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第四十六話 山登り

「ルーちゃん。私エリシスを運んでくるね」


「ああ、頼む」


泣き疲れて冬華の腕の中で眠りについたエリシスを、冬華が抱き上げる。どうやらこの世界に来てからかなり筋力が強化されているようで、冬華の華奢な腕でもエリシスを軽く持ち上げることが出来ていた。流雨が部屋の扉を開け、冬華が出て行く。流雨も同時に部屋から出て、エリシスの部屋の扉を開ける。エリシスの部屋に入った冬華は、エリシスをベッドへ寝かせ、毛布をかける。その後、部屋へ戻った流雨と冬華は、雫と一緒にベッドに腰掛ける。流石に三人は無理があったようで、ギシリとベッドが軋んだ。


「さて、エリシスのことなんだが……」


「そろそろ、来そうだね」


流雨の言葉に冬華が言葉をかぶせる。流雨は苦笑するが、頷く。流雨達の三人は、嫌な予感がしていた。嫌な予感は必ずと言ってもいいほどよく当たる。これは流雨達が元の世界で嫌という程経験した言葉だ。


「黒滅死龍、だっけ?襲ってくるとしても、流石に単独で来るほど馬鹿じゃないよね」


「恐らく、黒龍か黒死龍を率いてやってくるでしょうね」


いくら黒龍の最上位種とは言っても、それを軽々と上回る化け物が、ここには三人いる。それをわからない黒滅死龍ではないだろう。単体で勝てないのならば、物量で押しつぶすのみ。これは簡単に思いつく事だ。


「額に三日月型の傷がついた黒滅死龍、か。そいつは俺がやる。群がる黒龍達は雫と冬華、二人で頼む」


「手加減して勝てる相手でもないしね」


「ええ」


流雨の言う事に雫と冬華が従わない訳がなく、流雨の両腕を抱え込み、即答する。


「んじゃ、そろそろいい時間だし、寝るか?」


「「うん!」」


眠そうに目をこする流雨の胸の中に雫と冬華が、満面の笑みで飛び込んだ。











「さてと、登るか」


「大変そうね」


朝の用意を済ませた流雨達は、高々とそびえる山の麓に立っていた。巫女さんから聞いたところ、ここに来た冒険者達はほぼ全員この山に登っているらしい。山と言っても、木や草花は生えておらず、岩肌が露出した険しい山だが。


「いってらっしゃいませ」


赤い巫女さんに見送られ、流雨達は傾斜25°の道を登り始めた。辺りには濃霧が立ち込め、二十m先が見えなくなっており、かなり危険な状態となっている。当然、この山に魔物が出てこない訳がなく、出て来る魔物のランクも比較的高い魔物ばかりだ。

この山を登った冒険者達は口を揃えてこう言う。『本当の試練はここからだった』、と。

流雨達を出迎えたのは、まさかのランドルトだった。これでこの山で1番弱いと言うのだから、どれだけの冒険者達を苦しめて来たか、容易に想像出来る。


「グォォォオオォォッ……「邪魔すんな」……グォッ」


そんなランドルトを、先頭を歩く流雨は一蹴し、腕を振るう。それだけでランドルトの首が落ちた。不思議な事に、血を撒き散らしながら地面に倒れ伏したランドルトは、光の粒子と化して消え去った。飛び散っていた血も一緒に。冒険者は死ぬほどの思いをするが、一銭も金にはならない。そういう事なのだろう。まさに苦行だ。だが、金では得る事が出来ないものを得る事ができる。この山では、どんなに攻撃を受けても死ぬ事はない。勿論攻撃を食らった際には痛みは生じるが。そのため、通常よりも経験値を多く得る事ができ、ここを登り切った冒険者達は皆、二ランク程の上の強さを身につける事が出来る。


「ギャアギャア!」


「墜ちろ」


全長およそ五m程の飛来して来た鴉を、流雨は無詠唱のフレイム・テンペストで撃ち落とす。鴉はペンドラといって、歴としたA+ランクの魔物なのだが、そんな事を流雨が知る由もない。


「こんにちは!」


次に現れた魔物は、エンプティといって人間の言葉を話すデカイ猿。これもペンドラ同じくA+ランクの魔物。人間の言葉を話すのならば、どこまで話せるか聞き届けようと流雨は耳を澄ます。が、そんな余裕はすぐに消し飛んだ。


「やったねタエ「やめろぉ!何処で覚えたそんな言葉!」……キィ」


危険な言葉を発しようとしたエンプティに、流雨は炎の槍をぶん投げる。投げられた炎の槍は、一直線にエンプティの頭に飛んで行き、爆発音と共にエンプティの頭を貫いた。


「さ、行こうか」


いい笑顔で振り向く流雨に、雫達は頷くしかなかった。











































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