第14話 べー。(笑顔で舌を出しながら)
べー。(笑顔で舌を出しながら)
レアは赤と白のロングスカートの冒険者の服を着ている。背中には丈夫な布で作られた荷物を背負っている。(それがいつものレアの冒険のときの服装だった)
セラは青と白の軽装の鎧のようなミニスカートの冒険者の服を着ている。腰のところには美しい装飾のある白い剣をつけている。(いつものセラの冒険のときの服装だった)
じっと荷物のたくさん積んである気球に乗っている二人は青色の海の向こうを見つめている。
そこに小さく大陸が見えてきた。
神域。
レアが、ずっと憧れていた大地がそこにはあった。
ここが、神域。
あんまり覚えてないけど、私は小さな女の子のときに、確かにここにきたことがあるんだ。
冒険者のお母さんと一緒に。
……、そしてここで私は君と出会ったんだ。
「神域とは『地獄』のことですよ」
とミカはくすくすと笑いながら、海の向こうに見えてきた神域を見て、その瞳をきらきらとさせて、感動していた二人にそう言った。
レアとセラは後ろを振り返って、ミカを見る。
「これから私たちは地獄に行くのです。とっても楽しみですね」
二人の顔を見て、にっこりと笑ってミカは言った。
「どういうことですの?」
セラが言う。
「神域とは死者の国なのです。本当なら生きているものは、神域に立ち入ってはいけないのです。それはつまり、死を経験することになるからです。あるいは、本当に死んでしまうかもしれないからです。レア。小さな女の子のときに神域を訪れているあなたはそのときに一度、本当に死んでいるのかもしれません。でも、あなたはちゃんとこちらの世界に戻ってくることができた。あなたは命を与えられたからです。あなたが神域で出会った伝説の生き物である神獣にね」
レアとセラは黙っている。ミカはそのまま言葉を続ける。
「生きている人が起きているときに目覚めるとはどういう意味でしょう? 私は死を認識することだと思います。いつか自分が死んでしまうという、とても悲しいことを知ってしまうということです。そのときから人は目覚めるのです。まるで夢から覚めるようにね。そして、人は自分がいつかこの世界からいなくなってしまうと知っているからこそ、なにかを残そうとするのです。自分がこの世界の中に生きていられるうちに。自分が本当に死んでしまう日がくる前にね」
くっくっくっ。と楽しそうにいじわるそうな顔でミカはそう言ってから笑った。
レアとセラはまだ無言のままだった。