせる。

 下着だけに薄手のタオル一枚を掛けただけにして、ベッドに寝せておいた。


「何か食べたくなったら言ってよ」

「そうですね……固形でないほうが良いです」

「となると……冷製スープなんか良いかも?果物のシャーベットにする?」

「シャーベットで。甘いものが欲しいです」

「分かった。持ってきてもらうから」


 メイが持ってきてくれた物を食べさせてやり、熱が落ち着いた所で眠らせる。


 そしてニールは帰れば晴れて堂々とテンペストの伴侶として恥ずかしくない立場に行けることを噛みしめる。

 故郷を捨ててきたニールには身を寄せる場所といえばコリーとロジャーの所しかない。

 でもこれからはテンペストという本当の家族が出来るのだ。


 それを思い浮かべてはニヤける顔を押さえつける。


「やった……!帰ったら頑張らなきゃ!……あ、住むところどうしよ?」


 貸家に住んでいるニールとしてはテンペストの屋敷に住むのならそれで良いと思っているが、テンペストはどう思うのか。

 やっぱり自分が家を建てなければ駄目だろうか……。

 そういうことをぐるぐると考えている内に、眠りについた。


 □□□□□□


 心地よい眠りは唐突にベッドから投げ出されたことで終わった。

 どこからか大勢の怒鳴り声なども聞こえてくる。


 睡眠から叩き起こされた状態ではっきりしない頭に、叩きつけられるような衝撃と大声で頭が混乱する。


「なに、何が……??うう、何この揺れ……」


 次第に状況が分かってくるに連れて、一緒に寝ていたテンペストがベッドの上にいないことに気がついた。

 慌てて探してみようと立ち上がった所で、また大きな揺れが襲い、ニールはバランスを崩して倒れてしまった。


 そこにテンペストが覆いかぶさるように倒れてくる。

 どうやらテンペストも投げ出されて起きた所で同時に飛ばされたらしい。

 思いっきり頭と頭がぶつかり目の前に光が散る。


「あぅっ!?」

「っつぅ……」


 ずきずきと痛む額を抑えて2人がその場で悶絶する。

 流石にこれで目が覚めたが……。


「……ごめん、テンペスト」

「いえ、こちらも突然だったので……くぅ……」

「一体何が起きてるの?」

「航海があまりにも穏やかだったので忘れていましたが、恐らく嵐です。横波を食らったのでしょう」


 夜になり、突然海が荒れ始めたのだ。

 一応この船は簡単には沈まないようには出来ているが、それでも荒れている海は危険なものだ。

 隣の部屋でもメイとニーナが混乱中のようで、必死で壊れそうなものなどを止めているらしい。それでもこちらの方を気遣う程度には周りが見えているようだ。


「テンペスト様!ニール様!ご無事ですか!」

「ボク達は大丈夫。そっちも怪我はない?」

「私たちは大丈夫です。それよりも何が……」


『現在、本艦は嵐に遭遇している。波が高く航行は難しい。各自食器類や壊れやすいものは全て、各部屋に備え付けられている保管庫へと入れ、何かにしがみついて居るように。甲板とそれにつながる格納庫は現在閉鎖されている。移動はせずに各自部屋で待機するように』


 先程まで誰かが大声で怒鳴っていると聞こえていたのはアナウンスだった。

 この状況では寝ているどころではない。

 ベッドや家具等は固定されており、椅子なども机に固定できるようになっているので全て固定し、メイとニーナは割れやすいものなどを全て袋に纏めて保管庫へと入れた。


 こういうときのことを見越して作られた保管庫は、空間拡張によってある程度の容量を持った箱だ。

 拡張された空間は外の影響を受けることがないというのを利用している。


 照明が落とされて薄暗く、波によって足場が不安定な状況でまともに立っていられない。


「全員、私の方へ。出来るだけ密着して下さい」

「え?なんで?」

「レビテーションを使います。4人ならばなんとかなるでしょう」


 そう言って自分の方へと皆を引き寄せ、魔法を行使する。

 ふわりと浮かんだような感覚もなく、突然自分たちが先程まで感じていた揺れが消えた。

 周りをよく見てみれば、物凄い揺れ幅で周りが動いている。

 しかし、下を見ると一定の距離を保ってずっと床が有るのに気がついた。


「この状況で完全に位置を固定してしまうと、今度は私達がこの部屋に弾き飛ばされることになります。床の一点から30cm程浮かせた状態にとどめてあります。浮遊中はなぜかはわかりませんが慣性がかなり無効化されるようで、あまり動いている感覚も無いようですね」

「確かに……」

「これからどうすれば良いのでしょうか?」

「嵐がおさまるのを待つしか無いと思われます」


 そう言いながらも窓の外に見える景色は、自分たちの船よりも遥かに高い位置に波があるのを確認すると眉間にしわを寄せる。

 いくら頑丈に作られているとはいえ、真上から被せられてしまえばダメージを受けるだろう。

 水漏れに関しては今のところ心配はない。

 甲板なども水が貯まるような作りにはなっていない。


 それであれば中の空気などが有る限りは浮上は出来る……が、ひっくり返ってしまった場合は流石に復元できるかは怪しい。

 恐らくスタビライザーも今海中で必死に姿勢制御をしているところだろう。


 こればかりは艦長達の操舵の腕にかけるしか無かった。




うるさい人はしまっちゃおうねぇ~

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