第9話 秘密の部屋
秘密の部屋
小さな木の扉を開けると、そこにはムーン大学長がいた。
小さな薄暗い部屋で、ぼんやりと七色に光る不思議なランプが灯っていて、そして部屋の壁や天井や床には、やっぱりへんてこな形をしたお魚さんたちの絵がたくさん、たくさん描かれていた。
ムーン大学長は小さな部屋の中に描かれているへんてこな形のお魚さんと同じようなお魚さんの絵が描かれている子供が作ったような不思議なお面をかぶっていた。
顔の上半分だけが隠れるような形のお面だった。
ムーン大学長はとても綺麗なお人形さんのような美しい顔をしていた。
大学の情報端末からは(あるいは公的なお仕事のときなどには)ちゃんと素顔のムーン大学長を見ることができた。
でも、普段生活をしているときにはムーン大学長は普段からなにかしらのお面をつけて、いつもその顔を隠していた。
どうしてなのかはわからなかったけど、その美しい顔をいつも隠して勿体無いな、とレアは思った。
レアはじっとお魚さんのお面をつけているムーン大学長を見る。
世界一とも言われる大天才。
ムーン・ホワイト。
十歳のお人形のような女の子がそこにはいた。
金色のさらさらの髪に白い肌。真っ白な子供用のドレスのような服を着ている。白いタイツを履いていて、お姫さまが座るような背もたれのある椅子に座っている。
少し高い椅子で、ムーン大学長の足は床にまで届いていなかった。(その足をぶらぶらと小さく揺らしている)
「こんばんは。レアお姫さま」と、じっとムーン大学長のことを見つめていたレアに、にっこりと笑ってムーン大学長は言った。
その可愛らしい声で、はっとして『目覚めた』レアはムーン大学長を見る。
「こんばんは。ムーン大学長。……、あの、お姫さまはやめてください」
レアは上品な仕草でお辞儀をしながらそう言った。(そんなレアのことをくすくすと楽しそうに笑いながらムーン大学長は見ていた)