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第二十九話 流雨の虐殺

悲惨な事になっております。

「一匹残らず、冥土に送ってやる」


流雨は、迫り来るワイバーンの大群を眼前に見据え、魔力を高める。殺意と共に。


「『我、求めし物は絶対零度の力なり。大地を極寒の地に変え、ありとあらゆる物を凍らせたまえ。顕現せよ。氷結龍ブリューナク』」


『主よ。なんだか殺気立っていないか?………なるほど。理解した』


呼び出されたブリューナクは流雨の殺気を疑問に思い、流雨が見据えている物を見て、瞬時に理解する。初めて召喚した時と同じように、あたりに霜が降りる。ブリューナクを召喚した流雨は、まだこれくらいでやめるつもりはない。


「お前らトカゲどもには氷漬けすら生温い。『死を司り、月すらも支配する無慈悲なる天使よ。死神の如く命を刈り取り、見る物に深き絶望を刻めつけたまえ。顕現せよ、熾天使サリエル』」


「なっ!?召喚獣を二体同時召喚だと!?」


集まっていた兵士たちの中でも、隊長クラスの男が戦慄する。召喚魔術師は、召喚獣を召喚し、意のままにあやつることができるため、召喚魔術師一人で兵士150人分なると言われている。が、一度に召喚できる数はせいぜい一体が限界で、召喚したあとは、術師は立っていることすらままならない。だが、目の前にいる男は違う。召喚獣にも階位やクラスがある。流雨の召喚した召喚獣は、どれも最高クラスに位置する召喚獣だ。そんな召喚獣を二体と召喚して起きながら、雀の涙程の魔力しか消費していない。我々とは次元が違うとは言われていたが、事前に聞かされるのと、直接見るのとは訳が違う。ーー百聞は一見にしかずとはよく言ったものだ。

召喚した熾天使サリエルは、黒いローブを身に纏い、見るものを威圧する大鎌を持っている。サリエルを召喚した瞬間、あたりの草花が枯れた。


「熾天使、大天使、七天使、堕天使、死神。様々な呼び名があるが……………なるほど。呼び名にに違わぬ姿だな」


『召喚されていきなり褒められることになろうとは。ほお……今回の主はずいぶんと若いな。して、なぜそんなに殺気立っている?…………なるほど。理解した』


流雨はサリエルの姿を見て呟き、サリエルは流雨の姿をみて呟く。そして、ブリューナク同様、殺気の理由を理解する。


「指示は与えない。存分に戦ってくれ!」


『了解した』


『ははっ!今回の主はずいぶんと気前がいいな!』


流雨の放った言葉に、ブリューナク、サリエルの順に返事をする。ブリューナクは、氷のブレスによって、一度にワイバーン20体を氷漬けにする。サリエルは大鎌を振り、おなじく20体のワイバーンを真っ二つにする。


「堕ちろ!《アイス・レイン》!」


流雨はそう唱える。鋭く尖った氷が、高速で雨の如くワイバーンに降り注ぐ。龍よりと劣ると言っても、人間相手には十分すぎるその鱗を、やすやすと貫く。貫かれ絶命したワイバーンの数は40体。数瞬の間に、実に80ものワイバーンが絶命した。


「残りは魔法を使うまでもない。俺が直々に切り倒してやる」


流雨はアイテムボックスから、グレゴリー武具店で購入?した大鎌を取り出し、風属性魔法で跳躍する。


「まずはお前だ」


途轍もない速度でワイバーンに肉迫し、縦切りで真っ二つにし、切ったワイバーンを足場にして次の獲物へと移る。ワイバーンを切り、足場にして次の獲物に移る。それを何度も繰り返す。


「お前が親玉か?ずいぶんと腰抜けじゃないか。後ろでこそこそしてよ」


やがて、流雨の手によって生きているワイバーンは一体だけになった。残ったワイバーンは、今回のワイバーンを指揮していたリーダーと思われるワイバーンだ。流雨の言葉通りに、自分は死なないよう、後ろに隠れていたらしい。


「まあいい。死ね。《ウィンド・テンペスト》」


流雨の頭上に風の槍が五本生まれ、集結し、ひとつの槍となってワイバーンの頭を撃ち抜く。撃ち抜かれたワイバーンは、血を撒き散らしながら堕ちる。《フレイム・テンペスト》《アイス・テンペスト》だと魔法の対象が、燃え尽きたり、凍りついたりするため、流雨は《ウィンド・テンペスト》を使った。


「手間をかけさせるな。この虐殺のことも、このあとの後処理のこともな」


流雨は堕ちて行くワイバーンを、無表情で見ながらそう呟く。





ワイバーンは、なす術なく、流雨によってその命を刈り取られたのだった。










熾天使サリエルは私が好きな七天使の一人です。

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