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俺はぼっちで神殺し  作者: 山ドラ
ぼっちが送る神殺しの旅の序章
9/14

番外編 俺はぼっちでクリスマス

メリークリスマス!


え? もうとっくにクリスマスは過ぎたし、年も変わっただって?

すみません。小説を執筆する時間が今日までほとんどありませんでした。

あと、いきなり番外編とかすみません。どうしてもやりたかったんです。

そしてもう一つ謝ることがあります。

今までより文章が長いです。

それでも見てくださる方々に本当に感謝します。

 夜、俺は一人で何も無いただ広い荒野に佇む。

 荒れた土地、あるのはゴツゴツした岩、枯れ木、そして俺。

「今日は……、風が騒がしいな……」

 非常に恥ずかしいセリフをなんとなく口にだす。

 今日は風が強く、俺の着ているコートが荒野に吹き渡る風でバサバサと揺れている。

 俺、榊龍紀さかきりゅうきはぼっちだ。

 友達はいない、仲間もいない、守るべき者もいない、周りにも誰もいない、皆俺が存在していることすらしらない。本当のぼっちだ。


 ここは神を殺すために戦う異世界。天上世界で俺にも、パーティーはあった。

 あっただけで、それは過去の話。

 俺はとある理由により、そのパーティーから脱退した。真のぼっちとなり孤高を貫き、一人でも強くこの異世界に生き続けた。パーティーから抜けてかれこれ約、半年程だろう。

 そのとある理由とは……、思い出せない。

 いつの間にか、俺は一人になってた。

 何故か思い出そうとすると頭にモヤがかかった感じになり、思い出すことができない。

 ただ抜けた理由は分からんが、自分がパーティーから抜けたという真実だけは覚えていた。

 元々、生きてた頃からぼっちだった俺にとってはパーティーに戻ろうとする気にもなれなかったし、一人の方がやっぱり楽だし落ち着く。なので俺は、一人で戦ってきた。

 これでよかったのだろう……。


 俺は一人になってから一人で黙々と魔物を殺して殺して殺して殺して……、そして俺は強くなった。

 俺の異能力、音と存在感を消し去る能力。この能力は奇襲などに使えたが、やっぱり面と向かって正々堂々とやる場合にはあまり使えなかった。集団に囲まれるでもしたらひとたまりもない。

 そんな能力が、進化した。

 とうとう、人や物を消し去ることに成功した。

 ただ、肉眼では見えなくなるだけであって、そこには存在するし、喋ることだってできるし、何かに触れることだってできる。

 が、俺の能力で存在感も音も消してしまえばどうだろうか。

 完全に透明人間になれる。しかも触れることや魔法を使うことはできるので相手に攻撃もできる。

 そして自分の魔法だって消すことは可能。どこから来るかわからないのだ。勿論のこと消えているからって相手にあたらない訳ではない。相手には見えないけど魔法はあたる。

 結構完璧な異能力に仕立て上げた俺は、一人無双だ。常時、透明になり戦い、逃げまくりながらも確実に魔物を倒し続けた。

 そして今現在、俺のレベルは95。今いる天上世界での神殺しの中でもトップ3に入る程のレベルだ。神殺しの大半はレベル90にいく前に死ぬらしい。つまり俺、結構最強。

 おっと、俺に惚れるなよ? ……そんなことある訳ねーよな……。悲しくなったので適当に魔物を狩り、八つ当たりをした。

 友達できなくても、彼女くらい……。友達いない奴に出来る訳ないな。



 急に恋愛などとうに捨てた俺でもそんな情けないことを言ってしまったのにも理由がある。

 それは……。


 ―12月24日―

 天井世界でも日付はある。普段、日付には興味がなかったが街の方がやけに騒がしかったのでもしやと思って日付を携帯で確認したら、クリスマスだった……。

 天井世界では特に何かしたら駄目だという規則はない。故に付き合ったりしてもノープロブレム、心配無用なのだ。異性と付き合おうがキスしようが受精しようがすべて自由。ただ、何度交尾しても子供だけは生まれない。そこは一応俺達死んでるからだろう。

 クリスマスだからだろうか、どこの街に行ってもお祭り騒ぎ。魔物もあんまり現れないし、集団では来ない。現れたとしてもぼっちの魔物だけ。つまり、今フィールドにいるのはぼっちな奴だけだ。どの神殺しも大体はパーティーを組んでいるので誰も外にはいない。

 ……一人最高!


 俺はある目的の為に、荒野を離れ街を訪れた。

 あまり街をふらつきたくなかったが、仕方がない。

 街は夜のくせに人で賑わい、建物は様々なイルミネーションで明かりを放っている。クリスマスだと言わんばかりのふいんきだ。

 俺の今、訪れた街は天上世界でも名の知れた結構有名でデカイ街。そのせいか、ここは他よりも並外れた盛り上がり度だ。

 道行く人は皆、男女混合でワイワイやってる奴らや、カップルで手を繋いで微笑み合いながら歩いている奴らが大半だった。

 その中に、一人で負のオーラ剥き出しで歩いているぼっちがいる。俺だ。

 そんな俺を、ある者は哀れみ、ある者は俺を見て蔑み笑い、ある者は見向きもしない。

 だが俺はぼっちマスター。誰から嘲笑されようとも、誰からも見向きもしてもらえなくても、それがあたり前。むしろぼっち最高。

 別に彼女や友達いる奴らに一緒におるなと言ってない。俺が聞きたいのは何故クリスマスだからといって彼女とか友達とかといなくちゃいけないんだ? クリスマス=皆と過ごすという方程式が成り立つ意味が分からん死ね。

 とりあえずそこのお前! 俺を指差して笑うな!


 まあ俺はぼっちマスターであって、普段からリア充への耐性はあったけど……、すげぇうざい。

 とりあえず地味な嫌がらせを始めるため、俺はまず異能力を使い、俺の姿、存在感、音を消す。

 そしてカップルに近づき、男の足を……、引っ掛けて転ばす!

 ドーン☆ とおもいっきり倒れる男。すげぇスカッとした。


 何度か同じことをやって落ち着いた所で、俺の今日の目的を果たすべく、フィールドに出ようとすると、数メートル先にいる、ある女に目を奪われてしまった。

 あいつは……、春野だ。

 俺が元々いたパーティーの中の一員。そして俺と同じ、ぼっちだ。

 あいつも俺に気づく、初めは酷く驚いたような顔をしていた。が、すぐに無表情になりお互い、立ち尽くしその場で見つめ合う。

 数十秒して春野が俺に近づいてきた。俺は正直どうしようか焦ったのだが、顔には出さずクールにキメる。俺クール。

 そして俺の目の前まで来る。

「……場所が悪いわ、ついてきて。榊くん」

 そして優雅に髪を翻し、颯爽と歩いていく。

 とりあえず俺は、あいつの真意は分からんがついて行くことにした。



 連れて行かれた先は小さな店。

 飲み物をおごってくれるらしいので俺は遠慮せずにおごってもらった。

 ここも勿論カップル三昧だったが、誰も騒ぎはしない。店内は静かだ。静かな春野の好きそうな店だった。

 俺も春野も話をする訳でも無く、二人無言で飲み物を飲みながら外の景色を眺める。

 ちなみに俺達はとっくに学園を去り、各々で神を殺す為に色々な街を転々としていた。

 俺と春野はほぼ一緒に天上世界に来たが、俺のレベルは95、春野のレベルは70。まあ俺はひたすらに魔物を狩りまくっていたのでこんなものだろう。ぼっちは団体行動をとると隅っこで小さくなってしまうが、単独行動だと超イキイキとしているのだ。

 

 特に何もしないこと5分。

 お互いずっとだんまり。何故誘ったのかよく分からんが、俺には今日やらなくてはいけないことがあるため、そろそろここを立ち去りたい。

 という訳で、俺は春野に一言いって出ることにする。

「……おい春野」

 ピクッ と春野の体が少しだけ跳ね上がったような気がする。気のせいか?

「何かしら?」

 うんいつもどうり無表情だ。気のせいだろう。いつもどうり、俺を睨みつけてくる。うーん、だがいつもより弱いな。いつもならもっとゴミを見るような目つきだったのに。

「俺、やることがあるからそろそろ行かなきゃなんねーんだけど……」

「やることとは、何?」

 まあ教えてもいいかな……。


「俺は今日、神を倒す」

 俺の言葉に驚きを隠せていない春野。まあ当然だろう。

 ちなみに神はこの世界に3体も存在しているのだが、その内の一人、一番弱いのを狩ろうと思う。

「本気……?」

「ああ、真剣マジだ」

「……何故今日なのかしら?」

「思い立ったが吉日って言葉を知ってるか?」

 今日という日に腹が立ったので神を倒そうと今日決意した。

「じゃ、俺は行くわ。おごってくれてあんがと」

 どんな理由があってかわ知らんが、パーティーを抜けたのは事実。一緒にいていいのかと思ったのでさっさと出ることにする。

「待ちなさい」

 なんだよ? 告白か? お前俺のこと好きなのか? 大好きなのか?

「……私も、付き合うわ」

 は?




 第1の神殿・最深部。

 俺は透明になり、無駄な戦闘を避け地下15階で待っている神の所まで来た。

 あとこの扉一枚こじ開けたら、念願の神殺しだ。

 そういえばさっきのことなんだが、春野の奴マジでついてきやがった。

 俺は幸村達はどうした? 一人で来ていいのか? 俺についてくる理由はなんだ? と質問攻めをしたのだが、返答はすべていいのよ。と素っ気ない返事しか返ってこない。

 あと、俺のこと好きなの? って言ったらぶん殴られた。顔も真っ赤だった。……半年前までは睨みつける程度だったのにな。


 春野はため息を一つ付き、呟く。

「等々たどり着いたわね……、一度も魔物と戦わずに。あなた、いつの間にそんな反則的な能力を……」

 は、反則とは失礼ねっ!

「反則じゃねぇよ、俺の立派な能力だ」

「そうだけど……。過去に真面目にここまで来た人達に申し訳ないわ」

 むっ、あなた、私が真面目じゃないとでも言うのっ!? そろそろキモイと思うから自重しよう。

「俺だって大真面目だ。ただ、俺の能力が最強すぎただけだ。……そろそろ行くぞ」

「……ええ」

 俺はおもいっきり扉を開けた。


「おらーっ! 神ー! 出てこんかーい! お前を初めて殺す男が現れたぞー! お前の初体験は俺のもんだー!」

 俺のセリフに春野がゴミ虫でも見るかのような目つきで睨んできた。

 ……ああこれだ。懐かしいな、この目つき……。よくこんな目で見られたわ。……俺ってマゾ?

 辺りを見渡す。……神殿ってこんなところなのか? 普通に洞窟じゃないのかここ。岩とかしかないぞ? あと無駄に広いな。

「うるせーなー。ここにいるだろ」

 いきなり目の前に男が、現れた。

 パッと見て180Cm程身長がある。外見はどう見ても20後半の男性だった。白色のコートを着ており、肌は黒く目つきは悪い。ただ顔は整っており、どちらかというとイケメンだ。死ねっ!


「お前達、榊龍紀と春野春奈だろ」

「! 何故私達の名を?」

「お前達がここに向かってくるのは部下から聞いていた。だから俺はお前達のことを調べたのさ」

 そう、こいつのうりは情報収集。会ったことのない奴の能力の種類や相手の異能力への対処の仕方、弱点等をどうやってかは知らんが徹底的に調べ上げて相手を完膚無きまでに倒すらしい。

 俺と春野の弱点等も調べてあるだろう。

「大体の奴らはここに来るまでに死ぬか、ボロボロの状態で来るんだけど……。お前の能力すげぇよな」

 えへへ。

「俺、正直弱いしなー。相手の弱ったとこの隙を突いて弱点を突きまくって倒すやり方なんだけど……。こりゃやべぇな。つーかお前95って何だよ。勝てる訳ねーよ」

 口ではそう言うものの、ヘラヘラ笑っている神。絶対何か策があるのだろう。

「ハァ……。やっぱやらなきゃいけねーのかねぇ。悪いことは言わねぇ、帰れ」

「やなこった。俺は俺の目的の為、お前殺す」

 神をこの手で殺す、生前から想い続けていた理由が。あとリア充うざいから八つ当たり。

「つーか外はクリスマスとかで騒がしいんだろ? てめーら付き合ってんなら今日くらい遊んでこいよ」


 ハアァ? こいつは俺と春野が付き合ってるなんていうのか?

「てめぇ情報収集がうりなんだろ、ちゃんと調べろ。付き合ってるわけねーだろ馬鹿か」

「……あ、そ、そうね。全く何故私がこんな低スペックで友達のいない可哀想で哀れな榊くんと付き合ってるなんて有り得ないことを言うのかしら? 嘘を言うならもっと現実味のある嘘を言うのね」

 言いすぎだろ……。あと友達いないは余計だ。お前もいないだろ。つーか春野さん、顔赤いですよ? あと何で狼狽えてたのですか春野さん?

「……」

 無言で俯き、拳をギリギリと握り締める神様。どうしたの?


「リア充がぁ!! てめーらそんなラブコメ見せる為にここに来たってのかぁ!? ああぁ!?」

 どの辺がリア充なのか教えて欲しいですわ。

「悪いかよぉ! そうだよ! 俺は長いことこの世界にいるが、一度も恋人なんて出来た試しがねぇよ! 神様でも恋がしたいんだよ! 何であいつら2人に恋人ができて、俺にっ……俺にできねぇんだよぉぉ!!」

 誰も悪いとは言ってないし、俺だって誰かに好かれた試しがない。あの二人ってのは他の神のことか?


「そもそもクリスマス! 俺だってクリスマスに外に出て、夜景の綺麗な豪華な店で恋人と微笑みながらお茶したいわぁ! それなのに何でクリスマスにこんな地下深くの薄暗い洞窟のような所で一人でここにいなくちゃいけないんだよぉ! 神殿ってお前、名前だけじゃねぇか! 天空の城とかにしろ! あとお前達含めその他大勢の神殺し共! 何でこの世界でイチャついてんだよ! もっと俺達神を倒すために気張れよ! 恋愛なんて興味ないって言えよ! お前達はここに神を殺しに来てんだろ!? 恋人なんて女々しいもんつくるんじゃねぇぇぇぇ!! 俺が楽しめないクリスマスなんて消えればいいんだよぉぉぉ!!」


 ……モテない哀れな男の咆哮が、この広い空間で反響した。

 春野は若干引いているものの同情をしている。

「あ、何ていうか……頑張れよ。良いことあるって」

「ええ、そのうち良いことあると思うわ。きっとね……」

「同情するなぁぁ!! 責めて励ます言葉を選べぇぇぇ!!」

 すんませんねぇ、俺達ぼっちなんで会話苦手っす。


「リア充なんて皆死ねばいいのだぁ! 基本、戦うのは面倒だから嫌いなんだが俺は怒った! リア充全員この手で抹殺してくれる! 手始めにお前達を殺す!!」

 いきなり超スピードで俺達に接近し、手に持っていた大剣で斬りつける。

 それを横っ飛びで回避して、俺は手から火の玉をだし神に向けて投げつける。逆サイドから春野は氷礫を作り、神に向けて投げつける。

 神は大剣を地面に刺してその上にのって回避する。俺の火の玉と春野の氷礫は神にあたらず逆に俺の方に春野の氷礫が襲いかかってきた。

 この展開は予想できなかったが、紙一重で回避した俺は、俺が愛用してきた薙刀を手に持ち、神に襲いかかる。俺が接近して来るのに神は避けようともせず、にやりと笑み、ある方向を指差す。


「お前の火の玉。彼女にあたってるぜ?」

 指差した方向を見ると、俺の火の玉にあたったらしい春野が倒れていた。

「春野!」

 俺が一瞬よそ見をした数秒の隙を逃さず、大剣から素早く降りた神はすかざず斬りかかに来た。

「よそ見禁物!」

「くっ!」

 鍛え上げてきた無駄に初めからポイントが高かった速さと何百体も倒してきた経験を生かし、なんとか避け、春野のもとに駆けつける。

「ほーっ、やっぱり俺より強いな……。ここはいつもどうり相手の弱点を突いていくか……」

 神が何か呟いたが無視して春野に駆け寄る。


「春野……」

「くっ、だ、大丈夫よ。まだいけるわ……」

 俺の火の玉が相当効いたのか体力が大幅に減っている。

 俺は回復薬を春野の懐から取り出し、回復してやる。

「……自分のを使わない辺、いつもどうりね。助かったわ、ありがとう」

「俺の回復薬じゃないから気にするな!」

「堂々と言い切らないでくれる? 結構最低なことをしていることに自覚しなさい」

 素直じゃねぇなぁ! いや、あんまり良いことしてないのは確かか?


「やっぱり強いな榊龍紀! 正直な話、お前の最上級魔法、フレイムバーストとか打たれたら即死だぜ俺?」

「フレイムバーストォォォ!!」

 俺の手元からさっきの火の玉以上の特大の火の玉をだした。

 さっきの火の玉の大きさがバランスボール並だったらフレイムバーストはユニバのユニバーサル・グローブくらいの大きさ。威力も絶大だぜ。

 まあ俺も神に挑むにあたって念入りに情報を調べたが、俺のフレイムバーストを一撃あてるだけで倒せるのは真実。こいつは火系の魔法に弱いし、そもそも守備力があまりないという情報がある。


「あたればの話だがな!」

 フレイムバーストをヒラリと避ける。無駄に広い神殿なのでフレイムバーストを避けるには十分スペースがある。こいつ、身のこなしはいいから次は確実にあてれる時に打たないとまた避けられてしまう。

「んじゃぁ……、そろそろ俺の戦いを始めようかねー」

 神はニヤリと笑み、超スピードでこちらに向かってきた。

 俺は薙刀を、春野は氷の剣を構える。

 俺が春野の前にでて、突っ込んでくる神の前に立ち向かう。

 俺が前にでてきたのにも構わずヒラリと俺を避けて、春野の方に向かう。

「榊龍紀よりまず弱い方の春野春奈を狙う」

 かなり大きくて重そうな大剣を身軽に扱い、素早い怒涛の攻撃を春野に繰り出す。

 上から振り下ろしたり切り上げたり薙ぎ払ったりなどをハイスピードで繰り出す神。

「くっ……」

 氷の剣でなんとか神の攻撃を防ぐ春野だが、速さも威力も神の方が上手。春野は全てを防ぎきれず神の重い斬撃を何発かくらう。

「春野!」

 俺は神の背後から薙刀を振るい、攻撃する。


「仲間シールドッ!!」

 神は春野を盾にして、俺の攻撃を防ごうとする。お前それでも神か!?

 ……ッ! 構わねぇ! 俺と春野は仲間でもなんでもねぇ、同じぼっちだ。躊躇う必要なんか……!

「くっ!」

 ギリギリの所で寸止め。……、なぜ止めた俺っ! このまま切ってれば確実に神には大ダメージを与えれたのに……!

「甘いっ!」

 俺の隙をつき、腹に蹴りを入れてくる。

「効かねぇよ!!」

 こいつの蹴りなぞ効かん! 腹に力をいれて、耐える。俺は体力が2削られる程度で済んだ。

「マジかよ……、お前チートだろ?」

「おらっ!!」

 春野を躱し、神に俺は蹴りを入れる。

「ぐあぁっ!! ……お前筋力いくつだよ……!」

 神は後ろに下がり距離をとる。春野を捕まえたまま。

「てめぇ……、春野を離せよ」

「やなこったぁ~。こいつは人質だぜ?」

 人質だと? まあ春野なら異能力や魔法使って抜け出せるだろ。


「!? 異能力が使えない……」

 何? もしやこいつの仕業?

「俺の異能力だよ! 神にも一応異能力はあるんだぜ? 俺の能力は俺がこの手で触れた奴は5分間異能力と魔法が使えなくなる異能力だ!」

 うわぁ、せこい異能力だ。

「とりあえず縛っておくぜー?」

 懐からだした縄で春野を縛る神。

「榊龍紀、俺に近づくとこいつを殺す。あと魔法とか撃つなよ?」

 ちっ、卑怯な神だな……。ふっ、だが俺の異能力を思い出せ。俺の異能力を使えば、火の玉とか消すことができるんだぜ? フレイムバーストを見えなくして、攻撃してやる! ただフレイムバーストは他の技と規模が違いすぎる。消すには時間と集中力が必要となる。

 時間が必要だな。


「余談なんだが、良い話を一つ、お前に教えてやろう」

 集中……集中……。

「お前、パーティーを抜けた時の記憶がないんだってな?」

 何故そのことを……、流石に情報屋の名は伊達じゃねぇな……。

「教えてやるよ。お前、パーティーのある奴と喧嘩してパーティー抜けたんだよ」

「っ!? 俺が? 誰と?」

「あー、そいつの名前は―――」

「それ以上は喋らないで」

 春野が凍りついた、怒気を含んだ声音で神の言葉を遮る。表情こさ無表情だが、明らかに怒っている。俺に怒っている訳ではないと思うが、俺まで背筋が凍った。

「おー、こぇーこぇー。じゃあ代わりにもう一つ良い話をしてやる」

 こいつの言う良い話は良い話じゃない。まあ聞くけど。

「こいつが一人でいた理由を教えてやる」

「! ほほぉ? 聞かせてくれよ」

「駄目! 聞くのをやめなさい榊くん! 社会的に抹殺されたいの!?」

 しゃ、社会的に? 天上世界の社会から抹殺されるの? 俺そしたらどうなんの!? 成仏!?

 いやいやいや、これは聞けないでしょ。あいつならやりかねんし。


「まあ俺は教えるけどな。聞け! こいつは、パーティーを去ったお前を追うためにパーティーを抜けたんだ!」

 ……俺を追うために? パーティーを抜けた、だと?

 春野は顔を赤くして俯いている。こんな表情滅多に見られないのでじっくりと拝見。こうして改めてみるとやはり美少女だと思う。

 何故? 友達だから? いや、俺とあいつは友達じゃ……。

「何で俺を追うために……」

「さ~あ? それはこいつしかわからねぇけど、お前のこと好きなんじゃないの?」


 !?!? ス、スキ? オレノコトスキー?

「ちっ、何でお前こんな見るからに冴えない男のことが好きなんだよ? どう考えても釣り合ってねぇだろ。お互いの顔面戦闘力考えろよ、くそ!」

 冴えなくて悪かったな! 顔面戦闘力低くて悪かったなぁ!!

 うーん、だが実感が沸かないなぁ。あの春野が? 幸村ならまだわかるが俺?

 霊長類に好意を持たれるなんて多分初めてだ。……悪い気はしない。

「あー、もう人質とかいいや! イライラするからもうこいつ殺すぜ?」

「! 春野!」

 だがこっちも準備OKだ。春野にあたらないようユニバーサル・グローブ並みの大きさのフレイムバーストを野球ボール並みに縮めた。そして見られないよう消して攻撃すれば完璧! 俺のコントロールと球の速さは尋常じゃないぜ? プロ野球選手も真っ青な程のスピードにコントロール。

 よし、出てこいフレイムバースト! 俺はこっそり手を俺の体の前にだし、肉眼では見えない、顕微鏡を使っても見えないフレイムバーストを手元にだした。



 ……っ!? 俺の手元からでてきたのは、ガキでも見える程、ハッキリ移った野球ボールの大きさのフレイムバーストだった。

 何故だ!? しっかり時間も使ったし集中した。見えないはずのフレイムバーストが、何故見える!?

「へっ、やっぱりな……」

「どういうことだ!? お前何かしたのか!?」

 奴のいったことは、俺にとって有り得ないはずの言葉だった。


「お前のその異能力、姿すら消せる技には条件があるんだよ。それは、お前に友達や仲間だと思えるような存在がいない、完全にぼっちになった時使える技なんだよ!」

 それが使えなくなった、つまり俺は……。

「お前が春野のことを友達や仲間だといえる存在だと見たんだよ!」

 ……っ!? そんな訳が無い! 有り得ない!! 俺が、ぼっちマスターの俺がそんなことを思うなんて!

「さーて、約束だぁ。下手なことをしたら殺すと俺は忠告したんだ。遠慮なくやらせていただくぜ!」

 今フレイムバーストを撃った所であたるはずもない。身のこなしだけはいいあいつならすぐに避けられるだろう。

 くそっ! 何とかならねぇか……!


 ん? まて、何故俺はこんなにまでして春野を助けてやろうとする。

 春野のことを何とも思ってないのなら、何故俺はこんなにまで必死に奴を助けようとしている……?

 いや、でも誰かを助けるなんて人として当然……、いや、だとしてもだ。何故こんなにまで必死になっている? 基本クズな俺が、何とも思ってない奴を助けようと必死になる訳がない。

 あーこれか。この感情が、春野を友達や仲間だと思ってしまったのが、原因か……。

 ……、自分をぼっちだと名乗ってた俺が、ねぇ。情けねー、他のぼっちに顔向けができない。「何が情けないだよ、むしろぼっちでいることが情けねーよ」と思う奴もいるだろうが、一般人には理解できないだろう俺のこの思いが。

 だが自分でもう気づいてしまった。この感情をどうにかすることはできない。

 だけどぼっちじゃないと、春野は助けれない。でも、今更春野を見捨てるなんて無理だ。だけどそうしなきゃ技が……。くそっ! どうすりゃ……、どうすりゃいいんだよ!!


「榊くん」

 ふと、俺の耳に飛び込んできたのは、凛としていて綺麗な、聞き覚えのあるソプラノボイスだった。

 春野……。つーか神、さっき殺すとか言ってたのに、まだやってないじゃん。有り難いけど。

「ん? 何だ、言い残すことでもあったのか!? いいぜ、一言くらい言わせてやんよ」

 神は待ってました! と言わんばかりな顔をする。多分、そういうのが聞きたくて、殺さないでいたのだろう。何なんだこいつ。

「一つ、言わせていただくわ」

 おっ、神がやたらに嬉しそうな顔をした。やっぱりこの言葉を待ってたんだな……。

「……ごめんなさい。私は貴方のこと、友達とも仲間だとも思ってないわ」

 そう言って笑う。


 ―――ああ、そうか。そうだったな。俺とお前は……。


 目を瞑り、俺はフレイムバーストを消した。

「はっ、言いたいことはそんなことか? じゃあもういいや。殺らせていただくぜ? お前もフレイムバースト引っ込めたようだしな!」

 そう言って大剣を持ち上げて、上から大剣を振りおろし春野を殺す―――寸前に、持っていた大剣を止めて、地面に落とした。

 春野は驚いているのかと思ったが、全く驚かず、逆に「遅いわよ」と言っているように見えた。


「っ!? ……馬鹿な……。榊龍紀てめぇ……、何で、何で……。ぐはっ! ……フ、フレイムバーストを……消せている!?」

 ぐはっぁ! と叫びながら盛大に吐血して、倒れた。……よし、確実に仕留めたな。そう、俺はフレイムバーストを消して、神にあてた。

「貴様……、使えないはずじゃ……!?」

「そうだな、確かに使えなくなった。それは俺が春野を友達や仲間と、勘違いしたからだ。そして、春野に言われて目が覚めた。俺と春野は……お互いぼっちなんだよ。友達なんかじゃねぇ」

 そうだ。ぼっちの俺が不覚にも仲間だと思ってしまったのだったが、春野に言われて思い出した。こいつと友達何て有り得ねぇ。しかも生きてた頃にも言われたな、有り得ないって。

 何で好意を持たれたのかはしらんが、こいつとは一生友達になれないな。

 こいつだけじゃない。他の誰とも友達にはなれないだろう。友達とか作ったことないし、どこまでいったら友達なのかもわかんないし。

 俺はぼっちだ。友達もいない、仲間もいない、守るべき者もいない、周りにも誰もいない。

 常に孤高を貫く、一匹狼。誰にも俺の邪魔はさせん。

 だが、春野を助けることくらいは……、いいんだよ。うん。


「あー……、負けた。……何で俺が、神の俺が死ぬんだよ……? 消す能力とか、チートだろ……。何でそんなの使えるんだよ……?」

 決まってんだろ。

「俺はぼっちで神殺し。だからな!」

「……へっ、理由になってねぇよ……バカが……。最後に言わせてもらう。俺が―――」

「何か元気そうだなお前、もう一発いっとくか?」

「うわぁぁ! やめろ! 今死ぬ! 死にます!」

 すると、神の体が白に包まれていく。あー、これで消えるのか。

 この世界から、一人の神が死んだ。



 ……。

「あー、終わったな」

「ええ、終わったわね」

 ……。

「ごめんなさいね。私がいなかったらもっと楽に倒せたでしょう?」

「まー確かにな。まあ、結局勝ったんだしいいよ」

 ……。

 すぐに途切れるなー俺達の会話。まあそれも仕方がない。お互い人と話すことを苦手とするぼっちなのだから。

 じゃあ、すげー気になってたこと、聞いちゃいますか!

「なぁ、お前って俺のこと……」

 まだ最後まで言っていないのに春野の顔が真っ赤になった。そしてそっぽを向いて俺に見られないようにする。

 少しの間場が沈黙した。俺は答えを待つ。春野はこちらを向かないままだ。


 待つこと数十秒。ようやく顔を見せてくれた。俺を正面から見つめてくる。

 さっき程ではないが、まだ顔は赤い。何かを恥じらうような素振りと、俺の目を上目遣いで見てくる。やだこの子、可愛い。

 この可愛い生き物を抱きしめたい衝動を何とか堪えている。明らかにいつもと違うし、こんな顔みるのは初めてだ。顔は可愛いが、いつも可愛げがなかったからなー。こんなに可愛い仕草とかされたら俺はもう……。惚れてまうやろーー!!

「……私と貴方は友達じゃないわ。それでも、友達には、なれないけど……」

 そこで喋るのをやめた春野。何だ? どうした?


 ―――っ!!!??


 それは一瞬の出来事だった。

 女の子特有のいい香り。風に靡くサラサラで綺麗な黒髪。春野の整った顔が俺の眼前に来た時、俺の唇にほんの一瞬柔らかい感触がした。

 それはもう間違いねぇ……。

 キスだ。キスしたんだな。

 初めてした女性と唇を合わせる行為。それはちょっとあてたくらいの一瞬だったが、キスしたことには変わりはない。超心臓がうるさい。

 つーかいきなりキスって……。あかん、惚れてまう。

「友達じゃなくて、違う関係なら……」

 違う関係? あーはいはい。理解しました。成程ね。これはちょっと変わった告白だな。

 ま、恥ずかしいのだろう。告白されたことはかなりあるらしいが、告白するのは初めてらしいな。

 うーむ、キスしちゃったしなぁ。これもう既成事実だし、しょうがないよな! お前が恥ずかしくて言えないなら俺が言おう。

「……俺達は友達にはなれねぇ。ただ確かにそれ以外の関係ならいいのかもな。例えば……」

 俺も変わった告白だな。まあいい。続きを言ってやる。


「恋人とか」

 一瞬驚きで目を丸くした春野だが、すぐにその顔はいつもどうりの無表情―――いや、最高に可愛い笑顔を見せてくれた。

「……本当に、いいのかしら?」

「お前、いきなりキスしといて何言ってんだよ。認めざるを得ねーよ」

 俺がキスと言っただけで顔を朱に染める。恥ずかしいのでしょうね。

「ぁ……、う、うん。そうね。私から強引にやってしまったものね……」

「別に嫌じゃなかったぞ? むしろ、最高に気持ちよかったです」

 気持ち悪い笑を浮かべて親指を立てる。

「……気持ち悪い」

 いつもみたいな、冷やかな目つきで俺を見る。何故だか久々な気がした。

「と、いつもなら言っていたでしょうね」

 春野はクルッ、と体を回転させ後ろを向く。数秒後、またクルッと回転してこちらを向いた。

「ありがとう。嬉しいわ」

 そしてまた、さっきのように可愛らしく笑った。

 ……いやー、うん……。いいなこれ。何だよこれ最高じゃねーか。すごいテンション上がるわ、恋人できたと思うとすっごいテンション上がっちゃう。

 思えば俺は、女子から嫌われ続けて何十年。女子と会話をしても話は盛り上がらないし、相手は露骨に嫌そうな顔をするし、そもそもほとんど女子と会話することなんて無かった。そんな人生を歩み続けた俺だ。

 テンションだって上げられずにはいられない。これからは恋人同士だ。どうなっていくんだろうか楽しみでしょうがない。


「……、日付が変わったわ。今日は25日、クリスマスね」

 そうだった。すっかり忘れていたが今日はクリスマス。そして俺がリア充になったのが昨日のクリスマスイブ。今まではクリスマスを嫌い、呪っていたのだが、今リア充となってからは呪う日から充実する日に変わるのだろう。神様ありがとう! あ、さっき殺しちゃったな。

「メリークリスマス。龍紀くん」

 おおぅ、今名前で呼ばれた。呼ばれただけなのにドキッときた。

 俺も名前で呼ぶべきだな。

「メリークリスマス。春奈」

 名前で言ったからか、春奈の顔が真っ赤になった。面白いなぁ。

「と、とりあえず、ここから出ましょう」

「ああ」



 地下15階という無駄に深い神殿からようやく出てこれた。

 神の神殿をでて、まず目に入ったのが綺麗な夜空だった。

 まるで俺の神殺し成功を祝うかのように星がキラキラと光り輝いている。ありがとう! 皆ありがとう!

 星達に礼を言って春奈を見る。

 春奈も俺と同じようにして星を眺めていた。顔は無表情だったが、きっと感動しているだろう。今日の星の輝き度は異常だ。

「……綺麗な、夜空ね……」

「……」

 俺は今、感動をしている。春奈が今までとは360度態度が違うからだ。

 今までだったら……。

「……? ああ、貴方いたのね。流石は存在感の薄いぼっち。気づかなかったわ。全く、貴方が現れたせいで綺麗な夜空が台無しじゃない。良い雰囲気を汚す顔ね」

「まるで俺が悪いみたいに言うな。この顔は生まれつきだ」

 ってなってたのにな。ああ、恋人っていいなぁ……。俺はだらしない笑みを浮かべていた。

 それを見た春奈は、


「全く気持ち悪い顔ね。貴方のせいで綺麗な夜空が台無しじゃない。良い雰囲気を汚す顔ね」

「全く今までと変わってねぇーー!」

 俺の感動を返せ! 

「フフッ……」

 俺を見て春奈は笑った。全く変わってない訳でも無さそうだ。よく笑うようになったし。

「関係が変わった所で、今までと対して変わんねぇな……」

 俺はため息混じりでそう呟いた。

「そうかしら? 私は結構変わったと思うわよ?」

「え? どこがだ?」

「前までの私なら無視だったでしょうし、前までの貴方だったらさっきみたいな気持ち悪い笑みは浮かべてなかったでしょう」

 あー確かに。今までだったらガン無視だったかも。

「それに……、私の心境も変わったわ」

「あ、それは俺もだ」

 こんな関係になるとは思って無かったしな。一緒にいるだけでドキドキ。何言ってんだ俺。


「……ねぇ」

 さっきの会話が途切れてから数十秒後、春奈がまた口を開いた。

「あん?」

 返事と共に春奈を見た。頬が微かに朱に染まっている。

「……あ、あなたは、どう思っているの?」

「何が?」

「その……、私を、よ」

 春奈を? えー恥ずかしいな。確かに俺はこいつをどう思ってるんだろう? いや、考えるまでもねぇ。

「好きじゃねぇ奴の告白を了承する訳無いだろ」

 シャイなのでこんな応答しかできません。

「違うわ。好きか嫌いか……、この二択よ」

 何で言わせようとすんのさ。もう十分に分かっただろ。まあでも付き合うならこれくらいスパッと言えなきゃ駄目なのか? なら言うしかないか……。


「好きだよ」

 思えば半年間一人だった時は、春奈のことを忘れようと思っていた。忘れることは無理だったがな。

 神と戦っている最中。春奈が俺のこと好きだと知り、俺はこいつを友達と思い、友達として好きなんだと思った。

 が、春奈に友達にはなれないと言われて、友達になれないことを思い出した。

 そして春奈にキスをされ、ようやく自分の本当の気持ちを理解した。俺は異性として、こいつが好きだったんだ。いつからそう思ってたのか知らんがな。

「そ、そう……」

 俯き、真っ赤になった顔を俺に見せないようにしている。俺からも聞いてやろう。

「お前はどうなんだよ。お前の口からはまだ聞いてないぞ」

「―――っ!?」

 俺の言葉に驚き、そして恥ずかしいのか顔がさらに真っ赤になった。こいつ、よく顔が赤くなるよな。熱でもあんのかよ。

 春奈は手を体の前で掴んだり離したり人差し指同士をつついたりと見ていて面白いことをしている。観察しよう。こんな動作をした春奈は見たこと無いので面白い。

 数秒後、ようやく手の動きを止めて俺を見る。顔は赤いままだ。

 ようやく春奈の小さな口がゆっくりと開き始める。


「わ、私も、勿論、好き……です」

 ! やばい! なんだか聴いてるこっちが恥ずかしい!!

 春奈は恥ずかしさのあまりか背をこっちに向けて、顔を隠している。恥ずかしいだろうな、俺も恥ずかしい。

 恋愛に関して経験値0の俺達にとってはやばい恥ずかしい。

 ……待て、今これ結構いい雰囲気じゃね?

 周りには勿論誰もいないし、むしろキラリと光る満天の星空がいい雰囲気を出している。お互いの気持ちの再確認もした今なら……。

 もう一度、キスできるんじゃね? てかやるなら今しかねぇZURA!


「春奈」

 俺は春奈に声をかけて、春奈の正面に立つ。

 顔はまだ真っ赤で、なんとなくいつもより春奈が小さく見える。

 俺は真っ赤な顔をして「あ……ぅ……」と小さな声で何か言ってまだ恥ずかしがってる春奈の両肩を掴む。

 いきなりで驚いてた春奈だが、理解したのか俺の顔を見て、目を閉じて、唇をこちらに突き出してくる。

 春奈からの了承も得た。あ、あとは俺が……、口を付けるだけだ。


 フゥ~。……やばい、緊張する。好きと言うより緊張する。緊張のせいだろうさっきから俺の心臓が超うるさい。春奈に聞こえてないよな?

 俺は意を決して、顔を徐々に近づける。春奈の整った綺麗な顔が、すげぇ目の前に来ていて余計に緊張してきた。

 春奈の口まで後目測2Cm! もう目の前まで来ております!

 やばい! 結構スローで近づけていってたのにもう後1Cm! あー! もう来る! キスする! ロクにやり方も知らないくせに! ああぁぁ!

 ―――。






 




 ……。窓から来る眩しい日差しにより、俺は目が覚める。

 チュンチュンと朝起きたとき定番の鳥の囀る声が聞こえる。

 ……え? あれ?

 待て、落ち着け。落ち着いて状況を把握しろ。

 ここは……、ホテル? いや、宿屋か……。

「おーっす! 龍紀! 朝飯だぞ! 食堂行こうぜ!」

 俺の目の前で忙しなく手をバタバタさせているのは幸村。

 ……。

「な、なぁ……、俺達この世界来て何日経ってる?」

「へ? まだ二日目じゃん」

 ですよねー。

 俺はベットから降りて春奈を……いや、春野を探す。

「あ……、おい春野」

「……」

 無視。

 ですよねー。


 ―――全部夢かよちくしょおぉぉぉ!

 だよなー。春野が俺を好きとか有り得ないもんなー。

 あぁ……死にたい……。あ……、もう死んでた……。

「はぁ……。何でこんな夢見たんだろ俺……」

 俺は全てに絶望した。


「はぁ……。何であんな夢を見たのかしら……」




夢オチかよ!

まあ皆さんきっと分かってたと思います。

夢ですので、今回初めて出した設定で本編に出さないのがあります。

逆に本編でも同様の設定もありますのでご了承ください。


ここまで読んでくださった全ての読者に感謝!

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