第四十四話 悪夢の幕開け
「うまく、行ったのですね」
「のわぁっ!」
「きゃっ!」
「ひゃぁっ!」
寄り添いあっていた流雨達に、赤い巫女服に身を包んだ巫女さんが、口元に手をやりながら声をかける。突然声をかけられた流雨達は、揃って肩を跳ねさせる。が、腕を離さず、慌てて距離を取らなかったのは、流石流雨達ということだろうか。
「なんだ、巫女さんか。ああ、その説はお世話になった」
「いえいえ、私はなにも。ふふふ。では、お邪魔な私はこれで」
そう言って微笑むと、一礼をして、赤い巫女さんは霧の中に消えて行った。
「寒くなって来たし、帰るか?」
「「うん!」」
流雨の肩に頭を置いている二人に、流雨はそう言って微笑みかける。雫達は、頬を染め、すりすりと流雨の肩に頬ずりをすると、流雨の顔を見つめ、満面の笑みを浮かべた。
うん。爆発したらいい。
寒い風か吹くなか、流雨達は宿屋へ戻って来ていた。
「あ、エリシス。どうしたんだ?」
「え?あ、うん。なんでも……ない」
宿屋の扉の前で、エリシスは悲しそうな顔を浮かべて、夜空を眺めて居た。ただ見ているのに耐えかね、流雨は声をかけた。だが、返ってきたのは、煮え切らない言葉だった。
「帰ってきたんだ。私、先に中に入っているわね」
「あ、ああ」
エリシスは流雨にそれだけ言うと、宿屋の中へ入って行った。
「エリシス、どうしたんだろうね」
「いや、わからない。けど、俺達は仲間だ。悩み事があるなら、話してくれるさ。それまで、待つしかないな」
「そうね」
流雨達を、そう話し合いながら宿屋の扉を開け、部屋の扉を開けた。まだ、流雨の両腕には雫と冬華がくっついており、流雨の肩に頬ずりをして、満面の笑みを浮かべていた。
「雫、冬華。二人とも、今日はどこで寝るんだ?」
「え?もちろん」
「ルーちゃんと一緒に、だけど?」
扉を閉め、両腕を胸に抱えんでいる二人に、流雨は一抹の不安を覚え、そう聞いた。そして、返ってきた答えは、見事流雨が忌避していたことだった。
「いや、あのな?付き合ってなかった頃は、付き合ってないからいろいろと歯止めが聞いてたから、理性を保ててたが、今は違うだろ?俺達は付き合ってる。ようはストッパーが外された状態にいるんだよ、俺は。だから、今一緒に寝たら、理性を保てるかわからねえんだ」
これが、流雨が覚えていた一抹の不安だった。だが、そう思っていたのは、どうやら流雨だけだったようで。
「ルーちゃん、私はいつ襲ってもらっても、いいんだよ?」
「ええ、いつでも準備オッケー」
と、二人ともそう言って流雨の胸に抱きつく始末。崩壊しそうになる理性を必死に保ち、流雨はこめかみのあたりを押さえる。
「ん?」
イチャイチャする流雨達の部屋の扉が、突然ノックされた。そして、開かれた扉の前に立っていたのは、いつになく真剣な顔をしたエリシスだった。




