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第14話

「あんたちっちゃくなったんじゃない?」

 会うなり祖母の喜久枝きくえは真顔でそう言った。物言いが透子みたいだ。

 透子が爆笑して、悠介は困り顔、草太がばあちゃんひどいやと雫の代わりに文句を言った。

 親子だからって似過ぎているといつも呆れる。

 同時に、雫は自分も透子みたいになれるか不安になった。

 透子は憧れだ。お母さんみたいに素敵になりたい。目前のことばかりに夢中な雫はなんなら今すぐそうなりたい。

 喜久枝の元に来て二日目、近所の友達が聞き付けて雫の顔を見に来た。

「雫ー、ちっちゃくなってないかー?」

「一センチ伸びたもん!」

「伸びてねえじゃん、それ」

「やっぱ本当は一センチ縮んだんじゃね?」

 みんなして喜久枝と同じことを言う。

「みんな大きくなってる! ずるい!」

 こういう時の雫はものすごく悔しそうに言う。不可抗力ほど悔しいものはない。みんなは自分よりすごく背が高かったり、更に高かったりして、見上げないと顔が見えない。

 むくれていると、ばーかと笑われた。

「高校生にもなればみーんなこんなもんだよ」

 雫は心底驚いた。そのわかり易過ぎる反応に誰かが言った。

「当たり前だろ」

「まだみんな中学生のままだと思ってた!」

 また悔しそうだ。身長といい、どうやったって歳は追い越せない。不可抗力な悔しさがまた増えた。

「やーい、ちびー、がきんちょー」

 まだ中学生になったばかりの雫に合わせて雫の頭をぐちゃぐちゃとかき混ぜながらからかっているのは、お隣の倉繁くらしげみつるという。お隣さん同士、一番仲が良い。

 おてんば変人少女はここでもやんちゃで、結局男の子の友達ばかりだ。学校で男子に混ざってサッカーをしているのと変わらない。

 きっと高校生はもう、前みたいな遊び方はしないのだろうと雫は思った。

 淋しいなと思っていたら見透かしたように充が言った。

「安心しろ、ちゃんと遊んでやるからさ」

「高校生だからって上から目線だ!」

 雫が怒り出す。相変わらず面白くて可愛い反応ばかりするなと思うと、充の悪戯心がくすぶられた。さて、どんなことをして雫で遊ぶか。雫と遊ぶのではなく、雫で遊ぶのだ。

「おー雫、背伸びしてみろ」

 むきいと雫が精一杯背伸びすると、やっぱりちびだなあと、充がにやりと笑った。

「よーし、雫。遊んでやるよ。遊びに行こうぜー」

 なにか悔しいと思いながら、おばあちゃん遊んで来ていーい? とうかがうと、聞くまでもなく行くんでしょと言われる。

 喜久枝にまでからかわれていると雫は思って、それからやっぱり透子とそっくりだと再度思った。だめな時はちゃんとだめと言う。



 充の自転車に二人乗りして、海へ向かう。どんどん近づく潮の香りが心地よい。

 雫がねだったこれから行く海岸は数ある海岸のうち、一番お気に入りの場所だ。

 広い海と広い空、大好きだ。どこまでも続く広い希望に満ちた世界の真ん中にいるようで爽快感に喜びを感じる。

 着くなり雫は自転車を飛び降りて駆け出す。砂浜にぱたんと仰向けに空を仰いだ。

 今日は殊更きれいな空、久々に見上げる景色だから余計にそう感じる。

「カメラ持ってくればよかった!」

 その日の雫はどこまでもなにもかも悔しそうだ。自転車を適当な場所に置いてのろのろとやって来た充は呆れた。

「毎年見てんじゃん」

「違う! お友達に見せたいの!」

 毎年毎年、全然変わらないなあと思うと、充は更に楽しくなった。変わらないなら変えてやろうなどという変な悪戯心まで尻尾を出す。

 ひとまず雫の腕を掴んで起き上がらせようとしたら、逆に馬鹿力で引っ張られて充まで空を仰ぐ羽目になった。

 覚えてろよー! と雫の方を向いて頭をぐちゃぐちゃにかき回す。余計に砂だらけだ。

 と、至近距離でじゃれ合っている雫の顔を見ながら充は思った。

 こいつ、こんな顔だったっけ? そりゃ、多少は大人っぽくなるよなと納得した。

 しかし可愛いと綺麗が混同している感じを覚えたら、ついつい色目で観察しはじめてしまう。

 そんな気持ちは別にからかうことや悪戯するにはいらない。

 はっとして充は起き上がると、今度こそ雫の腕を引っ張って立たせた。

 自分の砂だらけをどうにかする前に、雫の髪や服に付いている砂をさり気無く身体に触れながら払ってやった。どんな反応をするのか見てみかった。

「あ、ありがとう」

 そう言った雫を見下ろすと、俯きがちになっていた。

 雫は顔が少し火照っている気がして、思わず隠したくなったのだった。

 嫌だ、と思った。誰かに触れられるのが嫌なのではなくて、触れられ方によって少し生まれようとする感覚が自分を襲うのが嫌だ。

 充の触れ方はそんな感覚を生むのに充分だった。

 今はまだ忘れていたいのに忘れきれない感覚が顔を出すのが嫌だ。

 そんな風に思うと翔との思い出は全て消し去りたくなる。しかし消えてくれない。

 ここにいる間はなんとなく前と変わらない自分で居られるかもしれないと期待を持って田舎へ来た。しかし、やっぱりどこに居ても、変われないものは変わらないのかもしれない。

 よくよく考えると、壮が側に居てくれなかったらどうにかなっちゃっていたかもしれない。

 無理して翔と一緒に居たかもしれないし、さよならの仕方がもっと酷くて、もっと苦しいまま過ごしていたかもしれない。

 雫が甘えたくなってしまった時、壮は雫と自分に見合った距離で彼女を甘やかす。ごちゃごちゃしている自分を雫に見えないように上手く隠す。

 もっと壮に触れられたいと思う時がある。しかし壮はいつだって、忘れていたい自分に合わせてくれる。

 少し不満に思うことはあっても、無駄な背伸びは必要ないと言われているようで、それはそれで嬉しくあった。

 充はそんな壮に少しだけ似ているところがあるなと雫は思った。

 俯いている雫など気にせずに、充は自分の服から砂を払っていた。こんなもんかと終えて雫を見たら、まだ俯いている。

 どうしたのだろうと思った充が両手で無理やり雫の顔を上げさせると、予想外の表情を浮かべていた。

 こんな顔されたら、なんかやばい。

 相手は、目の前にいる相手はたかだか雫だ。

 充はそのまま雫のほっぺをぷにいと伸ばし、自分はそっぽを向いた。頭の下で雫が声にならない声でわあわあわめいている。

 いたずらなど最早どうでも良い。充は雫に聞きたいことが出来た。

 今から雫を連れて行くとっておきの場所は秘密の話をするのにも丁度良い。

 まず雫を驚かせたくて、からかいながら自然を装って人目から隠れる岩場へ誘導しはじめた。この間見つけたばかりの場所で、景色が大変良いからきっと雫は喜ぶ。

 まんまと引っかかって嬉しそうにきらきらと目を輝かせて眺めている雫の耳元で、遊ぼうぜと少し意地悪にささやくと、充は後ろから雫を捕まえた。

 楽しんでいる雫に水を差すようで悪いが、確認をしようと充は思っていた。さっきのあの表情が生まれた理由を。

 こちょこちょと脇腹をくすぐった瞬間、くすぐったいと笑い転げたくせに、くすぐったいのとは少し違うような変な身体のよじり方をされた。

 そういう確認のつもりではなかったのに、充はたまらなくなって、思わず熱のこもった抱きしめ方をしてしまった。

 雫が自分たちを同じくらいの歳だと思っていたように、充にとってもあくまで雫は雫であって、歳の差など気にしたことがなかった。だから余計に堪らない。

 しかし充とて何でもかんでもというわけではない自覚と理性はしっかりとある。雫相手に完全にスイッチが入ってしまうことなど恐ろしい。

 ひと息吐いて、充は思いっきりつぶすかのように雫を抱きしめて悲鳴を上げさせた。そうしてすっきりしないけどすっきりさせた。



「雫、お前そこに座れ」

 雫をぽいと手放して、多少ごつごつした岩へ背をもたれて充は座り込む。雫も座るようにと急かす。

 その気になりそうになった自分は棚に上げて、説教をするつもりでいた。

 雫にはまだ早すぎる。あんな顔をするのも、そういうことをするのも全て。

 間違いないと思うが、念のため言葉で確認をした。

「お前さ、あるだろ?」

 その問いに雫はすぐになんのことかわかってしまい、一緒に居るは充だけだから素直に話した。

 その話し方が少し辛そうで、充は思わず言ってしまった。

「無理やり、されたんか?」

 あんな言い方されたら説教どころではなかった。

「違う……さよならしてあげるからお願い聞いてって言われたの」

 充は少しだけほっとしたが、別れてやるからというのも釈然しゃくぜんとしない。

「あたし、今どんな顔してる?」

「お前、いちいち聞くなよ。自分でもわかってるんだろ」

 充がそう言うと、雫は自己嫌悪と恥ずかしさで抱えていた自分の膝に顔を押し付けた。

「つかさ、別れてやるっていう理由で襲うとか、そいつ、最悪だな」

「お願いされたらどうしても断れない人だったの」

 哀しそうな声で告げた雫は、付き合っていくうちに辛くて苦しくて怖くなったと言った。

 充はいたたまれなくて、にやりといつものようにからかうことにした。

「俺としたかったー?」

「充君、バカ」

 ムキになって顔を上げたものの、伏し目がちになってしまう。

 そんな雫が哀れで、充はなんだか上書きしてあげられればいのにと思ってしまった。

「まー、ゴム持ってれば上書きしてやってもよかったんだけどな」

「ゴムって何?」

 ぽかんとそう聞いてきた雫に充は思わず頭を抱えたくなった。

 こういうのは小学校の時に勉強した。言い方が悪いのかと正しい言い方をすると雫も流石にちゃんとわかっていた。

 ちゃんと着けられてはいたんだなと安心はしたものの。

「つっこむところそこ?」

「どういう意味?」

「……誰かに上書きされたいのかってこと」

 そう充が言うと雫は押し黙った。なんて答えたらいいのか考え倦んでしまった。

 理由はひとつ。本当はあの時、壮に上書きしてもらいたかったのかもしれないということ。

 あの時の壮の言い方にただの自分のわがままだと思ったけれど、後々考えてみるとそうと言われているようだったと気付いた。

 今だってきっとされたい。だから壮が自分の甘えを受け入れてくれた後に、時々もっとと不満を覚えてしまうのだと思う。

 自分の好きと翔の好きが重なっていなくても、一緒に居たかったから色々我慢出来たのは本当だ。消したら全部無かったことになってしまうのもやっぱり嫌なのも事実。

 翔の知らない顔を見ただけで、翔は翔だ。毎日撫でてくれた手を繋いだ心地よさも、キスも、好きだから拒めなかっただけだ。

 充ははらはらと心許なくなってきてしまった。そうして言わずにはいられなかった。

「お前さ、なんだかなあ……犯されたのと変わんねーよ。要は無知な女の子に強要したんだろ?」

 充の使った言葉が残酷に響く。お願いされたから同意の上と思い込んでいたが、そういう捉え方もある。

 そんなこと、雫は考えてもみなかった。

 大人になってしまった自分ごとで精一杯だったのだ。

 大人になりたくなんてなかった。けれどなってしまった。知ってしまった。自分がそういう時、大人になってしまうことも知った。正に今、そうあったように。

 あの感覚は嫌なものではなく気持ちのよいものであったのは確かだった。

「でも……あたし」

 少し泣きそうな声で雫は言った。言いたいことは充もなんとなく悟れた。

「そんなもんだよ。相手が余程嫌な奴じゃなけりゃ、結局はさ」

「あたし……嫌だ」

 魔が差しそうになった充が思わず悪いと謝ったら、雫は首を振った。

「充君、謝らないでよ。きっと、あたしが悪いの」

 子供くさいくせに、雫がやたらとその時だけ大人っぽい言い回しをした。

 本当に色々と大人になっていく順番を間違えさせられてしまったんだ。そんなところまで破天荒になる必要はない。

「好きな奴でも別に出来た?」

「ううん、そういうのじゃないの……でも一緒にいると安心する人はいるよ。充君と少しだけ似てるの」

 その誰かに恋をしてるのではないか。しかし充は言わない方が良い気がした。

「あたし、嫌だ。その人優しいから、さよならした人と違って……わがまま聞いてくれるけど、キスしたりもっと他のこともしてほしくなっちゃうの。いつもごちゃごちゃする」

 取り敢えず、その誰かは雫のことが好きで大切なんだろう。自分と違って生真面目なのだろう。

 他のこともしてほしいと思ってしまうと言った雫に、やっぱり今しといた方がよかったのかもしれないとも思わなくはなかった。きっと、どうしてその相手とそういうことをしたくなるのか気付ける。

 それにしても、さっきから雫は自分を卑下ひげするようなことばかり言う。

「あんまさ、自分のこと、悪いとかずるいとか思わない方がいいぜ。お前っていつも誰かに気遣ったりしてんじゃん? 甘えたりわがまま言っちゃったりするのって自分らしくいられてるってことだと思う」

 充にそう言われると、胸の突っかかりが少しだけ消えた。

 やっぱり少しだけ壮みたいだなと思った。

 雫は充が自分よりも大人であることがわかった。大人だなあと時々感じる壮も、子供っぽい自分と比べるととても大人なのだと感じた。少し大人になってきたはずの自分よりずっとずっと大人だ。

「ねえ、充君。充君はどうしてあんなことあたしにしたくなったの?」

 悪いのは自分だとわかっている。けれども雫は聞いてみた。

「あんな顔と反応されたら我慢出来なくなる」

 自分の反応も充の反応も単純過ぎる。単純過ぎて逆によく理解できず、雫は自分の感覚に不安になった。

「お前、気をつけた方が良いよ」

 充がそう言うと雫は首を傾げた。

「ちびっこいしガキくさいようでもさ、時々すげえ女の顔してる」

「女の顔?」

「大人びてるってこと。俺が言うのもなんだけど、そういう対象に普通に入るよ。ホントそんなことをお前なんかにする気なんてないんだ。俺の理性を敬え」

「うん……」

「で? そのもっとしてほしくなっちゃう相手って何歳だよ?」

「三年生」

 雫がそう言うと、充がため息を吐いた。

「そいつさ、絶対いろいろ我慢してんぜ」

「どうして?」

「聞いてると、そいつ、お前のこと好きだろ。 違うか?」

 雫は俯きながら言った。

「……うん。何回か言われた。けど最近は言わない」

「一緒に居るってことはさ、まだお前のこと想ってんじゃね?」

「そうかなあ」

 哀しそうな顔で雫が言ったから、やっぱり雫はその誰かのことが好きなんだろうと充は確信した。

「お前のこと、大事なんだよ。だから色々我慢すんだよ」

「そういうもの? ねえ、あたし、傷付けてないかな? 」

 わがままを言ってしまうことに対しても。壮とふたりきりで居ると、どうしてもそんな風に甘えてしまう。

「そんなのわかるかよ、俺に」

「そうだよね……好きだって言ってくれる度にあたし悲しくなるの。どうしてかわからないけど」

 そしてまた頭の中がごちゃごちゃするのだ。心の中はごちゃごちゃし過ぎて、もうよくわからない。

「お前、そいつに好きだって言われると辛いの? なんで辛いのか考えた方がいいよ。時々言うお前のわかんないわかんないて、考えるのから逃げてんじゃね? 取り敢えず今日のことは俺、反省してる。お前も反省しろよ。帰るぞー」

 よいしょと腰を持ち上げた充は立ち上がらない雫に気付くと、向かいに屈み込んで至近距離で目を合わせてみた。

 先程のような顔はしない雫は、やっぱりその誰かに夢中なのだろう。その誰かを恋しそうな瞳を湛えていた。切なそうに。



 帰ると喜久枝が砂まみれの雫に爆笑した。

「あんたねぇ、充はもう高校生なんだからガキくさい遊びに付き合わせたら可哀想だよ」

 透子だったら少しかんぐりもしただろうが、可愛くて仕方ない孫がどんな遊びをしてきたかまでは気にせずにそう言った。

 帰ったら由美に話そうと雫は思う。由美は絶対に秘密を守ってくれる。今の自分のごちゃごちゃしてどうしようもできない気持ちを誰かに打ち明けたい。充と話したらごちゃごちゃしただけでなく、切なさや不安まで増えてしまった。

「おばあちゃん、ご飯支度手伝う!」

「手伝う? 作ってくんないの?」

 雫は小さい頃から透子に仕込まれて料理が得意だし好きだ。家庭科の授業の時、雫に包丁を持たせることに周りは冷や冷やしたが、いざ始めてみると手際の良さにみんなが驚いた。

「おばあちゃんなに食べたい?」

 そう尋ねると、喜久枝は冷蔵庫の中身で適当にと適当に答えた。

「上手になったわね」

 雫の作った煮物を突きながら喜久枝は言った。

「たまーにだけど、自分でお弁当作るよ」

「おや、そりゃ彼氏は幸せだね」

 喜久枝は、雫がいつも来る度に翔という近所の友達の話ばかりしていたから、カマをかけた。

「……おばあちゃん、お別れしたの」

「それはご愁傷様」

「おばあちゃん、適当過ぎ! あたしこれでもちゃんと傷付いたのよ」

「男なんて山程いるんだから。他見つけりゃいいのよ」

 そう言って喜久枝がからから笑う。

 他かと思いつつ、壮のことは他などという言葉で片付けられないと思った。壮は壮だ。咄嗟とっさにそんな思考が働くと、なんだか悲しくなってしまった。

「ねえ、好きだって言ってくれた人と付き合わずに一緒にいるのはずるい?」

「なに、あんた、充にでも好きだって言われたの?」

「そんなわけないじゃない!」

 思わず強く言うと渋い顔で行儀悪いと叱られた。

「学校の子?」

「壮君」

 壮って誰よと喜久枝は思った。

 雫から出てくる男の子の話は、今まで翔いう男の子のことばっかりだった。今日は誰々とこんな遊びしたとかじゃなくて、翔くんがね翔君がねと、そればかりだった。

 食事を終えて後片付けが終わると、居間で麦茶を飲みながら話しの続きをしていた。

 何だかなあ、と喜久枝は思った。雫はすぐに色々なことに夢中になる。壮の話ばかりする雫は今、彼のことでいっぱいなんだなと思いつつも、本人の明らかな無自覚に呆れる。

 そんなに気になるなら帰れば? とふざけて言うと、おばあちゃんひどい! 来たばっかなのにー! と雫はむくれた。

 けれども、壮がそばに居ないことがこんなにも寂しくて心細さまで感じるとは思いもしなかった。

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