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第三十話 出発の用意

「雫達、手伝ってくれないか?」


「わかった」


「あ、うん」


「え、ええ」


流雨は、召喚を解除し、ワイバーンをアイテムボックスに入れながら、雫達達に声をかける。声をかけられた雫達は、流雨と同じように、アイテムボックスにワイバーンをいれて行く。


「す、すげえ」


目の前の虐殺を目にした兵士たちは、それしか声に出せなかった。ナテア王国三強ですら、ワイバーンを三体しか同時に相手をすることができないというのに、流雨は、ワイバーン100体を持ってしても、まるで相手になっていない。しかも、力に溺れることなく、自分の守りたいもののためにその力を振るうことができる。そのことに兵士たちはただ、感動していた。


「さて、虐殺も終えたことだ。報酬をもらおうか?」


そう言って流雨は、兵士たちに向き直った。





「流石ね。本当に一人でやるなんて」


約束通り、報酬の閃貨100枚を貰い、城の外に出た時、エリシスが流雨に話しかけた。


「まあな。本当は、始めにいった通りにやろうと思ってたんだが、仕方が無い」


「それで?ウォンデントはどうするの?」


「勿論、殺しはしないがーー」


問いかけてきた冬華に向き、「ーー利き手を貰い受ける」そう言って笑った。






「さて、すでに終わった頃か」


ウォンデントがコーヒーを飲みながら呟く。


「よろしかったのですか?」


「なにがだ?」


「情報をちゃんと伝えずにいたことです」


メイドの問いに、ウォンデントは笑う。


「間違えたくらいで死ぬやつじゃないだろう?ワイバーンの素材を貰い受け、ギルドの手柄とするか」


「っ!いけません!契約を忘れたのですか!?」


「ふふっ。なに、ハッタリだろう。これでこのギルドもーーー」


ウォンデントがそう言いかけた瞬間、ドカン!と大きな音をたて、扉が吹き飛んだ。


「このギルドも、何だって?」


そこに立っていたのは、黒魔術で創り出した黒く輝く剣を手に持った、流雨だった。





「あまり人を舐めるなよ?ギルドマスター」


「な……ぜ、だ。なぜ、お前がここに!?」


流雨の発する殺気に顔を青くしながら、ウォンデントは流雨に問い詰める。


「クックック、なんでか?聞くまでもないだろう。お前の諸々の愚行について聞くために、エリシスに送ってもらったんだよ」


流雨は、ウォンデントの問いに、笑みを浮かべながらそう答える。


「お前、ギルド員からワイバーンの数について、どのくらいと聞いていた?」


「………っ、ご、50以上だ………ぐうっ!」


「このものに回復を《ヒール》」


ウォンデントの答えを聞いた流雨は、ウォンデントの利き腕、右腕を切り飛ばした。冬華は、すぐさま治癒をかける。血があたりに飛び散らないように、だ。


「なにをする!?」


「おい、そこのメイド。次のギルドマスター候補は誰だ?」


「は、はい!お、オルスト様です!」


「そうか。それじゃあ、お前はもう死ね」


そう言って、流雨は剣を一閃した。ウォンデントの首がはねとばされ、冬華の《ヒール》によって、傷口が塞がる。


「《フレイム》」


雫が唱え、ウォンデントの死体を焼いて行く。やがて、灰が残った。


「さて、メイド。お前がこのことを言おうが、お前の勝手だ。だが、その時はこのギルドがなくなると思え」


腰を抜かし、漏らしているメイドを一瞥し、部屋をあとにした。





「なんだ?」


「失礼する」


次に流雨が訪れたのは、オルストの部屋だった。


「おお、お前たちか、それで?どうした」


「ああ、ギルドマスターを殺した」


「ぶっ!」


オルストは、入ってきたのが流雨たちだとわかると、ソファーに座るよう、促す。そして、コーヒーを口に含む。が、流雨の一言によって、コーヒーを吹き出した。


「理由はわかるな?」


「あ、ああ。まあな。それで、次のギルドマスター候補は…………」


「オルストだ」


「………………」


「一つ質問。この場合、俺は追われるのか?契約だと国を潰す、ということになってたが、ウォンデント一人の命で勘弁してやったんだが?」


「いや、追われないと思うぞ。今回で全面的に悪いのはウォンデントだからな」


そしてまたコーヒーを飲み始める。


「そうか。次のギルドマスター候補がオルストだと安心だ。また、頼むよ」


「じゃあな」


そう言って、オルストの部屋をあとにした。




「さて、俺はここを出ようと思う。………そこで、エリシスに相談だ。エリシスは、ここに残るか?」


ギルドをあとにし、しばらく歩いたあと流雨はエリシスに問いかけた。


「なに?おいてくの?当たり前じゃない。ついていくわよ。ここまで付き合ったんだもの、ついていくに決まってるじゃない」


エリシスは、そう答えた。雫と冬華が向き合い、ハイタッチをする。


「そうか!はぁ〜〜。良かった。んじゃ、そうと決まったら、出発の用意をしますか!」


流雨の提案に全員が頷き、流雨達は、各々用意のために動き出した。













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