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48.光の矢

 森の魔女が私の持つ杖に目を向ける。


「魔力を失ってるけど、この曲がり具合は間違いなくわたしが使ってた杖だ」


 そういえば、波間の魔女が言っていた。この杖の元の持ち主は森の魔女だと。


「でも、これじゃあ魔法を使えないね。わたしには火属性がないけどどうしよう。友達に流してもらえるかな」


 なぜ火属性が必要なのだろう。私はこれまでずっと土魔法を使って魔物を倒して来たのに。


「土魔法を使いたい」

「本当に? 君の適性は火属性だけど」

「火は周りを傷つける恐れが高いから使いづらい。土魔法の方が使い慣れてるし」

「……じゃあ、わたしが土属性の魔石に戻してもいいかな?」


 森の魔女の最終確認に、私は頷いて杖を彼女に手渡す。

 森の魔女が杖に魔力を込めると、透明だった魔石がかつての色を取り戻した。前よりも輝いて見えるのはなぜだろう。


「綺麗」

「土属性のみを込めたんだ。魔物が落とす属性魔石は一つの際立った属性の色を宿しているけど、微妙に他の属性も混ざっているからね。でも、これならいつもより少ない魔力で土魔法を扱えるはずだよ」

「ん、ありがと」


 手許に戻ってきた杖に魔力を流すと、いつもより早く魔力が集まったのを感じた。これなら白の魔女を援護できる。


「土の棘」


 そう唱えたのは私ではなく森の魔女だ。災厄の魔女が影移動する場所を先読みして何十本もの棘を生やす。何回かやっているうちに行動を読めるようになったのか、災厄の魔女と白の魔女の距離が空いた。


「うん、土魔法なら問題なさそうだ」


 杖なしでこの腕前。最強と呼ばれるのも納得できる。土属性に適性を持つから強いのか、努力の結晶なのか。きっと両方だろう。


「土の壁」


 私も負けじと壁を作って進路妨害をする。災厄の魔女の足を止められたと思ったけれど、壁によってできた影に移動してしまった。


「高さのある魔法は止めた方がいいよ」


 森の魔女に注意されたので、壁を壊して破片を災厄の魔女に飛ばすことにした。一欠片も当たった気がしないけれど。


「土の槍をこちらに飛ばしてくださいませんか?」

「いいけど、気をつけて」


 白の魔女の指示に困惑しながら、私と森の魔女は土の槍を作って飛ばす。

 私が一本で、森の魔女は三本。矢と違って大きいから、数が増えると消費する魔力が多くて大変なのだ。


「ありがとうございます」


 白の魔女が槍に手をかざすと、神聖な光を宿す槍が完成した。光り輝く槍が私達の手に戻る。


「これは?」

「属性付与だね。この槍は土属性でありながら光属性の性質を併せ持ってるんだ」

「……つまり?」

「災厄の魔女にも攻撃が通じるよ」


 森の魔女が三本の槍を時間差で放つ。

 私達の攻撃を今まで避けもしなかった災厄の魔女が、必死に躱している。私も投げると、漆黒の槍で弾いた。森の魔女の言葉は本当のようだ。


「白の魔女、これ全部に属性付与はできるかな?」


 森の魔女を見上げると、頭上に何十本もの矢が浮かんでいるのが見えた。いつの間に用意したのだろう。


「えぇ、可能です。ソフィ、わたくし達も矢を出しましょう。今度こそ災厄の魔女を倒すのです」


 白の魔女の頭上に次々と光を束ねた矢が生成される。森の魔女の倍はありそうだ。私も矢を増やしていったけれど、十本が限界だった。

 その矢に白の魔女が魔力を込めれば、光の矢が完成する。光の球で逃げ場(かげ)をなくし、矢を一斉に放った。


 災厄の魔女が槍を振り回して弾いていくけれど、一部が黒い靄に突き刺さる。痛みはちゃんと感じるようで、苦悶の声を上げた。

 矢を捌ききれなくなって、どんどん突き刺さっていく。少しずつ靄が剥がれていくように見えた。


「あれ、あんな顔をしてたっけ?」


 攻撃の手を緩めずに、森の魔女は首を傾げる。


「災厄の魔女は闇魔法の幻影によって偽りの姿を見せています。光の攻撃により闇の魔力が失われて、幻影が解けたのでしょう」


 靄が完全に晴れた。髪はどの魔女よりも黒く、瞳も同じく黒色で、深紅の唇をつり上げている。服装も黒のドレスで、肌の白さが際立つ。矢がところどころに刺さって血が流れているけれど、気にする様子はない。

 これが災厄の魔女。全ての魔女の祖先。


「ふふ、ふふふ……。素晴らしいわぁ、あたくしをここまで追い詰めるなんて。けれど、これで勝ったつもりかしら?」


 災厄の魔女が空に手をかざすと、世界から光が失われて闇が広がった。谷の魔女すら赤子と感じる圧倒的な魔力に、私は縮こまることしかできない。


「そうはさせません」


 白の魔女の鮮明な声に顔を上げると、彼女は光の槍を構えて宙を飛んでいた。いや、光の板を足場にして一段ずつ上っている。白の魔女は足場を蹴って光の槍を黒い雲に突き刺した。


 槍を中心に黒色が白色に塗り替わり霧散した。槍も消えて、月明かりだけがこの地を照らす。

 災厄の魔女の姿はどこにもなかった。


「やはり逃げられましたか」


 白の魔女が地上に降り、こちらに駆け寄ってくる。私は森の魔女の制止を無視して白の魔女に詰め寄った。


「お怪我はありま……」

「どうしてもっと早くに来てくれなかったの?」

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