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「10年後もお互い独身だったら結婚しようか」と言った高校時代の親友(国宝級イケメン)と10年後に再会して結婚した話  作者: 水嶋陸


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プロローグ2


 「ちょっと。黙ってないで反応してや。恥ずいやん」


 座ったまま距離を詰め、肘でぐいっと凪の腕を押す。我に返った凪は「ごめん」と嬉しそうに笑み崩れる。


 「感動した。そんな風に思ってくれてたんならもっとはよ言うてや」


 「嫌や。調子乗るやろ」


 「厳しいなー!」


 突っ込みを入れつつも、気を悪くした様子はない。


 凪に近付く女はほぼ例外なく恋愛対象として凪を見ている。だからこうして同性の友達のように気兼ねなく接することができる女友達の存在は稀有らしく、妙に懐かれてしまった。


 「そろそろ教室戻ろか」


 「もう戻るん? もうちょい話そうや」


 「あんたは女子に囲まれるのが面倒なだけやろ。遅くなっても待ってる子は絶対おるで。女子の間でヒートアップせんうちにはよ蹴散らしてき」


 「蹴散らすて。物騒やなあ」


 くっくっと可笑しそうに目尻を下げ、凪がよっと立ち上がる。同じように腰を上げ、しばらく屈んでだるくなった足首をくるくる回していると、凪がポケットからスマホを取り出した。 


 「記念に一枚撮ろ。写真送るからラインのID教えて」


 想定外の発言に驚き、鳩が豆鉄砲を食らった顔で押し黙る莉子。


 片手をポケットにつっこみ、慣れた様子でスマホを操作していた凪が「ん? 何をそんな驚いてるん」と顔を覗き込んできた。


 (うわ、睫毛長っ。てか目綺麗過ぎん? お肌も毛穴なくてつるつるやし、赤ちゃんなん?? ようわからんけどめっちゃいい匂いするし、見慣れててもいきなりドアップは心臓に悪いな……)


 顔面の攻撃力の高さに慄き、圧を感じて一歩下がると、「嫌?」と凪がしゅんとする。


 子犬が耳と尻尾を垂らして寂しそうに鳴くような、絶妙な上目遣いで下手に出られて「ヴッ」と奇声が漏れた。


 「い、嫌ではないけど。……凪に連絡先聞かれるとは思わんかった」


 「えー、意識してくれるん? かわい」


 「アホ言うな! 卒業したらお互い別々の大学行くし、接点なくなるから今更と思っただけや!」


 「そら今までみたいに毎日学校では会えんけど、莉子とはこれからも友達でおりたい」


 「くっ……!」


 素直になられると非常に弱い。キラキラ輝く眼差しを間近で浴びた莉子は観念した。凪は自然と肩を寄せてきて、写真を撮った。画面を確認させてもらうと、笑顔の凪の隣に仏頂面の自分が写っている。


 「撮り直す?」


 「いや、いい」


 首を横に振って自分のスマホを取り出す。ラインアプリを開いてマイQRコードを表示し、凪が読み込むのを待った。さっそく友だち追加した凪から写真が送られてくる。


 (親しくなっても連絡先を聞かなかったのは、必要性を感じなかったのもあるけど、ちょっとでも下心があると思われんのが癪だったから)


 凪からも聞いてくることはなかったので、高校卒業したらこのままお別れかと思っていた。


 一見人懐っこいくせに実は誰にも懐かない、孤高の野良猫を手懐けたような感慨に耽っていると、無事莉子のIDを入手した凪が満足げに笑い、スマホで口元を隠す。


 「好きな男の連絡先じゃなくて悪いな」


 「うるさい黙れすけこまし」


 「ひどーい。俺、自分から女子の連絡先聞いたん初めてやのにー」


 「嬉しくもない初めてをごちそうさん」


 素っ気なくあしらったにも関わらず、ご機嫌でにっこにこの凪。何となく頬が熱くて手のひらでパタパタ風を送る。


 「卒業してもたまには連絡してや。近況聞きたいし」


 「まあ、気が向いたら」


 「ふはっ、それ絶対連絡する気ないやつやん。薄情やなー」


 「凪こそ大学行ったら私の存在なんて秒で忘れるやろ」


 屋上から教室に戻る途中、階段を降りながらやり取りをしていると、莉子の前を歩いていた凪がぴたっと足を止めて振り向いた。



 「――忘れへんよ。莉子は心許せる唯一の女友達や」



 満面の笑顔があまりに眩しくて、ピシャアアと稲妻に貫かれたような衝撃を受ける。友人として認められていることが想像以上に嬉しくて、顔面が緩みそうになった。


 慌てて口元を引き結んで堪えていると、内心を見抜いたように凪が軽やかに笑った。


 「なあ、十年後もお互い独身やったら結婚しようか」


 「……っ、冗談キツイわ! あんたみたいなチャラ男と結婚したら将来苦労しかせん。絶対お断りや」


 「ははっ! 最後まで色気ないなぁ」


 冗談で受け流していないと心臓の音が外に漏れてしまいそうだった。色気がないと言いつつ、そんなもの求めてないだろうと意地悪い心がむくむく湧いてくる。


 「色気がないから友達になれたんやろ。ちょっとでも凪に気あったら気許してくれんかったくせに」


 「それはお互い様やろ。莉子も警戒心強いし、最初の方あからさまに牽制してきたやん」


 「そらイケメンが笑顔で近付いてきたら誰でもそうなるやろ。私に興味持つイケメンはロマンス詐欺一択や」


 「おもろ。なんでそんな喧嘩腰なん? 高校最後の日やのに全然しんみりせんな」


 「そんなしっとりした間柄ちゃうからな」


 色気の欠片もない友人同士の会話を続けていると、教室の前に辿り着いた。


 中で待ち構えていた女子達が凪の帰還に気付き、わっと熱気を放つ。誰が先に声を掛けるか視線で攻防戦を繰り広げつつ、じりじり狙いを定めている。


 ロックオンされた凪のテンションが一気に下がった。


 「やっぱりこのまま一緒に帰らん?」


 「血祭りにあげられるのは勘弁や。安心しい、骨は拾ったる」


 ブッと吹き出した凪が肩を揺らし、ポンと頭に手を載せてきた。 


 「ほなまたな。連絡するからスルーせんと返事してや、莉子」


 「気ぃつけや。女に惚れられんの、そういうとこやで」


 すんっと真顔で凪の手を払うと、自分の席に戻って鞄を回収した。



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― 新着の感想 ―
会話のテンポ、関西弁、言葉が良くて、スラスラ読むことができました。 続き楽しみにしています!
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