第6話:強制パージとヒロインの“挑発”
森の奥、静かにうねる黒い影。
それは、木の幹の影からにゅるりと現れ、
先端を器用に蠢かせながら地面を這った。
触手――
魔核獣の一種、カテドラ=ルーツ。
その姿を目にしただけで、
背筋が冷たくなった。
クリアパーツの装甲越しに、
心臓が一度、痛いほど跳ねた。
「リゼット、大丈夫よ」
横でヒロインがそう言った。
でも、私の不安を完全には消せない。
その声がどこか楽しげに聞こえたのは――
私の心が歪んでるせい?
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触手は次の瞬間、
地を裂くような速度で私へ飛びかかってきた。
「きゃ……っ!」
剣を振り払う。
でも次の一本が、私の腕に絡みついた。
滑る感触。
冷たくて、いやに湿ってる。
装甲越しに、じわっとした圧力が伝わる。
「や、やだっ……!」
そう言う間もなく、
別の触手がクリアパーツの胸元に叩きつけられた。
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バリィィィィィッ!
「ひあっ……!!」
クリアパーツが――砕けた。
胸を覆っていた透ける装甲が、
細かい破片になって飛び散る。
そこにあらわになったのは、
脈動する赤い魔力紋と、
私の、生々しい肌。
「やっ……み、見ないでぇ……!」
思わず両腕で隠す。
でも魔力紋は、息をするたびにドクドクと脈打って、
恥ずかしい音を立ててる気がした。
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「リゼット……」
ヒロインが私を見つめる。
その瞳はどこまでも冷静で、
でもどこか、私の羞恥を愉しむような光を湛えていて。
「ほら、言ったでしょ?
そこが一番、魔力が溢れるって」
「や……っ、そんなこと……!」
「恥ずかしがるのはいいことよ。
その羞恥が、あなたの力になるんだから」
くす、と微笑んだ。
その笑みが、胸の奥を直撃する。
また魔力紋がひくひくと縮んで、
次の瞬間、ドクン……と大きく膨らんだ。
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「や……ぁ……!」
自分の体なのに、
どうしてこんなに勝手に反応するの。
触手はまだ、私の脚に絡みついている。
クリアパーツ越しに、にゅるっとした感触。
それだけで、そこまで脈打つ必要なんてないのに。
恥ずかしくて、
なのに足に力が入らなくて、
剣を握る手まで少し痺れる。
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「ほら、もう我慢できないでしょ?」
ヒロインの声が、
耳元に直接落ちてくる。
風もないのに、髪が少し揺れた。
「な……なに……?」
「いいから、パージしちゃいなさい。
あなたが望まなくても、魔力はもう溢れちゃうわよ?」
「そ……そんなの……っ……!」
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でも、その瞬間。
触手がぐっと脚を締め上げた。
そして脚の付け根――
もっとも恥ずかしい場所の装甲が、
バリィィィィィィッ!!
「ひああああっ……!!」
砕け散った。
冷たい空気が、そこを直に撫でる。
魔力紋が小さく細かく脈打って、
そこから魔力が泡みたいに漏れ出す感覚。
「っ……や、や……やだ……っ……!」
腰が勝手に揺れた。
触手が少し緩んで、
そこにまた魔力が溢れて。
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「……いい子」
ヒロインが、にっこり微笑んだ。
その声が甘くて、
でも恐ろしいほど私の羞恥を刺激した。
「もう一気にやりなさい。
その恥ずかしさのまま、
全部、解放するのよ――一点突破で」
「っ……あ……」
呼吸が、荒くなる。
胸の奥から魔力がせり上がって、
吐き気がするくらい熱い。
でも。
「いっけぇぇぇぇぇっ!!」
剣を振り下ろした。
次の瞬間、眩い光が走って、
触手も、魔核獣の本体も、一瞬で蒸発した。
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「は……ぁ……っ……は……っ……」
剥き出しの魔力紋が、
まだドクドクと恥ずかしい音を立ててる。
ヒロインがそっと近づいて、
私の髪を撫でた。
「頑張ったわね。
……でも、その顔。
ほんと可愛い」
「……っ……もう、からかわないで……」