第十一話 ドライヤーと歯ブラシ
サブタイトルっていつも迷うんですよね。
今回はおかしいところがちょこちょこ出るかもしれません。
そして少し短いです。
「じゃあ早速ランドルト討伐に行こう。といいたいところだけど、もう日が沈む。明日にしようか」
「そうね。何処かの屑どものせいでね」
「雫ちゃん、屑どもってひどくない?」
「いいのよフユカ。実際間違ってないしね」
「お前ら……まぁいい。んじゃ戻るか」
四人は頷き、水明亭へと足を向ける。
途中で談笑しながらのんびり歩く。
「お、そういやエリシス。水明亭に風呂ってあるのか?」
「ええあるわよ」
意地の悪い笑みを浮かべ、
「混浴だけどね」
「「「はい?」」」
楽しそうにそういった。三人は何言っているのか理解できず、素っ頓狂な声を上げた。
数瞬後、意味を理解した三人は顔を赤らめた。
「おま、エリシス!他にはないのか」
エリシスはニコリと微笑み、
「ないよ」
そういった。
雫は無表情で「合理的に一緒にお風呂にはいれるチャンス」とかブツブツ言っており、流雨はそれを全力でスルーすることにした。冬華というと顔を赤らめポーッとしていた。
この世界のお風呂は混浴が当たり前であり、女が男に肌を見せることに少し恥ずかしさは覚えるが、それを許容し受け入れている。
エリシスは他の男に見せることは絶対にしないが、流雨ならば見せてもいいと思っている。ちなみにエリシスは無表情で計画を立てる雫をみて「シズク恐ろしい子」と思っていたのはここだけの話だ。
水明亭に着き、大浴場へと向かう。
「流石に年頃の男女が一緒に入るのはどうかと思う。だから、俺が…「先に入って。私達は流雨が出たら入るから」……わ、わかった」
「一緒に入っても大丈夫だと思うんだけど。湯浴み着あるし」
エリシスはカゴに入っている女性用の湯浴み着を取り出した。
「いやいや。さっき決めた通りに入るから。さて、入るから外出ててくれ」
三人は言われた通りに外へ出てる。流雨は外套着とレギンスを脱ぎ、下着も脱ぐ。男性用の湯浴み着を着用し大浴場の中へと入って行く。
「おおー!これは中々」
中は結構広く、幾つもの種類のお風呂がある。ジェットから普通のまで満載だ。サウナも付いており、入る人がリラックスできるような作りになっている。
窓からは広大な湖が見え、透明度が高く、底が見えるとまではいかないが、泳いでる魚を見ることができる。湖から見えると思うかもしれないが、湖は立ち入り禁止区であり、入ろうとした者には見るにも聞くにも耐えない恐ろしいことが待っている。
体と頭を洗い、お風呂に体を向ける。
「やっぱり最初は普通のだろ」
入り口からまっすぐにあるごく普通のお風呂へと向かう。
流雨は久々のお風呂を噛みしめるように入り、くつろぐ。
「あー。いい湯だ。温度もちょうどいいし。水明亭に泊まって本当良かった」
壁にうつかり窓から見える景色を堪能する。ちなみにここらの宿で大浴場又はお風呂があるのは水明亭だけである。そのため少し料金が高くなっている。
「あ?」
不意に扉の開く音がした。
振り返ってみると、湯浴み着を着た雫達三人だった。
「はい?」
「ふふ、入ってきちゃった」
「いや、入ってきちゃったじゃねぇよ雫!エリシスは別として冬華は止めなかったのか!?」
あまりこう言うことに乗り気じゃない冬華に問いかける。
「えっと、私も入りたかったから」
「………………」
もう、いいです。
「わーったわーった。向こう向いてるから体と頭洗っちまえ」
「投げやりね」
雫達は椅子に座り、体を洗い始める。如何せん鈍いと言っても流雨も年頃の男だ。気になる異性が後ろで体を洗っているのだ。しかも洗うときは湯浴み着を外して洗っている。
「ルーなにそわそわしてるのよ」
「いやいやこれは仕方が無いから」
「ふーんそう。そうかなぁ?」
くすくすとエリシス笑う。
すでに頭は洗い終わっており、三人ともお湯の中に入る。勿論雫と冬華は流雨を挟んでだ。
「気持ち良い」
「ねー」
「ええ」
「気持ち良いのは確かに同意する。が、雫、冬華、ちょっとくっつきすぎじゃないか?」
流雨の両肩には雫と冬華の頭が乗っている。湯浴み着を着ているとは言え、布一枚で触れ合っているためふにふにとした柔らかさが伝わってくる。
落ち着け。いったん落ち着こう。おち…ってむりだー!
流雨はいきなり立ち上がり、大浴場を出て行った。
「あーくそ。心臓にわりぃ。三人ともなんなんだよ」
頭を拭きながらつぶやく。体の露を拭き取り、下着を着て外套着とレギンスを履く。
「ドライヤーないからな。どうやって乾かすか……機会がないから魔法だな」
濡れた髪を弄りながら考える。
ドライヤーって温風で乾かすよな。温風、か。熱と風か。炎属性と風属性でてきるか?
流雨は風魔法で風を生み出し、炎魔法で温める。
「よしよし。いいかんじ。ドライヤーよりこっちのほうがいいかもな」
ドライヤーは必然的に両手がふさがる。しかし、魔法は両手が使え、髪を手櫛でとかしながら乾かすことができる。
「おし、だいたい良いかもな」
魔法を取り消し、脱衣室の扉を開ける。
外は来たときよりも賑わっており、酒を飲む冒険者たちが殆どだ。
「お湯加減は如何でしたか?」
「ええ。ちょうど良かったですよ」
「…そうですか。それは良かったです」
流雨はカウンターにいる女性に微笑む。女性は頬を赤くするが、すぐに持ち直し微笑み返す。
頭を下げ階段へと向かう。自分の部屋の前に止まり、鍵を開けて中にはいる。
「くぁ。ねっみぃ。歯磨きっと」
あ、そいやねえんだ。あーどうするかな。無ければ作るだけなんだが、そんな魔法俺は持ってな……いや、あったわ、一つだけ。えーとまず歯ブラシの形をイメージする。まぁ、いつも使ってるからわかるな。そして後はそれにそって、と。
「よし。オッケー。流石に歯磨き粉は無理だな。下手に作るとどうなるかわからん。雫達の分も作っとくか」
雫と冬華は幼馴染だし、どんな形の作ると使ってるか分かるが、エリシスはわからない。だいたい冬華と同じくらいの身長だな。同じ形でいいか。
流雨は残りの三人の分の歯ブラシを作り、渡すために外へ出る。
「あ、流雨。どうした?」
「ん?ああ、これ。渡しとこうかと思って、な。」
「あ、ありがとう。どうしようかまよってたんだよね。流石に二日も磨かないのはまずいしね」
受け取りながら冬華は胸を撫で下ろす。
渡された歯ブラシを見ながらエリシスは首を傾げる。
「ねえ、流雨?これなに?」
「あぁ、これは歯ブラシっていって……ってこれは雫達が教えた方がいいな。雫、頼む」
「わかった。エリシス。こっち。冬華もね」
「はーい」
「え、ええ」
雫はエリシスの手を引いて自分の部屋へと入って行く。冬華はそれに続く。
流雨はそれを見届け、部屋に戻る。
「さてと、歯を磨くか」
コップに水を入れ、歯を磨き始める。
五分ほど磨き、口をゆすぐ。
「あーねむいな。さてと磨き終わったし、寝るか」
ベットに横になり、布団をかぶる。
流雨が眠りにつくのは遅くはなかった。
ちなみに、流雨が寝た後エリシスが訪ねてきて感想を言おうとしたが、流雨が寝ているのを見て引き返したのは雫と冬華とエリシスの三人だけが知っている。




