第三十話 出発の用意
「雫達、手伝ってくれないか?」
「わかった」
「あ、うん」
「え、ええ」
流雨は、召喚を解除し、ワイバーンをアイテムボックスに入れながら、雫達達に声をかける。声をかけられた雫達は、流雨と同じように、アイテムボックスにワイバーンをいれて行く。
「す、すげえ」
目の前の虐殺を目にした兵士たちは、それしか声に出せなかった。ナテア王国三強ですら、ワイバーンを三体しか同時に相手をすることができないというのに、流雨は、ワイバーン100体を持ってしても、まるで相手になっていない。しかも、力に溺れることなく、自分の守りたいもののためにその力を振るうことができる。そのことに兵士たちはただ、感動していた。
「さて、虐殺も終えたことだ。報酬をもらおうか?」
そう言って流雨は、兵士たちに向き直った。
「流石ね。本当に一人でやるなんて」
約束通り、報酬の閃貨100枚を貰い、城の外に出た時、エリシスが流雨に話しかけた。
「まあな。本当は、始めにいった通りにやろうと思ってたんだが、仕方が無い」
「それで?ウォンデントはどうするの?」
「勿論、殺しはしないがーー」
問いかけてきた冬華に向き、「ーー利き手を貰い受ける」そう言って笑った。
◆
「さて、すでに終わった頃か」
ウォンデントがコーヒーを飲みながら呟く。
「よろしかったのですか?」
「なにがだ?」
「情報をちゃんと伝えずにいたことです」
メイドの問いに、ウォンデントは笑う。
「間違えたくらいで死ぬやつじゃないだろう?ワイバーンの素材を貰い受け、ギルドの手柄とするか」
「っ!いけません!契約を忘れたのですか!?」
「ふふっ。なに、ハッタリだろう。これでこのギルドもーーー」
ウォンデントがそう言いかけた瞬間、ドカン!と大きな音をたて、扉が吹き飛んだ。
「このギルドも、何だって?」
そこに立っていたのは、黒魔術で創り出した黒く輝く剣を手に持った、流雨だった。
◆
「あまり人を舐めるなよ?ギルドマスター」
「な……ぜ、だ。なぜ、お前がここに!?」
流雨の発する殺気に顔を青くしながら、ウォンデントは流雨に問い詰める。
「クックック、なんでか?聞くまでもないだろう。お前の諸々の愚行について聞くために、エリシスに送ってもらったんだよ」
流雨は、ウォンデントの問いに、笑みを浮かべながらそう答える。
「お前、ギルド員からワイバーンの数について、どのくらいと聞いていた?」
「………っ、ご、50以上だ………ぐうっ!」
「このものに回復を《ヒール》」
ウォンデントの答えを聞いた流雨は、ウォンデントの利き腕、右腕を切り飛ばした。冬華は、すぐさま治癒をかける。血があたりに飛び散らないように、だ。
「なにをする!?」
「おい、そこのメイド。次のギルドマスター候補は誰だ?」
「は、はい!お、オルスト様です!」
「そうか。それじゃあ、お前はもう死ね」
そう言って、流雨は剣を一閃した。ウォンデントの首がはねとばされ、冬華の《ヒール》によって、傷口が塞がる。
「《フレイム》」
雫が唱え、ウォンデントの死体を焼いて行く。やがて、灰が残った。
「さて、メイド。お前がこのことを言おうが、お前の勝手だ。だが、その時はこのギルドがなくなると思え」
腰を抜かし、漏らしているメイドを一瞥し、部屋をあとにした。
「なんだ?」
「失礼する」
次に流雨が訪れたのは、オルストの部屋だった。
「おお、お前たちか、それで?どうした」
「ああ、ギルドマスターを殺した」
「ぶっ!」
オルストは、入ってきたのが流雨たちだとわかると、ソファーに座るよう、促す。そして、コーヒーを口に含む。が、流雨の一言によって、コーヒーを吹き出した。
「理由はわかるな?」
「あ、ああ。まあな。それで、次のギルドマスター候補は…………」
「オルストだ」
「………………」
「一つ質問。この場合、俺は追われるのか?契約だと国を潰す、ということになってたが、ウォンデント一人の命で勘弁してやったんだが?」
「いや、追われないと思うぞ。今回で全面的に悪いのはウォンデントだからな」
そしてまたコーヒーを飲み始める。
「そうか。次のギルドマスター候補がオルストだと安心だ。また、頼むよ」
「じゃあな」
そう言って、オルストの部屋をあとにした。
「さて、俺はここを出ようと思う。………そこで、エリシスに相談だ。エリシスは、ここに残るか?」
ギルドをあとにし、しばらく歩いたあと流雨はエリシスに問いかけた。
「なに?おいてくの?当たり前じゃない。ついていくわよ。ここまで付き合ったんだもの、ついていくに決まってるじゃない」
エリシスは、そう答えた。雫と冬華が向き合い、ハイタッチをする。
「そうか!はぁ〜〜。良かった。んじゃ、そうと決まったら、出発の用意をしますか!」
流雨の提案に全員が頷き、流雨達は、各々用意のために動き出した。




