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第7話 白い兎 ミカ

 白い兎 ミカ


 大学エデンの大会議(一年に一度、新年の始まりの日に行われる大学エデンの最高権力組織である大学委員会のメンバーが全員集まって行われる大学の運営を決める会議。基本的に変わり者の大学エデンに所属している世界中の天才たちが全員集まっている)


 ミカの講演 大学エデンの中央円形大講義場

 

 人間の見る夢


 神様はいなくなったしまった。


「ものを粉々にしていくと、どうなると思いますか? ものはきえてなくなってしまうのでしょうか? そうではありませんよね。ものは消えて無くなりはしません。目には見えないくらいに小さくなるだけでそこにあるのです。では、もっともっと小さくすることができたとしたらどうでしょう? ものはいつか本当に消えて無くなってしまうのでしょうか? それともこれ以上は小さくできないというなにかの線のようなものがあるのでしょうか? 実際にはまだこの思考実験の答えを見つけることはできません。でも、私は夢を見ることがあります。それはあらゆるものがゆっくりとまるで水に溶けるようにして、小さく、細かい砂のようになってばらばらになり、空中に消えていく夢です。それは最初は私。私の部屋。家。街。国。そして星。銀河。宇宙全体に広がっていきます。なにもかもが解けてしまいます。ばらばらになって混ざり合います。それは原初の姿なのかもしれません。空間にはなにもないように見えても本当はそこにはあらゆるものが初めからあるのです。なにもない。ということはありません。なにもなければそこには穴が空いてしまうでしょう。それはあってはならないことなのだと思います。そこには無があるということになってしまうからです。それは世界の終わりの始まりなのです。世界は満ちています。有によって。あらゆるものがあらゆるところにあるのです。なにもかもが。それを私たちはまだ見つけることも、証明することもできないだけなのです。でもいつか必ず誰かが見つけるでしょう。誰かが証明をするでしょう。この世界が私たちが今、空想し創造している以上に、もっともっと驚くほどにもので満ちた色鮮やかな命の溢れる素晴らしい世界であるということをです。真っ暗な宇宙ではなくて、目には見えない光に溢れている、眩しくて美しい世界であるということをです。この世界はそんな素晴らしい命で満たされているのです」

 ミカはそこで水を飲んで、話の話題を変えた。

 ミカは話をする前に、ぐるりと円形大講義場に座っている委員会のメンバー全員を見渡した。

「この世界には二つの真実があります。一つは私たちはいつか必ず死んでしまうということ。そしてもう一つは生きている時間はあっという間に過ぎ去ってしまうということです。だからこそ私たちは永遠を求めます。永遠の命を求める。そして実際に永遠の命を持っている生命が生まれました。それが神域に生息している伝説の生き物、『神獣』です。神獣は不死なのです。死なないのです。永遠に生き続けるのです。信じられないかもしれませんが、これは事実です。夢ではないのです。この世界には、本当に永遠の命を持っている生き物がいるのです。なら、神獣を捕まえれば、私たちも永遠の命を手に入れることができるのではないでしょうか? きっとできるでしょう。私たちはそうやって今まで進化をしてきたからです。そこに永遠の命があるのから、それを私たちは手に入れるべきなのです。それは私たちの本当の夢であり、本当に手に入れたいものだからです。私たちはついに死を克服するときがきたのです。死という不治の病気を治すことができるようになるのです。だから、行きましょう。神域へ。神獣を捕まえるために。永遠の命を手に入れるために。さあ、私たちには時間はあまり残されていません。今こうしている間にも、死がたくさんの命を私たちの元から奪っていきます。永遠の命を手に入れることが一日遅れるだけで、救える命が消えていってしまうのです。だから、いきましょう。それが『私たちの夢』なのですから」

 ミカが大きく両手を広げてそう言い終わると、委員会のメンバーたちは立ち上がって、みんながみんな大きな拍手をミカに送った。

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