閑話 バレンタイン II
バレンタインは既に過ぎていますがバレンタインネタです。一応次話から本編へと戻る予定です。
「流雨、あのね?」
「これ……バレンタインの」
一階へおりて来た眠気眼の流雨に、雫と冬華は恐る恐る手作りのチョコレートを渡す。もう既にあんなことやこんなことを済ませてあるのだが、こういうところは初心な雫達である。
「なんじゃこりゃ」
雫と冬華のチョコレートを見て、流雨の眠気など一瞬で吹き飛んだ。異様にチョコレートの完成度が高く、雫などどこのパティシエだと突っ込みたいほどのものだった。
「これは食べてもいいのか?なんか食べるのが持ったいない気がするんだが」
「だ、大丈夫。食べて?」
流雨は数巡した後、冬華に勧められるままに冬華のチョコレートを食べ、雫のチョコレートを食べる。流雨は甘い物はあまり好きではなく、チョコレートだったらビターに近い物を好む。それを雫と冬華は知っているため、どちらのチョコレートも甘さ控えめになっており、流雨の好む味になっている。
「どう、かな」
「おいしい?」
雫と冬華が、なんの反応もない流雨を上目遣いで見上げ、恐る恐る尋ねる。
「めちゃくちゃ美味い。今まで雫と冬華からもらったチョコの中で一番美味いかもしれない」
が、流雨の言葉によって雫と冬華は互いにハイタッチを交わした。
そんな雫と冬華を横目に見ながら、流雨は黙々とチョコレートを平らげて行く。
雫と冬華の二つのチョコレートは結構な量があったはずなのだが、流雨は僅か十五分程で食べ終えてしまった。
「美味かった。これはホワイトデーは奮発しないとな?」
「んーとね、チョコレートも言いけど」
「ホワイトデーは」
雫と冬華は言葉を途中で区切り、流雨に流し目を向ける。
「「流雨が食べたいな」」
雫と冬華は自分の唇を指で撫で、甘く囁く。
「いや、まあ予想してた答えが返って来たわけだが、一応チョコレートも貰ってくれよ?」
そんな雫と冬華に呆れながら、流雨は片手で頭を抱えて囁く雫達に返す。思いがけずに転がり込んで来た流雨のチョコレートに、雫と冬華はまたまたハイタッチを交わし合う。
そんな二人を見て静かに微笑む流雨だった。




