第二話 冒険者ギルド
なんでこうなった?
思うまま筆を走らせたら、思い描いた物とどんどん違っていった。
はてな?
「改めまして自己紹介を。私はエリシス・エリアデル、Aランクの冒険者よ。エリシスって呼んでね。よろしく」
エリシスはフードをとりながら自己紹介をする。風邪にたなびく金色の髪。目は翡翠色で顔のバランスが整った端正な顔立ちをしている。
「よろしくお願いします」
「あ、敬語はやめてね」
初対面だから当たり障りなく敬語で話したのだがどうやらお気に召さなかったようだ。まぁ、此方としても気さくな性格で助かるのだが。
「わかった」
「うん!」
普通に話したら満足そうに微笑んだ。そんなに気に食わなかったか?
「次はこちらの番だな。さっきも言ったと思うが、ルウ・シンナギだ。俺の右隣と左隣にいるのが、シズク・モリゾノとフユカ・イチカワ」
「雫です。よろしく」
「冬華です。よろしくね」
「シズク、フユカよろしく」
簡単な自己紹介を済ませ、エリシスは俺達に質問し始める。
「幾つか質問させてもらうわね。まず、なぜそんな軽装備でこの『魔獣の森』にいたのか。それからラディ、さっきの獣と素手で戦おうとしてたのか」
まずはこの二つと付け足す。俺達は顔を合わせ、頷く。
「此処にいる理由だが、それは俺達も分からない。気がついたら此処にいたんだ」
「………え?それ本当?」
分からないと言う答えが返ってくるのを予測しなかったのだろうか、唖然としている。
まぁ、こんなこと言われたら誰だってそうなるわな。俺だってそうなるだろうし。
「ああ、本当だ。多分たが、俺達はこの世界とは別のところから来たと思う」
「あ、やっぱり?」
「驚かない、の?」
冬華が小首を傾げる。うん、分かる。別の世界から来たということよりも此処にいる理由が分からないということの方が唖然とされるってどういうことなんだろうな。普通逆だと思うんだが。
「てことはあなた達って流離者だったのね」
「流離者?流離者ってどういう意味だ?」
「流離者っていうのは、元にいた世界を離れ、この世界【トルコール】に流れ着いた者の
ことを指す言葉よ。今のあなた達みたいに、ね。大体今までの流離者の数はあなた達含めて9人、含めないで6人いたわね」
なるほど、前例か。過去にも同じようなことがあったからあまり驚かなかったのか。
「一度に来た人数で言えば今回が最多だけどね」
「元の世界に帰る方法はあるの?」
今まで黙って説明を聞い雫が口を開いた。
エリシスは少し考えこんでから質問に答えた。
「ある、とは言い切れないけれど今のところ帰る方法はみつかってないわね。この世界に来た流離者はみんながみなこの世界で一生を終えているってところかな」
帰る方法は見つかっていない、その言葉を聞いたとたん俺たちの顔が歪む。
今頃騒ぎになっているんだろうな。
これから見つかるかもしれないって言う希望的観測は捨てた方がいいな。過去6人が戻れてないんだからな。
パンッ!
軽快な音が辺りに響いた。
俺は頬を両手で叩き、気持ちを入れ替える。
「いつまでもうじうじしてたって始まらねぇ。エリシス、その依頼ってのは終わったのか?」
「ええ、終わっているわよ」
「よし、それじゃその冒険者ギルドってところに案内してくれないか」
この世界にいる以上お金が必要だ。お金を貯めるためには働かなければいけない。商人などになるためには必要最低限の知識か必要だ。知識を身につけるまでは誰かからお金を借りるかしなくてはいけない。正直言って苦しいだろう。その分、冒険者は危険があるが、一番手っ取り早く、自分が必要な分だけ稼ぐことができるだろう。
「なるほど、冒険者登録をするのね。うん、確かにそれが一番良いかもしれないわね」
エリシスはそう頷くと、着いて来てと言い、歩き出した。
しばらく歩くと街の入り口に来た。騎士と思われる二人が門番をしている。
ちょっと待っててね、そう言うと門番へ悠然と歩いていく。
どうやら街に入るために説明しているようだ。しばらく待つと戻ってきた。
「お待たせ。じゃ、行きましょうか」.
エリシスを先頭に街の中へ入っていく。
「此処はミレッジと言う街よ。此処一帯じゃあ一番大きな街だと思うわ。武器や防具、商品の種類は一番多いし、何より他と比べて安いのが特徴ね」
歩きながらミレッジについて簡単に説明していく。
冒険者ギルドは直ぐ近くにあった。
「さて、ついたわ。じゃ、早速登録しちゃいましょうか」
エリシス、俺、雫、冬華の順番で入っていく。内部は木材をふんだんに使い、落ち着いた雰囲気を出している。木製のカウンターに計12人の受付嬢が立っている。
エリシスが中へ入ったとたん、あれだけ騒がしかったギルド内が静まり返った。
「おいあれって」
「ああ、まちがいねぇ、《金の殺戮姫》だ」
「おい、後ろに連れている三人はどこのどいつだ」
「流石Aランクの冒険者。纏う空気が違うね」
少しずつ喧騒に包まれていく。そして話題の中心にいるエリシスはーー
「……………」
こめかみの辺りを抑え、苦笑いをしていた。
「おい、エリシス。早くすまちゃおうぜ」
見るに耐えないので助け舟を出すことにした。
「そうね、そうしましょう」
カウンター別の向かい、受付嬢へ話し掛ける。
「はい、なんでしょうか」
「後ろの三人の冒険者登録をすませてしまいたい」
「了解しました。では、簡単にご説明しますね」
「ああ、よろしく頼む」
俺がそう言うと受付嬢はニコリと微笑み、説明を始める。
「まず、冒険者ランクのご説明になります。冒険者ランクとは、自分のランクに見合った依頼を受けることができます。また、ランクが上がるごとに、宿代が半額になったりですとか食事代が無料になったりといろいろなサービスが受けることができるようになります。次はランクのご説明になります。ランクは、F、E、D、C、B−、B、B+、A−、A、A+、S、SSとなります。次に、依頼ついてのご説明です。基本的に自分のランクより上のランクの依頼は受けることができません。しかし、自分のランクより下のランクの依頼受けることができます。ただし、自分よりランクが上の人とパーティを組んだ時にのみ、その人のランクと同じランクの依頼を受けることができます。依頼にはそれぞれ決まった報酬がありますが、内容によっては追加報酬を受けることが可能な依頼があることがありますが、その場合、とても難しい依頼になっておりますのでご注意ください。
また、依頼に失敗しますと報酬の2倍の金額を支払って貰いますのでお気をつけください。次にギルドカードのご説明と作成に移ります。ギルドカードとは自分の名前、ランクを示したカードになります。そのカードが自身の身分証明書になります。ギルドカードは本人が触らないと名前、ランクが浮かび上がらず、身分証明書として機能致しませんのでご注意ください。なくした場合の再発行として金貨2枚手数料としていただきますのでご注意ください。それでは作成へ移ります。
この銀のカードにこの針で一滴血をたらしてください」
簡単とか言ってるけど全然簡単じゃなかった受付嬢の長い説明を終え、言われた通りに針で血を垂らす。雫も冬華も同じように垂らした。すると、自分の名前とランクが文字として浮かび上がった。
「すみません。ランクアップのご説明を忘れていました。ランクアップするためには、自分のランクと同じランクかそれ以上のランクの依頼を5回受けることでランクアップ試験を受けることができます。見事試験に合格しますとワンランクアップ致します。しかし、これには例外があります。それはギルドマスター直々の依頼です。Dランク以上の冒険者達は強制参加ということになりますのでいかなる場合にも拒否することは出来ません。しかし、その分、報酬もたくさん出ますし、その依頼に成功しますと、ワンランクアップ致します。以上でご説明を終わりにします。はい。これがあなた方のギルドカードになります」
そう言ってギルドカードを渡される。
「あ、魔力測定、していきますか?」
「魔力測定?」
なんじゃそりゃ。あれか?どれだけ魔力持っているかとかか?
「あ~、お願いします」
ま、魔法使えた方が便利だしな。やって貰うか。
「わかりました。では個室へ案内致します。ついて来てください」
「じゃあ私はお茶でも飲んで待っているわね」
エリシスはそう言ってテーブルにすわり紅茶を頼む。
それを見届けた受付嬢はカウンターから出て、奥へと歩いていく。そして木の扉の前で止まった。
コンコンコン
「なんだ」
低い妙齢の声が部屋の中から聞こえて来た。
「オルスト様。魔力測定をしたいと言う冒険者三名をお連れしました」
様をつけたということは、偉い人なんだろうか。まぁ、さっきよりも口調が丁寧になった事から少なくとも、受付嬢よりも偉いと言うことは確定だが。いや、それだけか?ドアを挟んで会話している時、僅かだがオルストへの羨望がみて取れたような気がする。ってことは一個人としても尊敬しているのか。
「入れ」
「失礼致します」
おっと、どうやら考え事をしていたら進んでいたようだ。
ガチャリ
受付嬢がドアノブを回してドアを開ける。中にいたのは紫のローブを来た妙齢の男性だった。
次回は主人公達三人のチート過ぎる能力の片鱗が明らかとなります。
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