第7話:夜の特訓と“見られる羞恥”の変質
夜の森は、昼間よりずっと静かだった。
木々がわずかに軋む音、
遠くで虫が鳴くかすかな声。
そのすべてが息苦しいほど静かで、
私の心臓の音だけがやけに大きく響いていた。
――ドクン。ドクン。
クリアパーツの装甲の奥で脈動する魔力紋が、
自分の心臓そのものみたいに脈を打って、
そこから熱がゆっくりと湧き上がってくる。
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「リゼット」
名前を呼ばれた。
びくっと肩が跳ねる。
その声だけで、装甲越しに脈打つ魔力紋が小さく縮んだ。
振り返ると、
そこには **レイナ** がいた。
黒髪が夜気で少し湿っていて、
月明かりに照らされた瞳は冷たく光り、
それでいて、どこか私だけに向けたような、
甘い色を宿している気がした。
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「な、なんですか……こんな夜更けに……」
自分でも情けないほど震えた声。
胸の奥がドクンと鳴り、
その振動が薄いクリアパーツを通して響いてくる。
「今夜は……ちょっと協力プレイの特訓よ」
レイナは口元に小さく笑みを浮かべた。
それだけで心臓が跳ね上がって、
呼吸が急に浅くなる。
「い、今夜って……もう遅いですし……」
「遅いからいいのよ。人目もないしね」
くすり、と楽しそうに笑う。
その笑みが、どうしようもなく意地悪で、
なのに、どこか甘く見えてしまった。
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「さあ、立って。肩の力を抜いて」
仕方なく立ち上がると、
レイナは私の目の前まで来て、
そっと腰に手を回した。
「えっ……」
その瞬間、全身が固まった。
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「今夜はね――」
レイナの声が、
耳じゃなくて直接、胸の奥に響く。
「あなたのPSUのクリアパーツが、どこまで透けるか。
そして、どこまで触れ合えるか。
ちゃんと確認するの」
「そ、そんなの……!」
思わず身体を引こうとしたけど、
レイナの手が優しく、でもしっかり私を捕らえて、
一気に自分の体へ引き寄せた。
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胸と胸が、押し当てられる。
そこには確かにクリアパーツの装甲がある。
でももうそれは薄すぎて、
まるで私自身の皮膚みたいで、
その向こうに、レイナの体温が確かに伝わってくる。
「や……っ……」
思わず吐息が漏れた。
胸の魔力紋がひくっと脈打って、
レイナの胸に直接伝わった気がして、
また心臓が大きく鳴った。
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「見て。リゼット」
レイナは私の顎に指をかけて、
そっと下を見せた。
そこには、クリアパーツ越しに
私の赤く光る魔力紋が浮かんでいて、
その光が、レイナの肌をぼんやり照らしていた。
「っ……や、やだ……こんなの……見えすぎ……」
「ふふ……恥ずかしい?」
「当たり前じゃ……ないですか……!」
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レイナは愉しそうに細く笑った。
それがまた胸の奥を撫でるみたいに響いて、
魔力紋がドクン……と大きく脈動した。
「じゃあ、もっと恥ずかしくしてあげる」
「なっ……!」
次の瞬間、
レイナは腰を抱いた手に力を込めて、
私をさらに強く自分へ押し付けた。
胸の装甲同士が潰れる。
いや、ほとんど肌と同じ。
そこを通して、レイナの鼓動がダイレクトに伝わってきた。
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「ひゃ……っ……や、やめ……っ!」
腰が勝手に引ける。
でもレイナの腕がそれを許さず、
胸の先端がレイナの魔力紋と擦れ合って、
そこからまた熱が溢れ出していく。
「見て、リゼット。
魔力紋が重なって、すごく綺麗」
「……見ないでぇ……!」
「でもほら、ちゃんと見てるわよ。
全部ね」
レイナの声が耳じゃなくて、
直接頭の中に落ちてきた。
それだけで胸の魔力紋がまたドクンと鳴って、
呼吸が引っかかって小さく泣き声が漏れた。
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「恥ずかしいのに、ちゃんと反応して。
偉い子ね……リゼット」
レイナがそっと私の髪を撫でた。
泣きそうになりながら、
その温もりにまた甘えてしまいそうで、
私はぎゅっと目を閉じる。
「……もう、いや……」
「大丈夫よ。
あなたは大事な子。
その恥ずかしさも、全部……ね」
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そう言って、そっと手を離した。
途端に夜気が冷たくて、
胸元が寂しくて、
どれだけ自分がレイナに体を預けていたか思い知らされた。
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「……これからもっと大変になるわよ?」
月明かりの下で笑うレイナは、
残酷なほど綺麗で、
でもどうしようもなく惹かれてしまう。
私は泣きそうになりながら、
それでも小さく頷いた。