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短編集

幼馴染からの、変わった手紙

作者: 巫 夏希

暗号を解く鍵は文章を見て下せえ。

 彼女から手紙が来た。日付は一週間前。一週間も手紙が届かないって、けっこう大変。しかもよく見たら海外に行ってるっぽいし。

 一応言っておくけれど、手紙を出す以外はただの幼馴染。僕が通信会社に就職して、彼女もそういう会社に就職したけれど、配属先はそれぞれ日本の北と南。

 ばらばら、ってわけ。

 そもそも彼女を好きだったかと言われると――それは微妙。

 思いはあったけど、それは結局伝えなかった。

 どこか踏み切れない、何かがあったんだろう。

 まあ、今は東京に一人暮らしなんだけどね。ただ、彼女は北の方。やっぱりばらばら。

 取り敢えず、便箋を見る。

 あれ、割と長いな。

 二枚もあるし。……いっか。先ずは一枚目から。



 ハロー、元気ですか。

 インディアの夏はとても暑いよ。……ああ、一応言っておくけれど私が今インディアに居るわけではなくて、インディアに出張に来ているだけなのだけれどね。来週には東京に帰るさ。

 リマにも行ったんだけど、あそこはすごいね。因みにこれも出張です。ミャンマーにも行きました。これも出張です。行きまくってます。おかげで痩せました。写真も添付するので見てね。

 オスカー賞を取った女優さんがよく行くお店にも行ったよ。いるかなあ、と思ったけれどいなかった。残念。

 ビクターは覚えているかい? 君のクラスメートのビクター・スチュアート、彼も卒業してインディアに帰っていたのだけれど、まさか出張先の会社で働いているとは思わなかったよ。しかも同僚だ! お笑いだろう? その写真も添付したので見てくれ。携帯で撮ったけれど、ローミングってお金がかかるからね。それは仕方ない。

 エコー賞って知ってるかい? ドイツの音楽賞なんだけどね、その賞をビクターの叔母さんが獲得したらしいのよ。だから歌も聞いちゃった! いい体験だったので、叔母さんのCDも添付したのでよかったら聞いてください。

 ヤンキー姿のビクターの弟も驚き。日本文化にかぶれすぎて、変な方向に走っちゃったらしい。けれど頭はいいって。ビクターと私と、三人で写っている写真があるから、それを見てね。きっと驚くよ!

 オスカー賞とエコー賞ってどれくらい価値が違うんですか? って聞いたんだけど、取る人によって価値観は変わると思うと言われたので納得。確かにそうだったね。質問した私が馬鹿でした。

 ユニフォームをプレゼントしました。何のプレゼントかって? ビクターが好きなインディアの野球チームだよ! けっこう素材もいいので、ぜひ着てみてね。それではまた会いましょう。



 ……まとまっていないというか、怪文だよな。これ。なんで行の先頭がカタカナ限定なのかな? 訳が分からねえや。それにしても、このカタカナ、聞いたことあるなあ。

 あ、そういえば二枚目があったっけ。二枚目は……、

 何だこりゃ、表?

 表のようにも見えるけれど、対応表なのかな?




 アルファのA。

 ブラボーのB。

 チャーリーのC……?





 まさか。まさか!

 ……Cまで読んだところで、僕は疑問が生まれた。





 デルタのD。

 エコーのE。






 そうだ。やはりそうだ。

 確信に変わり、僕は手紙を読み解く。

 そして、手紙を読み解いた僕は、急いで家を飛び出した。




 二枚目の手紙の最後には、こう書かれていた。




 ヤンキーのY。

 ズールーのZ。

 ……ここまで読んだあなたには解るでしょう? 手紙の返事をください。出来れば大急ぎで。それでは。


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