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結婚式の二次会1


 次第に気温が上がってきた初夏の休日――


 とある高級ホテルに到着した莉子は、凪にもらった招待状を手に受付を済ませ、指定された会場へ向かった。


 快晴に恵まれたこの日、新緑の美しい庭で催されたガーデンパーティーは目に鮮やかで、着飾った男女が談笑する光景は映画のワンシーンのようだった。


 そんな中、色とりどりのドレスを纏った若い女性たちに囲まれている凪の姿が目に入った。長身でスタイル抜群の彼がスーツを纏うと、痺れるくらい格好良い。


 熱い眼差しを独占する凪を遠目に眺めていると、こちらに気付いた彼が女子の輪を抜けて来る。凪の背中を視線で追う女性たちと目が合い、少し気まずさを感じながら凪を見上げる。


 「出迎えどうも。お見合い会場の主役が抜け出していいん?」 


 「あのなぁ。結婚式の二次会がメインやから。それに、自分から誘っておいて声掛けへん薄情者やないで。莉子他に知り合いおらんやん」


 「まぁ完全にアウェーやな。長居するつもりないしさっさと目的果たそうか。凪のお姉さんどこ?」


 「向こうで招待客と談笑してる」 


 凪が手差しした方向に目をやると、マーメイドラインの白いドレスに身を包んだ花嫁がいた。凪と同様、容姿端麗という表現がぴったりの物凄い美人だった。


 「はー……。氷室家の遺伝子どうなってるん? お姉さん美人過ぎるやろ。女神やん」


 「それ本人に言わんといてや。めっちゃ調子乗るから」


 首の後ろに手をやり、嫌そうにため息を吐く凪。彼に導かれ、すすすと花嫁を囲む輪に加わった。


 「姉ちゃん。前に話した俺の友達、紹介するわ。高校の同級生の長谷川莉子さん」


 他の人との会話が一段落したタイミングで凪が声を掛ける。その場にいた招待客の視線が一斉に集まって緊張したが、莉子は落ち着いた態度で微笑を浮かべた。


 「はじめまして。長谷川と申します。本日はご結婚おめでとうございます。私とは初対面にも関わらず、快く参加をお許しいただきありがとうございました。お目にかかれて光栄です」


 凪から莉子に視線を移した美女は、にこりと愛想の良い笑顔を返した。


 「はじめまして。凪の姉のかえでです。弟がいつもお世話になってます。――悪いけど、個人的な話があるからちょっと三人にしてもらえる?」


 楓の一言で他の招待客が四方に散っていく。ふーっと息を吐いた楓は申し訳なさそうに莉子を見た。


 「せっかくの休日に弟のわがままに付き合わせてごめんなさいね。凪は末っ子気質で甘えたところがあるの。頼まれたからって、気乗りしないことまで引き受けなくていいのよ?」


 莉子に気遣いを見せつつ、凪に鋭い視線を向ける。


 「どうしてもっていうからOKしたけど、いくらお見合いが嫌やからって関係ない子連れて来てまで風除け頼むなんて。情けないと思わへんの?」 


 喧嘩腰に糾弾されるも、凪は苛立ちを表に出さず、辛抱強く反論した。


 「彼女を呼んだのは、風除け目的ちゃうで。恋人ではないけど信頼関係にある親しい女性がいると知ってもらって安心させたかったからや。口で言っても納得せんやろうから、無理言って来てもらった」


 「ふうん。それで? 今は特定の相手はおらんけど、いずれ結婚する気はあるっていう意思表示?」


 「違う。ただ、特段女性に苦手意識があって結婚を避けてるわけじゃないのと、どれだけ周りに急かされても流されて話進める気はないってことを明白にしたい」


 「なんや。結局はその場しのぎの言い訳やんか。そら独身の方が気楽やし、家族を持つ責任は重いよ。でもいつまでも独り身っていうのは何らかの欠陥があるんじゃないかって疑われるで。社会的な信用にも関わってくる。いずれ肩身の狭い思いをするのはあんたやで。分かってるん?」


 「分かってるよ。だからって世間体のために結婚相手探す気はない。無理に結婚せんでも信用を得る方法は他にもあるやろ」


 「価値観の相違やな。否定はせんけど、容易ではないで。家族にも心配掛ける。私とお母さんだけやない。お父さんも口に出さへんだけで、気にしてないわけちゃうからな。親孝行する気があるならそろそろ仕事以外でも甲斐性見せたらどうなん?」


 二人の間にピリッとした空気が流れる。遠巻きにしている他の招待客らが興味深げにこちらの様子を窺っていて、莉子は口を挟んだ。


 「すみません。少しいいですか?」


 発言の許可を求めると、お説教モードに入っていた楓は眉間に皺を寄せ、莉子に視線を移した。



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