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マラソン

作者: ととばぐ

 彼はマラソンがない国の人だった。



 昔から体育が苦手で、学校のマラソン大会の前日は雨乞いをしていた私としては羨ましい限りである。

 彼の国にはサッカーはあるけど野球はなかった。携帯電話もカップラーメンも安全に飲める水道水なんてものもないらしい。そんなわけで、彼が私の国に来たばかりのときは随分いろんなものに戸惑ったようだった。何もかも物珍しかった彼は、とりあえずテレビにかじりついた。そしてそこに見慣れないものが映るたびに私にそれが何なのか尋ね、彼は世界を広げていった。


 彼の質問に答えるのは楽しい。彼は知らないことばかりだけれど、それは単に彼の国にないものが多かっただけで、彼自身はむしろ賢いと言っていいだろう。確かな知性と、子供のような無知、この二つを矛盾なく兼ね備えた彼の質問は、普段私たちが考えもしないような、でも不思議と本質をついているような質問が多かった。


 そんな彼は、ある日テレビで中継していたマラソンに興味をもった。これはなんだと聞く彼に対して私は、これはマラソンというスポーツで長い距離を走って誰が一番早いかを競っているのだと答えた。しかし、彼は何か納得しかねる顔でテレビを見つめていた。なんでもすんなり吸収していく彼のそんな顔は珍しかったので、私は何か気になることでもあるのかと逆に尋ねてみた。

 すると彼は難しい顔をしたまま、早口で答えた。普段口数の少ない彼にしては長文だったので、意味を理解するのに少々苦労したが、だいたい次のような意味だったと思う。


「自分はこの国にきていろいろなスポーツを知った。野球もゴルフもまだやったことはないけれど、それぞれに楽しそうなところがあると感じた。しかし、このマラソンというものは、ただ長い距離を苦しそうな顔をして走るだけの競技で、彼らが何故あんなに必死に走るのかわからない。」


 それは、無理矢理マラソンをやらされていた学生時代の私が、走りながら思っていたのと全く同じ疑問だったので、私は思わず笑みを浮かべていた。そして、そんな彼に、『馬には乗ってみよ、人には添うてみよ』という諺を教え、家の周りを20周することを命じた。それはマラソン大会に出たことがない彼へのささやかな復讐だったのかもしれないし、私自身さっぱりわからなかったマラソンの魅力を彼なら見つけられると思ったからかもしれない。

 


 そして私のこの思惑は見事に的中し、彼が家の周りを30周してきらきらした目で帰ってきたあの日からちょうど半年後、彼は小さなマラソン大会に自主的に参加した。トップでゴールした彼を出迎え、私は半年間我慢していた質問を投げかけるのは今だと感じた。

 何故マラソンをするのか。あの日とは逆に尋ねた私に向かって、彼はすっかりうまくなったこちらの言葉で答える。


「マラソンをしているとだんだん死に近づいている気がする。どれだけ吸っても息は苦しいし、心臓はどんなに早く動いても追いつく気がしない。全身はだるいし、あちこち痛くなったりもする。それは辛いことだけど、ゴールしてこうして息を整えていると、自分が生きているという実感がだんだん湧いてくるんだ。この国は本当にいろいろなものがあって、まるで夢の国のようで、生きているという気持ちがどんどん薄くなっていく気がしてた。マラソンは本来もっと身近にあるはずの死をこの国で感じるためのものだったんだね。」


 今まで私が見てきた中で一番の笑顔でそう語る彼を見て、私は今さらながら彼が別の国の人間であると感じた。そしてそれが何故か嬉しくて二人して笑いながら家に帰った。

 彼の質問に答えるのは楽しい。私たちの世界が広がっていく気がするから。

初めて書いたものなので、良いも悪いもさっぱりわかりません。

書いてみた感想はなんだか思ったよりもふわふわした雰囲気になったなというものでした。

一応、最低限のルールは調べて書いたつもりなのですが、もしかしたら変な部分があるかもしれません。特に句読点の打ち方とか不安です。読みづらくないでしょうか?


そんなわけなので、アドバイスや感想を熱烈募集中です。

ストーリーのことから、基本的な文法のことまで、簡単でもいいので何かいただけると、非常に嬉しいです。

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