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第七話 雫の場合2

小学3年生の春、市川冬華と言う女の子が転校して来た。

外国人なんだろうか透き通るような青い髪をしていた。私と同じように群がられ、質問をされていたが、愛想よく笑って答えていた。

群がっている人の中でも男子が多かった。ふと、流雨はどう思っているんだろう?と気になり、顔を向けた。流雨はいつもと同じように窓の外を眺めていた。

他の男子とは違い、冬華をはじめに少し見ただけであとは、興味がなくなったようだ。

私はそのことに少し安堵した。

しばらく群がる生徒達の相手をしていた冬華は一人で窓の外を眺めていた流雨のことがきになったんだろう、立ち上がり、流雨へと向かった。


「こんにちは。えっと、自己紹介したんだけど、市川冬華です。あなたの名前は?」


「俺は新凪流雨。んで?用件は」


流雨、多分冬華は流雨の名前が知りたくて話しかけたんだと思うよ。


「よ、用件?え、と、名前を知りたかっただけ、だよ?」


やっぱり、そうだったんだ。

流雨、私の時とはずいぶん冷たいなぁ。あ、そうか。教室だからか。流雨にとって屋上は安らげる場所なんだなと私は思った。


「いや、別にないならいいんだが、なぜに疑問系?」


冬華は流雨の質問を無視し、何かぶつぶつつぶやいている。


「流雨くん………ルウくん………ルー君………ルーちゃん!。うん、ルーちゃんって呼ぶね」


・・・・男の子にちゃんはどうかと思うんだけど。


「ちゃん?いやまぁ、別にいいんだが」


「うん!よろしくね、ルーちゃん!」


冬華は満足したのか席へと帰っていった。流雨は頭をかしげていた。

そこでチャイムがなり、授業が始まった。


なにごともなく、放課後を迎え、流雨はいつもと同じように屋上へ行く。私はいつもそれについて行く。

多分、囲まれている冬華もついてくるんだろうけど。


屋上の扉を開け、流雨の隣に行く。


「お、いいのか?」


「なにが?」


「なにが?って、俺の隣なんかで良いのかってことだよ。探せばもっといい場所あるかもしれないが」


「流雨は探したんでしょ」


「……まぁな。でも俺とおま「分かってる。流雨が良いと思ったことが私も良いと思うかどうかわからないってことくらい」


「わかってるならなんでだ?」


「それは、私も此処が良いと思ったから」


「…………そーかい」


「ええ。そうよ」


・・・・・・・・・・・・・・

しばしの沈黙。


「流雨、初めてあっ

ガチャン

扉が開き、流雨と私は扉の方を向く。そこにいたのは予想通り、冬華だった。


「わー!綺麗な夕日!」


夕日を見ながらこちらへ歩いてくる。

そして、流雨の左隣へ。


「よろしく。冬華」


「えっと」


ああ、私名乗ってなかったもんね。


「雫よ。森園雫」


「よろしくね雫ちゃん!」


これが、私達三人の腐れ縁の始まりだった。


聞いてみれば流雨と私と冬華は近所だった。


小学校を卒業し、地元の中学校へ入学する。

お父さんの仕事ぶりを見た社長は、こんな逸材をほかのところへやるのは惜しいといって、異動はさせないつもりらしい。だから、もう転校しないようだ。

私としてもそれは願ったり叶ったりだけれど。その話を聞いた時、内心喜んだ。

いつの間にか、流雨、私、冬華はいつも一緒に行動するようになっていった。

中学2年生になる頃には、あんなに幼かった流雨は、稽古によってしっかりした体つきに。私は出るところはちゃんと出るようになり、引っ込むところはちゃんと引っ込んだ。ちょっと出過ぎかな、と思ったことが多々ある。特に胸が。冬華も同じで出るところはちゃんとでて、引っ込むところはちゃんと引っ込んだ。まぁ、胸が出過ぎかなとは思っているようだ。流雨は可愛いかった顔からかっこよくなり、私と冬華は美人になった。まぁ、男どもの目線は胸にいっているけども。たとえ顔が良くても、下心を隠そうともしないやつら、隠せていても胸だけを見て告白してくるやつらが多くなった。勿論断ったけどね。その時にお前と一緒にいる男となにがにが違うんだと言われたけど、そんなことも気づかない奴に教える義理はないから冷笑を浮かべてその場を離れた。 流雨は流雨で、顔と性格から下級生や上級生からの告白が絶えないようだ。

流雨と私と冬華は成績が良く、流雨と私が同点で、少し点が低く冬華、という順だ。とは言っても三人とも高い方だけどね。


ある日、冬華が風邪を引いて休んだ。その時に、小学生とことを思い出した。あの時に言った流雨の言葉が誰の言葉か気になった。


「ねえ、流雨?小学生の時のこと覚えてる」


冬華の見舞いに行く途中に聞いて見た。すると流雨は


「ああ、まぁな」


と笑いながら答えた。


「あの時に言った言葉って誰の言葉?」


「俺の言葉ってことで納得してくれないのか?」


「無理があると思う。あの時の流雨は確かに大人びていたけど、言葉は難し過ぎた」


「まあ、確かにな」


「それで?誰の言葉?」


流雨は少し答えるのを渋った。


「母さんの言葉なんだよ」


そう答えた。


「俺もお前と同じで別の理由で感情を閉ざしていた。いつも自分の部屋に閉じこもっていた。そんな時に母さんは俺の顔をつかんで無理矢理目を合わせてこういった。

『流雨?そんな生き方つまらないでしょ?そんな斜に構えてひねくれた見方しかできないで。感情を閉ざして。毎日が同じ事の繰り返しで退屈で嫌でしょ。流雨が辛いことがあって感情を閉ざしているのは分かってる。でもね、今のままじゃあ余計辛いままなの。だから感情を出してみよう?笑って見よう?。

まあ、無理にだせとは言わない。閉ざしている感情を少しだけ、時々でいい、出して見ると、退屈で嫌な毎日が少し変わって見えるから。それが楽しくなるかはわからない。それは流雨次第だから』ってな。ま、雫があまりにも俺と似てたからつい、柄にもないこと言っちゃったけどな」


そう言ってはにかむ。

ああ、変わってないんだな。いくらかっこよくなろうがしっかりした体つきになろうが、私を孤独から救ってくれたあの頃の流雨のまんまなんだなと気づいた。変わったと思ったから安心した。


そして流雨は今も変わっていない。

それを思い出した私は静かに目を閉じて泥のように眠った。



















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