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第四十七話 過酷の崖登り

「ちょっと、休憩しようか」


息を切らした流雨の言葉に、雫達は岩の上に腰掛ける。山を登り始めて約一時間。流石の流雨達も疲労が溜まってきたらしく、呼吸が早い。


「こんだけ疲れた後にこれを登るのかよ。全く、冗談にしか思えないんだが」


「冗談じゃなくて、現実だから困る」


岩に座ったまま、流雨は断崖絶壁を見る。傾斜はおよそ82°。ほぼ90°の崖を、長く険しい山道を歩いた後に登らなければ、頂上につくことは出来ない。


「さて、登るか」


「そう、ね。頑張りましょう」


立ち上がった流雨に続き、エリシス達も立ち上がる。が、その顔は暗く、返事を返したのはエリシスのみ。流雨は断崖絶壁の前に立ち、凸凹に手と足をかけ、着々と登って行く。雫達も同じように登って行くが、その足取り?は重い。


「だい、じょうぶか?」


「うんっ、大丈夫」


「まだいける」


「なんとか、持ちこたえてる状態ね」


登り始めて約三十分。ひとまず一つ目の崖を登り終え、一旦休憩のため岩に座って水分を補給する。四人の顔には汗が浮かび、いつもの余裕がどこにも無い。エリシスに至っては会話する気力もない状態だ。この差が自分の体を鍛えた流雨達と、身体強化の魔法に頼り過ぎたエリシスとの間にある体力と筋力の差だ。


「取り敢えず、これを食べとけ」


そう言って流雨が全員に渡したのは、流雨お手製のおはぎだ。糖分を補給するという意味合いもあり、疲れをとるというのが流雨の狙いだ。もっとも、きな粉やあんこは作れなかったため、胡麻と砂糖のおはぎとなっているが。


「んっ、美味しい」


「久しぶりに流雨ちゃんのおはぎ食べたけど、前より美味しくなってない?」


「おお、我ながらうまく出来たな…………って、これはどっちかっつーと女性の趣味じゃねえか」


ちなみに、お菓子作りは流雨の趣味だ。どっちもなにもお菓子作りは完全に女性の趣味だと気づいた流雨は、かなり凹む。そんな流雨達の様子を見えていたエリシスは、流雨お手製のおはぎを恐る恐る口にする。何回か咀嚼され、エリシスの目が見開かれた。


「な、なにこれ、美味しすぎる……!」


砂糖はこの世界ではあまり生産されておらず、高値で取引されていて、貴族はともかく庶民が手を出せる値段ではない。そのため、流通している砂糖を使ったお菓子はないと言っても過言ではない。なにが言いたいかというと、普段甘い物を口にすることが少ないこの世界の人は、かなり甘い物に目がないということだ。エリシスも例外ではない。エリシスは先に食べ始めた流雨達よりもはるかに早く食べ終え、恍惚とした表情を浮かべる。


「ルー、まだある!?」


「のわっ!あるっ、あるから離れろ!近い近い!」


余韻に浸り終えたエリシスは流雨に詰めかける。鼻が触れ合う距離まで近づき、飛びのいた流雨からおはぎをもらうと、さっきまで自分のいた岩に座り、今度は味合うようにゆっくりと咀嚼する。


「流雨ちゃん、私にも頂戴?」


「私も」


「あいよ」


食べ終わった雫達におはぎを配り、流雨は自分でも二つ目のおはぎを口にする。


こうして、和やかな時間を過ごした。



















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