榊、またしても……
投稿に時間がかかってしまい、すいません。
リアルの方は入試とかで非常に忙しく、正直小説を執筆する余裕が無かったです。
次の投稿は18日以降からです。見てくださっている方は本当にすいません。
出だしは榊達からではありません。
読んでいれば誰の会話か分かると思いますのでよろしくお願いします。
「……順調か?」
「ええ、あの二人はお互い、意識している所です。付き合うのも時間の問題でしょう」
「納得いかねー! 何で俺が殺される役なんだよ! しかも短時間で死ぬし!」
「黙りなさい、第3の者よ。貴方がじゃんけんで負けたのが悪いのでしょう」
「そうだけどよー……。俺にしなくても適当な奴に神の役やらせればよかったじゃねぇーか! 所詮夢だし!」
「……グチグチとうるさいぞ第3の神。お前それでも男か?」
「くっ! そう言われると俺は黙るしかねぇ……」
「扱いやすいですねー……」
「何か言ったか第2! ああぁ!?」
「何でもないですよ。……そういえば少し気になっていたんですが、第1の者よ」
「……何だ?」
「どうしてあの二人を? 危険な奴ならまだ他にもいるでしょう?」
「……あの男の異能力は危険だ。我らにいつか災いを齎す」
「災い……とは?」
「……我は見た。奴の異能力によって、お前達が殺される所を」
「あー予知か。お前は殺されねーのかよ?」
「……何度言わせるのだアホが。我に関しては秘密だ」
「何で自分に関することは毎回言わねーんだよ。どーせかっこわりぃーことになってんだろ?」
「……一言余計だ。だから貴様は我らの中で一番下っ端なのだ」
「前から思ってたんだが、お前俺の扱い酷くね!?」
「危険なことは分かりましたが、それと付き合うことに何か意味は?」
「俺の話は無視かよ……、お前ら俺のこと嫌いなのか?」
「……奴を一人に、ぼっちにしてはいけない。いずれ最悪な異能力に目覚めてしまう」
「誰かと付き合わせて、ぼっちにするのを防ぐということですか……」
「……ああ、だからお前の能力で夢を見させた。意識させるように」
「なあ、一ついいか?」
「……大した話ではないと思うが、聞こう」
「すでにあの男が好きなあの女にして夢を見せたほうが早かったんじゃないか?」
「……」
「……」
「……」
「……第2の神よ」
「はい……」
「……変わらず調査を続けろ」
「分かりました」
「無かったことにしやがった!? お前らやっぱバカだろ!」
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「わーい、わーい! 皆ここにいたんだー!」
嬉しそうにピョンピョン跳ね春野に抱きついているこの女は、比奈田比奈。生前に俺が入っていた部活の部員の一人である。明るめの茶髪に長い髪を側頭部の片側のみで結んだサイドテールが跳ねるたびに揺れる。
こういう今時の女子高校生みたいなやつはよく見かけるから見分けがつかない。外見からリア充な感じを出している派手な女子。
教室でもこいつみたいな女子がちらほらいたから、比奈田が増殖してるのかと思ったりもしていた。
何でこんなリア充が俺達の部活に入ったんだっけ……?
ああ、思い出した。こいつは料理が下手くそすぎてお菓子の一つも作れないから何か作れるようになりたい! とか言ってきたのが始まりだったな。
俺は正直めんどくさかったがお助け部なので強制参加。そして比奈田がいきなり料理対決だとか言い出して春野、幸村、比奈田、七種の4人で誰が一番美味いのを作るか勝負した。作る品はクッキーだった。
え? 俺? 勿論ハブられましたが何か?
優勝は春野。そして幸村が案外料理上手ということが判明した。
問題の比奈田のほうだが、……思い出しただけで吐き気が……。
そして春野がつきっきりで比奈田を指導した結果。割と美味いのができた。これが春野マジックである。
そして次の日、また比奈田がクッキーを作ってきたんだが……、俺達の指導は無意味だったことが分かった。
その日から比奈田がちょくちょく部活に顔を出し始めて、最終的に部員に……、てな感じだ。
説明終了。長々と説明したが比奈田はビッチだとでも思ってくれても構わない。
「ちょっと! 誰がビッチよ!」
おっと、比奈田に聞こえていたようだ。今のは無かったことにしてくれ。
……あれ、僕、声に出してましたっけ?
「ここで会ったのも運命か……、お前と俺は何か特別な繋がりを感じるな、榊よ」
比奈田はまだ春野にくっついて離れようとしていない。比奈田は目を細めて幸せそうにしている。……暑苦しい。
「比奈田さん、そろそろ離れてくれないかしら?」
「えー? まあまあいいじゃん! 久しぶりなんだからー!」
「離れない理由になってないのだけど……」
とか言いつつ無理矢理比奈田をひっぺがしたりはしない春野。内心ではちょっと喜んでいるのがなんとなく分かる。爆笑。
俺が不敵な笑みをこぼしていたら春野に睨まれた。俺はすぐさま青菜に塩をかけたようにしおれる。
「む? 無視とはいい度胸じゃないか榊よ。俺の邪悪なこの眼でお前を捌くぞ?」
ん? 今何か声がしたような気がする……。俺が隣を見るとうざったらしいドヤ顔をしている幸村。
「ほらほら! 俺が言った通りいただろ比奈田! だからあれ程言ったじゃねぇか!」
幸村がグイグイ近づいてくるのが非常にうっとうしかったので数歩距離をとる。そして距離を縮めてくる幸村。
離れる。近寄る。離れる。近寄る。
「うっとうしいわ!」
どうしてリア充は人と会話をする時必要以上に近づくのだろう。リア充って目か耳にでも障害でもあるの?
「……お前は俺を怒らせたぞ榊! 我の怒りのい―――」
「ねぇーさかきん!」
「さかきん言うな。……何だよ?」
比奈田は俺のことをさかきんというセンスの欠片もないあだ名で呼んでくる。ちなみに春野のことをはるりん、幸村のことをゆっきー、七種のことをかなちゃんと言う。かなちゃんは可愛いけど。
さか菌……。俺が小学生の時、一時期そう言われていた。ある男子生徒が何故かわざわざ俺の机に触れてきたと思ったら、いきなり教室でそいつの友達と思う奴に「さか菌タッチー!」とかやっていた。
さか菌タッチをされた男は楽しそうにかつ、嫌そうに「きったねー! さか菌だー!」とか言ってまた別の男子にタッチ。女子にタッチをすると女子は本気で嫌そうな顔をする。しまいには泣く。
……アタッネー。あったあった。そんなことがありましたよ。ナツカシイナー。
本当に不思議な菌が流行してましたわあの時期。インフルエンザより恐ろしいさか菌! 何故か俺に触ったり俺の私物に触ると発症するらしいですよ! 怖いですねー。
死にたい……。もう死んでた。
「さかきん? 聞いてる!?」
比奈田の声によってようやく目が覚めた。あぶねー、今の俺ほっといてたら泣いてたよ?
「ああ、わりぃ。で、何?」
「だからパーティー組むから左腕だしてって言ってるでしょ! 皆とはもう見せあってあとはさかきんだけなの!」
ああそういうことね。左腕のブレスレットを互いに見せ合うことでパーティーが組めるんだったな。
俺はブレスレットを比奈田に見せる。
「うん、ありがと」
そして比奈田も俺にブレスレットを見せてくる。青色に紫がかかっているような紺色をしたブレスレットにはチェーンがついてたり、紅色の宝石みたいなのがついていたりしていて、とにかく派手だ。
「ま、待ってくれ! 我も! 我も仲間に……!」
「よーし! これでパーティーが組めた! ありがとうねさかきん!」
無邪気に俺に微笑みを向けてくれる比奈田。こいつは本当に他のビッチとは違うな。何でこいつは俺なんかにもこんなに優しく接してくるのだろうか?
何か裏があるのかと疑ってた時もあったが、分からない。
こいつ、俺のこと……、いやいやナイナイ。
「もう我、死のうかな……。どうせここに居ても誰も我を見てくれぬ……」
俺達から少し離れた隅で蹲っている男が何か呟いている。誰こいつ?
「あー……、忘れてた。皆、こいつもパーティーに入れてあげて」
比奈田が苦笑いで頼んできた。あ、こいつもしかして……誰?
「おう! よろしくな鍵谷!」
元気よく挨拶した後、左腕を前に出す幸村。
あ、そうだ、鍵谷だ。そんな奴いたなー。
「うん。よろしくね鍵谷くん」
微笑みながら左腕を出す七種、マジ天使。
「まあ……、鍵谷くんだったとしても一人でも多くいたほうがいいか……」
無表情で愛想のない春野が仕方ない、といったように左腕をだす。まあ俺も癪だったが左腕を見せる。
「さ、榊……。ふっ、フハハハハ! 入れるなら初めから無視などするなよ! 危うく死ぬ所だった」
目から溢れる涙を拭き取り、元気よく立ち上がって俺達に左腕を見せてくる。
「……、契約完了。今この時をもって我はお前らのパーティーと契約した。我についてこれるかな榊よ」
「ついていかないから安心しろ」
「なるほど、一生我の下か。常に底辺のぼっちのお前にはお似合いだな」
あれ? パーティーの一員をパーティーから除外するにはどうすればいいんだろう? あとで先生に相談しよう。
さっきから非常にウザイこの男の名前は確か鍵谷圭佑。中2病でバカでオタクで変態。
「比奈田氏の説明は1000文字程あったのに対して我の説明はたったの一行だと? ひいきだぞ榊。そんなに女子が大好きか?」
「ふざけんな、てめーと一緒にするな。ビッチは大嫌いだよ」
あと何でこいつ俺の心の中読んでんだよ。
「だからビッチって言うなー!」
比奈田が声を荒らげて反論してきた。とりあえずスルー。
「代わりに我が我について説明しよう」
自分で自分の説明するな気持ち悪い。
何故か得意気な顔をしながら鼻をこする。そして途端に顔が真面目になったかと思えばうざったらしい襟足をかきあげる。長いなら切れよ。
「我の名前は鍵谷圭佑。まあ名前などあってないもの……、価値がない」
そうか。ならお前の価値のない名前は忘れよう。
「おっと、価値がないとは言ったが忘れろという訳ではない。鍵谷とでも呼ぶがいい」
そうか。だが覚える価値がないから忘れることにしよう。
「世間では我のことを中2病、と呼ぶらしい。フッ、全くおかしな話だ。我は本当に異世界から来たのにな。……確かに肉体は生身の人間だが、魂は違う。少し人間に興味を持ってな、この眼で人間共を見に来たのだよ。鍵谷圭佑という男の肉体を借りてな。死んだけどな。あと少し改造は施した、例えばこの……眼とか」
そういいながら眼帯で隠していた左目を顕にする。
鍵谷の眼は赤く、綺麗な真紅だった。ほぉ……、この世界にもカラコンなんて売ってたんだな。
「この眼は特別だ。貧弱脆弱虚弱の人間共には無い力があるのだ。どんな力か、だって? 知りたいか? 知りたいよなぁ。まあまあ焦るな。時間はある、そう無限大に。その前にまず、我の―――」
「おっと、もうこんな時間だ。教室に戻ろう」
「……あら、本当ね。そろそろ教室に戻りましょうか」
興味が無かったので適当な理由で歩き去ろうとする俺と春野。
「ま、ままっまま待て! 勿体ぶらずに教えてやるから待て! 待ってください!」
貧弱脆弱虚弱の人間に必死になって頭を下げる異世界人。どうやら異世界人はプライドが無いらしい。
「この眼には我の異能力があるのだ! 我の異能力を見ていけ!」
俺の貴重な時間をこいつに奪われるのも嫌だったが、まあどうせ教室に戻った所で寝たふり以外やることがないのでしゃーなしで見てやることに。
「生前はこの眼にはまた違う能力があったのだが、天上世界に来たことによって別の異能力がこの眼に宿ってしまったのだ。何故消えてしまったのか、俺も分からん」
元々何も宿ってなかった目に異能力が付いただけだからな。
「我の眼を見ろ、榊」
言われた通り鍵谷の眼帯で隠していた方の目を見る。
見つめ合うこと数秒間。マジ気持ち悪い。
「よし、これでOKだ。榊よ、手を叩け。皆にも聞こえる程大きい音でな」
俺に命令するな、俺に命令できるのは俺だけだ。……まあ、手を叩くらいいいか。
俺は手を叩いた。それもできるだけ大きな音を出すように力を込めた。が……。
「―――音がならない……。榊くん、異能力使ったの?」
「……俺じゃないぞ……? お前もしかして俺と同じ異能力?」
異能力ってだぶるもんなの? マジでか、よりにもよってこいつと一緒?
「違う。我の異能力はこの眼で数秒間対象の目を見ることで相手の異能力、もしくわ相手の覚えている魔法を我も使用できるようになる異能力だ」
何? そこそこ強い異能力、だと?
「しかも無作為にではなく我がどれを使用できるようにするか決めることができる。効果が切れることは無い。が、違う奴から別のを取ったら前までのは使えなくなる」
何その能力。反則じゃね?
「欠点があるとすれば、使用できるのは一個までで、対象の目を数秒間見つめ続けなければいけないのだ。相手が目を閉じだり、我に目を見せなかったら発動しない。ちなみに神殺し共の目にしか効かん。魔物には不可能だ」
すげぇなその異能力。鍵谷には勿体ない。
「へぇー、すごいね。鍵谷くん!」
「悪くない……、いやむしろ良い異能力ね」
皆から高評価を貰った鍵谷は、慣れないことだからか困惑していたが、すぐに……。
「フッ、だろう? 我の凄さが分かったであろう? フフン!」
ドヤ顔UZEEEEEEE!
「使用できるのを選べる。それなら夏向の異能力を取れば俺らのパーティーに回復技が使える奴が二人にもなるじゃねぇか!」
おぉ、幸村にしては頭の良いことを言った。確かに回復技を持つ奴が二人もいたら心強いだろう。
「確かにね、なら鍵谷くんは回復係かしら」
「む? 待て、回復係だと? そんなのは断る! 我は常に前線にでて活躍したいのだ! 格好良い魔法で惨めな魔物共を地面に這い蹲らせたいのだ!」
わがままな男だ。だがまあ、気持ちは分からん訳ではない。俺だって超格好良くて超強い異能力使って魔物バッサバッサ倒しまくって神とかも瞬殺とかしたかった……。まあ異能力がこれだから仕方がないが。
わがままな鍵谷にこの女が立ちはだかる!
春野春奈。ある意味一番身近で一番強いボスだ。
鍵谷、春野の無言の威圧に怯えるも耐える。あ、くるぞ……!
で、でたぁー! 魔物も凍り尽く凍りの眼差し! 超こえぇー!
「……分かった。なるべく春野氏の指示に従おう、いや従います」
春野の睨みによって等々心が折れた鍵谷。マジパないっす春野さん。
「……まあ余裕のある時は別に回復係ではなくても構わないわ」
春野の一言によって忽ち元気を取り戻す鍵谷。
「フッ、フハハハハ! それを先に言え。春野氏よ。我と付き合ってくれ! たった今恋をした!」
「嫌よ」
サラッと告白し、ズバッと振る春野と鍵谷。
また春野に告白したよこいつ、生前にも何回かやってたなぁ。
「あ、そういえば、比奈田の異能力は?」
さっきから空気になっていた比奈田に聞いた幸村。
「え? あたし? あたしのは―――」
「ねぇ皆……。時間が……」
七種が申し訳なさそうにおずおずと発言する。さっきまで何か不安そうにしてたのは時間のことか。とりあえず時刻を確認する。
……次の授業まで、あと一分しかないやーん。
「む? タイムオーバーか。ではさらばっ!」
「あ、皆! また後で会おうね! バイバーイ!」
さっきまでこの二人の教室の前で話し込んでいたのでこの二人は余裕で間に合うのだが……。
「……走ろうぜっ!」
えー、今から遅れていくのも返って目立つしなぁ。サボろうぜ!?
「なぁサボろ―――うおぉぉー!?」
「ダーーーッシュ!」
俺の手を引っ張りながら走り出す幸村。引っ張るな! 転ける!
「……騒がしいわね」
「ふふっ……、僕らも急ごうか、春野さん」
俺ら二人の後を七種と春野も追いかける。2人共足速っ!?
後は今降りている階段を降りればすぐそこに教室だ。幸村! 腕を引っ張るな!
「このまま行けば間に合うぜー!」
「おい幸村! 階段降りてる時に腕を引っ張るな! 転ぶからマジで!」
「そうか! ほいっ!」
そしていきなり腕を離しやがった幸村。当然、さっきまで走りながら降りてたから止まれない訳でして……。
「いきなり離すなぁぁぁーー!! アホかーーー!」
この学校の階段は異様に長く、当然俺は……。
ドドドドドドンッ!!
俺は階段から落ちた。何段あったか分からんが相当段があって、魔物と戦っている訳でもないのに深刻なダメージを負ってしまった。
あ……、まずい。この感じ……。
榊龍紀。天上世界に来て1日目。2回目の死亡。
「龍紀ーー! スマン! 大丈夫かっ……て、死んでるー!?」
「……っ この男は何回しょうもないことで死ねば気が済むのよ……」
「どうしよう!? 学校から教会まで6分で間に合うかなぁ!?」
「……相当速さがある人じゃないと……、無理ね」
「俺が行くしかねぇ! 間に合えよ……!」
「幸村くん! 誰か先生を呼んだ方がいいんじゃない!?」
「時間がねぇ! この中で一番速い俺が行く!」
「幸村くん。榊くんを教会まで連れてってあげるのに適任な人が来てくれたわよ」
「おおーう。一番速いのは私。私に任せて」
「!? お前は……。やっぱり来てたか、叶華!」
読んでいただきありがとうございます。
最後の方に新キャラが出てきてますが、説明はまた次話にさせてください。




