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第十話 流雨

水明亭で昼飯を済まし、金稼ぎのためにギルドへ依頼を受けに行く。


「さて、どれにする?」


「依頼を選ぶ前に一つ提案があるんだけれど」


四人に問いかけた質問にエリシスが答える。


「なんだ?」


「ギルド説明でパーティのこと聞いたでしょ」


「ああ、パーティを組むとその人のランクの依頼を…ってまさか」


「そう。そのまさか、よ」


なるほど。エリシスと組めばAランクの依頼を受けることができ、金もすぐ溜まる。その分危険を伴うが、俺たちには問題ないってことか。


「その話、乗った」


「了解」


エリシスは依頼を探す。

持ってきた依頼は


「ランドルト一体の討伐、か」


依頼内容はこうなっている。


依頼名:竜種ランドルト一体の討伐

生息場所:アルド山脈、火口付近

討伐報酬:金貨7枚

追加報酬:ランドルトの角二本を綺麗な状態でとってくること。銀貨20枚

期限:二ヶ月以内


「ドラゴンか!?」


「ふふ。違うわ。正確には龍もどき。ドラゴンはこっちの龍。竜は龍もどき。ワイバーンみたいなものね」


「へぇ」


「じゃ、手続しちゃいましょうか」


カウンターへと進み、受付嬢に話しかける。


「すみません。後ろの三人とパーティを組みたいんだが」


「あ、エリシスさん!?わかりました。この紙にパーティを組む人の人数と名前、ランクを書き込んでください」


「わかりました」


エリシスはテキパキと書き込んでいく。わずか五分程で書き込み終わった。


「はい。これで後ろの三人はエリシスさんと同じ依頼を受けることが可能となりますがその場合、必ずエリシスさんを連れて行ってください。連れていかなかった場合、冒険者登録は無効となります」


「ありがとうございました。それでこの依頼受けたいんだが」


ランドルト一体の討伐の依頼を受付嬢に渡す。それを見た瞬間、受付嬢の顔が驚愕に染まる。しかしすぐに持ち直した。その辺はさすがプロと言ったところか。


「ありがと。世話になった」


依頼を受け、外へ出る。すると男三人がこちらをみて歩いて来た。


「おお、遠くでみても可愛いけど近くで見るともっといいね」

「こんな奴ほっといて俺らと遊ばない?」

「夜も面倒見るよ」


「ナンパか」

「ナンパね」

「ナンパだね」

「ナンパ、ね。しかも私のこと知らないみたいだし、余所者ね」


あ〜。知ってたら話しかけようとしないもんな。わかるわかる。


「失礼ですが、貴方達は顔で選んでいます。つまりは顔がよければ誰でもいいということです。というか、自分達の顔みていってますか?とても釣り合わないと思いますが。主に貴方達が」


無表情で冷たい言葉を雫がぶつける。

男達は青筋を浮かべ


「なんだとクソアマ!お前らは従ってりゃあいいんだよ!」


雫に掴みかかろうとする。俺はその手を掴み、地面に叩きつける。


「ごはっ」


「まあまあ、俺から一つ提案。殺し合いしないか?」


「は?」


叩きつけた男以外の二人がキョトンとする。

まぁそうだな。


「だってよ、考えてもみろよ。勝った方がにすると、奪い返したりするだろ。俺が負けたら奪い返すし、お前達ものがしたくねぇだろ?だからだ、はじめから殺し合いにすりゃあそんなことも起きねぇし、いいだろ」


俺の言い分に三人とも納得する。

しかしこれは嘘だ。俺はただたんに雫に掴みかかろうとすることに、顔だけみてナンパしたことに怒り狂ってるだけだ。


「場所はウィーゴード広場だ。ついて来い」


俺は男達をつれてウィーゴード広場へと向かう。

広場につき、準備をする。


「俺は一人。お前達は三人だ。わかったな」


男達はニヤリと笑い、頷く。


「この石が地面に落ちたら始まりだ」


そう言って石を上に軽く投げる。数秒して地面に落ちる。


「始まりだ」


俺がそういうと、男達は一斉に走り出す。


《エクスプロージョン》


そう唱えた瞬間、男達から爆炎が上がる。火の手は空高く上がり、あたりを焼き尽くして行く。

エクスプロージョンは炎属性上級魔法の一つで、炎属性上級魔法の中でも範囲が一番広く、威力も高い、最高位魔法だ。

なぜ知ってるかって?それは水明亭の部屋にあった本を読んだからだ。


「肉弾戦じゃなく、魔法で挑むべきだったな」


エリシスは絶句していた。三人の話から、元いた世界はとても平和ということが伺えた。それはつまり、普通の人は動物をまたは人を殺したことがないということ。そんな世界の人間がこちらに来て、生き物をましてや人間を殺すことに躊躇いや拒絶が必ずある。しかし、流雨は躊躇いや拒絶なんて欠片もなかった。そのことにも絶句したが、流雨がやること自体に絶句した。普段から冷たい雫がやるならまだ納得できる。でも、常に人の輪の中心にいるような、優しい流雨がやるとは到底おもえなかったのだ。


「エリシス。勘違いしない方がいい」


そんなエリシスに雫が声かける。


「………ぇ」


「流雨は優しい。助けを求められたら必ず手を差し伸べる程に」


「じゃあなんで」


「簡単なこと。あいつらは流雨の触れてはいけないことに触れた。ただそれだけ」


エリシスは再び絶句する。そんなエリシスを見て、雫は仕様が無いなと思った。


「私は六歳の頃、いじめられてた」


雫はそう語り出した。


「その時はすぐに収まったんだけどね。十四歳ときにまたいじめられたの。二回程殴られた。流雨とは家が隣だったから、流雨の家に上がり、そのことを話した。その時は静かに聞いてくれたんだけどね。次の日、そのいじめた、殴ったやつらは流雨によって半殺しにされていた。理由は今と同じ、流雨の触れてはいけないことに触れたこと。そんなことがあった。私達のいた世界では、人殺しは禁忌、やってはいけないことだから、流雨も知らず知らずの内に踏みとどまったんだろうね。

でもこの世界では人殺しは日常茶飯事。盗賊は人を殺す。普通の人も盗賊を殺し、金銭問題とかで人を殺す。そんな世界は流雨の枷を外してしまった。と言っても、殺意に踊らされているわけではなく、完全な支配下に置いた上での行動、自分の意思でやっていること。殺したことに後悔はしないし、当たり前のこととして捉えるだけ。無差別に人を殺すことはしないし、理由があってやっているだけ。はじめにもどるけど、流雨は優しい。そして流雨の心は暖かい。でも当然、温度の低い冷たいところはある。割合的には暖かい方が多い。冷たいところが普通の人よりも温度が低いだけ。異常ではない。勘違いしないでね」


「……………」


エリシスには理解できなかった。そうは見えなかった。爆弾のようなものを抱えているとは。


「わからなければこれから知ればいい。ゆっくりと、ね」


雫がそう言って離れる。取り残されたエリシスはしばらく立ち尽くす。

わからなければ知ればいいゆっくりと、ね、雫の言葉がエリシスの頭の中で繰り返されていた。

すぐには知れないし分からない。今できることはいつも通りに接し、知る努力をする、ただそれだけ。

そう決め、流雨たちへ歩き出したーー。








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