第三十一話 盗賊達の殲滅
「準備はいい?」
「ああ」
「それじゃ、出発するわね」
動き出してから数時間。馬や湯船付きの馬車。食糧や調味料。それから服などなど。旅に必要なものをすべて買い、エリシスが馬車を走らせた。湯船付きの馬車は巨大ものとなっており、湯船は勿論、冷房や暖房、お尻が痛くなることはない設備、冷蔵庫やベッドや諸々が設置してある。馬車内の設置はすべて、オルストからの貰い物だ。肝心な馬は、獄帝馬と呼ばれる、Sランク魔獣に匹敵する戦闘能力に、圧倒的な破壊力を持ち、それから紅黒い毛並みをしている馬に、白帝馬と呼ばれる、同じくSランク魔獣に匹敵する戦闘能力に、回復魔術を使え、純白の毛並みをしている馬が二頭、巨大な馬車を引いている。
「どこに行く?」
「エリシス、ここら辺で、一番勢力を持っている盗賊のアジトってどこにある?」
「そうね。ここから少し離れた場所にある、山脈の麓にあるわね」
エリシスの答えに、流雨はニヤリと笑い、
「それじゃ、そこに向かってくれ」
そういった。
◆
私はどうなってしまうのだろうか?盗賊のアジトの牢獄に手足を鎖で縛られて監禁され、媚薬入りの食事を毎日食わされ、犯され続けて数年がたつ。もうすでに生きる気力すらない。だが、屈したわけではない。が、同時に助けがくるなんて思ってもいない。私はエルフという種族で、寿命が500年くらいあり、人間よりも遥かに長く生きる。私はまだ96歳の未成年だ。エルフは100歳が大人となっている。
「へっへっへ。ちゃんと生きてるな?」
一人の盗賊が、いやらしい笑みを浮かべて牢獄の中へと入ってくる。そして、私の顎を掴み、上へ向かせ、何かを飲ませる。おそらくは、妊娠させないための物なのだろう。私が飲み終わったことを確認すると、盗賊は中へと挿入する。そして、欲望を中へと吐き出す。その後、無理矢理口にねじ込み、また吐き出す。
「ぁ……ぁぁ……………ぁ」
抵抗する力など残っておらず、私は、力なく四肢を地面に横たえる。盗賊は満足したのか、牢獄から出て行った。
私はおかしくなってしまったのだろうか。頭が真っ白で、何も考えられなくなってしまっている。
私が堕ちてしまわないうちに、どうか、もう一度だけ、外の景色をーー
私がそう願った途端、アジトの入り口のほうから、轟音が聞こえた。
◆
「へえ。結構本格的に作ってあるんだな。それじゃ、派手な花火を打ち上げようか!《エクスプロージョン》!」
麓に辿り着いた流雨達の前には、鋼鉄の巨大な扉が立っていた。流雨は、炎属性上級魔法
《エクスプロージョン》を唱え、鋼鉄の扉を破壊する。凄まじい轟音と、暴風があたりに吹き荒れる。あたりの草木は一瞬で灰になり、鋼鉄の扉は粉々になり、溶けている。
「盗賊相手に、対人戦の腕試しをしたいって言った時は驚いたわね」
「そうだね。莫大な力を持っていながら今さら対人戦とか、なんの冗談?っていう感じだったね」
「それを冬華が言っちゃダメだと思う」
「あれ?雫ちゃんもそれを言っちゃダメじゃない?」
「お出ましだ」
わいわい騒いでた雫と冬華が、流雨の一言で静まりかえる。アジトの入り口から、ぞろぞろと盗賊達が出てくる。
「みろよあいつら!良い身体してやがっ……「吹き飛べ」
盗賊の一人が、雫達を見て、いやらしい笑みを浮かべた瞬間、流雨がその盗賊の頭を蹴り飛ばした。流雨の蹴りによって、盗賊の頭はひしゃげながら胴体を離れ、地面を転がる。頭が離れた首からは、噴水の如く血が噴き出していた。
あたりがシーンと静まり返る。その中で、流雨達だけが動いていた。
「お前、お前達は一体なんなんだ!?何しにきた!?」
盗賊の一人が、流雨に向かって怒鳴り散らす。
「なにって、腕試しだが」
盗賊の激怒などどこ吹く風という感じで、盗賊の質問に、流雨は答えた。
「ふざけ「ふざけるなだって?なにいってるんだ?お前。お前達は気まぐれに人を殺し、女を犯し、奴隷にする。俺は気まぐれにお前達を殺す。やっていることは同じじゃないか。自分達の事を棚に上げて、人の事をいうんじゃねえよ」………」
再び怒鳴ろうとした盗賊は、流雨の射抜くが如く冷たい視線と、冷たい言葉に、何も言えなくなる。
「超広範囲凍結魔法 《ニヴルヘイム》」
雫は、そう唱える。
超広範囲凍結魔法 《ニヴルヘイム》。自分を中心として、半径二十kmにいる、自分が敵と認識したものを凍結させる魔法だ。上空も、地下も含めて、だ。
氷属性魔法は、最上級になると二つに分類される。一つは、氷属性最上級魔法。二つ目は、雫の使った凍結魔法だ。氷属性最上級魔法は、氷をぶつけて相手を潰したり、氷の槍で相手を滅多刺しにしたりする魔法で、いろいろめちゃくちゃだ。凍結魔法は、相手の一部分を凍結させて砕いたり、全身を凍結させて砕いたり、雫のように広範囲に渡って、多人数の相手を凍結させる魔法だ。雫の使った超広範囲凍結魔法は、凍結魔法の中でも頂点に位置する魔法だ。
外に出ている盗賊たち、それから中にいる盗賊のボスは、雫の魔法によって絶命した。
「いや、おいおいおい。これじゃ俺の役目が無くないか?」
かくして、流雨の出番無く、盗賊達は全滅した。




