ゆいこのトライアングルレッスンM〜むっくん視点〜
オレだって好きで年下に生まれたわけじゃない。
できることなら、アイツの恋愛対象になり得る年に生まれたかった。
バカでうるさくて生意気な従兄弟のタクミのようにずっとそばでアイツを守ってやれる存在になりたかった。
クールで何を考えてるのかわかんないくせにアイツに頼られてるひろしのようになりたかった。
でもそんな事を考えてたって何も変わらない。
前を向いて進むんだ。
「むっく〜ん!お待たせ〜」
チラホラと雪が舞う中、ゆいこが白い息を切らせて大きく手を振りながら走ってくるのが見える。
オレは公園のベンチから立ち上がると小さく手を上げて見せた。
「ごめんね、寒かったよね、あったかい飲み物でも奢ろうか?」
ゆいこがオレの頭の雪を払いながら言う。
背丈はほぼ同じ位になったとはいえ、子供扱いは以前のままだ。
オレは、はぁ、と小さくため息をついて、その手を振り払った。
「むっくん?」
「なんでもない」
「そう?」
「ゆいこ」
「ん?」
「話があるんだ」
「なぁに?」
ポケットの中で握りしめてたチョコレートの包みを取り出そうとした時だった。
「お〜い、ゆいこ〜」
オレの背後から今1番聞きたくなかった声が響いて来て、そっちに視線を向けたゆいこの顔が嬉しそうに愛おしそうにぱっと輝いた。
「たくみ!ひろし!」
「お?ムサシじゃん。何してんの?」
無邪気にオレを覗き込んでくるタクミを思わず思いっきり睨みつけた。
「お?なんだよ、お前」
「ゆいこ、頭に雪乗ってる」
そんなオレとタクミには我関せずとでも言うように、ひろしはゆいこに自分のマフラーを巻いてあげていた。
にっこりと嬉しそうなゆいこに、またため息が漏れる。
「ゆいこっ!」
思わず大きな声が出る。
「むっくん?」
「これ!」
握りしめてたせいで、若干形が崩れてしまっていたチョコレートの箱をポケットから引っ張り出して、ゆいこの手に押し付ける。
呆気に取られているようなタクミと微かに眉をピクッと動かしただけのひろしに一瞥をくれて、オレは走り出した。
「え、あ、むっくん!?」
慌てたゆいこの声がオレを呼んだ。
チョコレートの箱に添えたメッセージカードに震える手で書いた一言....。
ゆいこはどんな顔をするんだろう....。




