四月の夜
春というにはどんよりと重い空。
つられていつもの部屋もどこかじっとりとした空気を感じる。
出かける準備をしなければ、と思いつつ服を手に取る。
シャツを着るには気持ちは柔く、半袖のTシャツを着るには無防備過ぎて、なんだかしっくり来ない。一つ一つ服を手に取っては今ひとつで、鏡に映る自分もどこか他人のように見える。
なんとか取り繕い、街へ向かう。
ぽつり。
体温より少し低い水滴に軽く頭を叩かれる。
いつのまにか猫背になっていた自分に気づく。
雨が降り始めた。
夜はまだ始まってはいない。
街へ向かうにつれて空は狭くなり、機嫌を損ねたように、ぽつりと忘れた頃に雨粒を落とす。
道ゆく車は渋滞で、ブレーキランプが赤く滲んでいる。橋に差し掛かると、いよいよ渋滞が増していく。
ぽつり。
雨に頬を打たれ、ふと反対へ目を向ける。
川に沿い緑は青々と茂り、橋下の川は雨も受け入れせせらいでいる。
心なしか川の先だけ明るく見えた。
ぽつり。
一つため息をつき、また歩き始める。
街の中心部へ近づくにつれ賑わいが強まっていく。
道ゆく女子高生は嬉しそうに手を振って友達を呼び、スーツ姿の一団は後ろの方に緊張した面持ちで若い男女が付いていく。外国人旅行客は笑顔で写真を撮ったり買い物を見せあったり時折大声で誰かを呼んでいる。
そっとため息をつき、私も静かに潜り込む。
ゆるゆるとそれぞれの夜を通り抜け、目的の店へ辿り着く。
いつもの笑顔を見つけてほっとして、席へ着く。
薄いグラスにビールが注がれる。
ゆらゆらとグラスの中を小さな泡がゆっくりと上がっていく。
カチャン。
私の夜はこれから。




