閑話 バレンタイン I
遅いですがバレンタインネタです。
ちなみに時間軸は黒滅死龍を倒して少し経った後になります。
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「流雨ちゃんは部屋?」
「ええ。ぐっすり寝てる」
ミフェリア大陸の大半を締める『大樹海』の中央部。湖のほとりにひっそりと佇む大きな家のキッチンの中で、雫と冬華は朝早くになにやらごそごそと動いていた。キッチンには甘く美味しそうな匂いが充満しており、雫と冬華が作っているものがなにか容易に想像が出来る。今日は日本で言う2月14日。つまりはバレンタインだ。雫と冬華の手の中には銀製のボウルがあり、中にはミフェリア豆(日本で言うカカオ豆)を乾燥させたり焙煎したり皮を剥いたり砕いたりすり潰したりして砂糖やココアパウダーなどを加えて作ったチョコレートが入っている。平たく言うとミフェリア豆から作られた正真正銘の手作りチョコレートだ。
「流雨ちゃんは匂いとかに敏感だから、早く仕上げちゃおう」
「そうね」
雫と冬華はチョコレートを炎属性魔法で熱し、固まりかけていたチョコレートを溶かす。冬華はこれまた銀板から作ったハート型の型に流し込み、氷属性魔法で一気に冷却する。残りのチョコレートを水属性魔法で操ると、リボンの形に整えてハート型のチョコレートの上の辺りにくっつけ、冷却する。これで冬華特性チョコレートは完成である。
「出来た!」
「…………」
雫はそれを見て対抗心を燃やしたのか、ボウルの中のチョコレートを水属性魔法で操ると、流雨が好きな花、百合の形に整えて行く。花弁の反りかたや質感。そして雌しべと雄しべと葉も作ると、氷属性魔法で一気に冷却する。まだ余りあるチョコレートを使って、花瓶を作り、さっき作った一輪の百合を差し込むと、氷属性魔法で冷却する。これで、チョコレートで出来た花瓶の中に咲き誇るチョコレートで出来た一輪の百合、雫のチョコレートが完成した。
「あはっ」
「ふふっ」
雫と冬華はお互いが作ったチョコレートを見て、顔を合わせて微笑み合う。
「くぁふ。おはよう」
あくびを噛み殺しながら流雨が一階におりてきていた。流雨がおりてくることを確認した雫と冬華は先程とは別のニュアンスを含んだ笑みを浮かべると、流雨の元へ掛けて行った。
◆
「ん……くぅ」
なんだろう、なんか凄い甘い匂いがする。今日はなにかあったか?まあ一階におりて見ればわかることか。洗面所で顔を洗い、鏡を見ながら乱れた髪を整える。
「くぁふ。おはよう」
匂いの元はキッチンか。あくびを噛み殺しながら階段を降りて行った。




