第5話 夢の中の呼び声
夢の中の呼び声
見上げる夜空には、星と月があった。
きらきらと輝いているたくさんの星。そして、まんまるの美しい白い月。
見上げる満天の夜空は、まるでそのまま宇宙の中に吸い込まれてしまいそうなほど、透明で美しい星空だった。
綺麗だな。
こんなにゆっくりと星空を見るのなんて、本当にどれくらいぶりなんだろう。
そんなことをレアは思った。
レアは夜の大学エデンの中を一人でお散歩していた。
真夜中のお散歩だった。
それはとても珍しいことで、普段そんなことをレアはしなかった。(ちゃんとぐっすりと夜更かししないで眠っていた)
大学のお勉強や試験が忙しいときは、たまにそんな夜もあったかもしれないけど、そのときのレアには星や月を見ている心の余裕はどこにもなかったのだ。
今夜、レアはいつものようにふかふかのベットに入って、隣のベットで眠っているセラに「おやすみなさい」を言って、明かりを消して、いつもの時間に眠りについた。
レアは夢を見た。
それは神域の夢だった。
夜は自由な時間だった。
夢の中はレアだけの時間。
いつまでも遊んでいられる場所だった。
レアは夢の中で神域の中を冒険していた。
とても楽しい時間だった。
でも、そんなレアの夢は、『どこからか聞こえてきた、ある不思議な声』によって遮られてしまった。
それはとても、とっても珍しいことだった。
レアの夢は、レアのものだ。
自由であり、絶対のものだった。
レアだけの時間。
そして、空間(居場所)。
そのはずなのに、そこにレアではない違う誰かの声が聞こえた。(誰かの存在があった)
……、探さないで。
探さないで?
探さないでって、いったいなにをだろう? ってレアは思った。
それは、小さな子供の声だった。
レアは目を開けて、夢から覚めた。
そして、眠れなくなったから、夜の大学エデンの中をお散歩することにしたのだった。
そして、レアはその真夜中のお散歩の途中で、不審な影を見つけた。
こっそりと、大学の寮の一階の窓からごそごそと誰かが部屋の外に抜け出しているところを偶然、見つけてしまったのだった。