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俺はぼっちで神殺し  作者: 山ドラ
ぼっちが送る神殺しの旅の序章
5/14

山本幸村

何か不思議に思った点や、おかしく思った点

などがありましたら感想やメッセージをお願いします。

 誰もいない、と思われていたが、後ろから俺達二人を呼ぶ声がした。ぼっちの俺のことを知っている限り、一緒に死んでいったあのメンバーの一人だと思う。

「あら、意外ね。幸村くんも来てたのね」

「お前もな。まー龍紀はなんとなくいるんじゃないかと思ってたけどな」

 俺の神嫌いは言ってもいないのに他者にも伝わっていたか。どんだけ神嫌ってんだよ俺。


 こいつの名前は山本幸村やまもとゆきむら。こいつは俺の数少ない知り合い。色々って程複雑なことがあった訳ではないが、色々あって、ソフトテニス部兼俺達の部活、お助け部の部員。

 まあ死んじまったから部活も友達もくそもねぇよな。

 少し黒っぽい茶髪に短髪、中途半端にイケメンフェイス。そして俺がもしかしたら神より嫌っていた、リア充グループの一員だった男である。

 どんな学校にだってグループは存在しているだろう。

 俺達の学校にも存在していた。一つは憎きリア充グループ。男女混合でいつもクラスの中心でわいわい言ってる猿共だ。

 こいつらはいつも集団で行動を共にしていて、夏でも集団なので見ているこっちが暑苦しくなってくる。その点俺はぼっちなので夏も風通しが良く、涼しい学園ライフを送っていた。ぼっち最高。

 他にも男子だけの女子に構いたいリア充2軍グループ。女子だけのいつも誰かを愚痴っているビッチグループ。てか女子は大体ビッチだと思っている俺はおかしいでしょうか? 女子はマジで怖い。

 ここまでがリア充グループ。後はオタクグループ、地味に頭がいい地味なグループ。最後にぼっちの俺だ。

 ……思ったんだが、クラスでぼっちだったの俺だけ?

 さっき言った通り、地味な奴らは地味どうしで喋ってるし……、常に机に突っ伏してんの俺だけだったのか?

 いや、他のクラスに行ったらまだぼっちはいるはずだ。春野とか。

 そういえば生前にもこんなこと考えてた時があったような……。いや、生前の話はよそう。リア充爆発しろ。


「おっす龍紀。いると思ったぜ」

「おう幸村。いるとは思わなかったぜ」

 そうだ、こいつの紹介をしてたのにいつの間にかクラスの状況を紹介していた。ん? 誰に紹介するんだ? ……まあいいか。幸村について振り返ろう。

 俺は高校の登下校するところの道を歩いていたら角で人とぶつかって、まさかの古いけどベタなラブコメ展開!? と期待をしたけど相手が幸村だったというのが出会いだ。

 やっぱ紹介めんどくせぇな……。とりあえず色々あってあいつとテニスで勝負することになった。あ、俺中学の時経験者な。

 で、俺が勝って……、その日から幸村が唐突に入部する、とか言い出した。はい、紹介終わり。

 とりあえず知り合いなのだ。友達かは不明。どこまでいったら友達とか、基準がわからないからよく分からん。


「で、俺は言われた通りに学園に来たんだが……、とりあえず入ればいいのか? てかどうしたら入学になるんだよ?」

 俺に聞かれてもなぁ。俺なんて説明忘れてた☆ とか言われたし。

「その辺、ちゃんと説明してほしいわね……。何もかもアバウトすぎるのよこの世界。ここに来るまでの道のりとかも全然わからないし、この地図はあてにならなかったし……」

 ブツブツこの世界に文句を言いながら地図を眺める春野。

 そういえばこいつ、隣で地図見ながら歩いていたな。

 え? 何その地図。まさか今度はあいつの渡し忘れか!?

 と、懸念に思ったがちゃんと俺のポケットにも春野が言うあてにならない地図を持っていた。


「なんで? 俺はこの地図見ながら普通にここまで来れたぞ?」

 俺達とまったく同じあてにならない? 地図を持っている幸村。

 地図を見ながらで、迷子になるとか……、しかも全然使えるじゃん。どこまで方向音痴なんだよ春野は……。

 ジト目で春野を見つめていたら目が合う。春野はすぐに顔を逸した。若干だが、顔が朱に染まっていた。

「し、仕方ないじゃない。大体、こんなとこ来るのは初めてだし……」

 皆こんなとこ来たことないし、その為の地図がこれだと思う。

 完璧な春野の弱点を知ってしまい笑みを浮かべる俺。

 そんな俺をゴミ虫でも見るような目で睨む春野。怖ぇー! 背筋が凍る!

「大体、あなたは地図があることにすら気づいてなかったじゃない。私が一概に悪いというわけではないと思うのだけど?」

 自分で言うな、自分で。

「俺は開始13秒で死んだからポケットなんて調べる余裕がなかったんだよ」

「死んだのもあなたの責任よ」

 くっ、すべて事実なので反論できない!

 俺が押し黙ると、春野は勝ったと言わんばかりに笑む。非常に腹立たしいのだが、春野の笑った顔はやはりなんとも言えない程、綺麗で可愛かった。


「まあ二人共アホだったな」

 この中で一番のアホにアホ呼ばわりされてうっかり死にそうになった俺。



 天上学園に入ると、すでにあちら側は俺達を知っていたっぽいので、先生らしき人に教室まで連れて行かれ軽く学園のことについて講習を受けた。だるい……、学校のこととか心底どうでもいい。

 ここでは俺達と同じく入りたての神殺し達や、何日間かすでに学園生活を送っている生徒達がいて、そいつらとこの世界のことや、実戦での戦い方、自分の異能力を上手く使えるようこの学園で学んでいくらしい。

 ちなみに一応クラスは年齢で分けられるらしい。この世界はどうやら15歳から25歳までしかこれないらしいのだが、生徒は少ない訳ではなく、むしろ多いほど。皆憎みすぎ。そして神は嫌われすぎ。


 神殺しになる人は社会人より高校生、大学生が中心らしい。まあこんなに早く死んだら神に抗いたくなるよな。俺は元々憎んでいたがな。

 ちなみに先生に聞いた話だと、生前ずっと憎んでいた者だけではなくて、死に際に神を憎んだだけでもここに来れるっぽい。

 だが半端じゃない程憎むのが、条件らしいが。まあ俺はどうでもいい。

 ちなみにこの世界の神殺し以外の人間はすべてNPCだそうだ。目の前にいる先生もNPCらしい。NPCでも設定されたことしか言わないことはないと言う。NPCにも感情があるし、普通の人間として会話も成り立つし、オトモダチにもなれるらしいです。俺にはできん。

 俺「らしい」って何回言った?


 俺達は先生に自分の異能力について説明と、どんなものかを見せてほしい、と言われた。

 まずは幸村からだ。

「先生、なんかいらない物ないですか?」

 と幸村に言われた先生は、石ころみたいなのを差し出した。

 この先生、なんで石を携帯してるんだろう……。

「ほいっ!」

 するとただの石ころが剣に変わった。うおぉ! すげぇ!


「俺の異能力は物体を自分の好きな剣に変えることです。ただし、命が宿っている物は剣に精製できないです」

「なるほど、十分にすばらしい異能力だ」

 あ、今のなるほどとか言った人先生ね。


「形とかは色々自由自在です。ただ、この異能力は生命が宿ってない限り、どんな物でも剣にできますが俺の手で触れないと剣にはできません。そして剣にできる時間は約6分。6分過ぎると元に戻ります。まあでもレベルが上がれば剣になる時間も伸びるらしいですし、元に戻っても10秒待てばまた剣にできます。あと、一度俺の手で触れてしまえばあとはいつでも剣にできます。ちなみに6分経たなくても自分で元に戻したりもできます」

 普通にすげぇ……。こういうのだよ、俺の望んでいた異能力。


「うむ。君の異能力はすごい。鍛錬して、もっと月日が経てばきっとすごい異能力になるだろう。頑張りたまえ!」

 幸村は頷いた。いつものおちゃらけ顔ではなく、結構真面目な顔だった。男子の俺が見てもかっこいい顔だった。

 イケメン死ねっ!


 次は春野の番だ。すると春野は右手を前に出した。

「…………」

 ……何してんのこいつ? 疑問に思っているとやけにこの教室が肌寒くなるのを感じる。なにこれ、こいつの仕業?

 周りを見渡すと教室が凍っていた。超寒いぃぃ!

「…………」

 幸村は声を出すのも無理なのか無言の無表情で体だけ異常に震えていた。普段が少し暑苦しいから寒さに耐性がないのだろう。


 あっという間に氷河期となってしまった教室だが、一瞬にして

寒い空気も周りの氷も消えていった。

 さっきまで普通に感じていた今の温度が暖かく感じる。

「私はどんなところも凍らせることができる異能力です。気温を下げることはできませんが、すぐにでも氷を作って周りを凍らすことはできます。レベルアップ次第で凍らせる力は上がるようです。異能力スキルを上げていくと、気温も下げることが可能だそうです」


 こいつの異能力もすごいけど、氷とかだすのって魔法スキルにも

あるんじゃないか?

「氷か……。こいつはまたレアな方ですね。魔法スキルで覚えることのできるのは火や水までなので、氷や炎を操る異能力を持つ方は結構レアです」

 いい異能力持ってんじゃねぇか、くそっ……。


「その異能力なら今の段階でも初級魔法スキルの技ぐらいなら火も水も凍らすことができるでしょうね。あなたもレベルアップでどんどん強くなるでしょう。がんばってください」

 こいつの異能力も好評だ。くそ、羨ましい……。


 つ、次は俺の番だよなぁ……。

「? どうした龍紀。早く見せてくれよ」

 顔を見ただけで俺の異能力に期待をしている幸村。珍しいことにあの春野も期待をしている気がする。 えー……。

「おい幸村。ちょっとだけあいうえおって連呼しててくれ」

 そんな俺の頼みに全員が「何言ってんだこいつ?」と言いたげな顔をしている。春野の目線は凍りつきそうな程冷徹だ。

「よくわからんが、わかった! あいうえおあいうえおあい……」

 口は動いているけど急に言うのをやめた幸村に先生と春野は怪訝な顔をする。これは幸村がやめたんじゃないだよ。


「俺の異能力は音を消すことです。気配も消せます……」

 さっきまで微かに聞こえていたカラスも鳴き声もピタリと止む。

「音ならなんでも消せます。効果範囲は俺の目の映るところまでです。俺がいいというまで消した音は永遠に消えません。気配も同じです。人間にかけたら俺がいいと思うまでその人は喋ることはできません」


 一瞬にして場の空気がしらける。あれ? 無意識に俺の異能力発動したっけかな~? もういいよ! ……俺がいいと言っているのに場は沈黙したままだ。俺の異能力のせいではないらしい。わかってたけど……。


 この沈黙を打破したのは凍るような笑みを浮かべている春野だった。

「……、たしか異能力はその人にあった異能力、その人のような異能力だったわね。それを正しいと証明してくれたのね榊くん。確かにあなたは場の空気を消すし、存在も薄いわ。そして

実戦ではあまり使えそうにない異能力、スペックの低い底辺の榊くんにとって丁度いい異能力じゃない」

 笑いながら語る春野。

「おい、言葉には気を付けろよ春野。泣くぞ? 俺が」

 褒め言葉にしたら酷すぎる。嫌みにしても酷すぎる。

 確かに異能力はその人にあってるようだな、冷徹な氷のようなお前にしたら丁度いい異能力じゃねぇか。


「ま、まあレベルアップ次第で強くなってくると思うから気を落とさずに、がんばってくれ」

 苦笑いでフォローをかけてくる先生。下手なフォローはやめてください。危うくうっかり死のうとしたところでした。

 てか気を落とさずにってなんだよ。つまり駄目な異能力ってことじゃねぇか! 死ぬぞ!? 俺が。


「とりあえず、私から軽く説明はここまでだ。後はこの学園で自分で学んでいってほしい」

 まあどれだけ異能力が駄目でも魔法スキルで魔法覚えて強くなればいいのだ。異能力だって存在感と音消せるんだから、相手を不意打ちとかできるしな。

「クラスに案内する。まあクラスの奴らにとって君たちのような転校生みたいな者は一日に何回も来ているから、変に特別に見られずにすぐに皆と仲良くなれると思う」

 クラスの皆と仲良く? やろうとも思わないし、多分できない。まあ幸村なら出来ると思うけどな。生前は友達いっぱいいたし。


「よし、ここだ。さっきも言ったがお前らのようにここに新しく誰か来るのはあいつらにとって普通だから、自己紹介タイムとかそんなのないぞ。すぐに適当な席についてくれ。自己紹介とかは

お前らで適当にしといてくれ。ちなみにお前らもすぐに授業に入る。覚悟しておけ」

 学ぶのは実技とかだからいきなりでも大丈夫って言ってたな。

 神を殺せるのはいいんだけど……学園ライフとか、だるい。


 扉を開けたらそこは、意外な光景が待っていた。




読んでくださってありがとうございます。

次話もよろしくお願いします。

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