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戸惑い?

 夜になってから村長の家に戻ってみると、食事の準備がされていた。それは質素なスープやパンなどだったが、昼に食事をとって以来何も食べていなかった俺には十分満足できるものだった。僅かに米を食べたい気持ちもあったが、どうやらこの村では米に相当する穀物は存在しないようである。

 その後、同様にして風呂を使わせてもらうことになった。が……

(これは……困った)

 トイレのときもそうだったが、女性体になってしまったことで、男だった頃の常識が通用しないのである。

 体を洗うくらい簡単だと思うだろうが、俺にしてみれば重大な問題だ。

(女性の裸!? いやいやそれはまずいでしょ)

 とはいっても自分の体なのだが。

(っていうか色々どうすればいいんだよこれ……)

 何から手をつけていいかわからず、途方に暮れる俺。

「と、とりあえず服を……ぬ、脱ぐか」

 悶々とした気持ちを抱えながら、服を脱ごうとする。

(そういえば……、アバターと鎧を解除すれば裸になるかの確認をするいい機会か?)

 トイレにいったとき、装備画面で操作をしなくても、手動で装備が外せることは確認済みだ。その方法で装備を外してもちゃんと装備画面には反映された。

(えーと……)

 今回は一部分じゃなくて、全身を外すので装備画面を頭のなかで操作する。

 すると、体が一瞬光に包まれた後に、装備が解除された。

 しかし、下着はついたままである。

(ってそりゃそうだよゲームで真っ裸になってたまるか!)

 リアルなゲームだからこそ、そういったところには規制がかかっている。身に着けている下着もスポーツブラにショートパンツのようなものだ。扇情的とは言いがたい。

(しかし……サラシをつけているときは下着をつけている感覚なんてなかったのに、不思議なもんだ)

 現実で考えるとかなり変である。

 しかし、こうなると裸になるためには下着を脱がなくてはいけないわけで……

(ハードル高すぎだろ……)

 下着に手をかけたところで動きが止まってしまう。

(そもそもこれは普通に脱げるのか?)

 ゲーム内であれば下着に触れることすらできなかったが、今は普通に布の感触が伝わってくる。当たり前と言えば当たり前なのだが。

(ええい! ままよ!)

 気合を入れてブラを外す。すると、ぽろんっと大きな胸が露出した。

(自分のものながらでけぇ……)

 ネットゲームにおける自分のキャラクターとは、自分の半身であるとともに、理想の姿を反映させるものである。簡単にいえば、自分の容姿に自信がないものはイケメンを使ったりするわけだ。

 そして俺は可愛い女の子を使いたいという素直な欲望に従って、今の外見を作ったのである。ということは、自分の好みが反映されているわけだ。

 だが自分の体だからなのか、不思議と変な気持ちになったりはしない。いや、変な気持ちになられても困るのだが。

(うわー恥ずかしいうわー、っつーか美人すぎるだろ自分……)

 俺は風呂場にある姿見を見ながら、そんな感想を抱く。

 可愛いというよりも、凛々しいといった方がいいだろう。髪は背中まである赤毛のストレートで、引き締まった体。そして形の整った大きな胸に丸みを帯びた臀部。はっきり言って、街中をこんな美女が歩いていたら全力で二度見するような美貌である。

(なんつーんだ? スタイルはかなり外人っぽいけど、顔立ちは日本人の雰囲気があるな……)

 ゲーム内のキャラクターを作ったのは自分なので、顔などは見慣れているはずなのだが、本当の自分の体になってしまうと今までとは違って、なんだか新鮮な感じだった。

(それにしても胸がでけぇ。まぁ、確かに巨乳好きだったけどさ)

 別に小さい胸が嫌いだと言うわけではない。単純にそれよりも大きい胸のほうが好きなのである。

(ゲームならよかったけどさ、今こうしてみると……違和感が……あぁ、違和感が……ひょろ薄かった胸板が懐かしい気さえするぜ……)

 まじまじと姿見を眺めて、自分の裸をチェックする。

 はたから見たら完全にナルシストである。

(とりあえず、これが今の俺の体なんだ。なんとか受け入れてやっていかないと)

 今は正直かなり抵抗があるが、それもそのうち慣れるだろうと自分に言い聞かす。

 その時、あっ、と気づく。

(これ、あんまり装備画面で操作しないほうがいいのか? 普通脱いだものとか装備が消えてたら、疑問を感じるよな?)

 せっかく衣装かごがあるのに、使っていなかったら、服を着たまま風呂に入っていると思われてしまうかもしれない。

 かなり不便ではあるが、今のところインベントリなどの機能を使えることがバレるのはまずい気がする。

(うーん、そうなると手ぶらでこの村に入ったのはまずかったか? どうしたもんかね)

 ゲーム内では荷物を持ち歩くことなどあまりなかったので、失念していた。

(あー……課金アイテムの拡張インベントリをカバンとして使うか、見た目の割にアイテムが沢山入るのは、マジックアイテムだからとか言って誤魔化そう。同じように村の外に置いてきたとか言って、明日取ってくることにするか)

 課金アイテム──ゲーム内のお金で買うアイテムではなく、現実世界のお金で買う、いわゆる有料のアイテムだ。

 通常のインベントリは、入れられる重量や持てるアイテムの種類といったものに制限がかかっている。重量とはいっても、実際その重さがするわけではなく、あくまでもステータス上の話ではあるが。その中でも拡張インベントリとは、通常のインベントリにアイテムが入らなくなった時に使う、カバンの形をした追加のアイテムボックスというやつだった。

(とりあえず、脱いだ服は置いておくか)

 先程インベントリにしまったアバター装備を出し直して、畳んで衣装かごに入れる。同様に武器も脇に置いておいた。

 盗られると困ってしまうが、今は仕方がない。

(武器ならまだいいけどアバターはなぁ……)

 キャラクターのアイデンティティに関わる問題である。下手な装備よりもそちらのほうが大事だった。

(このコーディネート、地味に金がかかってるんだよ、見た目はアレだから人気なかったけど、レア度が高かったからな……)

 などということを考えながら、風呂に入る。どうやら平常心になってきたらしい。

(まぁ、体洗うのはなんとかなるだろう。髪を洗うのはちょっと大変そうだけど……)

 現実ではショートヘアだったし、こんなに髪質も良くなかった。

(めっちゃサラサラだなぁ……女の子ってすげえなぁ……どうやって手入れとかしてるんだろう、やっぱりリンスとトリートメントとかで手入れとかやってるんだろうなぁ)

 とはいえ今ここにあるのは石鹸とシャンプー? のようなものだけである。あまり気にしないほうがいいだろう。

(こりゃ前途多難だわ)

 世界がどうのと言っている前に、身近なところで色々戸惑っている俺だった。

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