第三十六話 忍び寄る影
ひどく暗い穴の中に、微かな女性の喘ぎ声が響く。やがてだんだん大きくなり、そして静かになった。
しばらくして、穴の中からでてきたのは、黒髪黒目の切れ目の青年だった。
「グリード様。これで何人孕みましたかね」
青年と同じ黒髪黒目の壮年の男性は、青年をグリード様と、呼んだ。
「くはははっ。そうだな、人間が140人。エルフが213人。フェアリーが89人だな」
壮年の男性の問いに、グリードはそう答え、不敵の笑みを浮かべた。
「これで満足ですか?戦力も整ってきましたし」
「いや、まだだ。覚えているか?シリス。あの村を襲っときに、我の額に傷をつけた男と女を」
グリードは、自分の額にある、三日月型の傷を指差す。壮年の男性、シリスと呼ばれた男は、しずかに頷く。
「あの二人の間には娘がいた。あれからかなりの月日が立った。あいつももう大人になっだろう。あいつも、加えようかと思ってな」
「そうですか、あの女を。さすが、黒滅死龍様はお考えになることが違う」
グリードとシリスは、静かに笑い合う。グリードとシリスは人間ではなく、それぞれ黒滅死龍と黒死龍。
「まさか世界征服を為るなど、思ってもおりませんでした」
「そうだな。この世を黒龍達で埋め尽くそうと思ってな。素質のいい女ならば、黒死龍、それか黒滅死龍が生まれることがあるかもしれん」
「幸いにして、女が身籠るまで行為から約五日。さらに産まれるまで一ヶ月。新たな黒龍達が誕生するまでそう長くはあるますまい」
シリスが、下衆びた笑みを浮かべ、黒龍達を身籠っている女性を閉じ込めている檻を見る。そこに閉じ込められている多種族の女性達は、下半身には何もきせられておらず、股を開いており、その股の間からは、白濁とした液体が流れていた。目は虚ろで、自分を慰めるものまでいる。新たに運び込まれ、辱められた女性以外の女性はすべて、黒龍達を身籠っており、お腹が大きく膨れている。
「さて、子が生まれ、羽ばたけるようになった時、あの女の元へといこうぞ」
「はっ、仰せのままに」
グリードの言葉に、シリスは跪く。グリードは、シリスを見て、また、ひどく暗い穴の中に戻って行った。
「黒龍達よ、あの子娘、エリシスの行方を確かめておけ。グリード様のお手を煩わせるようなことが無いようにな」
シリスは、グリードが去ったことを見るとすぐ、黒龍達に指示を出す。黒龍達は頷き、それぞれ羽ばたいて行った。
エリシス達に、不穏な影が。
といっても、直接対峙するのは巫女治山のあとなんですけどね。




