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28.合同討伐 前編

「中級中位の冒険者パーティー『狼の集い』と単独(ソロ)で上級中位の冒険者ヴェラットさんですね」


 翌朝、日が昇る前に街の喧騒で起こされた。漁に行く人はまだ日が出ていないうちから船を出すのが普通らしく、辺りはまだ薄暗いのに海が目と鼻の先にある冒険者ギルドは混雑していた。


 ちなみに、中級中位とは中級の中で二番目に高い位のことだ。上級中級下級だけでは実力を正確に計れないため、上位中位下位とさらに三つに分かれているのだ。

 ヴェラットが上級上位に達してないのは、冒険者としての活動期間が短いからだろう。


「フリートベルク周辺に出没する魔物は余所より大変強くなっているので、中級冒険者パーティー単独での行動は禁止されています。上級冒険者パーティーとの合同討伐をお勧めします」

「俺はそこらの上級パーティーより強いから、他の冒険者など不要ではないか?」


 ヴェラットの周囲を馬鹿にした発言に、苛立ちを込めた視線を向けられる。朝から酒を飲んでいた四人組が席を立ち、こちらに歩いてきた。名の知れた冒険者なのか、周囲の人達が道を開ける。


「よぅ。お前達、ここに来るのは初めてか?」


 巨漢三人を引き連れて声をかけてきたのは、狼に似た耳と尾が生えた獣人だ。

 後ろの三人が筋骨隆々なせいで細身に見えるけれど、よく見れば無駄な筋肉を削ぎ落として引き締まった身体をしていることがわかる。


「こいつらはそうだが、俺は初めてではない」

「でも、この地で生まれ育ったわけじゃねぇだろ?」

「そうだな」

「ならフリートベルクの戦士と共闘した方がいいぜ。俺達は海での戦い方を知ってる。どこに危険な魔物が潜んでるか知ってる。当然、魔物の倒し方もな」

「……」


 ヴェラットは何かを考える素振りをした後、受付に戻って四人組を親指で差して言った。


「彼らと組めば討伐依頼を受けられるか?」

「『荒波の誓い』の皆さんとですね。勿論可能です。都合が合えば今日中に依頼を受けられますが……」

「こっちから絡んでおいて組むのを断ったりしねぇよ。そっちの準備が整ったら出発だ。東門で落ち合おう」


 組むのは狼の集いなのに、ヴェラットと荒波の誓いのリーダーらしき人との話し合いで合同討伐が決まった。


「これならばお前らの実力でも勝てるであろう」

「はあ、ありがとうございます」


 ヴェラットが厳選した依頼札をカイが受け取って、受付に持っていく。準備を整えた私達は東門で荒波の誓いと合流したのだった。


「改めて、俺は上級冒険者パーティー『荒波の誓い』リーダーのラウルだ。槍による攻撃が得意だ」

「初めまして、中級冒険者パーティー『狼の集い』のリーダー、カイです。身体は小さいですが盾役を務めています」


 小柄なカイと長身なラウルの間には頭一つ分以上の身長差がある。荒波の誓いにも盾を持っている人がいるけれど、横幅も盾の大きさもカイの倍はありそうだ。

 今回の討伐場所である森へ向かいながら、それぞれ自己紹介をする。


「へぇ、リーシュ王国の王都から来たのか。行ったことないが、立派な街なんだろ?」

「リーシュ王国って?」

「俺達が住んでる国のことだぜ。姉ちゃん、冒険者なら自分が今いる土地の名前くらいは知っておいた方がいいぞ」


 海外との交流のあるフリートベルクに住んでいる人達なら自国の名前を知っていて当然だろう。

 けれど外国の関わることのない王都では、周辺領地の名前は重要でも国の名前は覚える必要がないのだ。だから私達が知らないのはおかしなことではない。


「いいか、フリートベルクやランメルツでは自然を傷つけるような攻撃をするんじゃねぇぞ。エルフや獣人が多いこの地では自然のままの姿が美しいという考え方が一般的だ。森林破壊をしたら二度とフリートベルク、いやその手前のランメルツにすら足を踏み入れることができないと思え」


 槍を持った大男と、大剣を佩く巨漢、戦鎚を振るう筋肉の塊のような人、大きな盾を構える男。全員前衛職の物理攻撃だ。

 そんな巨体で森を傷つけずに攻撃できるのか疑問に思ったけれど、襲って来たヴァルトエーバーを盾で受け止め、大剣で牙を折り、戦鎚で頭を凹ませ、槍でとどめを刺す。彼らの動きに無駄は一切なく、枝一本、葉一枚も傷つけることなく戦闘を終わらせた。


「すっげぇ!」

「これが上級冒険者の実力なの?」

「恐らく彼らは上級冒険者の中でも上位に位置するよ。今までに見てきたどの冒険者よりも強い。勿論、ヴェラットさんを除いてだけど」


 荒波の誓いの戦いぶりに感動していると、魔力感知に何かが引っかかった。ラウルも警戒態勢をとる。


「ヴァルトハーゼだな。中型の兎みたいな奴だ。お前達中級でも倒せるから頑張ってみろ」


 魔物が姿を現す前にその正体を言い当てる。魔力に鈍そうだけれど、索敵に優れているのだろうか。

 現れたヴァルトハーゼは膝くらいの高さがある茶色い兎に似た魔物だった。ただし、頭部に一本の角が生えている。


「角で喉や目を狙ってくるから気をつけろよ!」


 荒波の誓いの巨体でも飛び越えられそうな跳躍力で宙を跳び、虚空を蹴って私達の方へ降ってくる。標的にされたのはエマだ。


「危ない!」

「土の矢」


 カイがエマの前に盾を構える。私は土の矢を放ったけれど、ヴァルトハーゼが思ったより早く捉えることができなかった。

 ヴァルトハーゼが盾を蹴って方向転換する。角が向けられたのは私の右目だ。急いで土壁をせり上がらせるも、間に合わない。細く鋭い角が迫る恐怖に、思わず目を閉じた。

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