第四十二話 決意
雫達が帰って来てから、俺はドキドキしながら過ごしていた。ドキドキするなんて俺らしくないとは思っているが、こればかり仕方がない。俺は、二人の気持ちに気づいていながら、幼馴染という心地よい関係をむやみに崩さないように過ごして来た。いや、俺はただ恐かっただけかもしれない。元の世界には、二人と交際するというのは出来なかった。俺には、どちらかと付き合って、どちらかを切り捨てるなんてことは、到底できやしなかった。二人が泣いているところなんて、見たくはなかった。どちらかが傷ついて、今の関係が崩れるならば、二人の気持ちを見て見ぬ振りを続けて今の関係でいた方がいいと思った。たとえ、それで二人が傷つこうとも。
元の世界では、俺は自分に言い訳して逃げることが出来た。だが、異世界転移してからは、薄々、もう見て見ぬ振りは出来ないと気づいていた。この世界では、二人と交際なんてものは珍しくもなんともなく、まだ誠実な方、一途な方らしい。そんなところに来てからも、俺は逃げ続けて来た。二人を守る力なんて、俺にあるのだろうか。付き合えなくて、ただ幼馴染という関係を壊すことしか出来ないんじゃないか。そんな不安が、俺の中をぐるぐると渦巻いていた。
だが、巫女さんに現実を突きつけられた。逃げるなと、現実を見ろと言われた。そんなに恐れなくても大丈夫だと。正直、巫女さんに言われたから告白するんじゃない。自分の気持ちを抑えきれなくなったきたからだ。主に移動中の馬車の中での出来事のせいでいろいろと抑えきれなくなった。おかげで馬車にはろくな思い出がない。
どうやら、二人は俺に何か伝えたいようだが、それは男の役目だ。ちっぽけなプライドと言われ様とも、それは譲ることが出来ない。ただでさえ、逃げて来た俺なんかに、告白する資格なんてないのに、そこを譲ったら、隣にいる資格さえなくなってしまう。
流石に宿屋の中は雰囲気の欠片もないため、外に呼び出した。
空を見れば、夜空を照らす満月と、月明かりに負けないように爛々と輝く星々に、夜空が彩られていた。
「流雨。大事な話ってなに?」
後ろを振り返れば、俺が好きになった雫と冬華が、緊張した顔で立っていた。
「少し、な。二人に伝えたいことがあって」
「ルーちゃん、が?」
冬華の問いに、俺は頷く。正直、足が震える。振られるのではないか。愛想を尽かされたのではないか。という不安が、俺を雁字搦めにからめ取る。だが、ここで逃げてしまえば、俺は隣を歩く資格を失うだろう。
それは、絶対に避けなければいけない。自分でも情けないとは思うが、どうやら俺は、二人がいないと生きることができなくなったようだった。
神なんて信じてこなかったが、今だけは。
どうかいい答えがかえってきますように。
次回告白!




