閑話 エリシスとフユカ
ルー達と分かれたあと、私は部屋のベッドに腰掛けていた。多分ルー達も気づいているだろう。かなり大きい魔力の塊がこちらに向かってきているということに。忘れるはずがない。魔力の波長、そして、魔力の中に感じる禍々しさ。全てがあの龍と一緒。私の両親を殺したあの龍、黒滅死龍と。でも、親の仇が近づいているというのに、私はずいぶんと落ち着いていた。それはそうだろう。私はあの時とは違う。無力だった頃とは、孤独だった頃とは。私には、私のために本気で怒ってくれる仲間がいる。だから取り乱さずにいられるのだろう。我を保っていられるのだろう。ぼーっと天井を見ていたら、コンコンと扉がノックされた。
「どうぞ」
「失礼しまーす。って、あれ?落ち着いてる」
入ってきたのはフユカだった。おそるおそる部屋に入ってきたと思ったら、私を見てキョトンした顔をした。やっぱりフユカは分からない。真剣な顔をしたと思ったら冗談を言うし、ふざけているかと思えば真剣な顔をしているし。唯一わかるのは、フユカいつでも真面目だっていうことだけ。フユカを見ていていつも思うのは、お母さんに似ているってこと。
「んー、大丈夫そうだね」
「ええ、おかげさまで」
フユカは私の隣に腰掛けながら、そう私に声を掛ける。フユカの顔を見ると、すこし申し訳なさそうな顔をしていた。
「エリシス、黒滅死龍のことなんだけど……」
「ええ、流雨に任せるわ」
「いいの?だって、エリシスにとって黒滅死龍は」
フユカが気を使ってくれているのがわかる。そして、なにをいいたいのかわかる。
「いいの。私がやっても返り討ちに合うだけだから。でも、全部は任せない」
せめて一矢報いたいから。
「うん、それだけわかってれば大丈夫そうね。それじゃ、私はもういくね。おやすみ」
「ええ、おやすみ」
そう言ってフユカは私に微笑むと、扉を開けて出て行った。本当に何しに来たか分からない。でも、ありがとう。
流雨達には言ってないけど、私は黒滅死龍のためにある魔法をずっと練習して来た。攻撃魔法と防御魔法の最上級魔法の二つをを。一回で魔力の五分の二を消費為るから何発も使用は出来ない。けど、上級魔法とは一線を画す魔法となっている。
「ふぅ、フユカ達って本当に可愛いわね」
全然関係ないけど。そういえば、シズクとフユカってずっとルーを誘惑してたわよね。そしてその誘惑にルーは耐えていたと。なにげに凄いんじゃない?それって。女の私でもすぐ陥落しそうなんだけど。
「いけないいけない」
頭を振ってくだらない思考を振り払う。
ん、もうちょうどいい時間だし、寝ましょうか。
「このスピードから言って、明日の、午後くらいかしらね」
黒滅死龍が近づいてくる速さと、黒滅死龍からここの距離を考えると、大体明日の午後くらいに出会うことになる。
どういう結果になるかどうかは分からない。なるようになるとは思うけど。
そんなことを考えながら、私は静かに眠りについた。




