第21話
「うーん。しかしですね。食べものや飲みものは確認しておかないと、のちのち困ることになりますから」とミカは言った。
確かにミカの言う通りに食べものや飲みものには少し不安があった。
それは冒険者の人数が一人増えたからだった。
もともとレアとセラは二人で神域を冒険をするつもりだったから、二人分の食べものや飲みものなどの荷物しか気球の中に積んでいなかった。
食料の確保は計画通りだったとしても、なにが起こるかわからない冒険の中では、とても大変なことだった。(冒険者の掟にもちゃんとそのことが書いてあった)
そこに密航者のミカが箱の中からあらわれた。
もちろん食べものや飲みものはレア、セラ、ミカの三人でわけて食べているけど、二人分の食料を三人でわけているで、なかなかやりくりが大変だった。(仕方のないことだけど、神域の滞在日数は計画よりも随分と短くなってしまった)
ミカはそのことを気にして、神域で食べられるものや飲めるものを自分で探しているのかもしれなかった。
(湖を見つけたときも、湖の水を飲んでみようとして、危ないですよ、とさっきみたいにセラから注意されたりしていた)
「ミカ。もうきちゃったものはしょうがないんだから、もし食事のことを気にしているのなら、そのことは気にしなくていいんだよ。私たちは同じ大学の友達なんだし、冒険者の仲間なんだから。それにちゃんと美味しいものを食べないと冒険はできないからね」
と胸の前で手をぎゅっと握って、頑張るぞの仕草をしてレアは言った。
「そうですよ。ミカ。変なものを食べたり飲んだりして、体調が悪くなるほうがよっぽどたいへんなことになりますわよ。トイレから出られなくなっちゃうかも」
とくすくすと口元に手を当てて笑ってセラは言った。
「うーん。そうですか。残念ですね」
と言って、ミカはその手に持っていたへんてこな果実を食べなかったのだけど、森の中に捨てたりはしないで、その手に持ったままで、まるでボールのおもちゃで子供が遊ぶようにして、そのまま持ち歩いていた。