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第十三話 アルド山脈に到着

今回もちょっと短いです。

ミレッジ出発から二日目ーー。陽気な日差しが降り注ぐ中、一人の馬車が走っていた。


「なぁエリシス。あとどれくらいで着く」


「そうね。明日には着くんじゃないかしら」


「明日、ね。退屈だ」


流雨はさっきまで後ろにいた。しかし今は御者台にいるエリシスの隣に座っている。雫と冬華が寝てしまった、と言えばわかるだろうか。つまりは、この馬車はあまり広くない。三人がギリギリ座れるくらいだ。そこに二人が横になってしまったらーーまぁ、始めは流雨の肩を枕にしていたのだがーー当然、流雨の座る場所などない。そのため、流雨はこうして御者台に座っているわけだ。






閑話休題(それはさておき)






流雨達の馬車の前で、四十m程離れた所に盗賊四人が立ちふさがっている。そして全員が気持ちが悪い笑みを浮かべていた。


「んぅ………ん?」

「ふにゃ?」


馬車を止めた衝撃で二人とも起きたようだ。御者台の方へ顔を出す。それを見た全員が歓声を上げる。


「なに?あれ」

「なんだろうね」


「あぁ、盗賊だ」


小首を傾げた二人に、流雨は短く答える。


「さて、どうする?殺るなら俺が殺るか?」


「ちょっと待って?試したいことがあるの」


大鎌を構えようとした流雨に冬華が声や掛ける。


「そうか。んじゃあ俺がお頭って呼ばれている奴をやる。冬華はその右隣。雫は一番右で、エリシスは一番左」


「「「了解」」」


おのおの構える。どうやら冬華は精霊魔術。流雨は黒魔術。雫は精神魔術。エリシスは空間魔術を使おうとしているようだ。


「精神凍結魔法『コキュートス』」


冬華は対象を視界に収めるとそう唱えた。その瞬間、気持ちが悪い笑みを浮かべたまま、盗賊の一人が絶命した。

急に仲間の一人が絶命したため、盗賊達はうろたえている。雫は盗賊を視界に収め、うろたえる盗賊達に見向きもせず、


「『氷の精霊よ。汝の力を持って敵を貫け。アイスランス』」


発動させるべく、そう唱えた。

盗賊の足元から無数の氷の槍が突き出して、盗賊を貫き、突き刺した。貫かれた盗賊は氷によって姿は見えないが、無数の氷に赤い線が下へ流れている。二人が殺されたことに逆上したのか、一人の盗賊が走ってくる。


「馬鹿ね。『指定部位:顔』」


走ってきた盗賊の顔の空間だけ時が止まった。走ってきた勢いのまま、地面へと倒れる。倒れた盗賊は既に絶命している。


「さて、最後は俺か」


流雨は腕を振り上げた。すると黒く鋭く光るショート・ソードが何百も生まれ、盗賊を取り囲む。さながら箱のようだった。隙間などなく、逃げ場すらない。上も横も周りもすべて剣に囲まれ、光すら通さない。恐らく中は真っ暗だろう。どうやら黒魔術の闇は光すら吸収するらしい。


「俺たちに目をつけたのが運の尽きだったな」


慈悲のかけらもなく無慈悲に、腕を振り下ろした。一斉にショート・ソードが残りの盗賊を突き刺す。ぐがぁ、と短く悲鳴を上げ、剣に地面に鮮血を撒き散らした。

すべての盗賊が地面へと倒れ伏した。エリシスの空間魔術によって、遠く離れた場所へ捨てられた。


「はぁ、あと一日か、退屈だ」


流雨が、今さっき人を殺したとは思えないほど、気楽な声を出す。

馬車でじゃなくて、一瞬でアルド山脈に行けたら……………ん?一瞬?………あ、空間魔術。


「エリシスって、アルド山脈にいったことってあるか?」


「ええ、あるわよ」


「なら、空間魔術でアルド山脈に言った方が、早くついたんじゃないか?」


流雨の言葉に、雫達三人が固まる。エリシスは、空いた口がふさがらないという感じだ。


「それも、そうね」


「まさか、思いつかなかった、とか?」


「あ、あはは。《指定場所:アルド山脈》」


苦笑いを浮かべたエリシスは、空間魔術で、馬車ごとアルド山脈に転移させる。

そして、近くの木に馬を繋ぎ、流雨達に向き直る。


「さ、着いたわね」


「エリシス、お前………まあいいや。さっ、行こうぜ」


流雨の一声で、雫達は、ランドルトがいる山頂を目指した。














ショート・ソード

長さ:70〜80㎝ 重量:0.8〜1.8kg 時代:14〜16世紀 国:西ヨーロッパ


ショート・ソードはヨーロッパの歩兵達が用いた剣の総称である。ショート・ソードという名は騎士兵が用いたロング・ソードと区別するためにつけられた名であり、必ずしも短いものばかりとは限らなかった。重装歩兵達の武器として用いられることが多かったため、頑丈で切っ先が鋭い事が特徴である。

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