第4話:PSUの基本訓練と“見えない魔力”の基礎
「今日は、パージ訓練よ」
ヒロインのその言葉を聞いた瞬間、
胸の奥がギュッと縮んだ。
やだ。
またあれをやるの?
「いや……っ……まだ、心の準備が……」
「大丈夫。あなたなら出来るわ」
彼女の声はいつも通り冷静で、
どこか理知的で。
けれどその奥に、ほんの少しだけ、
私の苦しむ顔を楽しんでいるみたいな匂いが混じっていた。
---
森の外れの、苔むした古い石畳の広場。
ここは訓練場にちょうどいいらしい。
私のPSUは、ちゃんと見えている。
黒銀の厚い板金が肩から胸へ、腰から太ももへ。
カシャ……カシャ……って呼吸するたび、薄く鳴る。
装甲の下の肌はいつも熱い。
私の脈動を写すように、
魔力紋がうっすらと浮かんでる。
……普段は、見えないようになってるはずなのに。
---
「じゃあ、今日は自分で制御して。
胸の部分を、少しだけパージしてみせて」
ヒロインのその言葉に、
私は思わず息を詰めた。
「え……そ、そこを……?」
「そうよ。
そこが一番、魔力の通りがいいの。
羞恥でドクドクする場所だから」
「や……やめっ……」
顔が一気に熱くなる。
頭が真っ白になる。
でも彼女はにっこりと優しく笑った。
「ほら、さっさとしないと。
魔力が溢れて暴走しちゃうわよ?」
---
仕方なく、
私はお腹の奥に意識を落とした。
装甲の内部。
そこに、熱いものが渦巻いてる。
息を吸い込むと、それがぐるっと回って、
胸のあたりで小さく爆ぜた。
「……っ……あ……」
自然と口から小さな声が漏れる。
「そこよ。
さあ、パージして」
ヒロインの声が、背筋をなぞるみたいに這い上がってきた。
---
私は恐る恐る、
胸のプレートに意識を向けて――
「……か、壊れて……」
そう小さく願った瞬間。
ガラガラガラッ……!
黒銀の装甲が、まるで砕けたガラスみたいに崩れ落ちた。
その破片は陽光を受けてキラキラ輝きながら、
地面に届く前に消えていく。
「ひ……っ……や……!」
急に風が胸元を撫でた。
そこには、細かく赤い線が走る魔力紋が浮かび上がっていて、
恥ずかしいほど脈動してるのが分かる。
ドクン、ドクン……。
小さな血管が、肌のすぐ下で暴れてる。
---
「よく出来たじゃない。
ほら、見せて」
ヒロインが一歩近づいた。
そして私の顎に指を添えて、
そっと顔を上に向けさせる。
「や……めっ……恥ずかしい……」
「恥ずかしいのがいいのよ。
それがあなたの力の源なんだから」
その声が、
耳からじゃなくて、
直接胸の魔力紋に触れたみたいに、
ピリッと電流が走った。
---
「そ、それ以上言わないで……っ……!」
涙が滲む。
体が勝手に小さく震えた。
肩から腰まで、痺れるみたいな感覚が走って、
そのせいで呼吸まで浅くなる。
でもヒロインは構わず、
もっと意地悪く微笑んで、
そっと唇を私の耳元に近づけた。
「ほら、見てごらんなさい。
恥ずかしい姿を。
その脈動が、私にはたまらなく綺麗に見えるのよ」
---
「っ……ぁ……やだ……っ……!」
耳元で囁かれただけで、
胸の魔力紋がキュッと縮んだ。
そして次の瞬間、ドクン……! と大きく脈打つ。
「ひゃ……っ……」
変な声が勝手に漏れた。
装甲があった時には、絶対にしなかった声。
その音が森に吸い込まれていくのが、恥ずかしくてたまらない。
---
「いいわね、その反応。
今日はそれだけ覚えて帰って。
その羞恥が、あなたの魔力そのものなんだから」
ヒロインは最後に優しく髪を撫でて、
またくすっと笑った。
---
私は立ったまま、胸元を両腕で隠した。
でもその腕の内側まで、魔力紋が脈打って、
自分の体の奥から恥ずかしさと熱が混ざって湧き出してくる。
(やだ……こんな、変な体に……なっちゃった……)
でも少しだけ、
ヒロインの手の温かさを思い出すと、
その羞恥の中に、甘いものが混じってしまうのだった。